2015年12月01日

原田美世「こちら原田タクシーですっ」

秋から冬の移り変わりです、そろそろ寒くなってきたので

のほほんとした美世さんが皆と会話するだけのSS書きました。





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1448460524





――事務所前



美優「あれ……?」



美世「どうも、似合ってますか?」



美優「あの、私、これからお仕事にタクシーで向かってくださいって……」



美世「分かってますよ? 今からあたしが運転してお連れします!」



美優「美世さんが、ですか?」



美世「はい! 実はあたしも別の番組の企画で、皆さんを乗せて移動する役目を担いました!」



美優「そうなんですか……?」



美世「そういうことです」

美世「それではどうぞどうぞ、行き先は?」



美優「えっと……昨日ご一緒したテレビ局に」



美世「なるほど、今日もですか?」



美優「別のお仕事ですけど……」



美世「知識が必要なバラエティだったね? 車のお話は、深かったねー……」



美優(話しすぎて、ちょっとスタッフさんも困っていましたけど……)



美世「はーい! それじゃあ出発!」



美優「なんだか、すいません」



美世「いえいえ」

――…………



美優(本当に二人きりで送ってもらうだけ……)



美世「美優さん?」



美優「え、なんでしょうか……?」



美世「何か、お疲れですか?」



美優「いえ……お休み明けなので特には……どうしてですか?」



美世「そうだねー、ちょっと暗く感じたから、かな」



美優「暗く、ですか?」



美世「まさか悩み事?」



美優「悩み……ではありませんが」



美世「おっ? 悩みじゃないけど、何?」

美優「実は、次のお仕事なんですが……その」



美世「問題が?」



美優「ちょっと、昔の衣装を思い出すような、その……」



美世「……? ああ、動物園の時のですか?」



美優「そう、ですね……またあんな服で、お仕事するんだなって……」



美世「あの時の美優さんも綺麗だったよ? 大丈夫、自信を持って!」



美優「いえ、それもあるんですけど……」



美世「?」



美優「…………」



美優「その……」



美世「恥ずかしいんですか?」



美優「……はい」



美世「こればっかりは、慣れなきゃ駄目かもね」

美世「でも、美優さんのプロデューサーさんもそれが分かってお仕事を持ってきてるんだと思うよ」



美優「え?」



美世「だって、早いうちに美優さんが慣れた方が、後々に大きい仕事に繋がるかもしれないし」



美優「そういうものでしょうか……」



美世「……もしくは、ゆっくり慣れちゃう前に、恥じらう美優さんの画が欲しかったとか」



美優「え、えぇっ?! それってどういう――」



美世「目的地でーす!」



美優「あ、え、もう……ですか?」



美世「お代は結構なので、いってらっしゃい! お仕事頑張ってください!」



美優「は、はい……」

――事務所前



美世「さて、戻ってきました。本日は利用者の訪れる限り、この繰り返しで進行します……うん?」



志乃「いいかしら?」



美世「志乃さん。わ、もう飲んでいらっしゃるんですね? いつもですけど」



志乃「これはタクシーなのかしら」



美世「今日は特別! なるほど、お酒だと運転できませんからね、どこにご用事が?」



志乃「いえ、移動……のためでもあるんだけど、タクシーらしい使い方をしようと思って、ね?」



美世「タクシーらしい?」







――説明中







美世「なるほど……!」



志乃「それじゃあ、お願いするわね」



美世「もう飲んでるのに、あたしに『いいお酒のあるところ』なんて」



志乃「運転手はいいお店を知ってるって、よく言うじゃない?」



美世「それもお昼時前からです……」



志乃「空いてるお店とかなら何処でもいいのよ? その中でオススメをひとつだけ」



美世「うーん……」

――…………



美世「到着したよっ」



志乃「ここは? 住宅街に見えるけど、隠れた名店かしら?」



美世「いえ、この近くでお酒のお店は知りません」



志乃「だったら、ここに何が?」



美世「楓さんのマンションです」



志乃「ああ…………なかなか、近いところに引っ越していたのね」



美世「はい! この前、お招きいただきました!」



志乃「……あったの?」



美世「ありました!」



志乃「あの子、今日は?」



美世「お休みです!」



志乃「注文通りね」



美世「じゃあ失礼します!」

――事務所前



美世「たぶん、明日あたりに楓さんと志乃さんは一緒に事務所に来るよね」



美世「さて、次は……おやおや」



薫「美世お姉ちゃん! おはようございまー!」



千佳「舞ちゃん! お車が来たよ!」



舞「分かりましたっ! 持ってきます!」



美世「あれれ、団体様? 車に乗るかな?」



薫「かおる達三人だよ!」



舞「あとは、荷物がちょっとだけ」



美世「荷物? お仕事?」



千佳「違うよー! んしょっ!」

美世「これは、一輪車?」



舞「はい♪ 外に遊びに行こうと思って」



薫「舞ちゃんがね! 教えてくれるんだって!」



千佳「でも、ここからだと学校も公園も遠くて、どうしようかなーって」



美世「なるほど、それであたしの出番! さ、こっちに一輪車を乗せて――」



――バタンッ



美世「分かった! あたしが三人とも、近くの公園に連れてってあげる!」



千佳「わーい!」



薫「お願いしまー!」



舞「ありがとうございます♪」

――事務所前



あい「彼女を」



早苗「え〜? らいひょうぶらってぇ、まだ三時れしょ〜」



あい「夜中ではなく昼のだが、それじゃあ頼むよ」



美世「ちょっと待ってちょっと待ってお姉さん」



あい「タクシーがあると聞いて、送迎を頼みたかったのだが……」



早苗「あれ〜? 美世ちゃん、バイト? アイドルは副業しない方が〜」



美世「救急車じゃないんだから……いや、救急車でも駄目だよ」



あい「そうか……しかし事務所に彼女を寝かせるにはどうも」



美世「……っぽいね」

――バタンッ



美世「じゃあ行きます!」



早苗「お〜!」



あい「早苗さん、運転中だから座って……」



早苗「え〜? 何ですって〜?」



あい「シートベルト、緩いままです」



美世「駄目です! きちんとルールは守って……って、このあたり早苗さんの方が詳しいですよね?」



早苗「昔の話ね〜」



美世「何年も経ってませんっ!」



早苗「そうそう昔と言えばこの前ね〜?」



あい「……早苗さん、どれくらい飲んでいたんだろうか」



早苗「さっき志乃ちゃんと、ちょっとね〜?」



美世(やっぱ同じ席だったかぁ)



あい「美世さん、こちらは私が見ておくから」



美世「あはは……お願いしますー」

――事務所



都「前の車を追って下さい!!」



美世「分かりました! では都ちゃんが来る直前までここに居て、

   『私がそんなカメラのある車に乗るワケ無いじゃない』と自費でタクシーを呼んで

   ご自宅に向かって移動を始めた時子さんを乗せたタクシーを」



都「キャンセルでお願いします」



あずき「あれっ? 探偵ドラマ名場面を再現してみよう大作戦は?」



都「深追いすると謎がひとつ増えかねません……」



美世「じゃあ行き先はどうします?」



あずき「だったら二個目の大作戦! 名づけて、事件の匂いがする場所目指して――」



都「探偵あるところに事件あり、です!」



美世「作戦名かなぁ?」

都「思うに探偵のスキルのひとつに事件を呼び寄せる力もあると思うのです」



美世「はた迷惑だね」



都「では私が向かった場所で何かが起きれば」



あずき「探偵襲名成功だねっ!」



美世「それって、おまかせってことかな?」



都「指定しても構いませんが、私自らの意志が入らない方が、それっぽいですよね?」



あずき「わくわく」



美世「分かりました、ではえーっと……」



都「どんな難事件も解決してみせましょう!」



美世「前の車を追います!!」



都「降りましょう!」

――事務所前



亜子「……?」



美世「いらっしゃいませー」



亜子「話は聞きまして、お得な移動手段や思ってましたけど」



美世「けど?」



亜子「さっき事務所で都ちゃんが『あんなの事故です』言うて」



美世「大丈夫です! あたしが事故なんてそんな」



亜子「とは言いますけど……まぁ、テレビの企画なら大丈夫ですやろ」



美世「ご覧のスポンサーの提供ですっ」



亜子「編集点作りましたよココ」

亜子「このタクシー、どこまで行ってくれますん?」



美世「うーん……まぁ、適度な距離。あたしの判断で……」



亜子「近くのテレビ局とスタジオは?」



美世「それならちょっと遠いけど、どっちも大丈夫だよ! お仕事?」



亜子「そうです」



美世「こんな時間に? 珍しいね? えーっと、どっちの?」



亜子「両方ですわ」



美世「……?」



亜子「えっと、もっと具体的には……南のテレビ局から東の――」

――…………



美世「なるほど、お仕事って他の二人のだったんだね?」



亜子「そうなんですわー。この企画のタクシー使わせてもらったら収録後の移動で交通費かからん思ってましたけど」



さくら「事務所以外からは乗れない、呼べないって聞いたんですよぉ」



泉「それで亜子が、先に行っておけばいいのにわざわざ事務所から私達を途中で拾って……」



亜子「アタシ一人だけ得するより三人ともの方がええやろ?」



さくら「これでクレープが多く食べられまぁす!」



亜子「お金は単純に三倍得や」



泉「値段は違うけどね」



亜子「いずみー、それもそーやけどーアタシの気持ちの値段よ?」



美世「ほんと、仲がいいんだなーって」



さくら「もちろんでぇす!」



亜子「当たり前ですわー!」



美世「よーし! 気分がいいから飛ばしちゃうよー!」



亜子「あっ! それはあきませんって!! 後ろ割と狭いんですわ!」



美世「冗談冗談、交通ルールは守らなきゃね?」



泉「……ちょっと危ないかも」



さくら「?」

――事務所前



美世「ちょっと暗くなってきたね、でもお仕事終わりの人は居るはず……おや?」



まゆ「…………あ」



美世「こんばんは? まゆちゃん、乗る?」



まゆ「いえ、私は客じゃないんです、残念ながら……」



美世「じゃあ、どうして外に? 寒いよ?」



まゆ「諸事情ですよぉ」



美世「事情……それって」



まゆ「美世さんは、もう分かってると思いますけど、私はプロデューサーさんを待ってるんですよぉ」



美世「……うん、そうだとは思ってたよ。だとしても、なんで外に?」

まゆ「事務所の中は皆さん揃っていて、暖かい場所ですけど……それだと、皆と一緒なんですねぇ」



美世「一緒だと駄目なの?」



まゆ「まゆだけのプロデューサーさんになって欲しくて、皆からこうして注目を集めようとして」



美世「そうだねぇ……まゆちゃん凄いもん、いろんな意味で……」



まゆ「だから、一人で抜け駆けするなら、これぐらい普通ですよぉ」



美世「抜け駆け? どうしてそう思ってるの?」



まゆ「……うふっ。皆より先に会おうとして、卑怯だと思いませんかぁ?」



美世「別に……? 会いたいから会いたいのは、その通りじゃない?」



まゆ「…………」

美世「それよりも……優しく感じる」



まゆ「……?」



美世(罰って言い方はヘンだけど……悪いと思ってるから、こんな外の寒い所で待つ事を選んだみたいな……)



まゆ「残念ですけどぉ、皆に遠慮とか、そんな事は、考えて無くてっ、そのっ」



美世(寒いのに顔熱そう……)



まゆ「そう、そうですよぉ、まゆがプロデューサーと話し辛いじゃないですかぁ。……あっ、皆の方がですよぉ」



美世(あれっ? 全部言っちゃってる?)



まゆ「とにかくここで待つんです、きっと一時間もしない間に帰ってきます」



美世「そんなに!? うーん……よし!」

――ガチャ



まゆ「……扉、開いちゃいましたよ?」



美世「乗って!」



まゆ「え? でも、私はここに――」



美世「外で待つなら車の中でも一緒! さぁ!」



まゆ「あ、あのっ……」



美世「暖かいでしょ?」



まゆ「そう……ですねぇ……でも、他のお客が来たら――」



美世「今はまゆちゃんがお客さん! だから問題なし!」



まゆ「……ふふふ、そうなんですか?」



美世「だから遠慮なくね? そこで待っててもいいんだよ?」



まゆ「じゃあ、ここで……はい」



まゆ「んん……プロデュー……サーを…………すー……」



美世(寝ちゃった……相当疲れてたのかな?)



美世「毛布、あったかなぁ……」

――…………



美世「さて、さすがにもうこの時間だと……あっ!」



美世「お疲れ様です! えへへ、初日ですけど楽しかったです!」



美世「また明日もお願いします……っとと、その前に」



――ガチャッ



まゆ「すー……すー……」



美世「まゆちゃん、プロデューサーを待ってて寝ちゃったみたいなんです」



美世「どうします? あたしが送り届けてもいいですけど……やっぱりそうですよね?」



美世「じゃあ、この鍵はプロデューサーに預けます、お願いしますね?」



美世「あっ! ちゃんと事故とか起こさないように安全運転でお願いねっ!」



美世「それじゃあえーっと……あれ? 〆ってどのタイミングだろう?」



美世「まぁ、ここでいいかな? それじゃあ、事務所発原田タクシーの次回にご期待下さいっ!」







おわり



17:30│原田美世 
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