2015年12月03日

モバP「光はいい子だなあ」


   事務所



P「なぁ。光にとって、ヒーローってなんなんだ?」





光「みんなに夢と希望を届ける人、かな!」



P「なるほど、だからアイドルなんだな」



光「うん! テレビの中から貰ったそれを、今度はアタシの手で、ファンのみんなに届けたいんだ!」



光「……ま、特撮の主題歌歌いたいって理由もあるんだけどなー」タハハ



P「光らしい理由じゃあないか」



光「へへっ、ありがとっ! ファンのためアタシのため、……そしてPのため、がんばるよっ」



P「え、俺のため?」



光「うん。背が低い女子はダメかもって思ってたけど、……アタシが昔に憧れたようなヒーローに、アイドルにしてくれた恩人だからっ!」



P「う、うう、光は強い子だな……背のハンデに負けずに……」グスッ



光「な、泣かないでよP! ……やっぱり、背低いのってハンデ?」



P「ああ……それでも諦めないんだから、光はいい子だなぁ」ジーン



光「んっ! 次に目指すは最高のヒーローでアイドル! 一緒にいこうっ!」



P「ああ! 光を最高のヒーローにしてみせる! 全部俺に任せてくれ!」



光「へへ、頼りになるなぁ!……じゃ、今日はもう帰るから。ばいばいっ!」



バタンッ



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1448621569





   帰宅途中:駅前





光(帰りながらやれる特訓……特訓と言えば走り込み! うん、これに限る!)タッタッタッタッ



光(更に音楽を聴きながらリズミカルに走れば、リズム感も鍛えられる! いいなこれ、すっごく楽しい!)シャンシャン♪ タッタッ



光(……どうせ特訓するなら、七人くらいの先輩に全方向からキックされるとか、鉄球を受け止めるとかしてみたいなぁ……ま、いっか!)













ざわざわ・

       ザワ……ザワザワ……・



      がやがや

               ワイワイガヤヤ……



  「なあ、あれ――」





 「ん? あー、わかるぞ」









   「いやそっちの話じゃなくてな、南条光ちゃんだって!」

 「マジか? ……マジで!?」







       「マジだ!」







光(それにしても、走るのって気持ちいいな……歌いたくなるぐらい爽快だ!



光(いや、もう歌っていいよね! 否、歌うべきだ!)



光「……『ある日突然 自分の力 奪われた時 君はどうする 』♪」











 「もしかして野外ライブ!?」



        「ンな訳あると思う?」







   「思う! 追え! 彼女の走る方でライブがある! ……かもしれない!」









光「『夢を見るのも 叶えてくのも 誰かじゃなくて 自分だけだよ』♪ ……って、ほぇぇ!?」





  ドッダッダッダッドッダッダ!!



   「「押すなぁ! 押すなぁ!」」





 「「俺の車がー!」」



ざわざわ……・





           ・ ・ ・ザワ……ザワザワ……





    ザワ……ザワザワ……  

  

        がやがや!







光「ふぁ、ファンの人たち!?」



光(なんなんだ? まさか、アタシを追って?)



光(くっ……こういう時、ルール的に挨拶とかせず、隠し通せって言われた気がする……なら!)









光「三十六計逃げるに如かず! ――加速そーーーち!!」ビュバッ!









   「「逃げた!?」」





 「「加速したんだな! 俺たちもォ!」」





   「「「「「応!」」」」」







光「ごめんなさいいーーっ!!」



ダッダッダッダッダッダッダッダッダ……



   公園



光「……ふー……。は、走った走った……まいた、よな……」ゼーゼーハーハー



光「うー……人を助けるヒーローが、人に迷惑かけちゃいけないよな……というか、期待させるだけさせといて逃げるなんて、不誠実なんてもんじゃ足りないぐらい酷いことだ……」ズーン



光「……けど、こうやって追っかけてくれる人達の為にがんばるんだよな、うん!」シャキッ!



光「かといって、そのせいで迷惑をかけるのもなぁ……」



光「これからは変装して身分を隠さないとなー、もっとしっかり」トボトボ



光「……どうやって変装しよう? 帽子をかぶるとか?」









ポカッ! ポカッ!



光「…………」



ポカッ! ポカッ!



光「…………」



ポカッ! ポカッ!



光「…………」チーン!



光「わかんない!」



光「……何の音だ? なんか固い感じの音だ」



ポカッ! ポカッ!



光「というか止まんないな!?」



ポカッ! ポカッ!



珠美「たぁや! せいやっ! せいやっ! はぁーっ!」 ポカッ! ポカッ ポカッ!



光(おおっ! 手作りっぽいタイヤブランコを竹刀で叩いてる! すっごく修行って感じだ!)



光「おぉーい! 珠美ちゃーんっ!」



珠美「んっ! ……ああ、光ちゃん!」クルッ



光「うん、アタシだ! ……ってああ珠美ちゃんっ、余所見だめっ! ブランコがっ!」



珠美「ふぇ? ――いえ、これなら!」バチンッ!



光「おお……止めた!?」



珠美「ふふふふ……ついに修行の成果が出ました!」



光「凄いっ! ……ごめん、集中してる時に声かけちゃって……」



珠美「謝らないでください! 余所見をしちゃったのは珠美ですし、それに、挨拶は大事ですから!」



光「うう……ありがとうっ! 許してくれて!」



珠美「いえいえ! 光ちゃんは帰りですか?」



光「あー、うん、そう! 珠美ちゃんは?」



珠美「日課の特訓です!」



光「特訓? 毎日タイヤを叩いてるのか?」



珠美「あいや、いつもは素振りだけですが……それでも毎日です!」



光「おお、かっこいいな! いつもはってことは、今日は特別なのか? 嬉しいことがあったとか」



珠美「ふっふっふ、実はそうなのですよ! 実は!」



光「実は? 何があったんだ?」





珠美「…………」



光「……?」



珠美「……やったー! 次のLIVEが来ましました!」



光「やったな! 珠美ちゃん! ……ちょっといい?」



珠美「はい?」



光「話を落ち着いて聴きたいんだ。ブランコとかに移動しない?」



珠美「おおー……いいですね! ブランコ乗りましょうブランコ!」



珠美「えっへっへっへっえっへっへー! 珠美はずっと大きな舞台に立ちたかったので嬉しいです!」



光「念願の夢が叶ったってワケか!」



光(アタシも、立ちたいな)



光「次は珠美ちゃんが夢を叶えた大人として、子供たちに夢を見せる番だな!」



珠美「え? 珠美が……大人?」フニャァ



光「あぁ! 夢を叶えた大人のヒーローだ!」



珠美「そっかーヒーロー……珠美は大人かぁー……! 子供の頼れるお姉さんに成長してしまったかぁー……!」ギーコギーコ



光「うん」



光(いつまでも子供心を忘れないのもヒーローだよ、珠美ちゃん……!)



光(……いかんいかん、珠美ちゃんは子供って言われるのはヤなハズだ。言っちゃいけないことは言わないでいよう)ブンブン



珠美「んっ、光ちゃんどうかしました?」ギーコギーコ



光「珠美ちゃんがかっこいいなって、見惚れちゃってさ!」



珠美「ふへへ……! 照れちゃいますよもぉー!」ギーコギーコギーコギーコギーコギーコ



光「ところで、大きなLIVEってオファー?」



珠美「はいっ! ホワイトボード脇の箱に、珠美の名前が書かれたファイルを見つけた時の感動と言ったら……!」



光「うんうん! オファーって、自分じゃなきゃダメだって意味だもんな! 嬉しいよね!」



珠美「ええ、もう……今までの努力が全部実って、報われて、う、うう……」ジワァ



光「た、珠美ちゃん?」



珠美「……う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ん゛……!」



光「あわわわわ!?」



珠美「ヒック、グスッ、たまみ、だまみ、がん゛ばって゛き゛て゛よがっ゛たでずぅぅぅぅ……!」ウワァァン!



光「おお……いいぞ珠美ちゃん! 今はいっぱい泣いちゃおう! 涙はこころの汗だから!」ギュウーッ!



珠美「うええーーんっ!」



光「あ、まずい、アタシも釣られて……うわぁぁぁぁんっ!」ギャピー





………………

…………

……



光「……すっきりした?」ズビッ



珠美「はい……これ以上ないくらい、清々しい気分です!」グスッ



光「こっちこそ! アタシ、珠美ちゃんに会えてよかった!」



珠美「光栄です! ……ところで……」



光「も、もう真っ暗だな……」



珠美「たたた、珠美は怖くありませんからねっ!」ガタガタガタガタ



光「アタシもだ! お互いの背中をお互いで守ろう!?」



珠美「そ、そうしようと今言おうと思ってたんです、はい!」



光「凄いな……頼もしいよ珠美ちゃんっ!」



珠美「はぃぃぃぃっ!」



   帰路



光「珠美ちゃん、カッコ良かったな……駅まで着いたんだし、もうきっと帰ってるよね、うん」テクテク



光(……アタシもなりたいな。子供達に夢を見せる大人に。そんな、ヒーローのようなアイドルに!)



光「……会いにいけるアイドルならぬ、ピンチには必ず表れるアイドル……ふっふっふっ、これイケるんじゃないか……!?」



光「……歌いたいな。何時だってアタシが側にいるって思える歌! そうと決まればっ!」スチャッ







ピポパポピ





ガバッ!



光「通信!」



光「あ、もしもしP、電話して大丈夫だった? ――良かったぁ、ありがとう!」





光「あぁいや大した話じゃないんだ。Pにもっといっぱいお仕事を持ってきて欲しいな、って言いたいだけでさ」



光「あとはまぁ、普段アイドルであることを隠して過ごすべきかなーとか、……うん、うん!」



光「そう、そう! Pの指示ならどんな現場にも飛んでくからっ! 難しいほうがいい! アタシがやらなきゃって燃えるし、いっぱい乗り越えて勇気を示したい!」



光「アタシ、歌いたいんだ! 辛い時こそ聴いて勇気を出したくなるような歌を!」



光「……うん、Pの夢は夢はアタシの夢だから。一緒に叶えよう!」



光「……あ、ごめんね。やっぱ仕事中だった? ううん、今後は控えるよ。おやすみ!」



光「……ううー、やっぱり集中してる人の邪魔をしちゃいけないよな……今度からはメール中心にしよう……」シュン……



光「ま、頑張るかっ! 正義に向かってゴーッ!」タッタッタッタッタッ





………………

…………

……





   事務所



P「……開けるぞ」ゴクッ



光「……うん!」ゴクッ



ビリリリリ



P「……やった」



光「やったぞ! トークバトルショーーーッッ!!」



光「ありがとう! そして、ありがとうP!」



P「ああ! 大きな仕事だ、失敗するなよ?」



光「したくて失敗する人はいない! それってアタシも同じなんだ!」



P「なるほど、そうか……ああ、光のイメージに合う仕事、探すの大変だった……」



光「そっか、ありがとうね……お疲れ様! 後はアタシがやる!」



光(アタシにもっと力があれば、そんなことで苦労させないのに! すごい時間かかっちゃったし……迷惑かけないぐらい強くならなきゃ……!)



P「よし、仕事決まった祝いに、何か食べに行くか?」



光「ま、待った!」



P「何でだ?」



光「ご飯とか、嬉しくて、嬉しくて、嬉しすぎて……絶対気が緩む! スキャンダルとかも一応警戒したい! 勝って兜の緒を締めなきゃだから、悪いけどダメだっ!」



P「ハハッ、光はマジメだなぁ」



光「アタシはみんなの味方でいたいんだ! わかるだろ?」



P「ふふ、それでこそ俺のヒーローだ!」



光「ありがと! Pに見せるから! 活躍するアイドル光の姿をさっ!」



光(アタシたちはプロデューサーとアイドル……お礼は、お仕事で返したい)



光(Pのくれた役割を果たす。それが、アタシの誓いだっ!)



  テレビ局:楽屋





心「はいはいはぁーい! いい子ちゃんたち、全員ちゅうもーく!」



光「なんだ、せっかく今日のスタッフと共演者全員と挨拶をしようと思ってたのに……」



晶葉「重大なことなのか? 撮影機材にトラブルだったら私も力になるぞ!」



心「ちっがーう☆ 今回の番組撮影は、はぁとのらぶりーさをアピールする場なワケ!」



千枝「心さんおはようございま、……えっ?」



心「これを機にはぁとをお茶の間のアイドルにするの!」



光「そうだな! アタシもテレビの向こう側で待つみんなへ勇気をあげたい!」



晶葉「そういうことなら私もこのメガホン、いや私の高度な科学力と開発力をお茶の間にアピールしたいぞ!」



千枝「今日は私たちがアイドルのみんなを応援するのが役目じゃないんですか……?」



心「違うってー☆ はぁとがスウィーティーなところをアピりまくってお茶の間から人気爆アゲからのオファー舞い込みまくりの一歩目だってー☆」



千枝「あのっ」



晶葉「いやいや、私の天才的な発明をみんなに知ってもらう機会だ!」



千枝「えっとっ」



光「いやいや、アタシのカッコイイ活躍を見てもらうんだ!」



ワーギャーニョワー







千枝「あれ……、み、みなさん……?」



千枝「あのっ! わ、わたしの言うこと、聞いてください!」ピピーッ



心 晶葉 光「「はいっ!?」」ピタッ



千枝「今日はみんなを応援する番組なので、応援してください……いいですか!?」



心 晶葉 光「は……はい……」シュン……



千枝「ふぅ……じゃあ着替えて、スタジオに行きましょう?」



晶葉「今の笛、衣装のか?」



千枝「あ、はい、音がひびくように練習してて、持ち歩いてるんです!」



心「へぇー、千枝ちゃんったら勉強家だなこのー☆」



千枝「えへへ、ありがとうございます!」



光「すごいな、笛って。自分が何処にいるか一発でわかっちゃうんだ」



千枝「はいっ、タイムキーパーしますから!」ピピッ



光「なるほど。みんなの行動を決める力……アイドルの必殺技だな!」





千枝「え? あ、はい! 光さんは何か用意してますか?」



光「ああ! このブレスレット、秋葉の科学力の塊が大写しになるよう写し、笑顔でファンに応え、大きく手を見せつけてだな……」



光「…………」



千枝「……光さん?」



光「……………」ワナワナワナワナ



心「ちみっこどしたん?」



光「……しまった、アタシとしたことが……衣装に変身したあとの応援を考えてない!」



晶葉「ふむ……それはいかんな」



心「はぁとは『物理的はぁとアタック』をたっぷりあげちゃう♪ 弱点はない☆」



晶葉「私は応援特製メガホンを使う!」



光「そ、そんな……みんな技とか持ってる!? アタシも何かないとーー!」ワーッ!



千枝「だ、大丈夫ですよ」



光「それじゃダメなんだ。アタシらしく……必殺技! みんなみたいに必殺技がないと!」チラッ



晶葉「何故私を見る? ……いや、そういうことか……」キラン



千枝「え? え?」キョロキョロ



光「改造してくれ、池袋博士!」



晶葉「フフフ……後戻りできないぞ?」



光「構わんっ」



千枝「プ、プロデューサーさん、二人をとめてくださーい!」



   収録中





心「エンジェルはぁとアタック、くらえー☆ ……おい、悪役つったの誰だよ☆」



晶葉「誰も言ってないし、悪役をやれなんて頼んでないぞ?」



心「違うってー☆ 光ちゃんがいるから、一番おっきなはぁとがワルに見えちゃう☆ ってハ・ナ・シ!」



心「そ・れ・に☆ 光ちゃんいると、なんでもいいからカッコつけなきゃいけない気になるの☆」



光「ありがとう! ……心さん、背高くてカッコいいな……」



千枝「光さんっ!」ピピーッ!



光「はっ!?」



千枝「緊張したらホイッスルを吹くといいんですよ!」ピピッ!



光「へへへ、ありがとう! テレビの前のみんなに会えるのが嬉しくて、嬉しくて、幸せで……ついのぼせちゃった!」ビシュ!



心「優等生アピんなこのぉ☆」



光「さぁ頑張れ、みんな! その胸の心にある正義の心を信じて!」



心「あ、今ナチュラルにスルーした?」



晶葉「フフ、私にかかれば応援も完璧だ! まかせてくれ!」



千枝「わ、わたしもがんばりますっ!」



光「言葉には力がある! その言葉を届けよう!」



心「あっ☆ 美味しいトコ持ってったなこのー☆」



オッケーデース!



アリガトウゴザイマシター!





光「――アタシたちはみんなに勇気を伝えるために戦っているからな! この胸の正義の炎は決して消えやしない! 絶対に!」



心「んー? 正義ってのは敵がいないと成り立たないわよ☆ その点アイドルはファンが一人でもいればエコな存在よん☆」



晶葉「番外トークバトルが始まってしまったようだな……まぁ、存分に主義主張を戦わせるがいい!」



光「みんなが正しい心を持っていれば、正義はそれだけでいいんだ!」



心「甘い、甘いわ……! もう二十うん年も生きてるとねぇ、世の中がいろいろあるってコトをわかっちゃうのー☆」



光(心さんは、アタシと違ってアイドルの必殺技を持ってて、それでもアタシが想像つかないくらいいっぱい苦労してる……)



光(……けど、諦められないから、オファーばんばん受けまくり作戦を立てられたり出来るんだ!)



光「諦めるな! そうやって諦めてしまう弱い心と戦うんだ! 自分の弱さと戦ってこそ、本当の自分になれる!」



千枝「着替えて帰る時間です!」ピピーッ!



光 心 「「ひゃいんっ!?」」ビクンッ!





   楽屋



心「さーてと! ビールでも飲んで帰りたいところね☆」



晶葉「私は帰って次なるロボ制作に取り掛からねばならない! ……ゆえに! さらばだ!」タッタッタッタッ



光「アタシは帰ってヒーロー番組を見なければ! じゃあな!」タッタッタッタッ



心「誘う前から断られちゃったぁ☆ こっつんんこ☆ ……おいどうすんのこの空気☆」



千枝「あっ……」



心「…………」















千枝「あのっ、千枝、プロデューサーさん呼んできますねっ」



心「その心づかいがむしろ痛い☆」





   女子寮



テレビ「ドカーン!バキッ! セイハー!」



光(レッスン忙しくて当日チェック出来なかったやつで、しかも新フォームお披露目回という激アツなお話なのに、……やばい、やっとお仕事出来たの嬉しすぎて、熱さめなくて、話がぜんっっぜん頭に入ってこない!)ドキドキ



光(……あとでもう一周しなきゃ……)



光「……でも結局、必殺技作れなかったしなぁ。それまでお預けかな……はぁ」



光「……と、その前に!」



光「起きてるかな? メールなら気にしなくていい、かな?」



   光'sスマホ:SNS



光<=//:珠美ちゃん、話して大丈夫?











光「……流石にこんな時間だし。明日まで待つか」







ティロンッ♪



   大丈夫ですよ! 何のお話をしましょうか! ://=>珠美



光「やったぁ!」ポチポチ



ティロンッ♪



光<=//:今日のお仕事、無事終わったんだ! それだけ伝えたくって!



   ティロンッ♪



   お疲れ様です! テレビのお仕事でしたっけ?://=>珠美



ティロンッ♪



光<=//:うん! 全国のお茶の間に勇気を届け、あわよくばアタシの名前も売って、沢山オファーしてもらうぞ! 困った時に呼んでもらいたいから!



   ティロンッ♪



   夢は大きく! 素敵な目標ですね!

   そうそう、お仕事の話を返すんですけど、珠美のプロデューサーが話していたのですが、何でも珠美と真尋さん、そして光ちゃんをユニットにしようという計画が動いてるそうです!://=>珠美



ティロンッ♪



光<=//:何だって!? それは本当かい!?



   ティロンッ♪



   武士に二言はありませぬ! どんなユニットになるか楽しみです! ://=>珠美



ティロンッ♪



光<=//:珠美ちゃんと一緒か、嬉しいな……。今日はもう寝るね。次は打ち合わせで会おう! おやすみなさい!



   ティロンッ♪



   おやすみなさい! 早寝早起きしてれば、きっと、ぜったい背が伸びますよね! ぜったい!! ://=>珠美







光「『アタシもそう思』……いかん、早寝だ早寝!」バサッ



光(新ユニット……ワクワク止まらなくって、寝られる気しないぞ……!?)ドキドキドキドキ





………………

…………

……



   LIVEロワイヤル



舞台袖



真尋「珠美ちゃん、行ける?」



珠美「まったく問題ありません! 光ちゃんは?」



光「二人に何週間もシゴいて貰ったんだ。大きな舞台だってバッチリだよ!」



真尋「元気いっぱいだねっ! ステージ全部使い切れそうっ!」



珠美「それが目的の、ステージ自体が主役みたいなダンスですからね」



光「凄い形だよなぁ。花道が二本もあって、しかも途轍もなく長い!」



真尋「真ん中のステージに珠美ちゃん、そして右へ左へ、私と光ちゃんが走りまくるっ! ちょーダイナミックっ!」



珠美「ペース遅れてないかとかポジショニングとか、珠美が指示を出しますから、見てくださいね!」



光「うん! ヒーローはみんなの所へ走っていくもの……そして、花道はお客さんの一番近く! 楽しみだっ」



真尋「うんうん! じゃあこうじゃじゃじゃーーんって!」



光「したい! やりたい! ……でも、こんなにステージが大きいのは考え物だなぁ」



真尋「どうかしたの?」





光「花道と中央が離れてて、実質的にステージが三つあるみたいな感じで……ユニットなのに三人の距離があるのがちょっとだけなー。非常時のフォローも出来ないし」



珠美「いやいや! これはこれで、三人がそれぞれの道を歩んでいる、ということで!」



光「なるほど……それに、ヒーローはいつも孤独なものだし、うん、これで寧ろいいのか!」



真尋「そっか! じゃー、そろそろっ!」



珠美「真尋さんも光ちゃんも、気合を入れて走るのです!」



光「大丈夫だっ! アタシは勝負に手抜きなんてしないよ、珠美ちゃん!」



珠美「たしかに、そうでしたね! では、よろしくお願いします!」ペコリ



光「誰にお礼をしたんだ?」



珠美「ステージにです! 剣道は地面へのお礼から始まるんですけど、それにならって、地面に対して一番深いお礼である最敬礼をするんです!」



真尋「このステージもメンバーの一員だからねっ! よろしくお願いします!」ペコリ



光「なるほど! じゃ、アタシも……よろしくお願いします!」ペコリ



珠美「では二人とも、準備はいいですね!」



光「OK! あれだけレッスンしたんだ。加速付いて、止められなくて、負ける気しないはず!」



真尋「私も全力で走るよっ! 三!」



光「二!」



珠美「一! ――えいっ!」パシィッ





ウォォォォォォォォ!!!





   ステージ上



光「軽やかに……登場っ!」



珠美「ファンのみなさんの合図でよーいドンッ、しますから! いいですねーーっ!?」



オオオオオオーーッ!



光「最高の反応だ! もち、応援してくれよなっ!」



真尋「カウントダウンの手拍子よろしくっ!」



珠美「合わせてくださいね、せーの、いちについてー!」



真尋「おっけー!」



珠美「よーい!?」





   ドォォオォオーーンッ!



真尋 光「「おおおおおーーっっ!」」タッタッタッタッタッタッタッタッ!





光(走って、歌って、そして、宙を滑るみたいに……えぇーいっ!)クルルンッ!





シュタッ♪





ウォォォォォォォォ!!!







光(今度はもう一回! 身体を張って、声を枯らして、もっと遠くに声を、勇気を届けるんだ!)







真尋「元気すぱーーくっ!」タンタンッ、シュッタタン♪





ワァァァァッ!





真尋「イェーイッ! 運動が苦手な子たちにも、走る喜びを教えてあげるんだ!」





光「おおっ! 流石は真尋さん!」





珠美「光ちゃん、もっと、もっとです!」





光「うん! 今こそ、チカラを合わせよう! みんな、アタシについてくるんだ! 手拍子お願い! せぇのっ!」





ッタンッ! ッタンッ! ッタンッ! ッタンッ!





珠美「暖まって来ましたね! もっと、もっと続かせましょう!」





真尋「おっけー! なら、まひろーだーーっしゅ!!」ダダダダダダダーッッ!





光「アタシなら……加速そーーーちっ!」ビュバッ!





オオオオオオッ!





   楽屋



真尋「――あーっ、楽しかったぁーっ!」



珠美「ステージを余すことなく使えてましたよ!」



光「観客席にもいっぱいぶつかってけたし……本当に楽しかった、うん!」



珠美「良かったですね光ちゃん!」



光「これこそアタシのやりたいステージって感じだ!」



光「……ただ……」シュン……



真尋「負けちゃったねー。うん、相手のスピード凄かったもん。さすが! ってぐらい!」



光「そう、速さが足りなかったんだ……」



光(アオリをいっぱいやりたいなら、もっと足を回さなきゃ)



真尋「ま、悔しいけど切り替え切り替えっ!」



光「ううん! アタシ、悔しさをバネにしたいから切り替えない! もっと、もっと速く走れるようにならなければ!」



珠美「そうですね! 勝負は持ち越しにして……その間に特訓しましょう光ちゃん!」



光「ありがとう、珠美ちゃん! 次は絶対勝つ!」



真尋「うーんと、無理しないでね? 全力で走る分、体を休めるのもフルパワーでっ!」



光「倒れるまでなら無理じゃないってP言ってた! ……、おほん、休憩にも全力投球ってこと?」



真尋「だーいせーいかーいっ!」



光「真尋さんもありがとう! じゃあ早速だけど、全力で休んで充電するよ!」



珠美「あ、それってつまり?」



光「……おやすみなさい!」グーッ



珠美「寝ちゃいましたーー!?」



真尋「あれだけ走ったんだもんね! 目覚ましセットして……よし、私もっ!」グーッ



珠美「真尋さんまで! ……えーい! 珠美もっ!」グーッ



スゥスゥ……スゥスゥ……



光(……もっと強いアタシになるんだ……もう、負けないぞ!)





………………

…………

……





   パーティ会場



光「一年お疲れ様、P!」



P「おお、光! 来ていたのか!」



光「アニバーサリーと聞いてこの南条光、Pの元へ駆けつけたよ!」



P「そうなのか……ところでその格好、ドレスコードはどうしたんだ?」



光「フリフリの服は持ってないしなあ。それに、私服参加アリだってあったぞ!」



P「ん、そうだったのか?」



光「うん。まぁそれに人助けと自主練するなら、身軽な方がいいからな。さっきも紙テープまみれで困ってる人がいたし!」



P「へぇ、光はいい子だなあ」



光「ありがとう! 今からアタシもみんなみたいに変身するから! ヒーローは遅れてやってくるものなんだ!」



光(……急がなきゃ。アタシが、Pの重荷になっちゃいけない!)



P「そうだな……じゃあ光、これを受け取ってくれ!」



光「こっ、これは……ガラスの沓?」



P「シンデレラにならってな、俺が魔法をかけてやる!」



光「それは熱いな、燃えてきたっ! じゃあアタシからはこれっ!」



P「これは?」



光「ふっふっふ、アタシの正義の心さ!」



P「んと……笛か?」ビリビリ



光「うん! アタシが必要になったら、何時でもそれを吹いて欲しい! 笛の鳴る方にすぐ駆けつけるからっ!」



P「なるほど……頑張ってくれよ、俺のヒーロー?」



光「うん! Pとの友情の証、確かに受け取ったよ! アタシ一人でもみんなを笑顔に出来る日まで……力を貸してほしいっ!」



………………

…………

……





   公園





光(アタシはまだ弱くて小さい! 速さも足りないし、必殺技だってない! )タッタッタッタッタッ



光(トレーナーさんは、『もう光ちゃん一人にこれ以上時間はさけません』って言ってた……ならアタシがやる! 自主トレなんかいつものことだ!)タッタッタッタッタッ



光(もっと走って! 踊って歌って! ……もっと体力! もっとリズム感!)タッタッタッタッタッ







光「……公園、着いちゃった」



光「珠美ちゃん、は、いないか」



「おいっ! 避けるか伏せろ!」







光「え、え、なに、というかどっち!? ――のあーっ!?」





ボンッ!





トッ、トットッ、トッ、コロコロコロコロ……





光「うぅー……あいたぁー……」ジンジン









晴「あー……悪ぃ。怪我ねーか?」





光「……ん、へいきへいき! アタシ頑丈だから!」シャキッ



晴「そーいう問題じゃねーんだけどなー。……ボールくれよ」



光「こう?」ボンッ



晴「お、上手上手。その調子なら大丈夫だよな?」ドカッ!



光「なぁっ!? アタシと、するの?」ボンッ



晴「相手いなくってさ、良かったら付き合ってくれねーか?」ドカッ!



光「うん! じゃ、次! せいやーっ!」ドカッ



晴「お、ナイスボールっ♪ どんどんいくぜ!」ドカッ!



光「いくぜいくぜいくぜーーっ♪」ドカッ!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



光「ふぃー……楽しかった!」



晴「たまには何時もと違うことやってみると、楽しいだろ?」



光「ボールを受け止める系のトレーニングをずっとやってみたいって思ってたんだ。ありがと、晴ちゃん!」



晴「……どういたしまして」



光「それにしてもいいシュートだったなぁ。毎日やってるのか?」



晴「そりゃそうだろ。日頃の練習が肝心だしな」



光「うんうん、やっぱそうだよね。そういうひたむきさ、カッコいいな!」



晴「別に……。あのさ光」



光「ん?」



晴「なんで公園に来たんだ?」



光「……珠美ちゃんに会いたかった、から? 毎日ここで素振りしてるらしいし」



晴「なんで疑問系なんだよ」



光「うーん、わかんない!」



晴「わかんねーのはこっちだってば。……ま、オレも似たようなもんかな」



光「どういうこと?」



晴「オレもさ、梨沙を仕事に取られてんだよ」



光「へぇー。……さみしい?」



晴「いや、そこまでじゃねーけど。仕事なら仕方ねーしな」ポンポン



光「そっかぁ。……アタシも珠美ちゃんにこんな思いさせるぐらい忙しく……ううん、人に辛い思いを強いるのはヒーロー失格だな……」ブツブツ



晴「……なぁ、やってみる気はねーか?」





光「何を?」



晴「珠美をさびしくしてやりたいんだろ?」



光「語弊はあるけど……うん。もっともっと、いっぱいいっぱいお仕事したいな!」



晴「次のユニットさ、ゲストを呼ぼうと思ってるんだ」



光「……そ、それって、オファーの話!?」



晴「ああ。光がよかったら、オレんとこのプロデューサーに言うんだけど」



光「やらせてやらせて! ビートシューターだよね!? セクシー系ってアタシ経験無いけどいいの!? レッスンいつから!? 本当にアタシでいいの!?」ガバッ



晴「わーっ、わーーっ!! 近い近い近いっての!」



光「む、ごめんなさい!」ペコリ



晴「最敬礼は大袈裟だ!」



晴(どっか子供っぽくて、だからなのか、コイツの前ではシャキっとしなきゃて気持ちにさせる感じあるよなぁ、光って)



光「ん、何か考え事か?」



晴「ああいや別に。レッスンメニューとかこっちで用意するから、スケジュール合う?」



光「うんうんやるやる! 合わせる! ありがとうね晴ちゃん!」



晴「いや、こっちこそな」



光(……ファンのみんなに会いに行ける……届けるんだ、アタシが貰った物……!)





………………

…………

……



   LIVEロワイヤル:楽屋



光「――それは酷い話だなあ」



晴「だろ? ガムくれたけど強引すぎるし」



光「まぁ、晴ちゃんはそんな強引なことをしない大人になればいいんじゃないかな。それに、信用してるんだろ?」



晴「ン……まぁな。あんなのでもオレのプロデューサーだし、アイドルの夢はコンビじゃなきゃ叶えられないしな!」



光「そうなのか?」



晴「え……そうだろ?」



光「まぁいいや。二人の仲がとってもいいってことはわかったし!」



晴「ばっ! ちげーよ!」



光「そうなのか?」



晴「……まぁ、な」



光「今の間になんか含みある?」



晴「ねーよ、別に」



光「そっかぁ」





晴「ただまぁ、アイツだってオレの話を聞いてないわけじゃないしな。カッコいい仕事とか、サッカーの仕事も取ってきてくれたもん」



光「おぉ……! 夢が叶ったワケだ!」



光(アタシも、主題歌を歌ってみせるぞ……!)



晴「選手じゃなくて応援だけどな。夢はいくつあってもいって教えてくれたし、ロリコンだけど悪い奴じゃねーから」



光「いいなぁ、それ。夢は幾つあってもいい、か!」



光「……ところで、そのろりこんって ?」



晴「へ? 光、ロリコン知らないの?」



光「サッカー詳しくなくってさ、あまりいい言葉じゃないってことしかわからないんだけど」



晴「げ、どう説明したらいい――」



バタン!



梨沙「おまたせっ!」





光「おおっ! 真打ち登場?」



梨沙「あったりー♪」



晴「ああっと。梨沙、おかえり」



梨沙「ただいま♪」



光「レッスンで合わせて以来だな。よろしく!」



梨沙「ん、光もよろしくね!」



光「…………」ジッ



梨沙「な、なによ、アタシのセクシーさに、アンタも見惚れちゃったワケ?」



光「攻めてるなーとは思う。けど、そうじゃなくって……晴ちゃんもそうだけど、けっこう絞った?」



梨沙「んっ!? ……あーえっと、今日を成功させる為に自主練したの! 当然じゃない!」



晴「あ、ああ、うん、そうだな!」



光「そっかぁ。カッコいいな、梨沙ちゃんは!」



梨沙「ふふん♪」



光「じゃ、アタシ行くね?」



晴「何処へだ?」



光「挨拶! ……それに、お仕事で一緒になるの久しぶりなんだから、お話したらどうだ?」



晴「え?」



光「アタシはあくまでゲストだもん。まず二人がいなきゃ……違う?」



晴「そうだろーけどよ」



光「じゃっ!」



バタン!



タッタッタッタッ……



晴「おいっ」



梨沙「行っちゃった」



晴「ったく……」



梨沙「……本当にやるの?」



晴「……誰かが泥をかぶってあげなきゃいけないんだよ」





   舞台裏



光「よっ、とっ、せい、やっ、と、で、回って……突き上げる!」バシュ!



光「……キマッた……!」ドヤァ



光「で、終わったらこう、遠くに届くよう、投げるみたいに大きくこう、こうで、手首をこうして……うん!」ブンブン



スタッフA「南条さーん」



光「ん、はーい!」



スタッフB「本番、スタンバイお願いしまーす」



光「連絡ありがとうございます!」



タッタッタッタッ



スタッフA「あの、やるんスか?」



スタッフB「一応指定されてるしなぁ。責任はあっちが持つし、いいんじゃない?」



   舞台袖



晴「光、いいよな」



光「うん! 目、つむっててもやれるぐらい、ステップは覚えてる!」スタタンッ♪



梨沙「アンタ、ステージ経験も少ないし、プレッシャーとか大丈夫なの?」



光「……実力がぜんぜん足りないし、お呼ばれもぜんぜんされたことないからな……無いと言えば嘘になる……」



光「だからこそ、アタシの全力で、呼んでくれた二人にお礼をさせて欲しい!」



梨沙「お礼?」



光「ううん、二人だけじゃない。ステージを設営したスタッフのみんなにも、アタシを求めて待ってるファンのみんなにも! 寝る間を惜しんでレッスンしたダンスで、全員にお礼がしたい!」



晴「梨沙、光。もう始まるぞ」



梨沙「ん、オーケー♪」



光「ゲストなのに、センターにまでしてくれたんだもん……してたまるもんか……!」



晴「せぇので行くぞ! 三!」





光「二!」





梨沙「一! ――行くわよっ!」タッ





晴「っしゃあああっっ!」タッ





光(いつも通り、そう、平常心で……最高のヒーローを見せる。練習通りにやれば、やれる! 今日こそ勝つ!)タッ







ワァァァァアァァァアッッッ!!



   ステージ上





梨沙「アタシたちのユニットにゲストの光がきてくれたわ!」



光「あぁ! いつものように正義のヒーローとして」



梨沙「ヒーロー封印してね!」



光「……えっ? ふ、封印?」キョロキョロ



晴「ミュージックスタート!」



光「え、え? 二人は何を言ってるんだ?」





〜〜♪



晴「――♪」タンタタタスタタタンッ♪



梨沙「――♪」スタタタタンタンッ♪



光「この音楽……あ、アタシ聞いてないっ!」



晴「ほら、光も!」



光「セトリ変わったのか? 予定と違……」



光(いやそれより! 二人のダンスパターンが、予定とぜんぜん違う! アタシがレッスンしてきた奴だとぶつかる! それに、アタシの今の衣装マフラー付きだ!)



梨沙「――♪」タンタタタンッ



光(この音楽……アイドルらしい王道なやつ。これだと、基礎練と同じことしか出来ない。……何なんだ? ドッキリ?)



梨沙「早く光も踊りなさい!」



光(振り付けも知らない、練習もしてないダンスを、見様見真似で、しかもそれを真似するんじゃなく、センターらしく合わせてアレンジしろってこと?)



晴「――イェーイッ!」シュタンッ!



ウォォォォォ!



光(もう始まってる。見られてる……やるしか、ないんだ!)



光「――てぇぇいっ!」クルッ、スタタンッ♪



ワアアアアアァッ!





   楽屋



光「ごめん、ドッキリしてるってことに気付けなくて」



梨沙「…………」



晴「光」



光「へたっぴなダンスで、足引っ張っちゃったたろ?」



晴「光、そうじゃない」



光「察しの悪いアタシのせいで……アッハッハ、負けたらごめんね、せっかくオファーで呼んでもらったのに」



晴「そうじゃないんだ、光、そうじゃない」



光「……じゃあ、なんなんだ。二人は何が目的だったんだ?」



梨沙「電光掲示板を見て」



光「え?」







光「……勝った? アレで? アタシ、あんなのだった、のに?」



晴「…………」



光「あんな見苦しい奴で? レッスンもしてない、ぶっつけ本番のいつもと違う奴で? アタシはアイドル? ヒーローのアタシは……」



晴「ヒーローはファンに手をふれない。ファンが求めてるのはヒーローの光だよ」



光「なんで、アレがいいんだ? ミスがいいのか? アタシの今までは届いてない?」



光「……アタシがしてきたのは……中途半端なヒーローごっこだったの……?」



梨沙「アタシたちが目指すのはトップアイドルでしょ。ごっこじゃ……届かないわよ」



光「……スタッフのみんなに挨拶してくる。先に帰らせて欲しい。二人とも、おつかれ様」



キィ……パタン



梨沙「……ねぇ晴、光がヘコんでたけど、これで良かったのかな……?」



晴「いいんだよ梨沙。光の為にも、オレたちがアイドルらしくいなきゃ」



梨沙「けど」



晴「誰かが言ってあげなきゃいけなかったんだ。……協力してくれるか?」



梨沙「……アンタが言うから、してあげるのよ?」





………………

…………

………



   事務所:七月七日



光(……なんで勝てたんだろう。ヒーローじゃダメ、なのかな。今までのアタシってなんだったんだろう)



光(ファンのみんなは、ヒーローは、アタシなんか、いらないのかな)



光(アタシ、夢と希望を与えるヒーロー、だからアイドルのハズなのに)



光(……スタッフのみんなも、なんで言ってくれなかったんだろ。いや、言うわけないか。アタシを騙すのが目的なんだもん、ふふ、みんな真面目だな)



光「聞かなかった、確かめなかったアタシが悪い、か」



光(……晶葉は舞台にファッションショーの予定、珠美ちゃんはライブに水着のお仕事、心さんはオファーバンバン来てるし、千枝ちゃんはライブにウェディングドレスって、沢山お仕事貰ってる……アタシは?)



光(Pも頑張ってるハズなのに。沢山頑張ってるハズなのに。アタシをトップに育てようって頑張ってるハズなのに。なのに、なのに?)



光(……Pが頑張ってもダメ……やっぱ、背の低い女子ってダメなんだ……アタシが弱いから、弱くて小さいから、力が足りないから)



光(……ううん、珠美ちゃんも晴ちゃんも、背が低くてもダメじゃない。ダメなのはアタシだ。アタシ、やっぱり、ダメだ。ダメなんだ)



光「……うおおっ!」ガブッ



光「いったぁぁぁ!!」



光「……ヒーローは挫けない。弱い自分に打ち勝たないと、アタシはなりたい自分になれない……!」





光(……アタシを待つ人っているのか。ヒーローじゃないアタシの方がいいから勝てたんだ)



光(アタシじゃなくてもいいってことだ。じゃあ、アタシを必要としてくれる人って誰だ?)



光「……あぐっ! あがっ、あがっ!」ガブッガブガブッ



光「……Pの頑張りを無駄には出来ない。アタシ一人の問題じゃない、諦めたらダメだから、諦めたらダメなんだ。Pがアタシをみんなの味方にしたいと思ってるうちは、アタシは折れない……!」



光「……短冊、飾らなきゃ」シュルシュル







  『



   こんな時、ヒーローだったらなんて書くんだ……!

        南条光

  』







光「……これでよし、っと」キュッ



光「ホワイトボードの隣に、願い事をかける笹を置いてるのって、たぶんそういうこと、だよな」



光(……アタシのとこ、明日が何時だってブランクだ)



光(ホワイトボードって言えば、事務所からのオファーって、ちひろさん経由でここのフォルダに保管されるんだよな) ・



光(事務所が大きいと、営業以外でも社内で企画をやりくりしたりするんだなぁ)



光(……そう言えば、今日の確認をしてないな)



光「…………」ゴソゴソ



光「一枚、二枚、さんまーい」ペラペラ



光「はぁ……流石に無いかぁ……」





光「あった……!?」



光「うんほっふぇつねりゅといひゃい。夢じゃなひ」ムギュムギュ



光「……アタシへのオファー!?」



ガサガサ



ビリビリ



光「……『怪盗公演・美しき追跡者(仮題)』……アタシ、刑事とか?」





光「そうか、刑事か……うん、市民を守るヒーロー! この女、刑事でアイドル! いいじゃん、いいじゃん凄いじゃん!」ビリビリ



光「役名、……『大泥棒』?」



光「アタシが、……泥棒?」



光「与えるヒーローじゃなく、奪う泥棒? オファーだから、アタシじゃなきゃダメ、ってこと?」



光「……アタシは、ヒーローだって評価されてない……?」



光「もしかして、またみんなしてアタシを騙してる?」



光「……アハハ、やっぱり背の低い女子はダメだった……ううん、アタシがダメだったんだ、アタシはダメなんだ、アッハッハ……ハハッ」







カブッガブッガブッ



光「誰もがあきらめかけるときも笑顔を忘れない……それがアイドルっ!」パチンッ!



光「アッハッハッ! あは、あははは!」



光「笑う門には福来たる! 笑えば絶対、いいこと起きる!」



光「……貰ったんだ。くれてくれる人はいた。なら、やるんだ」



光(それに、アイドルはお仕事を断れないもんな……!)



………………

…………

……



『何故、アタシなんですか? 麗奈の方が適任だって、おほん、だと思うんですが!』



『決定事項だ』



『演技するのは……アタシなのに……?』



『納得してもらう必要はない』



『と、途中で正義に目覚めて義賊になったり!』



『脚本は先程渡した通りだ』



『指名手配されてる大犯罪者……アタシに、……やれる、と?』



『君がオファーされたことの意味を、君でないといけないと評価された意味を考え、ただ理解すればいい。最大の成果を期待する』



『……はいっ!』







………………

…………

……



  事務所



光(……そう言えば麗奈の演じたマジカルガールって、フルボッコちゃんって名前でスピンオフしたんだっけ。アタシよりよっぽどヒーローしてるな)



光(しかも、アタシと違って、公演にもよく呼ばれてる。……アタシは、今回が初参加で、初舞台。下積みすらない)



光(アタシが呼ばれた意味? 往年の名悪役みたくがおーっと……いや、ごっこじゃダメなんだごっこじゃ。じゃあ、なんだ?)





梨沙「――かるったら、ひーかーるー!」





光「わ、わぁっ!? 敵か!?」



梨沙「敵じゃないわよ! 早く気づきなさいよ……」



梨沙「それより、なに黙って考え込んでるのよ。一人前に役作りってワケ?」



若葉「光ちゃんの役はたしか、根っから悪の大泥棒ですよね〜」



梨沙「あ……アンタもしかして、悪役が不満とか言うんじゃないでしょうね?」



光「そ、そんなことは……」



光(……愚痴くらい、いいよね?)



光「……アタシはヒーローだから、悪役っていうのはどうしても」



梨沙「バカね、そんなことで悩んでるの? アタシたちはプロのアイドルで、今回のオファーは仕事で役もらってるのよ? それが不服なの?」



光「それは……そうなんだが……アタシはヒーローだし……」



梨沙「だーかーら! アンタはヒーローじゃなくアイドルだってば! 仕事選んでんじゃないわよ! アタシなんか馬ロケと武将やったのよ!」



光(あ、いいなぁ。馬も武将も格好いい。アタシもやりたい)



千夏「梨沙ちゃん、そんなに責めなくても。そうね……自分の好きな種類しか選ばなかったら、新しいお仕事はもらえないわ」



若葉「だ、だからムリしてブラックコーヒーを飲むお仕事も……ガマンです〜」



梨沙「はぁ……それに、悪をわかってこその正義なんじゃないの? 正義に詳しい光なら、悪役だって演じられるんじゃないの?」



光「そう、かな」



梨沙「そうとなれば腹くくりなさいっ! セクシー怪盗のアタシと大泥棒の光、どっちが名演技か勝負よ!」



光「勝負と聞いたら……負けてられないな」



若葉「ちょっとぉ〜二人だけで盛り上がらないでください! 主役は私たち刑事ですからぁ! 正義は勝つんです〜!」



千夏「ふふふ、楽しいお芝居になりそうだわ。それじゃあ始めましょうか。めくるめく、正義と悪――」





















千夏「――光と闇の怪盗物語を」



光(千夏さん、ここオフィスなのに、もう舞台に立ってるみたい……いや、それぐらいじゃなきゃ、お芝居はやれないか!)





………………

…………

……



  数週間後



  舞台上







光「『ちょっとはやりがいのある相手がいたみたいだな!』」



若葉「『そういうキミこそ……私の逮捕術を受けて平然としているなんてな。リサに次いで二人目だ』」



千夏「『ワカバの手錠をラクラクすり抜けるなんて、大泥棒の名は伊達じゃないと言うわけね』」



光「『リサ……怪盗リサか。人の物を平然と盗んでいく悪……』……って……」



光(し、しまった。アタシも今は悪役だった……っ、本番なのに、やるしかないのに、次のセリフ、次のセリフっ……)







光(あれ、あれ、あれ? 台本何周した? なんで声がでない? セリフが浮かばない? みんなの、前なのに……、みんなって誰だ)



ざわざわざわざわ……  ザワザワ……





     ザワ……ザワザワ……



            ざわざわざわざわ……



   「おい、どーしたんだ?」



  ザワザワザワ……



「タメ長くない? 歌舞伎?」



     ザワ……ザワザワ……



   「ここの公演、何時でもヘンだろ?」



光(アタシを見てくれてる人なんかいるのか? いや、客席にいて、Pだって見てて、どうしようどよめいてる、言わなきゃみんなに伝わらない、、声、セリフ、セリフ、セリフ、ああ心臓うるさいっ、セリフセリフ、次、次、セリフ、次は……)



千夏「光ちゃん、しっかりしなさい! これは仕事。あなたは立派なアイドルでしょう?」ヒソッ



光「か、かい……『怪盗リサは一流の怪盗。つまり、リサのアジトにはお宝がいっぱい、ってわけさ!』」



若葉(うんうん、いい調子です〜)



若葉「『まさか……貴様っ!』」



光「『ハハハッ! 正解。アイツのアジト、トラレーン城にある財宝……すべてこのヒカル様がいただくまでだ!』」



千夏(すごい棒読みだけど……とりあえず話を進めないと……)



千夏「『トラレーン城? それって』」



光「『ヒントは与えたからなっ! さらばだ諸君! ハァーッハッハッハハッハ! ハーッハッハッハッハ!』」



若葉「『くそ……。チナツ、ヒカルが言った{トラレーン城}について調べてくれ!』」



若葉「光ちゃん、なんとか役をこなせましたね〜」ヒソヒソ



千夏「えぇ。でも、まだ少し心配だわ……私たちでサポートしましょう」ボソボソ



千夏「『ええ。でもたしか、トラレーン城はかの有名なマトバ家の……』」



  楽屋



若葉「皆さん、おつかれさまです〜。中盤ですけど、まだまだ気を抜かずに頑張りましょー!」



千夏「お疲れさま。梨沙ちゃんも若葉ちゃんも光ちゃんもみんないい演技をしてたわ」



光「そんな、アタシ、セリフをトチっちゃったし。……ちゃんと演じられてないんだ……」



梨沙「なにヘコんでんのよっ! ヒーローはクヨクヨしてる暇なんてないんでしょ!」



光「それは……」・



バタン



若葉「あっ、柑奈ちゃんに音葉ちゃん〜」



音葉「遅くなってしまいましたが……中盤からは、私たちも合流します……盛り上がるように尽力を……」



千夏「これでようやく役者がそろった……というところね」



柑奈「笑顔で前向きに行きましょう! 今回は怪盗モノなんですよね! いろんな役に挑戦できるから、やっぱり楽しみで!」



若葉「あぁ、海賊公演にも出演してましたねー! あれは名演でしたー。柑奈ちゃんの演技、参考にさせてもらったんですよー♪」



柑奈「ホント? へへ、嬉しいな!」



梨沙「よろしくね、音葉! 磨きをかけた演技で主役の座を奪っちゃいましょ!」



若葉「主役は私たち刑事ですよ〜! 梨沙ちゃんたちにはぜったい譲りませんからー!」



柑奈「私も大泥棒ヒカルのパートナーとして、しっかりサポートしますよ! 光ちゃん、一緒にがんばりましょう!」



光「う、うん……!」



千夏「あらあら、みんなやる気ね。私もただの添え物になるつもりはないから、負けてられないわ」



音葉「……では、気を落ち着けられるよう、お茶でもお淹れしましょうか」



若葉「なら……コーヒーを、ブラックで……というか手伝います! オトナだから!」





柑奈「……光ちゃん、何か飲む? 光ちゃんもブラックかな?」



光「あ、悪役は……ブラックか……?」



柑奈「…………」



光「わからないんだ、アタシ。ヒーローじゃない、悪役ってどうしたらいいのか」



柑奈「光ちゃん、役に悩んでるの?」



光「あ、うん……」



柑奈「そっか。私の信条もラブ&ピースなんだけど……以前の公演で海賊役が来たときには悩んだな〜!」



光「アタシと、……同じか!? どう解決した!?」



柑奈「それは……」



光「……それは」ゴクッ



柑奈「光ちゃん自身が盗んで手に入れて! 大泥棒として、ね!」



柑奈(いつもの自分と違うことを楽しむこと、新しい自分を見つけること……頑張ってください!)



光(……アタシ、バカだな。一瞬、ここがこうとか懇切丁寧に教えてもらえるって思っちゃった。休憩はさんだらすぐ本番なのに)



光(甘えすぎだ。自分の問題なんだし)



光(……似たことで悩んでる人、いたんだ。そんなこと、って言わないで聞いてくれる人なんていたんだ)



光(人が悩んでたのがこんなにも嬉しいなんて、本格的にヒーロー失格だな、アタシ)



光(失敗したらみんなに迷惑がかかる。アタシの責任だ、アタシが一人でやるのが当然だ)



千夏「それにしても、今回のお芝居はみんなインパクトある役柄ね」



梨沙「アタシに言わせればまだ足りないわ。このセクシーさを印象づける……そう! キメ台詞とか欲しかったわね!」



千夏「たとえば?」



梨沙「『出会った瞬間アナタはもう盗まれているわ! このアタシに……ハートをね♪』」キュピーン



音葉「お見事です……リサお嬢様」



光「ならアタシだって! 『悪ではない! オマエとは違う別の正義だッ!』」バァーン!



柑奈「ラブ&ラブですヒカル様ー♪」



梨沙「ちょっと光! なんでそっちが主人公ぽいのよ!」



光「んんー?」ニヤー



光(……ヒカルが、この台詞に筋通る奴だったらやりやすいのになあ。他人様のことを考えられない、ただのお宝大好き人間だもん)



光(……お宝が好きなだけ? ん、これは?)



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――・



   舞台



柑奈「『私の……負けですか……」』



若葉「『ああ。そしてお前が尊敬するヒカルも、この私がすぐに逮捕してやろう!」』







光(こうやって、キャラクターたちを見てると……カンナにも、リサにも、オトハにも事情があってやってるんだな……ヒカルはお宝が好きなだけだ)







柑奈「『ヒカル様はそんなヘマはしません。だって、私が想いを寄せる素晴らしいお人……」』



梨沙「『フンッ、何とでも言いなさい! ヒカルはこのアタシが、きっちり捕まえてあげるんだからっ!」』









光(そっか、それだけなんだ。そもそも自分が間違ってるとか悪いことしてるとか、思ってないんだ。……ならっ)









光「『そう簡単にいくかな?」』



梨沙「『その声は……!」』



光「『とうっ! ……待たせたな!」』



柑奈「『ヒカル様っ!」』



光「『おいリサ、ワカバ! アタシの相棒と肖像画を返してもらおうか!」』バァーン



光(よし、決まった!)



梨沙「『お断りするわ! そもそもその肖像画はアタシのもの……アンタにだけは絶対渡さない!」』



光(きっとこれが、アタシの呼ばれた意味……自分が間違ってないと信じて、むしろ立派で格好いいぐらいで丁度いい! はず!)



光(ダークヒーローって考えれば……これは、これでアリ!)



梨沙(光、イイカンジ♪ ……ちょっとヒーローじみてるけど)



光「『はっはっは! まさか、あの時のことをまだ恨んでいるのか?」』 ・・ニヤー



光(どう喋れば梨沙ちゃんが怒るかは、楽屋でだいたいわかった。その通りにやる!)



梨沙「『当然でしょ! アンタは……アタシのパパを傷つけた張本人なんだから!」』



梨沙(そうよ、光……その調子! アンタはやればできるんだから!)



柑奈「『ハッ!いつまでもネチネチと……心の狭い人ですね」』



柑奈(梨沙ちゃんと光ちゃん、素敵な演技です♪ 私も負けてられません!)



梨沙「『アンタは黙ってて!」』



光「『それで? アタシとやろうってのか? その細腕で? ハハハッ、なかなか愉快だな!」』ニヤー



梨沙「『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ! もう我慢できない! 勝負よ、ヒカル!」』



梨沙(もう心配ないわね!)





梨沙( もうっ……手間かけさせないでよね♪) ・・



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――・



  楽屋



光「みんな、おつかれーっ!!」



柑奈「お疲れさまでしたー! ……ピース!」



千夏「……元気ね、二人とも。特に光ちゃん」



光「聞いてくれみんな!アタシ目覚めたんだよ!悪に!いや悪はいけないんだいけないんだけどあ」ベラベラベラ ベラベラベラ ベラベラベラ ベラベラベラ



梨沙「アンタ、ちょっと落ち着きなさいよ……握手会の五秒間でアタシとの将来を語り出すアタシのファンの人みたいよ……」



光「あっ、ごめんごめん!」



光(梨沙ちゃんはアタシの話に興味が無いんだった。いけない)



柑奈「そうそう、悪にも愛があるって話、公演のあいだずっとしてたんですよね!」



若葉「ふふっ、光ちゃん、なんだか晴れやかな顔してますねー」



音葉「きっと、気づいた……と、いうことなのでしょう……」



千夏「『罪を憎んで人を憎まず』……ってことかしらね。まぁ、中学生くらいじゃなかなか難しくてわからないことよね」



柑奈「光ちゃん、自分で答えを手に入れましたね! 私もそんな光ちゃんとお芝居できて楽しかったです!」



梨沙「なによ、結局なんか一人で成長しちゃってさ! 悩んでるところに声かけたアタシがバカみたいじゃない!」



千夏「あら、梨沙ちゃん……さびしい?」



梨沙「そ、そんなわけないでしょ! だいたい、仕事選んでたやつが一個成長したくらいで……」



千夏「それなんだけど……私たちがお仕事を選ぶなんてこと、出来ないんじゃない? プロデューサーさんが過保護だったんじゃないかしら」



柑奈「愛は時に盲目になって、人を縛り付けてしまうものなんですよ!」



音葉「大切なものを手元に置いて愛でていたいのは宝と同じ……」



梨沙「でも、アタシたちはアイドルだし。アタシはパパのものだけど、アタシはファンのみんなの梨沙でもあるし!」





梨沙「……ま、そんなことどうでもいいわ! 光〜! 前回は帰ったらしいけど、今回は打ち上げ行くわよ〜!」



光「あのさ梨沙ちゃん、無理はしないで?」



梨沙「無理? 無理ってなんの話よ」



光「アタシと話してる時、ずっと怒ってるから……嫌なのに無理して話さないで欲しいんだ。もうお仕事も終わったし」



梨沙「はぁ!? せっかく声かけてあげたのに何様のつもり!?」



光「ほら、また怒っ……」



光「……ううん、何でもない! やっぱり参加させて!」ニコッ



梨沙「フンッ、いい顔で笑うようになったじゃない。ま、アタシに比べればまだまだだけどね♪」



若葉「あ〜! みんな〜! 食べ過ぎは逮捕ですよ〜!」



柑奈「ふふっ。友情もまた、一つの愛の形ですね!」



千夏「やれやれね。でも本当に楽しい公演だったわ。……もしかしたら、仲間との時間が、私たちにとっての宝になったのかも」



音葉「えぇ……。そして、ファンのみなさんからの言葉もまた、宝なのでしょう……決して奪われることも、失われることもない宝……」





………………

…………

……



九月十三日



光「で、アタシを呼んだってことは、もしかしてお仕事決まったのか!?」



P「いや、そうじゃなくてさ……」



光「? じゃあなんなんだ?」



P「光! 誕生日おめでとう!」



光「へ? ……ありがとう、P! アタシの誕生日を祝ってくれるなんて、予測してなかった!さすがプロデューサーだな!」



P「今日は特別な日だろ? 光のイメージに合う仕事をもっと探してくるからな!」



光「困難を乗り越えて、夢と希望と勇気をファンに届けるお仕事を沢山、色々やりたいな!」



P「次はマフラーとベルトと、そうだな剣も持って!」



光「これからも、Pの正義に燃えるプロデュースにアタシも応えてく!



P「頑張れよ、俺のヒーロー!」



光「ステージには、アタシを待つ人々がいる! アタシはいつまでも、そんな人たちを守っていきたい! P、一緒に伝説を作ろう! ……あ、今何時だ?」



P「えっと……」



光「えっと、ブレスレット、じゃなくて時計時計……よし、そろそろか!」タッ



P「どうしたんだ?」



光「お祝い、後でね! それじゃっ!」タッタッタッタッ……



P「おーい……」



P「……何時だってひたむきで、真っ直ぐで、本当に光はいい子だなぁ」







   廊下



光(もしかしたら、だけど……ファンのみんなが求めてるのは、ヒーローでも、かと言ってアイドルでもないのかもしれない)



光(本当に欲されてるのは、アタシなのかも。格好つけのアタシも、そうじゃないアタシも、全部が必要なんだろう!)



光「ヒーローに、アイドルに必要な色んな経験……それはアタシが探さないとな。また約束したんだ」



光「自分の実力を伸ばすのも見つけるのも、他人じゃなくて自分がやらなきゃ、な。……Pだって忙しいんだし」



光(プロデューサーとアイドルは助け合い。なら、Pのやれないことはアタシがやるのは、当然のこと、だよな)



光(早く強くなって、すぐ離れるから。申し訳ないけど、それまで待っててね、P)





光「……けど……」



ピラッ



つ[オーディション『セクシーでかわいいどうぶつコスプレショー』の案内]



光「……魔法はない。けど、アタシには勇気がある……。そしてアタシなら、どんな戦いだって勝利できるはず……やれる、はず……!」ワナワナ





おわり



17:30│南条光 
相互RSS
Twitter
更新情報をつぶやきます。
記事検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: