2015年12月10日

肇「最初で最後の出来事」

モバマスSS



空想がちな肇ちゃんとプロデューサーとの純愛話です



書き溜めた文を分けて投稿しますので、よろしくお願いします





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1448869710



縁側で一人ぼんやりいる静かな夜





「起きてこないかな…?」







ぽつりと呟いても響かないなんて久しぶり。







縁側横の畳の部屋で寝ているプロデューサー





今は、大切な人。





──さんと実家で過ごす夜も何度目かな?





オフだからって──さんと一緒に実家へ来て、

当たり前のように上がって。





両親もおじいちゃんも──さんのこと、すっかり気に入ってた







たまに一人でお仕事へ行くこともあるけど、気付いたら──さんが見ている





真剣な表情で見守ってくれて安心するし、何より嬉しい。





終わって声掛けたら褒めてくれて。



たまに『ぼーっとしてた』『見とれてた』

なんて言って困る事もあったけど…。







──さんと会わないオフもあるけど、瑛梨華ちゃん悠貴ちゃんと買い物行ったりするし。





作務衣着て陶工する時はおじいちゃんがいて、釣りに行くのも一人じゃないし…







私が一人でいるのって本当に久しぶり………。



腕を枕にして寝転ぶけど、慣れない姿勢だからちょっと痛い





もう夜だし寝ればいいと思う



でも何だかもやもやとしてて………







このまま寝ちゃうのは惜しく思える…………







…すぅ………













暖かい………





毛布…? 枕…?





寝ちゃってたのかな?



ゆっくり目を開けて







毛布が掛かっていて、枕代わりの太もも





この温もりは、──さんだ…。



「いつから、居ましたか?」





「! 起きたのか



ほんの数分前だな。



目が覚めたら隣に肇いなくて、

目の前の縁側で横になってる肇がいたから急いで毛布をと…」





「やっぱり寝かけてたんだ。



ありがとうございます…♪」





優しくてきゅんとする…







「…一人で考え事?」





「そうですね。いつも誰かといるから、一人で思い更けてました」





「そっか…。肇はずっと誰かといるもんな」



髪に沿ってゆっくり頭を撫でてくれるのは嬉しいけど…

まだ慣れなくて恥ずかしい





「もう少しいるか…?」





「………。」コクリ





「………。」





一人で思い更けている時には無い暖かみ





私の気分を察してくれて、静かに寄り添ってくれる





この空気が、会話のない二人きりの時間が好き…。



さっきは気付かなかったけど、



実家の縁側で寝転ぶと、夜空はこんなに綺麗に見れるんだ





暗い夜空を眺めてると、星々に照らされてたあの日を思い出す…









大舞台に憧れ、そんなイメージを重ねるように歌い、踊り…。





いつかの夢では綺麗な空に華やかな衣装を纏い、夢でないような



いつか照らされた中でも一番輝きたい!そんな思いも抱き…。





撮影で桜に思い馳せていた時も



月光と夜桜の風情に負けないくらい美しく輝く…



強い決心を持つと自然と不安や緊張が無くなり





初めて立った大舞台

自分のイメージした姿に辿り着けたと思うと心が踊って…!



一方で新しいイメージや未知のときめきを感じて。



まだこの先にある、私にしか分からない色を と思い…。





再び夜空の下に舞い、あの星々に照らされた頃を思うと景色が違って見える



夜風に委ね、舞い躍る…不思議な感覚



色んなことを知ったからこそ見える、出来るんだと。





新たな大舞台



自分を磨いてばかりで気付かなかった大切さを、ファンの歓声で気付かされ



"肇"って大きな声援を聞いた時には、涙が出そうだった…







長い日々でも本当にあっという間



色々と充実して、アイドルを頑張って本当に良かった…。





だからかな?





──さんへの…



想いや気持ちがずっとあるのも…。







はぐれたくないから、でも手を繋いでと言う時には気持ちを隠して言い





両親にも──さんをちゃんと紹介したくて実家に招き





また来年も、再来年も…一緒に夜桜を見たい

初めて想いをぶつけ





おじいちゃんが──さんを認めてくれてすごく安堵して





ほんの少しの時間でも、二人きりになれたエレベーターの中





かわいい だなんて言われて、言葉に詰まったり





ペアカップ作ろうと気合い入れたら、形作り失敗しちゃって





ちょっと強引に誘って一緒に泥にまみれ





お仕事を忘れるくらい、温泉街を──さんと歩き回りはしゃいで…







このまま、本当の気持ちを仕舞っているのも良いかなって思ってた





けど、





もう迷いたくない。





私をずっと支えてくれた大切な…







ぎゅっ







「いててっ!」





「あっ…!ごめんなさい…」





──さんの太もも握りつねっちゃった…





「急にどしたんよ…



今のは痛いって……」





「思い更けてたら…その……」





「よっぽどの事なんか…。

別に思い詰めなくてもいいよ。



腫れたり皮剥けた訳じゃないし」



けろっとした顔で笑ってくれて。





やっぱり口に出さなきゃ…考えても進めない…!





「はぁ……ふーっ…」





「………?」





私の小さな深呼吸に反応して、──さんも一呼吸







「あの、一つ気付いたことがあるんです。





大切なことを。





話してもいいですか?」





「ああ。そのことで思い更けてたなら…



聞かせてほしいな。」





真剣な眼差し、でも少し微笑んで



私の話を聞いてくれるときは、いつもこの表情





今夜は、今までで一番素敵な表情をしてる





「ふふっ………。





『ひとつのものに集中すると、どうしても視野が狭くなります。



この視界の広さが、アイドルには必要なんですね、──さん』







都会の夜風に身を委ねたあの日…



私が言った言葉です。

覚えていますか?」







「んー……言ってた気がする…」





「ほ、ほら…!

二人で乗ったエレベーターでの事です!」





「…ああ確かに、



そんな感じの言ってたな…」







「………」ぷく





「ごめん…。」





「…ふふっ。



あの日の私も、ふくれた顔してましたね」





お互いくすりと笑っちゃった





「ええと、話を戻しますね…」



「よし、改めてな」





さっきと変わらず真剣な眼差しで見てくれて、

やっぱり──さんに委ねて良かったって思う…。





「それを知ったのは"あなたの"言葉からでした。





じゃあ、アイドル以外はどうなのでしょう?





陶芸においても、

釣りを嗜む時も、

通ずるものがありました。







備前焼だけでなく、色んな陶器を実際に見て触って…。



色んなところに行けたからこそ出会えた陶器も沢山あって



作り手の感覚や気持ちが直に伝わり、陶芸家として心に来るものがありました…!





初めて、"あなたと"釣りに行ったことも…



一人かおじいちゃんとしか行ったことなかったから、何だか新鮮で嬉しくて。





昔の自分では夢物語だった事が、気付けば手の届くところにある…



アイドルを通じて『ひとつのもの』を少しずつ、視野を広げることが出来ました。





でも。





そのアイドルも





『ひとつのもの』



かなって思うようにもなりました。





そう思うようになったきっかけ…」





両手で──さんの手を包むように…





ぎゅっ





と…







「"あなたを"…!



──さんを好きになったから…!」







少し驚いた顔だったけど、目を瞑り迷わず







唇を交わして











────











「ん…………はぁ…。」





大胆…すぎたかな?



押し倒しちゃった





──さんが床に手を付いて肘から顔と、ゆっくり倒れてる感覚はあった





…私を守ってくれるように。





目を開けると動揺し硬直してる──さん



こんなに息荒くするんだ…









ダッダッタッ



「何か落ちたんか?」





「!?」



あっ、実家だからおじいちゃんいるの忘れてた



「──さっ…!んっ」



咄嗟に──さんが私を抱きしめ唇を奪って隣の畳部屋に転がって…







ボフッ





布団に戻ったけど急な出来事で…!?



とっ、とにかく落ち着かないと…!





スタスタ



「………起きとるんか?」







「スゥ………」





「………。」ドキドキ









「………んんー…



玄関か…?」





スタスタ…











おじいちゃんが去っても、──さんに背を向けたまま



さっきのことで振り向けない。





寝ちゃった のかな………?





「…お互い様か。」





「! …ごめんなさい。」





反射的に言っちゃった…







「謝る必要ないよ…



肇からするなんて思いもしなかったから、その…な。」





「──さんも急なことで気構えられなかったし、お互い様ですよね…」





「それもあるけど…



さっき、肇が息ぴったり転がってくれて助かった



毛布と一緒にしがみ付いてくれて、畳の方に体重かけてな」





「床に当たったら響いちゃうと咄嗟にしただけですし。



畳へ体重かけた後は──さんに委ねてましたから…」



あんなことは初めてだったし、委ねた後は頭真っ白







「肇は…キスしたの怒ってる…?」





「そんなことありません。



でも…情に浸れなかったのが残念です」





「思い付きで動いたからな…



舌噛んだりしたら困るしああするしか」







「…ありがとうございます。」



「あ、あぁ……」



もう振り向いても大丈夫



──さんと改めて話してたら緊張しなくなったし





ゴロン





「ねぇ…。



さっきの続きですけど…」





「ああ、そうだったな



…続きを聞かせてほしい。」





「その続きは、まだ夢なんです。」





「夢?」





「はい…。



今までは、交互に手を引いて進んできた道なんです



でも、これからはお互いに手を取り合って進んでいきたい。





"あなたと"夢を見たい、叶えたいから…







これからも、一緒にいてもらえませんか?」







私がどんな笑顔に見えたのかは"あなたに"しか分からないけど、





一番の笑顔が出来たかな。





「肇がそうしたいなら…添い遂げるよ」





「ありがとう…ふふっ………」







面と向かって言えて、言われ





委ねるようにゆっくり目を瞑り





心は温かくなり、体は徐々に熱くなってきて







体が何か暖かいものに包まれる感覚







これは、





最初で最後の出来事





だから忘れないでいよう…









『私の夢は、あなたと夢をかなえること!



きっと、そうなんだって』







想いを重ねることが出来た今、







"あなたを"私の夢へ誘いましょう…………













08:30│藤原肇 
相互RSS
Twitter
更新情報をつぶやきます。
記事検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: