2015年12月16日

渋谷凛「クリスマスプレゼントの定番って、なんだと思う?」

P「急にどうしたんだ」



凛「別に、深い意味はないよ」



P「そうだな……」





凛「プロデューサーが思ってる答えでいいから」



P「うーん」



P「夢見すぎかもしれないけど、手編みのマフラーとか手袋とかもらえるとうれしいかな」



凛「ふーん。そうなんだ」





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P「(なんてやり取りがあったのが4日前)」



凛「………」アミアミ



P「(あの日以降、凛は空いた時間に黙々と編み物を続けている)」



P「(他のアイドルとのおしゃべりもそこそこに、熱心に編み編みしている)」



凛「……んー。これ、おかしくないよね……」ジーー





P「(俺は世の鈍感男達とは違う。だからわかる)」



P「(凛があれを誰のために編んでいるのか!)」





P「おーい、凛」



凛「なに? プロデューサー」



P「この前からずっと、一生懸命編んでるな。それ」



凛「うん」



P「この時期にということは……ひょっとして、誰かへのクリスマスプレゼントか?」



凛「そうだよ。クリスマス当日までに、余裕をもって仕上げておきたくて」



P「なるほどなー。そっかークリスマスプレゼントかー。凛から手編みの贈り物をもらえる奴は幸せ者に違いないなー」ニヤニヤ



凛「そ、そうかな……」



P「当たり前だ。凛みたいなかわいい子からプレゼントされるんだぞ? うれしいに決まってるさ」



凛「かわいいって……まあ、喜んでもらえたらいいけど」



P「心配するなって!」



凛「喜んでくれるかな。ハナコ」



P「ああ、きっとハナコは喜ぶ………ハナコ?」





P「えっ」



凛「えっ」





P「ハナコ?」



凛「そうだけど……あ、ハナコって私の犬の名前だよ」



P「いや、それは知ってるけど」



P「……ハナコにあげるのか?」



凛「うん、マフラーをあげるんだ。編み物自体初挑戦なんだけど、やっぱり難しいね」



P「そ、そうなのか。そうか、ハナコか。凛は愛犬家だな、あはは」



凛「大事な飼い犬だからね」



P「だよな」





P「ところで、俺には?」



凛「………」





凛「え。プロデューサー、プレゼントいるの?」



P「いるよ! なんでいらないと思うんだよ」



凛「だってもう大人だし……この前飛鳥と一緒に『日本のクリスマスのスタイルに意味はあるのか』って熱く語り合ってたし」



P「いや、確かに世の中のカップルへの妬みからそんな話をした記憶はあるけどさ……あるけどさぁ」



P「この前聞いてきたじゃん。クリスマスプレゼントの定番はなにって」



凛「深い意味はないって言ったじゃん」



P「照れ隠しだと思うじゃん」



凛「ジャンバルジャン」



P「ああ……」ガッカリ



凛「……プロデューサーってさ、基本は頼れる人なのにテンションの落差激しいよね」



P「それだけ期待してたんだよ……」



凛「別に私からもらえなくても、まゆとかからもらえると思うよ。心のこもったプレゼント」



P「もちろんまゆからのプレゼントもうれしいが、凛からのプレゼントも欲しかった」



P「人間の欲望に限りはないんだ」



凛「大変だね」



P「お前もいつか嵌るだろう、強欲の渦に」



凛「気をつけるよ」



P「なあ。実はそのマフラー、本当は俺へのものだったりしない?」



凛「こんな細いマフラー、いるの?」



P「いいんだよ、俺首短いから」



凛「別に短くないでしょ。それに、ドッキリでもなんでもなく、これはハナコへのプレゼントだから」



凛「ついでにプロデューサーには何も用意してないから」



P「そうか……まあ、仕方ないよな。愛犬への贈り物だもんな」



P「いいなあ、ハナコは。幸せ者だな」



凛「………」



凛「そんなに言うなら、私の犬になる?」



P「えっ」



凛「ハナコが羨ましいんでしょ? だったらプロデューサーも、私のペットになりなよ」



凛「そうしたら、このマフラーあげてもいいから」



P「………」



凛「どうする?」ニヤリ







P「いやさすがにそれはいいです」



凛「そこはもう少しノリ合わせてよ。急に素に戻らないでよ」



P「俺はプロデューサーという仕事に誇りを持っている! だから犬にはなれない!」



凛「急に熱く語られても困るんだけど」



凛「というか、プロデューサーは私にプレゼントくれるつもりだったの?」



P「もちろんだ」



凛「なにくれるの?」



P「肩たたき券11回分」



凛「じゃあ私も足踏み券でいい?」グリグリ



P「その床をぐりぐりする足の動きは、何かを踏み潰してすり潰す時の動作だ」



P「お前は俺のどこを踏み潰す気だ」



凛「毛根とか?」



P「なんてことを……」



P「まあ冗談はほどほどにして、実際のプレゼントはまだ考え中だ」



凛「そうなんだ」



P「なかなか決まらなくてな……凛のほうからリクエストはないか?」



凛「え、私?」



P「お前にあげる物なんだ。本人の口から聞くのがある意味一番確実だろう」



凛「うーん……欲しい物、か」



P「何かあるだろ? 俺の財布で買える範囲なら叶えるからさ」



凛「って、いきなり言われても……ちょっと思いつかないかな」



P「ないのか? なにも」



凛「今、十分恵まれてるし」



凛「アイドルの仕事は、大変だけどやりがいあるし。ファンの人も増えて、私について来てくれる」



凛「事務所のみんなも、個性的だけど目指すところは同じで。一緒にいると、楽しいから」



凛「今の私は幸せだと思う」



P「凛………」



凛「だから、望むことがあるとするなら、それは――」

凛「部屋のエアコンを買い替えてほしい」キリッ



P「めっちゃ庶民的でリアルな願い事だな」



P「今の流れだと、普通『この時間が、ずっと続きますように……』とか言うもんじゃないのか」



凛「………は?」



P「やめて、白い目で見ないで。俺が痛いこと言ったみたいになってる」



凛「考えてみてよ。ここのエアコン相当ポンコツだよ? プロデューサーだって新調したいと思わない?」



P「いや、まあ確かにそれはそうだが……でも、エアコンがあって動いてるだけで満足」



凛「誤魔化さないでよ!」



P「うおっ」



凛「28度設定で30度までしか涼しくならない冷房なんて、22度設定で18度までしか暖かくならない暖房なんて、もう嫌なんだよ!」



凛「嘘のエアコンなんて見たくない!」



P「急に大声出すなよ! どんだけエアコンに不満溜まってるんだよ!」



凛「……まあ、プレゼントはもらえるなら特に指定とかないから」アミアミ



凛「私も、お返しはするよ」アミアミ



P「え、プレゼントくれるのか?」



凛「もらいっぱなしは悪いし。さっきまでは、プロデューサーがクリスマス好きじゃないと思ってたから」



凛「といっても、手作りとか時間のかかる物はちょっと難しいかな」アミアミ



P「やった!」



凛「ガッツポーズが飛び出したね」フフ



P「つい勢いで出てしまった」



P「………」



凛「………」アミアミ



P「(しかし、編み物をしている凛の姿というのは……なんかこう、家庭的でいいな)」



P「(制服のスカートの上で編み編みしているのは……うん、素晴らしい)」



凛「………」



凛「プロデューサー。なんか視線がいやらしい」



P「え!?」



凛「ひとつ教えてあげるけど。女の人って、自分に向けられる視線に意外と敏感だから」



P「そ、そうなのか」



凛「そう。だからプロデューサーがたまにアイドルの胸のサイズを見比べてるのもばれてるよ」



P「な、なんだと! じゃあ俺が『凛やまゆはもう少しボリュームがあれば』と思いながらチラチラ見てたのも」



凛「それは知らなかったからまゆに伝えておく」



P「やめてくれ」





凛「あ、もうこんな時間……私、そろそろ帰るね」



P「帰り道、気をつけてな」



凛「わかった。プロデューサーも、早めに仕事終わらせて帰らなきゃダメだよ」



凛「事務所に泊まるとかは厳禁。こんなエアコンにプロデューサーを任せられない」



P「まだエアコンのこと言ってる……」





凛「じゃあまた明日……あ、そうだ」



P「ん?」



凛「忘れてた……」スタスタ



P「(凛がこちらに歩み寄ってくる)



P「(はっ! これはまさか、帰り際にさらっと隠し持っていたプレゼントを渡してくれる展開では)」



凛「はいこれ」



P「おおっ!」





P「……なにこれ」



凛「青汁。スタドリばっかり飲んでると栄養が偏りそうだから、たまにはこういうのも飲みなよ」



凛「じゃ、またね」ヒラヒラ





ガチャ、バタン





P「………」



P「ま、そんなとこだろうな……にがっ」



凛「………」



凛「編み物は奈緒と被るから避けてたんだけど……あの様子なら、編んであげてもいいかな」



凛「(なんか勘違いさせちゃったみたいだし。あの質問、恥ずかしがって直接聞けない奈緒の代わりに、私が聞いたんだけどな……)」



凛「(ハナコのマフラーが終わってからだと……手袋編んだとしたら、クリスマスまでには右手のぶんしかできないか)」



凛「(……あ、そうだ。空いたほうの手は私が握れば寒くないよ、とか言って誤魔化すのは)」



凛「……ないない。馬鹿か私は」



加蓮「なにぶつぶつ言ってるの?」



凛「わっ!? か、加蓮……」



加蓮「今帰り?」



凛「うん。……ところで加蓮、ちょっと聞きたいんだけど」



加蓮「ん?」



凛「クリスマスまでに、手袋を片方だけ編めるくらいの時間、ある?」



加蓮「……なにそれ?」



凛「実は――」



加蓮「なるほど、そういうこと」



加蓮「うん、別にいいよ。半分手伝って、二人分のプレゼントってことにしようか」



凛「ありがとう」



凛「よし。あとはもう一品、お店で買えばいいかな」



加蓮「何買うか決めてるの?」



凛「まだだけど、大丈夫だと思う。プロデューサーが欲しい物なら、普段の会話を思い出せばすぐわかるし」



加蓮「……へー、『すぐ』と来ましたか」



凛「な、なに?」



加蓮「べっつにー? さすがだなーって思っただけ」ニヤニヤ



加蓮「じゃ、私はもうちょっと用事が残ってるから。またね!」



凛「あ、ちょっと加蓮! ……行っちゃった」





凛「なんなの、もう……」





おしまい





17:30│渋谷凛 
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