2015年12月19日

モバP「君が俺の」 晴「従兄弟?」

モバP(以下P)「ただいまー」



P母「あら、早かったわね」



P「近所のおじさんに駅でたまたま会ってさ、車に乗せてくれたんだ」





P母「あら。それならあとでお礼言わなきゃね。っと、早く帰ってきたんなら手伝ってちょうだい」



P「帰ってきて早々手伝いかー」



P母「あんたには言ってなかったけど、母さんの妹の家族が来るのよ」



P「へえ。どうしてさ」



P母「ほら、あの子達おばあちゃんのお参りまだ出来てないでしょ? この年末の休みにやっと来れるようになったそうなの」



P「…あぁ、なるほどね」



P(じいちゃんを亡くして、うちの実家に住むようになったばあちゃんも、約一年前に死んでしまった。ばあちゃんの訃報は、かなりのばあちゃん子だった俺にはかなり効いた)



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P「そういえば、母さんの妹…俺の叔母さんか。叔母さんってどんな人だっけ」



P母「あんた覚えてないの? …って、それもそうか。最後に会ったのも随分前だっからねぇ。あんたまだ小さかった気がするわ」



P「そりゃ記憶にないわな」



P母「とにかく、準備手伝いなさいな」



P「へいへい。と言っても、何すればいいんだ?」



P母「そうね、客間に布団を敷いてきてくれないかしら」



P「何枚?」



P母「えーっと、3枚お願い」



P「一人子供がいるのか」



P母「えぇ。つまりあんたの従兄弟ね」



P「俺に従兄弟がいるなんて初耳だぞ」



P母「歳が離れてるしね。会わなくなってから出来たのよ。たしか今、小六だったかしら」



P「たしかに離れてるな。どんな子?」



P母「サッカーが大好きだって妹は言ってたわよ」



P「へぇ」



P(男の子かな。仲良くなれそうだ)



P「それじゃ、布団敷いてくるよ」



P母「お願いね」

〜近所の空き地〜



P「サッカーねぇ。当分やってないやよっと」ポンッポンッ



P「おっ、案外体は覚えてるもんだな。いよっと…あら」トントン…



P「体は覚えていても、ついていけるかは別問題か」



P「たしか向こうに転がっていったよな……ん?」



「……あ、ボール」



P「おーい、悪いけどそのボール取ってくれないかー」



「…あぁ、あんたのか。いいぜ……っとと、はいよっ」トントン トンッ



P「!? …な、ナイスボール」



P(あの子、手を使わずにボールを浮かせて、綺麗にリフティングをしてそのままパスを…)



P「あ、ありがとう! 君、サッカー上手だね!」



「まあなー。おっと、それじゃ」



P「……いやあ、あんなに綺麗なプレー、久しぶりに見たなぁ」



P「しかし、ここらへんでは見かけない子だったけど……あ、もしかして」



P(とりあえず家に戻ろう)

〜家〜



P「ただいま」



P母「あっ。あんた、どこに行ってたのよ」



P「そこの空き地でこれを少しな」



P母「これって…サッカー? あんた、いい歳した男1人が空き地でサッカーなんてしてんじゃないわよ」



P「いいだろ別に。…あっ、靴が増えてる。やっぱりもう来てたか」



P母「あんたが遊んでる間にね。さあ、挨拶してきなさい。いま、客間で荷物の整理してるから」



P「わかってるよ」

P「失礼します」



叔母「あら、あらあらPくん! 大きくなったわね! まあまあまあ! 私のこと覚えてるかしら〜」



P「あ、いえ、その…すみません」



叔母「あら残念。それにしても大きくなって」



叔父「じゃあ僕のことも覚えてないかな」



P「すみません」



叔父「いやいや、謝らなくていいんだ」



P「改めて、Pです。…あの、もう一人来てると伺っているのですが」



叔母「あー、あの子ね。さっきトイレに行ってくるって出ていったからそろそろ…ほら、来たわね」



「ふぅ……あっ、あんたはさっきの」



P「初めまして…というより、さっきぶりだね」



「ははっ、そうだな」



叔母「あら、晴、Pくんと会ったことあるの?」



晴「さっき、そこの空き地でちょっとな」



叔母「あら、じゃあ、あそこでサッカーやってたのってPくんだったのね。遠くからだと全然気づかなかったわ」



晴「へえ、Pって言うんだな。よろしくな! オレは晴だ!」



P「あぁ、よろしくな。どうやら俺達は従兄弟らしいな」



晴「オレ、ここに来る途中に聞いたんだぜ? 今まで知らなかったとかありえんのかよ」



P「ははっ、実は俺もさっきまで知らなかったんだ」



晴「うわまじか。どっちの両親も適当だな」



P「まったくだ」



叔母「ちょっとー」



叔父「はははは」

〜食卓〜



P「うわ、なんだこのご馳走」



P母「愛媛から来てくれたんだから、身内とはいえ歓迎しなくちゃね」



P「俺が帰省してもなんもしないくせに」



P母「うるさいわよ」



晴「うおーっ、なんだこのご馳走! スゲーッ! これ全部、おばさんが作ったのか?」



P母「ええそうよ。…線香あげてきたのね」



叔母「うん」



P(涙が…そりゃそうだよな…)



P母「それじゃ、食べましょ! さあ席について」



晴「オレの席は…」



P「晴、俺の隣にこいよ」



晴「わかった!」



P母「それでは」



「いただきまーす」

〜食後〜



晴「なあなあ、Pはサッカー好きなのか?」



P「好きっちゃあ好きだな。こんな何もない町で少年時代を過ごすには、球一つだけで大勢で楽しめるサッカーに限ってたしな」



晴「でもさっき見たけど、下手くそだったぞ」



P「ブランクだブランク。歳もあるが……あと少ししたら、翼Pちゃんって呼ばれてた頃の力も戻ってくるだろ」



晴「なんだよ翼Pちゃんって」



P「おっと、信じてないな? よし、明日一緒にやろうぜ。俺の真の実力を見せてやるよ」



晴「へへっ、望むところだ!」



P「そういえば、叔父さんとサッカーしたりするのか?」



晴「小さい頃に教わってからそれっきりだ。オヤジ、仕事が忙しくて、全然構ってくれないんだ」



P「そうなのか」



晴「ところで、Pは何の仕事をしてるんだ?」



P「えっ?」ギクッ

P(なぜ息子が帰宅してきて、実の母が息子の仕事の話を切り出さないのか)



P(久しぶりに社会人の親戚に会った時の常套句、「仕事はどう?」をなぜ叔母さんたちが聞いてこなかったのか)



P(なぜ、アイドルのプロデューサーという職業でありながら、俺はこんなに簡単に帰省できたのか)



P(あれは約一年前。ばあちゃんの訃報を聞いた俺は当分ショック状態に陥り、仕事でミスを連発し始めた)



P(そして半年前、俺の担当アイドルが他のプロダクションに引き抜かれてしまった。彼女も最近の俺に愛想が尽きていたらしく、快く引き抜きに同意したらしい)



P(うちのプロダクションのエースに近い存在であった彼女を失ったのは大きかった。それまでの業績がなんとか助けてくれて、俺はクビには至らず、当分の休養をいただいた。といってもすぐに復帰しなければ、本当にクビになってしまうのだが)

P(晴は俺のことをさっき知ったと言っていた。そりゃ叔母さんからこの事を聞いていなくても仕方ない)



P「……まあ、アイドルのプロデューサーみたいなのを」



晴「アイドル? なんか腑抜けた世界で生きてんのな」



P「何を言う! アイドルは希望だぞ! みんなを照らす、光り輝く存在だ」



晴「ふーん。オレにはよくわかんねえや」



P「そうか…」

晴「それじゃオレ、風呂入ってくるよ。ここの風呂って檜なんだろ? 楽しみにしてたんだよなー」



P「おっ、じゃあ一緒に入るか?」



晴「は、はあ!? なにふざけたこと言ってんだよ!」



P「ふざけてなんかいないが…ダメか?」



晴「だ、ダメだ! …おい、何ジロジロ見てんだよ。とにかく、オレは一人で入るからな!」



P「あ、あぁ…」



P(なんだよ、男同士の裸の付き合いぐらい良いじゃないか)



P(……しかしあいつ、まつ毛長いし、なんか歳の割に色気があるというか……アイドルいけるんじゃ…)



P(でも、本人はあんなこと言ってたしな。ダメか)

〜翌朝〜



P「晴ー、そろそろ行こうぜ」



晴「あぁ! それじゃ、いってきます」



P母「あら、もう2人は仲良くなったの?」



晴「同志だからな!」



P(男同士で気にすることもないしな)



P「昼飯前には帰ってくるよ」



P母「あんた、腰には気を付けなよ」



P「へいへい。それじゃあいくか」



晴「あぁ! そうだ、P、ボールくれよ」



P「おう。はいパス」



晴「サンキュ。…よしっ、行こうぜ。競争だ」



P「晴、まさかお前ドリブルで行く気か?」



晴「こんぐらいハンデないとな」



P「なんだと? よし、大人の本気を見せてやる!」



晴「へへっ、負けねえよ!」

〜空き地〜



晴「はぁ…はぁ…んっ、はぁ、よっしゃ! 勝った!」



P「ま、マジかよ……」



晴「じゃあ負けた方は罰ゲームなー」



P「おい、聞いてないぞ。…まあいいか。で、何がお望みで?」



晴「そうだな。今度なにか奢ってくれよ」



P「え、まあそれぐらいならいいけど」



晴「罰ゲームとか今思いついたからな、他に出てこねえんだよ」



P「じゃあ別に無しでよかったじゃないか」



晴「それだとなんか惜しい気がする」



P「……まあ、分からんでもない」



晴「それじゃ、最初は簡単にパスから始めようぜ」



P「あぁ。…っと、その前に、あと2分だけ休ませて」



晴「なんだよ、情けねーな」



P「うっせ」

P「……よし、そろそろ始めるか」



晴「3分だったぞ」



P「1分なんて些細な違いを気にしてちゃダメだぞ、晴」



晴「……はぁ、まあいいや。それで、今日はスゲエプレーを見せてくれんだよな?」



P「あぁ。そうだな、1時間、1時間あればいける」



晴「2時間の間違えじゃないのか?」



P「今度こそ合ってるさ。よし、こい、晴!」



晴「おう!」ボムッ



P「よっと……あら」ポテポテ…



晴「トラップもできねえじゃん」



P「いや待て待て。まだ始まったばかりだから」



晴「本当にいけんのかよー」

〜30分後〜



晴「へいP、パスッ」パシュッ



P「よっと…ほっほっほっ」トントントン



晴「おお、やるじゃん」



P「言ったろ? 昔はこればっかりやってきたんだ。それに、こんな田舎の町だからか、サッカー出来る奴はモテたからな」



晴「へえ、それじゃあPはモテてたのか?」



P「…おっとこの話はここまでだ。そろそろ俺の覚醒が見えてきたぞ。集中しよう」



晴「そうか、残念だったな」



P「う、うっせえ! 同い年にめちゃくちゃ上手いやつがいたんだよ! 言っとくけど、俺は2番目に上手かったんだからな!」



晴「さあて、Pの覚醒でも見てやるかー」



P「……おーい」

〜更に30分後〜



晴「そろそろあれから1時間だなー」



P「おう。やっぱり俺の予想は当たってたぞ。今なら出来る!」



晴「それじゃ、見せてくれよ。……パスッ」



P「よっと……いくぜ!」



晴「な、なんだよこれは!?」



晴(ボールがPを中心に飛び跳ねている。まるで、踊っているみたいだ)



P「名付けて、Pが咲かせるボールのダンス!」



晴「ださっ!」



P「えっ……」ポロッ…



晴「あっ、落としたな」



P「は、晴。今なんて…?」



晴「え? あぁ、名前がダサすぎる」



P「そ、そんな! 開発した当時一夜眠らずに考えた技名なのに……」



晴「で、でも、プレーはかっこよかったぞ! 見直した!」



P「ほ、ほんとか?」



晴「あぁ! すげえな、P!」



P「ま、まあな! なんせ俺は、この町で1番上手いからな!」



晴「2番じゃなかったっけ?」



P「……晴ー。ここは空気を読んでくれよー、このやろー!」ワシャワシャ



晴「うわっ、お、おいやめろよ! 髪がボサボサになるだろ!」



P「ええじゃないかええじゃないか! ……ん?」



P(なんだこいつ…すごいい匂いがする…汗も混じってるのに…すごく、好きだ、この匂い)



晴「お、おい! なにオレの髪を持って固まってんだよ!」



P「え? ……あ、あぁ! 晴の髪、サラサラだなって思ってさ!」



晴「そうか? あんま気にしたことねえや」



P「綺麗だから、大事にした方がいいぞ」



晴「綺麗、ほんとか? …わかった」ニカッ

P「さて、そろそろ帰るか」



晴「ふいー、あっちい。冬なのに汗かいちったよ」



P「俺もだよ。ははっ、おっさんが年末の休みに何やってんだろうな」



晴「Pっておっさんって言うほどの歳なのか?」



P「まだ20代前半だが、体力はおっさんかもなあ」



晴「じゃあさ、オレがいる間は一緒に運動しようぜ! そしたら若返るかもしれないだろ!」



P「……ふむ、いいなそれ。よし、付き合ってくれ」



晴「任せろ!」

〜家〜



P・晴「ただいまー」



P母「おかえりなさい。お風呂湧いてるわよ。入ってきなさいな」



P「おお、ありがとう母さん! それじゃ晴、一緒に……」



P(そういえば昨晩、嫌だって言われたよな。もうあんな拒絶受けるのも嫌だしな)



P「晴、先入ってきていいぞ」



晴「なんだよP、一緒に入らないのかよ」



P「え、え? だって昨晩は…」



晴「ははっ、冗談だって。まだ早いっつの。それじゃお先にー」



P「なんなんだあいつは…?」



P母「ふふ」

〜居間〜



P「晴が上がるまでテレビでも見てるか」



P(やっぱりこの時期、特番しかしてないな……)



P「まあボーッと見てるだけだし、何でもいいか」チャンネルカエー



「はい、そうなんですよ!」



P「えっ……あ、あぁっ……」



司会「最近、人気急上昇中のアイドルとして、今年の振り返りはどうなの?」



アイドル「そうですね、やっぱり今年は私にとって契機になった良い年だと思いますねー」



司会「プロダクションが変わったんだっけ? そのおかげもあるのかな?」



アイドル「あはは、そうかもしれないですねー」



P「あ、あぁっ……ぐっ……」

晴「おーい、P。上がったぞー……っ! おい! どうしたんだよP!」



P「うぅぅ……は、晴か。どうした、上がるの早かったな」



晴「どうしたはこっちのセリフだっつの! ちょっと温まってきただけだからな、Pも早く温もりたいだろうし。それで、どうしたんだよ。……このテレビか?」



P「……」



晴「もしかして…今出てる、このアイドルか?」



P「……っ……」



晴「何があったんだよ。話してくれよ、P」



P「……だいぶ離れた年下の従兄弟に弱音なんか吐けるわけ…」



晴「P!」ギュッ



P「は、晴!? 何を急に…」



P(あぁ、またこの匂いだ。それも、さっきのより良い。大好きだ)



P(髪もまだ乾ききってない。当たり前か。短く感じてたが、意外と伸ばしてんだな。……やっぱり色気あるよな、こいつ)



晴「なあ……話してくれよ。そりゃオレなんか頼りにならないかもしれないけどさ、吐く言葉の受け皿にはなれるぜ…?」



P「……晴、ありがとう。落ち着いてきたよ。とにかく、晴は風邪をひく前に髪を乾かしてきな」



晴「…………」ギュッ



P「あとで話すから」



晴「絶対だぞ」



P「あぁ」



晴「…………」スタスタ



P「…………はぁ」

P「ーーとまあ、こんな感じだ」



晴「な、なんだよそれ。あのアイドル最低じゃねえか!」



P「いやいや、俺が不甲斐なかったんだから仕方ないだろ。彼女は賢明な判断をしたと思う」



晴「そ、それでもさ! Pはずっとあいつのことを世話してきたんだろ!? 恩ってもんがねえのかよ」



晴「……やっぱり違うじゃねえか。なにがアイドルは希望だよ。Pにこんな顔させてるやつが、希望なはずがーー」



P「いや、俺にとって彼女は今も希望だよ」



晴「は、はぁ? どうしてそんなこと…」



P「どこにいようと、今まで彼女が努力して培ってきたものが評価されているのなら、それだけで俺は満足だ。……まぁ、うちのプロダクションは許さねえかもだけどな、はは」



晴「……本当に、Pはそれでいいのかよ」



P「ああ」



晴「……じゃあ、さ。もうそんな顔するなよ。見てるこっちも、苦しくなんだよ。もう、見たくねえよ」



P「…わかった」



晴「……うん」

P「……んー、なんかスッキリしたわ」



晴「だろ? 悩んだ時は人に話すのが一番だって、よく親父が言ってるからな」



P「なるほど、叔父さんの受け売りか。いやでも、ほんとスッキリしたよ。このまま晴に甘えちゃおっかなー」



晴「な、何言ってんだよ! さっきまで歳の離れたオレなんかにとか言ってたくせに!」



P「まあまあ、いいじゃないか」ギュッ



晴「お、おい………くぅっ………」



P「あー、やっぱりだ。すげえ落ち着くよ。それに、ずっと思ってたんだが、お前っていい匂いするな」



晴「ば、バカ! 嗅ぐなよ!」



P「まあまあ。スキンシップだ」



晴「こんなスキンシップはまだ早いっての!」



P「ちえっ」スッ



晴「あっ……ふ、ふん。大人の威厳がまったくねーな、P」



P「晴の前ではそれでもいいと思えてきたんだよな」



晴「なっ……そ、そうなのか」



P「あぁ」



晴「……そっか。へへっ」

叔母「なによなによ、2人ともすっごい仲良くなってるじゃない」



P「あ、叔母さん」



晴「い、いつからいたんだよ!」



叔母「ついさっきかしら。しかし、本当に仲良いわね。Pくん、晴を貰ってくれないかしら」



晴「は、はぁ!?」



P「それは難しいんじゃないですか」



P(性別的に)



叔母「世間的なことは、私たちは気にしないわよ。別に従兄弟同士なら結婚できるんだし、堂々としていればいいのよ」



P(そういう問題じゃ…)



晴「……それ、ホントなのか?」



叔母「あら、知らなかったの?」



晴「うん。……へへっ、まじかぁ」



叔母「あらあら、晴は乗り気かしら? さあ、あとはPくんだけよ。私の娘を貰っちゃって! Pくんになら安心できるのよねー」



晴「お、おい! オレはまだそんな…」



P「……へ?」



P(娘? 誰が? 叔母さんの子供は一人……晴? 晴が女の子?)



P(おいおい、俺は今まで晴に何をしてきた? ……やべぇ、完全にセクハラじゃねえか)



晴「おい、P! Pもなんか言ってくれよ!」



P「……あ、ああ。そうだな」サッ



晴「えっ……」

P「お気持ちは嬉しいですが、今は自分のこと…仕事の方が上手くいかないと、他のこと考えられないです…」



叔母「あっ…そ、そうよね。ごめんね」



P「いえ」



晴「……な、なあP。どうしたら、Pは仕事が上手くいくようになるんだよ。オレに出来ることなら何でも言ってくれよな! た、頼ってくれんだろ?」



P「あぁ。まあ、例の彼女の代わりを俺が連れてきたら、上の人も何も言ってこないだろうな。…でも、これは俺の問題だから」



晴「ど、どうしてだよ。頼ってくれよ!」ズイッ



P「っ」サッ



P「……そうだな、今度また失敗したら、慰めてくれ。それじゃ、俺も風呂入ってくるよ」



晴「お、おい……P……」



叔母「い、いってらっしゃい。……私、やっちゃったかしら」



晴「………うそつき」

〜翌朝〜



P「………ん、今何時だ? …9時か。結構寝たな」



P(昨晩、考えることが多くて寝付けなかったからな…)



P(とりあえず、朝ごはん食べに行くか)



P「おはよー」ガラッ



晴「おっ。おはよう、P」



P「お、おう。おはよう、晴」



P(エプロン姿…似合うな…)



晴「朝飯ならすぐに準備するから、座って待っていてくれ」



P「あ、あぁ」



P(なるほど、手伝ってるのか)



P(しかし、どうして母さんは台所からニヤけた顔を覗かせているんだ)

晴「ほい、お待たせ」



P「おう、ありがとう」



P(ご飯が茶碗に一杯に、味噌汁、卵焼きと大根の摩り下ろし)



P(うちの定番の朝メニューだな)



P「それじゃ、いただきます。……うん、やっぱり美味いな」



晴「そうか、よかった」



P「え、これって晴が作ったのか?」



晴「あぁ! Pの母さんに教わってな」



P「あぁ、だからか」



P「しかし、どうして急に」



晴「まあまあ、今はとにかく食ってくれよ! 今日もサッカーするんだからな!」



P「……あぁ、わかったよ。…うん、美味い」



晴「……へへっ」

〜空き地〜



P「そういえば、叔母さんと叔父さんはどこ行ったんだ?」



晴「なんか年末セールをしてるっていうショッピングモールに行った。Pん家の車借りてな」



P「あぁ、だから無かったのか」



晴「ところで、Pの父さんは?」



P「今年は帰ってこれないらしい。前に休みとった分、休めるはずの年末に働かないといけないんだとよ」



晴「うわぁ、社会人って大変だな」



P「まったくだ」

晴「よし、そろそろウォーミングアップは終わろうぜ」



P「何をするんだ?」



晴「そうだな、ボールの取り合いしようぜ。片方はドリブルで抜いて、もう片方はボールを取るんだ」



P「…いや、俺はこのままパスを続けてもいいんだがな。なんなら、また俺の技を見せてやってもいいぞ」



晴「えー、俺はこっちがしたいんだよ。……なんだよP、嫌なのか?」



P「い、いや別に嫌とかじゃなくてさ」



P(接触しちゃうだろうが)



晴「嫌じゃないならやろうぜ! ほら、オレの攻撃からだ!」



P「あ、く、くそぉ! 負けねえぞ!」

〜夜〜



P「……あぁ、今日も疲れたぁ」



晴「やっぱり体力ねえな。まじでオレが付き合ってやるからさ、今後も続けようぜ」



P「そうは言っても、あと数日で別れるんだぞ」



晴「ま、まあな」



P母「はい、年越しそば!」



P「お、待ってました! やっぱり大晦日にはこれだよな! いただきます!」



晴「いただきます!」

P「ふぅ、食った食った」



晴「姉妹なのに、なんかうちのとは味がちょっと違うんだよな。こっちの方が美味かったかも」



P「まぁ個人の好みも入ってくるだろうしな。つまり、晴が叔母さんから教わったものも、叔母さんの味じゃなくなるかもしれないってことだな」



晴「なるほどな。なあ、Pはオレが作ったやつ食べたいか?」



P「そうだな、今年はもう食ったし、来年頼むよ」



晴「あ、あぁ! 頼まれたぜ! 任せてくれ!」



晴「……そ、それで、他に俺に頼みたいことないか?」



P(……マジか。昨日のことはもう無かった事にしたんじゃないのかよ)



P「と、特にはないな」



晴「遠慮せずに言ってくれよ、な?」



P「うっ、と言われても……ん? すまん、電話だ」



晴「あ、あぁ」



P(たすかったー)ピッ



P「はい、もしもし」



『Pくん! 君はもう聞いたかい!?』



P「ど、どうしたんですか、上司さん」

上司『その様子だとまだのようだね……いいか、落ち着いて聞いてくれ。彼女……君の元担当アイドルのあの子に、熱愛が発覚した』



P「ね、熱愛!?」



晴「へ? ね、熱愛?」



上司「あぁそうだ。街で男と歩いているのをファンに見られて、写真を撮られ、ネットに拡散されたらしい」



P「そ、そんな……彼女はこれからだと言うのに……」



上司「……あぁ、そうだな。それで、こういった件が大好きなあの記者が、すでに彼女に取材をしたらしい」



P「そ、それは本当ですか!? くそっ…」



上司「彼女はこう答えたらしい……噂されている男の人は、現在交際をしている彼氏だと」



P「………」



上司「それと、交際を始めたのはプロダクションを移籍してからだと。だから、前のプロダクションは全く関係がないと」



P「えっ…」



上司「……彼女なりの、恩義なのかもしれない。おかげで、こっちは問い合わせの対応に助かってるよ。やっぱり移籍前のプロダクションにも来るんだな」



P「わ、私も早くプロダクションに帰って手伝いを…」



上司「ダメだ。いま君は休むべきだ。……まあ、こんな事になってしまったが、君には才能があるんだ。頑張ってくれ」



P「……はい。連絡をくださり、ありがとうございました」

P「……はぁ」



晴「ど、どうしたんだよ、P。熱愛がどうとか」



P「……あぁ、実はな、例の彼女が熱愛発覚したらしい。くそっ、彼女はこれからさらに輝いていくって時なのに……」



晴「熱愛って…彼氏がいたってことだよな? …ダメなのか、それ?」



P「あぁ。そりゃ祝ってくれるファンもいるが、大抵は『裏切られた』とか『最低女』ってキレられる。そしたら今までのようにアイドル活動なんて出来なくなる」



晴「……そう、なのか」



P(なんか晴もショックを受けているようだな。どうしてだろう)



P(もしかして、このまま俺に、頼ってくれラッシュが来るんじゃないだろうか。どうする…)



晴「……ちょっと、借りてる部屋に戻るわ」



P「え、あ、あぁ」



P(あれ……どうしたんだろ……)

〜年明け一時間前〜



P(あれから晴は戻ってこない。そろそろ年が明けるというのに)



P(俺はなんとか持ち直すことが出来た。なんと、俺の携帯に一通のメールが来たのだ。例の彼女からだった)



『これは私の意思だから。今までお世話になりました』



P(もしかすると、彼女は元からアイドル活動をやめる気だったのではないだろうか。それなら、彼女が決めたことなら、それを尊重するべきだ)



P『礼を言うのが遅い。頑張れよ』



P(返事はなかったが、これでいいのだと俺は思った)



P「よし」

P「おーい、晴。いるかー?」



晴「……なんだよ、P」



P「近所の神社に行こうぜ。初詣だ」



晴「……いや、いいよ、オレは」



P「まあまあ、一緒についてきてくれよ! ほら、行こうぜ!」グイッ



晴「あっ、手……お、おい、引っ張るなって!」

〜神社〜



P「おお、既に結構集まってるな。いつも思うが、どこにこんなに人がいたんだか」



晴「たしかに、いっぱいだな」



P「はぐれないように手でも繋ぐか?」



晴「え? ば、バカッ……いいのか?」



P「ん?」



晴「やっぱりさ、P、オレのこと避けてたよな……いや、正しくはオレに触れないようにしてたよな。昨日から」



P「あ、あぁ……気づいてたか。すまん。気を悪くさせちまったな」



晴「…いや、いいんだ。今こうして、触れられているからな!」ギュッ



P「……ありがと、晴」

晴「しかし、どうして急に避けるようになったんだよ」



P「えっ、そ、それは…」



P(男だと思ってたなんて言ったらダメだよな……でもイイ言い訳なんて思いつかないし……)



P「……晴を女として意識し始めちまったから、かな」



晴「……は? は、はぁ!? バカ! バカかよ、P! そ、そんなことお前、まっすぐ……あぁぁ…」



P(失敗だったか……?)



晴「……おい待てよ。ってことは、今はオレのこと女だと意識してないってことか!?」



P「いや、それはないぞ」



晴「……そ、そうか。へへっ」



P(どうやら大丈夫のようだ)

P「お、甘酒売ってるじゃねえか。そうだ、例の罰ゲームのやつ、これにしとくか。買ってくるよ」



晴「あ、あぁ……」



晴(…手が、冷たい)







P「ほい、おまたせ! ん、なんだ? 自分の手をまじまじ見て。寒いんなら、これは最適だぞ。ほれ」



晴「あ、あぁ。サンキュ。……くそっ、違うっの!」ゴクッゴクッ



P「お、おい! そんなに急いで飲んだら火傷するぞ」



晴「………」ポケーッ



P「ほら見たこと……か? おーい、どうしたんだ晴ー」



晴「なあ、P」



P「ん、どうした? やっぱり火傷したか?」



晴「好きだ」



P「……………へ?」

P「お、おい急にどうしたんだよ晴。……あれ、なんか顔が赤いし、心なしか顔が惚けてるな。なんだ、甘酒で酔ってんのかよ。ったく、仕方ないな晴は。酔ってそんな思いもしないことを口にして…」



晴「オレは本気だ!」



え? なにどうしたの? あの子じゃない?



P「お、おい晴……と、とりあえずここから離れるか。行くぞ」グイッ



晴「……………」

〜神社から少し離れた所〜



P「ここなら人も少ないだろ」



晴「………手」



P「あ、あぁ悪い。急に掴んじまって」



晴「いや、嬉しい。離さないでくれ」



P「……わかった」



晴「…………オレ、急にPがオレを避け始めてからすげぇ悲しかった。その前から少し、この胸に違和感はあったんだが、その時確信した。オレは、Pのことが好きだ」



P「それは、兄弟愛とかじゃないのか?」



晴「……分かんねえ。こんな気持ち初めてだし……。すげえ苦しいんだ。でも、Pと話してると、いや一緒にいるだけでその苦しみが幸せに変わるんだ。ずっと一緒にいたいって、思えるんだ」



P「……そうか」



晴「でも、Pは今それどころじゃねえもんな。……なあ、オレ、アイドルになれねえかな?」



P「え?」



晴「オレなんかじゃ、やっぱり無理だよな」



P「そんなことはない!!」



晴「!?」



P「晴はまず綺麗だ。長いまつ毛に少し伸びた髪の毛が色気を出している。たまに見せる無邪気な笑顔も、年相応で可愛い。それに、なんといっても、この性格だ。他人のために何とかしてやろうっていう姉御肌みたいな、心の強さも感じる。そんな晴がアイドルになれないだろうか、いや、なれる! それも、超人気アイドルだ!」



晴「……わ、わかった」



P「それにだなぁ!」



晴「わかったから! もうやめてくれ! ……恥ずかしい」



P「……すまん、取り乱したな」



晴「いや……ありがとうっ」



晴「……でも、アイドルは恋愛禁止なんだろ?」



P「……そうだな。絶対とは言わないが、ファンが許すかは分からないからな」



晴「……なあP。オレ、どうしたらいいんだよ。Pと恋仲になりたい、でもアイドルになってPを助けてやりたい。……両方はダメなんだよな」



P「……俺は、俺は晴と一緒に、今後も毎朝トレーニングがしたい。ここ数日やって分かったが、本当に体力が落ちてしまってるからな。……でも、この先少し続けて、体力が戻っても、また落ちるかもしれない。だから、この先ずっと、10年先も20年先も、50年先も付き合って欲しい」



晴「P!」



P「俺は今すぐ体力を取り戻したい。だから晴、俺と一緒に東京に来てくれないか。……もし、晴が大人になって、まだ俺を好いてくれているなら、俺が何とかする。だから、晴!」



晴「変わるもんか! オレは一生、Pの専属トレーナーでいるからな!」



P「晴ー! 好きだぁー!」ギュッ



晴「うわっ、お、おい、や、やめ……やめるな……続けてくれ……」ギュッ

〜再び 神社〜



P「気づいたら年明けてたなんて、間抜けだよな」



晴「ま、まあPと一緒に年が明けれたのは確かなんだから、オレはイイんだけどなっ」



P「なんだよ、嬉しい事言ってくれるなー」ワシャワシャ



晴「へへっ」



P「さーて、今後の事を神様に頼んでおくか。ほれ、お金」



晴「おう、サンキュ。よっと……」パンパン



P・晴「…………」



P「よし、終わりっと」



晴「………………うしっ、オレも終わったぜ」



P「やけに長かかったな」



晴「まあ今年のことだけじゃなくて、今後ずっとのことを願ってたからな」



P「そんなことして、神様は叶えてくれんのか? ……これから2人で毎年行くんだから、今年だけのことでいいんだぞ」



晴「あっ。へへっ、そうだったな! それじゃ……」



晴(立派なアイドルに、Pを魅力できるアイドルになれますように……)





おわり



12:30│結城晴 
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