2015年12月20日

モバP「加蓮のカレンダー」




―――4月







加蓮「こんにちは、Pさん」





加蓮「春だよ。桜、いっぱい咲いてるね」



加蓮「ほら、窓からも見える……綺麗だね」



加蓮「お花見したかったけど、ちょっと無理かな。ふふっ」



加蓮「来年は一緒に、大きな桜の樹の下でお弁当食べようよ。私、頑張って作るから」





加蓮「……ね? 約束だよ」



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―――5月





加蓮「んー……なんだかだるいなぁ。5月病ってやつ?」





加蓮「なんでこの時期になるとこんなにやる気なくなっちゃうんだろね? 謎だよね」



加蓮「あ、そうそう。母の日近いからさ、お母さんに『いつもありがとう』って言ったら泣かれちゃった」



加蓮「ふふっ、変だよね。素直に気持ち伝えただけなのに」



加蓮「Pさんも親孝行しなきゃね。……ってなんで私、こんなこと言ってるんだろ。えへへ」





加蓮「……またね」





―――6月





加蓮「梅雨だね……ジメジメしてヤな気分」





加蓮「でも、雨の音は嫌いじゃないかな。落ち着くっていうかさ」



加蓮「目を瞑って耳を澄ますと、モヤモヤした気分が洗い流されるみたいで……」



加蓮「結局ジメジメするから意味ないんだけど」



加蓮「とにかく、もうすぐ夏だし! 海とか山とか、いろんなところ行きたいよねっ」





加蓮「絶対、一緒に行こうね。Pさん」





―――7月





加蓮「毎日暑いね……。夏バテ、気をつけないと」





加蓮「海も山も、結局行けそうにない……ちょっと残念」



加蓮「……ううん、来年こそっ。思い切って二人で旅行でも行く?」



加蓮「ふふ、なーんてね。週刊誌にすっぱ抜かれたら大変だもんね」



加蓮「私、頑張るから。Pさんも頑張って」





加蓮「…………」





―――8月





加蓮「あーもう、セミうるさいっ!」





加蓮「あっ、ごめんね大声出しちゃって。だってしょうがないでしょ? 毎日毎日飽きもせずに……」



加蓮「実はセミって、成虫でも2、3週間くらい生きるんだってさ」



加蓮「その間に必死に鳴いて、子供残して……大変だよね、虫の世界も」



加蓮「だからってうるさいのは勘弁してほしいけどねー」





加蓮「……私も必死に生きるよ。Pさんに負けないくらい、ねっ」





―――9月





加蓮「残暑見舞い申し上げます」





加蓮「ふふ、キャラじゃなかったかな。まぁこんな私もたまにはね」



加蓮「まだまだ暑いけど、頑張ってるよ」



加蓮「……つらいけど、もう逃げないってPさんと約束したもん。ちゃんと向き合うよ」



加蓮「Pさんがいたから、私は頑張れる。ずっと信じてる」





加蓮「だから……Pさんも、頑張って」





―――10月





加蓮「やーっと過ごしやすくなってきた……ほんと暑いの苦手〜」





加蓮「温暖化とかなんとか、もうやめてほしいよね。紅葉とか見れないし」



加蓮「あ、もみじ狩り行こっか? もちろん元気になったら、ね」



加蓮「なんだか約束たくさん増えてきたね。春はお花見でしょ、夏は海と山だし、秋はもみじ狩りっ」



加蓮「……もう6ヶ月、か。そろそろ、そろそろさ……ねぇPさん」





加蓮「――目、覚ましてよ」





―――11月





加蓮「…………」





加蓮「……新しい人、けっこう優秀でさ」



加蓮「たくさんお仕事取ってきてくれるよ。Pさんよりね」



加蓮「でもPさんと違って、すっごく生真面目でまさに上司、って感じ」



加蓮「未だに私のこと苗字呼びだし。いい人なんだけどね」



加蓮「……ね、Pさん。起きて『加蓮』って呼んでよ」



加蓮「……せめて、手を握ってよ。外、だんだん寒くなってきたから」





加蓮「Pさんの手、まだ……あったかい」





―――12月





加蓮「クリスマスだよっ、Pさん!」





加蓮「クラッカー持ってこようとしたらナースさんに取り上げられちゃった……ふふっ、失敗失敗」



加蓮「また、これも来年ね。うんっ、これで春夏秋冬、全部予定埋まったね」



加蓮「雪降ってるけど、病室はあったかいね」



加蓮「私も昔はこういう部屋で過ごしたけど……Pさんと一緒だから大丈夫」



加蓮「年越し、Pさんのそばにいたいけど……無理っぽい。だって私、アイドルだからねっ」





加蓮「……年越しLIVE、見て欲しかったな」





―――1月





加蓮「あけましておめでとう、Pさん」





加蓮「ごめんね、なかなか来れなくて……お正月ってなんでこんなに忙しいんだろ」



加蓮「特番特番、また特番って。特番ばっかりじゃ『特』じゃないじゃん」



加蓮「なんだかLIVE終わってから、声かけられることも増えたし……や、嬉しいんだけどね?」



加蓮「ふふ、有名になってきた感あるよ。Pさんも褒めてくれる?」





加蓮「……ねぇ、褒めてよ。ねぇったら」





―――2月





加蓮「ハッピーバレンタイン♪」





加蓮「頑張ったよ私っ、頑張ってチョコ作ったよPさん。食べて食べてっ、ほら!」



加蓮「…………」



加蓮「……Pさん。いい加減起きてよ。なにか言ってよ」



加蓮「こんなにやせ細っちゃってさ。私にはもっと食べろって言ってたくせに」



加蓮「待ってるのに。……いつか、いつか目を覚ますって信じてるのに!!」





加蓮「……ぐすっ。ごめんねPさん。また、来るから……ごめんね」







P「――――」ピク





―――3月





加蓮「またあったかくなってきたね。春も近いよ」





加蓮「もう1年だよ? 時間経つのってほんと早いよね」



加蓮「あっという間だったなぁ。梅雨が明けて、夏が来て、と思ったら秋、冬……」



加蓮「Pさんがいつも一緒にいなかったのは不満だったけど。ここにいるときだけは二人っきりだから許してあげる」



加蓮「なんか顔色いいね。やっぱり気温のせい? その調子でガバッと起きちゃいなよ」



加蓮「……なんてね。大丈夫、まだ待つ……待てるから。まだ……大丈夫」





加蓮「また、来るね」







P「…………ぅ………………」





―――



――









(――長い夢を見ていた)





(春。暖かな風の中、一緒に桜の樹を眺めた夢)





(夏。海に行き、山へ出かけ、ともに過ごした夢)





(秋。緋色に染まった並木道を、手を繋いで歩いた夢)





(冬。空を舞う雪に見惚れながら、肩を寄せ合った夢)







(――夢で終わらせていいのか?)

(栗色の髪の少女は、夢を叶えたいと言っていた)





(夢は夢で終われない。そう歌ったあの子の夢を……叶えなければ)





(誰が叶える?)





(誰でもいいわけじゃない。あの子が求めているのは――)

(目を覚まさないと……帰らないといけないんだ)





(いつまで寝ぼけているつもりだ。しかも泣かせやがって。バカかお前は)





(起きて、謝らないと。……いや、まずは感謝しないといけないな)





(待っててくれてありがとう、って)





(なら、早くしないと。あの子がドアを開ける。そうしたら)







(――笑顔で、『おはよう』と言うんだ!)





―――





がちゃり





「こんにちは〜。今日も来たよPさん――」







「――おはよう、加蓮」







「――――」



「悪い、寝すぎた。……待っててくれてありがとう」



「……ばか。ねぼすけ。信じらんない」



「うん……ごめんな」



「ううん、いいよ。……おかえりなさい」



「ああ。ただいま」





「……〜〜〜ッ!!」





(胸の中で大泣きしているこの子を、細くなってしまった腕で……精一杯抱きしめた)



(この温もりは、夢じゃない――)







おわり



12:30│北条加蓮 
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