2015年12月25日

小梅「一緒に…踊って、くれるの?」

アニバーサリー会場

記念を祝うこの場では

誰もかれも楽し気に笑っていて

俺の隣にはネクロマンサーがいた







「…壮観だなあ」



「う、うん、皆凄いや」



「家のアイドル達が勢ぞろいして仮装してるんものな」



「キラキラ、輝いてるね」



「ああ、でもそういう小梅も輝いてるぞ?良く似合ってるよその恰好」





ネクロマンサー風の小梅を見る、実にしっくりくる

ライブでも小梅に合わせそういった傾向の服は多いが

ここまで直球にファンタジーな衣装にしても違和感が無い





「そ、そう?ありがとう…ございます、思い入れ、たくさんあるから、嬉しい」



「おうとも、もしかいてまるで本職はそっちかもと思うくらいに」



「…………………」



「うん?」



「本当にそうだったり、して?」



「えぇ…」



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「なーんて、ね」



「あ、ああそうだよな冗談だよな、ちょっと驚いたぞ」



「ふふふ…」



「そこで笑うなって、怖いぞ」



「だってそれもいいかなって思うから…」



「アイドルやってくれよ…ああいった仕事は珍しいしそんなに印象に残ってたか?」



「えーっとね…それもあるけど、そうじゃなくて」



「?」



「大事な思い出なの、あ、あの世界の事…思い出すから」



「…ああ」

グランブルーファンタジー

大地が雲に覆われた空の世界

そこを舞台とした劇のお仕事があったのだが

小梅は劇でなくその世界そのものに行ったという



言葉を喋るトカゲと不思議な少女と少年との出会い

個性的な団員がたくさんいたという彼ら騎空団との生活

その皆と空を飛ぶ船に乗り冒険したという夢の話







「変かな?や、やっぱり…こんなの夢に決まってるのに…」



「夢って言うけど小梅は夢とは思っていないんだろ?」



「あ、はい、本当にあの世界はあった…って思うよ」



「なら俺はあると思う」



「……本当?」



「勿論、小梅が嘘をつくとも思わんし、小梅の言う事なら俺は全面的に信じるさ」



「…あ、あ、ありがとうございます」

「かな子や莉嘉だって同じ夢を見たと言っていたし、むしろあると思った方が正しい」



「う、うん、そうだよね、きっとあるよね…!」



「それとここだけの話なんだがな…その世界の夢を見たという奴が他にも何人かいるんだ」



「え、ええっ!?」



「それも小梅より前の時にだぞ?さらにさらに言うと315プロの所でもさ、どうも同じ夢を見たアイドルがいるらしい」



「え?え?え?じゃあ、その」



「きっとあるんだろうな、これだけいるんだからその世界は」



「…あ、あはは、良かった、凄く嬉しい、や」



「それにだ、俺としても夢でなくそうであって欲しい所なんだ」



「そう、なの?」



「だってそこでは魔法が当たり前だったんだろ?こんなワクワクする話は無い」



「あー俺も空を飛んでみたり魔法使ってみたいなー!武器からもファンタジーな力で色々な属性と呼べる技が出たりとかだろ?こんな好奇心をくすぐられる事はそう…あっ」



「………………」



「す、すまん、つい興奮して」



「ふふっ」

成人なんて何年も前に終わらしたのに

未だ厨二というかこういう気持ちは抜けないなあ

ああでも本当にそういう世界があるならどんなにいいか…って



「また同じ思考になってるじゃねえか、クールダンクールダウン情けない」



「ううん大丈夫だよ、そ、そんな事ないです」



「気を使わなくてもいいぜ…」



「だ、だって私もそういう気持ち…解る、から」



「え?そ、そうか!小梅もか!いやー男心が解ってくれて助かる、そういうのに憧れるのって普通だよな!」」



「うん、私も夢にみてたから、リアルにゾンビとか操ったりしちゃうの…えへ」



「…うん?」



「向こうではね、魔法でそうやってゾンビを操ってモンスターを血祭り…にしちゃったり……ち、血しぶきあげさせて…ブシャーって……あっ」



「…………………」



「ご、ごめんなさい、わ、私も興奮しちゃって」



「こっちでやらないでくれよ?」



「し、しないよ!」

「うんそうしてくれ頼むから、ちょっと怖かった」



「Pさん、そ、そういうのは映画だけだよ!そんな事しない、もん!」



「うーん小梅が普段見てるヤツ見てるから説得力無いなあ」



「も、もー!」





牛みたいな声を出すと小梅がふくれる、可愛い





「ははははは…ってそうか向こうにはモンスターとかもいるんだよな」



「うん、凄くかわいい…じゃなかった、グロテスクで危険そうな素敵なのが、ね」



「言い直してもあんま変わってないぞ、しかしそうなるとその世界にはあまり行って欲しくは無いんだが…」



「だ、大丈夫だよ向こうではちゃんと魔法使って…モ、モンスターをブシャァって…ふふ」



「そういう所含めて」



「あ、うん、そうだよね、ごめんね心配かけて……でも、本当に大丈夫だよ…ゾンビもだけど、あの子達も守ってくれたから」





そう言って小梅が視線を遠くに向ける





「…あの子達、か」





そしてその向けた方向に俺も目をやる、そこには

そしてその向けた方向に俺も目をやる、そこには





「ぴにゃぴにゃ〜」



「わーい!ぴにゃこら太だー!」



「ぴにゃっ」



「今日はぴにゃも舞踏会しようでやがりますねー!綺麗ですよー!」



「ぴにゃぁ〜」



「ぴにゃこら太…………私も…………次………」



「ぴにゃぴにゃ!」



「(駄目です…あんなに子供達が楽しそうにしてる所に私が混ざるなんてはしたないですよ我慢するんです穂乃香…あ、ああでもでもあんなにお飾りしてきらきらでかわいいぴにゃこら太……あ、ああああお腹に抱き付いた雪美ちゃんが抱きかかえられて…!?わ、私もああして飛び込んで抱きしめられたい…っ!いやいっそのこと私が抱きしめて……も、もう!)ぴにゃこら太ーっ!!!」



「ぴ、ぴにゃあっ!?」





お子様達(に加えて大きなお友達一名)にたかられてるマスコットぴにゃこら太がいる

小梅はその世界で何故かあのぴにゃこら太そっくりの幽霊達と一緒だったとか

しばらくしたらぴにゃお地蔵さんもいたとか

果てにはぴにゃ仏様とも戦った?とか





「謎だ」



「元気にしてるかなあの子達…うふふ」



「…幽霊に元気とかあるのか?」



「あるよ?」



「そ、そうか」

迷いなく断定される、そうなのか





「うん、例えばあの子も今日は楽しくて凄く調子いいよって」



「…今は何処に?」



「Pさんのうしろだよ、あ、て、手をそんなところに…?だ、駄目だよそんな…」



「えぇ!?あの子俺に何してんだ!?」





思わず振り向く

今日知ったがあの子は小梅曰く俺とよく一緒にいるとの事らしいし、ひょっとして俺に悪戯を





「冗談、です」



「……………………」



「ふ、ふふふ……」



「小梅も凄く調子いいみたいだな」



「は、はい…えへへ」

あの子は悪戯好きと言うが小梅もだよなあ

スキー場で血のり用意してまでドッキリしたの代表に

割とそういう目に合わされているような…まあ楽しいからいいけど



「……………」



「あの、Pさん?」



「何でもない、ちょっと浸ってただけ」



「?」



「やれやれ、しかしその世界で何故ぴにゃこら太そっくりな幽霊がいたんだろうな?そこが解らん」



「それは…私も解らないです…」



「待てよ?そういや何故そもそも今もこの会場にいるんだ?確かに浅くない縁ではあるが今日の会場に招待されるって…?」



「…あ……え…?」



「……………………」



「……………………」





もう一度視線をあちらに向ける





「…ぴにゃ?」





ぴにゃと目が合った





「ぴにゃ〜♪」





手を振られた

ので振り返しておく





「かわいいな」



「う、うん」



「かわいいからいっかもう」



「そうだね」

考えていたことを水に流す

考えてもしょうがない事もあるな、うん





「確かにこれだけ謎な事があったら思い入れもあるよな」



「うん、あ、それと向こうではたくさん団員さん達もいたんだ、迷った私を仲間にしてくれてね、皆いい人たちでね…」



「…なあ小梅、ぴにゃの後にに出るのがお世話になった向こうの人達の話題なのか?」」



「…………あっ」



見えている方の片目が泳ぐ、可愛い



「っははははは」



「ご、ご、ごめんなさい…あの、その、忘れてたとかじゃなくて、た、たまたま話すのが遅れちゃっただけで」



「大丈夫だってちゃんと解ってるから、好きな事から言いたくなるってだけだろ?小梅らしいっての」



「う、うううぅ…」

こうして慌てているだけちゃんと世話になった事にも感謝してるし

遅れたことに申し訳なく思っているのだろうな

しかし



「新鮮だな」



「え?」



「いやさ、こうして知らない事を聞かされる事がだよ」



「………どういう、事?」



「小梅のやる仕事には大体付いて行ってるだろ?こうして小梅の知らない事を小梅から聞かされるのが珍しくてな」



「…あっ」





普段の何気ない会話からレッスンの時

ライブや様々なイベント

そういや実家にまでお邪魔した事まであったな

こう考えるとびっくりするくらい一緒にいるな



「うん、こういうの初めてだね」



「だな…って言っても小梅だってプライベートもあるし、俺が知らない事あって当たり前か」



「え?」



「だからこうして聞くのも楽しいな、また向こうに行けたら話を聞かせてくれよ」



「……………………」

会話が途切れる

…ん?どうしたんだろうか、変な事を言っただろうか?

ひょっとしてさっき言った危険な真似して欲しくない云々でも気にして?





「Pさん」



「おう」



「私も、いつかまたあそこには、行きたい、です」



「そうか、じゃあそん時はお土産話を」



「でも…お話は、駄目」



「え?」





やっぱり変な事言ったか俺?

こういう方向の意地悪は心が痛いから勘弁して欲しい





「な、何でだ?俺もその世界は楽しそうだし行ってみたいくらいだし話が聞けないのは悲し」



「だって、その時はPさんも居て欲しい、から」

「あそこは…たくさん楽しいものがいっぱいでした…けど」



「お母さん達もアイドルの皆もいなくて…そしてPさんとも離れ離れ」



「楽しかったけど、寂しかったです…戻らなきゃって…ずっと思ってました」



「…そうだよな、ごめん、考えが浅かった」





幾ら願いが叶ったってそうだよな

一人だけで心細くない訳が無い





「あ、違…怒ってない、よ?あの子達もゾンビもいて楽しくて浮かれちゃってたから、そ、そんなにはつらくなかったよ?ほんとだよ?」



「……………たくましいようで何より」



「こ、こほん、だからね、今度向こうに行くときはねPさんもいっしょじゃないと、駄目」

「…なら一緒に行かないとな」





ここまで言われて断る理由など、無い





「ありがとう、ございます」



「そういう事なら喜んでだ、話を聞くのも楽しいが…一緒に見るのはもっと楽しいだろうからな」



「あ…う、うん、うん!」



「なんだそんなに嬉しいのか?」



「はい…!だってずっといっしょに頑張ってきたから…ここまで来れたんだと思うの」



「だから、これからも…来年も再来年もずっといっしょに同じものを見ていきたい、です」

真っすぐすぎる思いに言葉が詰まる





「……………」



「Pさん?」





照れと嬉しさで頬が火照るのが解る

返事が無いのを不安がってか顔を見上げてくる小梅に今の顔を見せたくなく

バレないようフードをぐしゃぐしゃとやってしまう





「わ、わわわ?」



「ありがとうな、光栄だよ」



「そ、そう…?でもこの手は、あの…皆に見られちゃうし、その恥ずかしいよ…」





そう言い止めようとするのか俺の手に小梅の手が重なるがそのまま言葉を続ける





「俺も一緒に同じものを見ていきたい来年もその先も」



「……っ………」



「だから…向こうに行っても、いや向こうでなくとも一緒にいような」



「………………はい」





そうして会話は終わったが

俺も小梅もしばらくそのまま手を重ねていた

………

……







そのままどれくらい経っただろうか

気づけば会場内のBGMが変わっている

ボリュームも上がりテンポも速い、これは…





「ダンスの時間になったみたいだな」



「えっ…?」



「仮装パーティーだしな、ダンスくらいあるんだろう、いっちょやってみるか」



「じゃ、じゃあいってらっしゃい…」





そろそろと俺から小梅が離れる

って





「何故離れるよ、ダンスの時間だぞ?」



「ダ、ダンスだからよ…私ダンスはやっぱり苦手だから…」



「もうダンスレッスンもこなしてるしステージでも踊れるだろ?」



「それは、い、いつも練習してるからだよ、こ、こんないきなりで、こんな場所何て…む、無理です、むーりぃー…」



「森久保化するなよ…」

ステージの方がよっぽど大変だと思うんだけどな

ここなら見てる奴何て誰もいないだろうに





「ほ、ほら桃華ちゃんが躍りたいって言ってたし、桃華ちゃんはこういうの慣れてるから…」



「…なあ小梅、俺とは踊ってくれないのか?」



「…え?」



「せっかくの機会なんだからさ、頼むよ」



「私と…一緒に…踊って、くれるの?本当に?」



「本当にだ、第一俺の方が小梅より上手く踊れないぞ間違いなく、ああだが俺と踊りたくないならしょうがないが」



「え、そ、そんな事無いよ!…私も踊るなら…Pさんといっしょが…………あっ……」



「そうだな、俺もいっしょがいいな」



「…………えっと」



「改めて頼む、小梅、俺と一緒に踊ってくれないか?」



「……………………………はい」

差し出した手を小梅が取ってくれる

やや熱く顔を見れば白い顔も赤い

テンパっていたせいだろうか、それとも真面目に頼んだ俺のせいか

…というか俺も顔が赤くなってるか?この先に進めよう、うん



「こ、小梅それじゃあやるか?」



「……ねえPさん」



「何だ?この姿勢で止まってるのは中々恥ずかしいものがあるからダンスへと」



「ずっと、こうしててもいいかも…ふふっ」



「……………………」





無言でシャルウィーダンスな姿勢を解いて小梅を抱き寄せる





「よし」



「…むう」

「さ、やるか」



「Pさんの意地悪…」



「小梅に言われたらおしまいだな」



「あははは…でもね、ダンス…上手く踊れなかったらごめんね?」



「俺は小梅以上に踊れる自信がないから安心しろ、もつれて転ぶかもしれんぞ」



「もう…でもね、そうなっても平気だよ」



「っ!」





小梅の手が握られる





「こうしてぎゅっとして離さないようにするね…これなら大丈夫、いっしょに頑張れるよ」



「…そうだな」





俺も握り返す





「いっしょなら、頑張れるな」



「…はい」



「よろしく小梅、ダンスもこれからも」



「私も…お願いします、ダンスもこれからも」













おしまい



17:30│白坂小梅 
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