2015年12月31日

二宮飛鳥「師走の」 佐藤心「日々☆」 的場梨沙「いろいろ」

※超短編3本立て

※ヴァリアスハートというオリジナルユニットのシリーズものです(特に過去作を読む必要はありません)





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≪男の闘い≫





梨沙「はぁ? パパと喧嘩したですって?」



P「ああ、ちょっとな」



梨沙「どういうことよ。なんでアンタとパパがそんなことになるわけ?」



P「いや……この前二人で飲みに行った時のことなんだけどな」



梨沙「ほうほう……って。なによ、二人で飲みに行ったって。アタシ聞いてないんだけど」



P「言ってなかったからなあ」



梨沙「言いなさいよ! 前もきつーく注意したわよね! 男同士で出かけるのは100歩譲って許してあげるけど、ちゃーんとアタシに連絡してからにしなさいって!」



P「あー……ごめん。急な誘いだったもんで、つい忘れてた」



梨沙「まったく……」プンプン









心「なにあれ? 浮気を妻に問い詰められてるダンナの図?」



飛鳥「愛人相手に真相を吐けと迫るワイフの図」



心「うーん、どっちも微妙にズレてる……」



飛鳥「そうだね……あ」



心「どしたの?」



飛鳥「夜遊びを母に叱られている息子の図」



心「それだ☆」



梨沙「で? お酒飲みに行ってパパと何があったのよ」



P「ああ。最初のうちは、いつものように世間話や梨沙の話で盛り上がっていたんだが」



梨沙「パパはアタシのことなんて言ってた?」



P「妻に似てきたって」



梨沙「ふふん、まあ当然ね! いつかママみたいなオトナの美人に成長するんだから!」



P「(似てきたっていうのは男勝りな気の強さのことなんだが……言わないでおこうか)」



梨沙「ウフフ♪……じゃなかった。その後何がどうなって喧嘩したの?」



P「喧嘩と言っても、少し言い争いになっただけだぞ? その後雰囲気が険悪になったわけでもないし」



梨沙「よーするに、ちょっとした口喧嘩みたいな?」



P「そんな感じ」







千佳「愛の魔法少女・ラブリーチカさんじょー☆」キラッ



心「正義の魔法少女・シュガーハート参上☆」キラリーン



飛鳥「………」



千佳「次、あすかちゃんの番!」ワクワク



心「はよ☆」



飛鳥「仕方ないな……こほん」





飛鳥「奇跡の魔法少女・ミラクルアスカ参上☆」キャピルーン



飛鳥「悪魔のハートをきゅんきゅん射抜いちゃうぞ☆」ニコッ



千佳「わー、すごい! 決めゼリフまであるなんて!」



心「さすが世界観に凝る女だな♪」



飛鳥「やれやれ」←褒められるのは悪い気分じゃない



P「きっかけは、梨沙のファンについての話だった」



梨沙「ファンの?」



P「そう。まず俺がこう言ったんだ」



P「梨沙のファンもたくさん増えましたけど、はじめの第1号として俺も応援し続けますよ、と」



P「するとお父さんはこう言った。いやいや、ファン1号は父であるこの私ですよ、と」



梨沙「うん」



P「……うん」



梨沙「……え、まさかそれが口喧嘩の原因?」



P「どちらも譲らなくてな……別れ際まで意見が平行線のままだった」



梨沙「……バカ?」



P「俺達にとっては重要なことだったんだよ」



P「梨沙。君はどっちがファン1号だと思う」



梨沙「パパ」



P「迷いなき即答だな」



梨沙「アタシがこういう質問でパパ以外を選ぶわけないじゃない」



梨沙「アタシのファン1号はパパ! プロデューサーはせいぜい1´(ダッシュ)号ね♪」



P「くっそー、負けたあ……」ガクッ



梨沙「残念だったわね。でもそんなアンタにありがたい言葉を教えてあげるわ!」



梨沙「ずばり、ファンにキセルはないのよ!」ドーン!



P「……キセル?」









心「なんでキセル? ぷかぷか吸うの?」



千佳「キセルってなに?」



飛鳥「タバコを吸うための道具さ。けどおそらく、梨沙が言いたいのは――」



梨沙「アタシのファンは、ファンとしては平等! 偉いも偉くないもないのよ」



P「……ああ、『貴賤』と言いたかったのか」



梨沙「え、あれ? そうだったっけ」



梨沙「あーもう、飛鳥に引きずられて変に難しい言葉使っちゃったわ」



P「言葉遣いが移るほど仲いいんだな」



梨沙「べ、べつにそこまでじゃないわよ。仕事で一緒にいる時間が長いだけ!」



梨沙「とにかく! アンタもいつまでも落ち込んでないで、アタシのプロデューサー兼ファンとして頑張りなさいってことよ」



P「ははっ、なるほど。そうだな、ファン1号はお父さんに譲るけど、梨沙のプロデューサーは唯一無二で俺しかいないからな」



梨沙「そうよ。だからしっかりしなさいよねっ」



P「わかったよ」



心「お、なんか丸くおさまった♪梨沙ちゃんいいこと言うねえ☆」



飛鳥「貴賎なし、か。しかし、『´』を使ってまで1という数字を与えたあたり、Pを特別扱いしたい気持ちはありそうだけどね」



心「まったく、素直じゃないんだから♪」



千佳「? どういうこと?」



心「梨沙ちゃんが、プロデューサーのことを好きだってことだぞ☆」



千佳「へー、そうなんだ!」



心「あたたかーい目で見守ってあげよう☆」



千佳「うん!」





梨沙「ちょっとそこ、聞こえてるわよ! というかなによその気持ち悪い目つき!」



心「ニコニコ」



千佳「にこにこ」



飛鳥「温かい目、らしいよ?」



≪日常の写真≫





飛鳥「………」カシャッ



飛鳥「ふむ」カシャッ





梨沙「飛鳥ー。さっきからスマホで写真撮りまわってるけど、なにしてるの?」



飛鳥「日常風景を収めているのさ」



梨沙「日常風景?」



飛鳥「――というわけさ」



梨沙「なるほど。静岡のお母さんが、飛鳥が普段どういうところで働いているか気になるって言ったのね」



飛鳥「あぁ。そして、口で説明するより、写真に撮って絵にしたほうが伝わりやすいと判断した」



梨沙「ふーん。あ、じゃあアタシもとっとく? 超セクシーでかわいい同僚として紹介しなさいよ」



飛鳥「心配しなくとも、キミのことはすでに電話で話してある」



梨沙「なんて?」



飛鳥「我が道を往く姫」



梨沙「へー、姫かあ。なかなかいいじゃない、それ♪」



飛鳥「……ところで、心さんは? 先ほどまでここにいたはずだが」



梨沙「そういえばそうね。どこ行ったのかしら」



ガチャ、バタン!





心「話は聞かせてもらいました」



梨沙「帰ってきたと思ったら白スーツ着てる」



心「さあさあ、ぜひ普段着のSHINをお撮り下さい」



飛鳥「まったくもって日常のあなたとかけ離れているんだが」



心「超絶ビューティーなアダルト美女がそばにいるとわかれば、お母様も安心するかと思って」



梨沙「誰よそれ」



心「あ、なんなら録音もする? はぁとのオトナな声をお母様にお届けしちゃうぞ☆」



飛鳥「……写真に写りたいならいつもの服装にしてくれ」



心「ちぇっ、つまんないのー」ブーブー



飛鳥「はあ……早いところ撮り終わって、母さんに送信しないと――」





薫「お写真とってるのー?」



仁奈「仁奈も写りたいですよ!」



晴「お、なんだなんだ?」



光「記念写真でも撮るのか?」



こずえ「しゃしん……とるー」





ゾロゾロ ゾロゾロ







飛鳥「………」



梨沙「騒いでたらみんな集まってきちゃったわね」



心「いっそ集合写真にしちゃうか☆」



心「ほらちびっ子どもー、ちゃんと列作って並ぶんだぞー♪」



梨沙「ここまで来ちゃったんだし、全員まとめて撮っちゃいなさいよ。ふふっ」



飛鳥「まったく、これのどこが日常風景だというんだ……」



飛鳥「………」



飛鳥「けど……個性あふれるメンツの予想外の行動に驚き、刺激されるという点では……まさしくボクの日常そのものか」



梨沙「ぶつぶつ言ってないで早くしなさいよー」



飛鳥「あぁ、理解(わか)っている」フッ



飛鳥「ほら、今のままだと入りきらないから、両端の晴と光はもっと中央に寄って――」



P「あれ、みんなで集合写真か? なら俺が撮るよ」



P「飛鳥も列に入っていいぞ」



飛鳥「……そうさせてもらうよ」





カシャリ







飛鳥「当初の予定とは異なったけど……これで、ボクが元気にやっていることは伝わるかな」



≪はぁとの気持ち≫





心「おはよー……」



飛鳥「あぁ、おはよう心さん……ん?」



心「どうかした? はぁとの顔になんかついてる?」



飛鳥「何かついているわけではないけど……顔全体が赤い」



心「んー……多分、外の寒さのせいじゃないかな」



飛鳥「声にも張りがない……少し失礼するよ」ピトッ



心「わお、いきなりおでこ触るなんてだいたーん……」



飛鳥「……やはり熱があるようだ。今日のレッスンは休んだ方がいいんじゃないかな」



心「えー……せっかく来たのに……」



心「はぁと、全然元気に動け……あれ、なんか身体が重い?」フラッ



飛鳥「……とりあえず、Pに連絡させてもらうよ」



仮眠室に移動





飛鳥「少し楽になるまで、ここで休ませておいてくれってさ」



心「あー……なんかごめんね、迷惑かけて」



心「ここのベッド、結構柔らかいね」



飛鳥「そうなのかい」



心「うん、そう」





心「……実はね、朝起きた時から身体が重かったんだ」



心「でも咳は出てなかったから、薬飲んだだけで事務所に来ちゃった」



飛鳥「無理を押す必要はないのに……仕事が入っているならともかく、今日はレッスンしかなかったはずだ」



心「あはは、まったくもってド正論だね……」



心「でも、どうしても動かずにはいられなかったっていうか」



飛鳥「……なぜ?」



心「なぜって……そりゃあ、やっぱり。今がすっごく楽しいからかな」



心「憧れのアイドルになれて、やりたかった仕事も少しずつできるようになってきて……だから、ついついはしゃいで無理しちゃうんだよね」



心「家族にも心配かけてる身だし、今頑張らなくていつ頑張るんだー、って感じ」



心「進んで進んで進み続ける。それがしゅがーはぁと流だ☆ ……なんて言って、本当にダウンしたらただのバカなんだけどね。あーあ……」



飛鳥「……そんなことはないさ」



心「え?」



飛鳥「すごいな。ボクにはとても届かない……あなたのように、自分を信じて全力で走り続けるなんて、できない」



心「飛鳥ちゃん……」



心「……ちょっと、こっちに顔近づけてくれる?」



飛鳥「ん……こうかい」



心「うん、そうそう……」







心「ていっ」デコピン



飛鳥「あいたっ」



心「なーにができないだ、勝手に後ろ向きに決めつけんな♪」



心「ほとんど毎日、レッスンやったりお仕事行ったりしてるんだよ? そんなの、走れない奴にできるわけないじゃん」



飛鳥「でも」



心「でも、は禁止。難しく考えすぎずに、自分のやりたいようにやればいいの♪」



心「それに……自分をまだ信じられなくても、他に信じられるものが近くにあるだろ☆」



飛鳥「信じられる、もの」



心「そ。飛鳥ちゃん流に言うなら……キミをこのセカイへ導いた、運命の人ってところかな」



飛鳥「………」



飛鳥「なるほど……確かに、それならボクにも信じられる」



飛鳥「病人に元気づけられるなんてね……まったくもって、ボクは未熟者。青い果実だ」



心「いいってことよ☆たまにはこっちも、大人らしいところ見せないとな」



飛鳥「……お返しと言ってはなんだが、あとで食べやすい料理でも作ってくるよ」



心「お、それは楽しみ……なに作ってくれるの?」



飛鳥「チャーハンがゆ」



心「え、なにそれ」



飛鳥「チャーハン風味のおかゆさ。意外とイケるよ」フフッ



翌日





心「はぁと、ふっかーつ☆」



梨沙「もう大丈夫なの? 昨日早退したって聞いたけど」



心「おう☆チャーハンがゆが効いたみたい♪」



心「ね、飛鳥ちゃん♪」



飛鳥「……それはよかった」



梨沙「? なんかうれしそうね、飛鳥」



飛鳥「別に、なんでもないさ。……今日も頑張ろう」



梨沙「………」ポカン



飛鳥「どうかしたかい」



梨沙「……ハートさんの熱が移った? 飛鳥がストレートに『頑張ろう』だなんて」



飛鳥「別に、そういうわけじゃないから心配無用だよ」



梨沙「ふーん……ま、いいけどね」



心「んじゃ、今日もスウィーティーにいこー!」



飛鳥「………」



梨沙「………」





心「いやここは乗るとこじゃないかなぁ!?」



飛鳥「ボクの世界観に合わない」



梨沙「単純にバカっぽい」



心「キミ達ホントに可愛げがないよねぇ……」ピクピク







P「三人とも、そろそろお仕事の時間だぞー」







心「レッツゴースウィーティー! はい、復唱!」



飛鳥「れっつごー」



梨沙「すうぃーてぃー」



心「しょうがない今日はこれで勘弁してやるぞ☆」





P「………」





P「仲良しだな」





おしまい





21:30│佐藤心 
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