2014年04月11日

モバP「杏のために飴はある」

シンデレラガールズのSSです



独自の設定や人によってはメタな発言があるのでご理解いただけたら感謝です

ちなみにタイトルはパロってますけど内容全然関係ありません





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1396293230



P「双葉さーん。迎えに来ました。仕事に行きますよ」



杏『やだ』



P「いや、やだじゃないですよ! インターホン越しで話を終わらせないでください! せっかく仕事取って来たのにー」



杏『新しいプロデューサーだよね? じゃあ杏のことなんて聞いてる?』



P「とてつもない才能を秘めたアイドルの申し子と聞いています」



杏『ほかには?』



P「飴が大好き」



杏『ほかには?』



P「すごい小っちゃい」



杏『ほかには』



P「怠け者」



杏『あ、朝の占いやってる。えっと「アイドルのプロデューサーさんは担当アイドルを甘やかすと吉」だって。ドンピシャだね!』



P「僕は占いを信じる質ではないですので、お願いですから出てきてください」



杏『なんか眠くなってきちゃった。後三度寝しなきゃ』ブチ



P「双葉さん? 双葉さーん!? ………何でこんなアイドル事務所に入社しちゃったのかな、僕」



事務所



ちひろ「それで、のこのこと帰って来たのですか?」



P「………ハイ」



ちひろ「それで、おめおめと手ぶらで帰って来たのですか?」



P「………返す言葉もないです」



ちひろ「言葉の一つぐらい返してください。全く、杏ちゃんを連れてくるのに一苦労はするだろうなぁとは思ってましたけど。まさか連れてこないとは思いませんでした」



P「泣き言は言いたくないんですけど、何でキュート部署に希望出しちゃったんだろ。どうせならクール部署にしとけばよかったですよ」



ちひろ「クールもクールで大変ですよ。特に蘭子ちゃんとか。私たちの知りうる言語では会話はできませんね。まあ杏ちゃんも引けを取りませんけど」



P「神崎さんは顔を合わせられるだけいいじゃないですか。扉越しの会話なんて電話と変わりませんよ。双葉さんの前任者はどうしてたんですか? 何人かいたけど全員辞めていったって聞きましたけど」



ちひろ「そうですね。まずどうしていたかって言うのを答えるなら、飴を使って仕事やレッスンに行ってもらっていましたね」



P「飴は大好きとは聞いてますけど、それで本当に来てくれるんですか?」



ちひろ「高い確率で釣れます。たまになにも用意してなくても強行手段で連れてくることもありますが、まあそんなことをしなければ仕事をしてくれないアイドルのプロデュースなんかしたくないと既に三人やめてますね。後これがいつもの飴です」



P「飴ですかぁ………とりあえずもう一度催促してみます」



P「双葉さーん」



扉「………」



P「飴ありますよー」



杏「飴?」キィ



P「ほんとに来た。はい飴です。好きなんですよね?」



杏「これってちひろさんから渡されたの?」



P「そうですけど」



杏「ま、行き詰ったらいつもこれだよね。杏のプロデューサーは最初、ちひろさんから渡された飴を持ってきて仕事に誘う。さすがに何回も同じ飴だったから、今度のプロデューサーもそうだろうなーって思ってたら、大当たりだね」



P「で、仕事は?」



杏「ん、わかってるって。飴はもらったからその分は働くよ」



P「そうですか! ありがとうございます!」



杏「でも、次は違う飴がいいなー………疲れた。帰っていい?」



P「まだ扉から三歩と離れてないじゃないですか………」

事務所



P「とりあえず今のところは飴があると仕事をこなしてくれます」



ちひろ「あの子もわがままで働きたくないってだけで悪い子ではないですから」



P「それでもわがまま過ぎですよ。最近飴を持っていくと「前のプロデューサーが持ってきた飴だ。感傷に浸った。休もう」とか言ってサボろうとするんですよ」



ちひろ「変な知恵つけましたね杏ちゃんも。でもなんだかんだ言って来てくれるんですよね?」



P「まあ、いつものやる気の半分以下ですけど。飴の種類は豊富ですけど、どれが被ったものとか考えると結構胃がキリキリしてしまって」



ちひろ「来てくれるだけ儲けものですよ」



P「でもどうせならやる気一杯で仕事に行ってもらいたいじゃないですか。こう、飴が被ってると、僕のせいでやる気をなくしてるって思えちゃったりもしますし」



ちひろ「………」



P「何ですか? 何か変なこと言いました?」



ちひろ「真面目ですねー。新人プロデューサー特有さと言いますか。ですが杏ちゃんが街中で売られている飴を網羅してるといっても過言ではないほどの飴マニアですよ。被ってないほうが難しいと思います」



P「そうですか………そうなるともはや自分で作ったほうがいいんじゃないかって思えますね」



ちひろ「………作ります?」



P「作れるんですか?」



ちひろ「作るのはプロデューサーさんです。お菓子作りが得意な子がキュート部署に入るんですよ」

かな子「え? なんですか?」



ちひろ「今絶賛口の横にクッキーの破片をつけて幸せそうにケーキを頬張るこの子がお菓子作りの名人です」



かな子「え? あ! えっと、ちょっと待ってください。クッキーの破片って………」



P「三村さん、ですか。こうやって顔を合わせるのは初めてですね。新しく入社したPです。どうぞよろしくお願いします」



かな子「あ、はい。よろしくお願いします。三村かな子です」



P「先日のニューウェーブとのLIVE。好評だったみたいですね。三村さんもランクSRに昇格したみたいですし。順調にアイドルとしての人気も着々と集まってますよ」



かな子「そんな! 私がランクSRなんてまだまだです。それに………ですし」



P「何か………言いました?」



かな子「な、何も言ってません!」



ちひろ「ところでかな子ちゃん。お菓子作りについて聞きたいことがあるんですけど」



かな子「ちひろさんが作るんですか?」



P「僕が作ります。双葉さんのために飴を作ろうと思って」



かな子「杏ちゃんに? 杏ちゃんの新しいプロデューサーですか?」



P「ちょっと、あまり仲が良くないものでして」



かな子「なら、一緒に作りますか?」



P「いえ! まずは僕の力だけで作ってみます。レシピのようなものはありますか?」



かな子「レシピ………ならまず簡単なべっこう飴の作り方をメモして………これです」



P「ありがとうございます! さっそく作ってみますよ!」



ちひろ「………心配ですね」



かな子「大丈夫ですよ。飴作りは時間かかりませんし」





P「双葉さーん」



扉「………」



P「………アーメ」



杏「………今日は何味?」



P「まあ、口にしてからのお楽しみってやつですよ」



杏「? 珍しく紙袋に入った飴だ」



P「食べてみてください。さぁ」



杏「今日は随分と押せ押せだね………じゃあもらってみよっかなーっ?!」



P「どうですか?」



杏「………なにこれ?」



P「驚かないでください。恥ずかしいんですけど、僕自作の飴です。昨日初めて作ってみたんですよ。どうですか? おいしいですか?」



杏「これ、プロデューサーが作ったの?」



P「はい! 双葉さんは飴奉行なる話を聞いたので。商品としての飴では舌が肥えてると思い、作らせてもらいました」



杏「ふーん………プロデューサーが」



P「で、どうですか?」



杏「………杏のために作ってきてくれたんだ。なら、今日はちゃんとはたらこっかな」



P「はい! 今日は仕事ではなくレッスンでして………」

事務所



かな子「それで、飴を作ってみたんですか?」



P「ええ。双葉さん、そのあとすごくやる気を出してレッスンに励んでくれて。僕の作った飴がそんなに良かったんでしょうか」



かな子「そうかもしれませんね。確かに杏ちゃん、ちょっと嬉しそうな顔してたかな」



P「そうですか! あ、作った飴。皆さんにも食べてもらおうと思って持ってきてるんですよ。食べてみます?」



かな子「じゃあ、一つ………ッ!?」



P「どうですか?」



かな子「Pさん………味見は、しました?」



P「? いえ。杏さんのために作った飴ですから僕は食べてませんけど」



かな子「一つ、食べてみてはどうでしょうか?」



P「そうですか。では一つ………っ!? なにこれ………美味い不味い以前の問題で………飴の食感じゃない」



かな子「そういう、ことです」



P「しかも………お世辞にもおいしいとは言えませんね………」



かな子「レシピ通りに、作ったんですか?」



P「そのつもりですけど。でも何で双葉さんはこんな味を絞り、噛みつくしたガムのような飴でレッスンを快く引き受けてくれたんでしょうか」

かな子「それは………飴を作ったからだと思います」



P「こんなにまっずい飴なのに?」



かな子「きっと「自分のために作ってくれた飴」なので杏ちゃんはPさんの気持ちを分かったんだと思います」



P「しかし、こんな飴。市販の方が遥かに味がいいですし、こんなものを食べさせてしまって………僕は、ほんとに駄目ですね」



かな子「こんなものでも、杏ちゃんは味以上の物を感じ取ったんですよ。杏ちゃんはいい子ですから」



P「………三村さん。お願いがあります」



かな子「はい? なんですか?」



P「僕に飴の作り方を教えてください。双葉さんにちゃんとした飴を食べてもらいたいんです」



かな子「Pさん………」



P「双葉さんはこんな飴を嫌な顔一つせずに食べてくれました。だけど、今思えばおいしいの一言を聞いてません。ですので彼女の口からおいしいと言ってもらえる飴を作りたいんです。お願いします、三村さん」



かな子「………いいですよ。飴のお菓子もいっぱいありますし、色々教えてあげます。一人でお菓子作りをするより、みんなでした方が楽しいですし」



P「ありがとうございます! じゃあさっそく、明日の双葉さんに渡す飴を作るので見てもらいたいんですけど………」

P「双葉さん」



扉「………」



P「飴です」



杏「………」



P「これ、食べていただけますか?」



杏「………手作り?」



P「先日の飴は………確認不足でした。今回作った飴は………余計な気遣いをさせてしまったみたいで。もう一度チャンスをもらえないでしょうか?」



杏「………パク」



P「………」



杏「………ダメ。全然なってない。プロデューサーは飴ってものを何にもわかってない!」



P「そう………ですか」



杏「でも、前の飴より一億倍はマシになってる………頑張ったじゃん」



P「! ありがとうございます!」



杏「でも! 杏から言わせたらまだまだだよ! こんなので満足してちゃいけないかな。うん」



P「はい。でも双葉さんはあの飴を食べて、何も言わなかったのは僕を思ってって聞きました。優しいとは聞いてましたけど、本当だったんですね」



杏「な! 人聞きが悪い! 杏は別にプロデューサーのためを思って黙ってたんじゃない! ただ、手作りに驚いて何も言えなかっただけだ!」



P「でも、双葉さんには嫌な思いをさせてしまいました。それ以上に僕は悔しかった。双葉さんのために作った飴が酷評すらもらえなかったのが」



杏「あ、杏は悪くないぞ」



P「ですから、チャンスをください。これから飴を作り続けます。双葉さんの口からおいしいって聞けるまで。だから、味見をお願いできますか?」



杏「………言っとくけど杏は甘くないよ!」



P「甘い飴は嫌いなんですか?」



杏「いや違う………作ってくるなら! ビシバシ文句言ってやる! 覚悟しろ!」



P「はい!」

次の日



P「双葉さーん」



杏「ダメ」



次の日



P「どうですか?」



杏「ダメダメだね」



次の日



P「結構自信作です」



杏「クラゲレベル」



次の日



P「ちょっとアレンジを」



杏「食感が悪いよ」



次の日………etc

P「心が、折れそうです」



かな子「あはは………がんばってくださいPさん」



P「結構作って来たと思ったのに、全然褒められた覚えがない。向いてないのかな、僕」



かな子「そんなことないですよ! 私はおいしいと思いますよPさんの飴」



P「ありがとうございます。でも双葉さんはそれを言ってくれないんですよ」



かな子「何でですかね。にしても、Pさんもすっかり上達しましたね。今となっては私と一緒に三段のデコレーションケーキまで作れるようになりましたし」



P「これも三村先生のご鞭撻のおかげです」



かな子「その、三村先生って言うのやめませんか?」



P「何でですか? こうやって新しい趣味を持てたのは三村先生のおかげ。何より、今でも教えられてますから」



かな子「年下ですよ」



P「敬意を持つ人に年齢など関係ありません」



かな子「どうして聞いてくれないんですか?」



P「頑固者ですから」



かな子「………なら、先生はとやかく言いませんけど。せめて名前で呼んでください」



P「名前で? 何でですか?」



かな子「その、私たちも結構こうして一緒にお菓子作りをしてますし、親しい仲だと思うんです。何より私だけ名前呼びですし」



P「わかりました。じゃあ今からかな子先生と呼ばせてもらいます」



かな子「かな子先生………もう一回呼んでもらっていいですか?」



P「かな子先生」



かな子「………もう一回だけ」

愛梨「かな子ちゃん♪」



かな子「うわぁ!!!?」



P「ん? あなたは確かパッション部署の十時さん」



愛梨「十時愛梨ですっ。よろしくですっ。私のこと知っててくれたんですね」



P「もちろんですよ。総選挙一位を知らないはずはないですから。僕はPです。アイドルたちはあまり違う部署に行くことも来ることもないので驚きましたよ」



愛梨「そんなことないですよ。私はよくかな子ちゃんと一緒にお菓子作りしますし。にしても暑いですね」



P「いや、まだ肌寒いくらいの温度ってちょっと! 何服に手をかけてるんですか!?」



かな子「愛梨ちゃん! ダメ! Pさんの前、前!」



愛梨「あ………ごめんなさいっ!」



P「は、肌………白………!」



かな子「………Pさん?」



P「と、十時さんは何でキュート部署に来たんですか?」



愛梨「最近、かな子ちゃんとお菓子を一緒に作ってなかったので、いるかなーって顔を出したんですけど。まさかかな子ちゃんがプロデューサーさんと一緒に作ってるなんて思わなかったなー。名前呼びをお願いしながら」



かな子「ち、違いますよ! 別にそんな………ねぇPさん」



P「ムチムチが………くんずほぐれつ………!」



かな子「………Pさん?」





P「へー! 十時さんのケーキは絶品! 頬っぺたが蕩ける! 腰砕けの骨抜き状態! いいですね! ぜひ食べてみたいです!」



愛梨「いいですよ。ごちそうになります! あれ? ごちそうします! でもかな子ちゃんと一緒に作ったのが一番おいしかったんですよっ」



かな子「一緒に作るとおいしくなるんですよ」



愛梨「そうだね! にしても杏ちゃんの担当プロデューサーだったんですね。最近会ってないんですけど、杏ちゃんはどうですか?」



かな子「杏ちゃんは最近仕事熱心ですよ。ね、Pさん」



P「仕事熱心というより、飴があればちゃんと働いてくれるんですよ」



かな子「Pさんは杏ちゃんの飴を作ってるんですよ」



愛梨「そうなんだっ。杏ちゃんやればできる子ですから、仕事はきっちりこなしてますよね」



P「そうなんですよね! 双葉さんニートで働きたくないーとか言ってますけど、仕事もレッスンも完璧にこなすんですよね。基本一発撮りの歌もダンスも一度で覚えるし。面倒なのは妖怪飴くれなところだけですよ」



かな子「そうだと思いますよ。杏ちゃんはキュート部署の中でもかなり期待されてますし。私と同期でしたけど、杏ちゃんは最初からランクRでしたし………」



P「? でもかな子先生は今ランクSRですよ。双葉さんよりランクは上です」



かな子「確かにランクSRはうれしいです。けど、まだまだ。ランクSRと言っても一番下の10です。杏ちゃんは仕事に不真面目であんまり上を目指すって姿勢がないですから今でも当初のランクRですけど、そのランクRでも11です。数字的には私の方がしたなんですよ。杏ちゃんは今すごく頑張ってますから、すぐ抜かれちゃいますよ」



愛梨「大丈夫だよっ! かな子ちゃんだって頑張ってるよ。そんなに落ち込んじゃダメだって」



かな子「でも、私なんて何の取り柄もないですし、頑張ってきましたけど。本当に、本当のアイドルになれるかって、心配なんです………」





P「偉い人は言いました。アイドルとは獅子であれ」



愛梨「? どうしたんですか?」



P「昔聞いた話です。と言ってもアイドルに限った話ではありませんけど。しかも獅子でも何でもいいです」



かな子「もう、何でもいいんじゃないんですかそれ?」



P「えっとですね。アイドルはライオンです。仕事と言う名の肉を貪欲に求めています。しかし、肉の数は限られてますし皆が皆、ご飯にありつこうと必死です。ですから、ライオンたちは普段から肉を逃がさないよう自分の牙を研いでいます。牙と言うのはアイドルとしての魅力、自分のアピールポイントです」



愛梨「牙を研ぐは、レッスンのことを言うんですか?」



P「それもありますが、自分のことを知る。自分自身を信じることも含まれます。例えば、双葉さんはとても鋭利な牙を持っています。それに普段からその牙を研ぎ、生活の中に組み込んでいます………ただニートニート言ってるだけですけど、それでもそれが彼女のキャラクターなのです。ですけど彼女は特異な存在です。誰よりも鋭利牙を持っていながら、肉に食らいつこうとしない。彼女はライオンのくせにベジタリアンなんですよ」



かな子「ですけどお肉、仕事はきっちりこなしますよ」



P「そうです。ベジタリアンと言っても彼女は肉を食べないわけじゃない。いわば雑食。ちょっと言い方が変かもしれませんけど。雑食だからこそ双葉さんはどんなものにでも対応でき、あんなサボりがちでもこのアイドル業界で生き残ってる。僕は彼女と接してきてそう思いました」



かな子「よくわかりません。つまり杏ちゃんはアイドルとしての必要なものを持ってるってことですか」



P「双葉さんは今でもニートキャラとして売り出しています。アイドルになって仕事をしなくちゃならない立場になっても、その姿勢を崩そうとしないのは芯がしっかりしてるといってもいいと思えてきたんですよ」



かな子「やっぱり、杏ちゃんはすごいんだ」

P「………かな子先生も双葉さんに負けないくらいの牙を持っています」



かな子「でも、私にはそんなの」



P「決定的な違いは自分自身を疑っていることです。今のあなたは誰がどう見ても立派なアイドルなのに、その自分に戸惑いを持ってます。総選挙一位になった十時さんを見てください」



愛梨「私ですか?」



P「総選挙一位ですから入社当初から興味を持っていましたよ。あなたの担当プロデューサーから聞きました。十時さんは一緒にトップアイドルとトッププロデューサーになろうって言ったそうですね」



愛梨「そうでしたっけ? 言ったような言わなかったような」



P「喜んでいましたよ。初めての衣装合わせの時トップが目標と高々と宣言して、本当にトップアイドルになるんですから」



愛梨「私はプロデューサーさんを信じて頑張っただけですっ」



P「それでいいんです。プロデューサーを信じて、頑張った結果がトップなんですから。ですがかな子先生。あなたは自分自身をちょっと下に見過ぎています」



かな子「Pさん………手」



P「僕はお菓子作りを通じてあなたのことをたくさん知りました。何なら言いましょうかあなたの魅力を。お菓子作りが上手、とても女の子らしい。それをとても幸せそうに食べる姿。僕のを食べてもらうときの笑顔は、こっちもうれしく思えますよ」



かな子「み、見てたんですか?」



P「肉付きのいい体………ムチムチ」



かな子「………Pさん?」



P「と、とりあえず! あなたは他の誰にもない魅力があります。十時さんもケーキ作りが趣味ですけど、お菓子と言ったらまずかな子先生が挙げられると思いますし!」



愛梨「うん………それは認めるかな」



P「あとは、信じるだけです。自信を持つだけで、あなたは一気にスターダムを駆け上がると思います。10なんて目じゃないもっと上に行きます。僕が保証します」



かな子「………ありがとうございます。Pさんが言うなら、信じてみます」



愛梨「かな子ちゃん………あなたのプロデューサーさん。いい人だね」



かな子「いや、違いますよ。Pさんは私のプロデューサーじゃないです」



愛梨「え、そうなの? ここまで親身になってくれるからてっきり………あ、そろそろ時間だ。では失礼しますっ」



かな子「あ、うん。ちょっと私も席外しますね」



P「はい。じゃあここで待ってますね………二人とも行ったか。スゥー………」

P「恥ずかしー! 何言ってんだろ僕! アイドルは獅子であれ? やっべ咄嗟にあんな言葉が出るとか頭ン中かき乱して見てみてぇ!」



P「しかもちゃっかり手を握って………柔らかい! やばい若さを感じた!」



P「落ち着け落ち着くんだ僕………とりあえず今作ったケーキを平らげて気持ちを落ち着かせて………」



ちひろ「何やってるんですか? プロデューサーさん………そんな大きいケーキを口いっぱいい含んでがっついて」



P「はっ!? ち、違うんです! お腹が空いてただけなんです! 別に何も叫んでません!」



ちひろ「………休養も大事ですから」



P「ちが………!」



かな子「あ! Pさん! せっかく作ったケーキ一人で食べ始めちゃったんですか!?」



P「あ、あ!? いや、お腹空いて………」



かな子「ひどいです!」



P「ち、違うんです先生! せんせーい!」



ちひろ「杏ちゃんのプロデューサーなのにかな子ちゃんとの交流が多くないですかね?」

スタジオ



杏「………ねぇプロデューサー。杏、帰りたくなった。いや、言っても仕方ないか。隙をついて逃げよう」



P「待ってくださいやる気をなくさないでください。今日の仕事は結構大きいんですよ。これがうまくいけばランクSR入りは間違いありません」



杏「ただの雑誌の撮影じゃん。そんなにすごいの?」



P「某週刊誌に載せられるんですよ。一気に知名度は上がります! にしても双葉さんはすごいですね。こんな有名な雑誌の撮影なのに、そんなに余裕でいられるなんて。と言うより僕が緊張しています………」



杏「別にランクSRに興味はないし………それより帰りたーい。だらけたーい。週休八日を希望したーい」



P「一週間は七日だけなので物理的に無理ですよ」



杏「限界を超えても休みたいってたとえ話だ! それぐらい杏にもわかってるって」



P「そうですか。ニートだから曜日感覚がないものとばかりに」



杏「バカにしてない?」



P「遠からず、近からずです」



杏「バカにしてる! わかったよ。とりあえず仕事だけはするから」



P「今回のコンセプトは妖精ですので一応妖精っぽくお願いします」



杏「こんなポップな恰好なのに?」



P「だらだら妖精です」



杏「なるほど。杏にはぴったりってわけか。こんな感じ? きらっ☆」



P「超キュート! 完璧です!」



杏「そんな大声で言わなくても。労力の無駄だよ。じゃあ、きつけに飴頂戴。あー」

P「え? 僕が食べさせるんですか?」



杏「今から撮影だから少しでも手は汚したくないの。ほら、早く。あー」



P「あ、はい。じゃあ失礼します………」



杏「言っとくけど、放り投げるのは止めてね。ちゃんと舌の上に置いてくれないとヤダから」



P「ハイハイわかってますよ」



杏「ん………コロコロ」



P「どうですか? 結構自信作なんですけど。おいしいですか?」



杏「………精進したまえ。道のりは厳しいのだ〜」



P「またですか。かな子先生はおいしいって言ってくれるんですけどね」



杏「ん? かな子先生?」



P「言ってなかったですよね。かな子先生にお菓子の作り方を教わってるんですよ。お墨付きなのになぁ」



杏「ふーんかな子ちゃんに教えてもらってるんだ………まあ私から言わせてもらえばまだまだだよ。こんなんじゃニーズは満足しないから。もっと私のために飴を作るんだ」



P「………もしかしてわざとおいしいって言わないでずっと作らせるつもりですか?」



杏「まさか〜。杏は顧客として率直にふんぞり返りながら感想を述べてるだけだから」



P「本当ですかねー」



杏「本当かどうか確かめたいなら、おいしい飴を作ることだね」



P「まあ、言い返せないですね。撮影頑張ってくださいね」



杏「やらない。あ、間違えた。頑張らない」



P「変わらないですよそれ………」

P「双葉さん! おめでとうございます! この前の撮影でランクSRの15にランクアップです!」



杏「そうなの? あれでランクSRかぁ。チョロいもんだね。まあこれが杏の実力かな。だから少しくらい休みもらってもいいよね?」



P「ダメです。にしてもすごい自信ですね。それなのにランクSRにあまり興味がないとなると。色々な意味ですごい才能ですよ」



杏「別に杏は自信を持ってるわけじゃないよ。ただこなしてくだけでいい結果が出るんだよ。当たり前ってだけ」



P「………本当にすごいですよ。他のアイドルたちは不安でいっぱいだって言ってるのに」



杏「確かにうちの事務所は実力あるくせに何でか自信がないって子が多いよね。例えば………かな子ちゃん」



P「当たりです。結構人のことも気にかけてるんですね」



杏「別にそういうわけじゃないって! かな子ちゃん、ランクSR入りはしたけどまだ自分の思うアイドル像に不安を感じてる感じがするんだ。でもそれも仕方ないことだよ。好きな言葉に人は人、私は私ってのがあるんだけど。そればっかりは自分でどうにかするしかないんだ」



P「まあ、そうですけど」



杏「杏は何もしてあげられないよ。頑張れって想うことぐらいしか」



P「じゃあ、想ってるんですか? かな子先生にがんばれって」



杏「………別に想うだけなら疲れないし」



P「へ〜………」



杏「何にやにやしてるのさ! と言うより! 今日は本当にオフじゃん! 何でオフまで家に来るのプロデューサーは!」



P「いやーランクSR入りが嬉しくて嬉しくて。一秒でも早く直接伝えたくて」



杏「休みの日まで仕事の話はしたくない〜! でも来たんならついでに口に飴入れて。持ってきたんでしょ?」



P「今日はオフですし、自分で食べられてはどうですか?」



杏「めんどくさいじゃ〜ん。こんなことプロデューサーにしかしないんだよ〜」



P「光栄な雑用で。はい口開けてください」



杏「あー………少し前進かな」

P「結局追い出された………さすがに休日まで押し掛けるのはマズかったですかね。でもちゃっかり部屋の掃除させられるし………断ったほうが良かったのか?」



P「あとは帰るだけだけど………ちょっとくらい寄り道してもいいよね、ばれなきゃ。甘いもの食べたいけど、そういう店に男一人は厳しいな………ん? あれはかな子先生? せんせーい」



かな子「うん………ん? あ、Pさん! 奇遇ですね。どうしてここに?」



P「双葉さんの家に行ってたんですよ。ランクSRのことを報告に」



かな子「そうなんですか。この前の撮影で杏ちゃんはランクSRの15になったそうですね。やっぱりすごいです杏ちゃんは。簡単に上に行けちゃうんですから………」



P「あー………手に持ってるそれ! ジェラートですよね。おいしそうですね〜。そこのお店で買ったんですか? ちなみに、頬っぺたに盛大についてますよ」



かな子「え? やだ!」



P「今片手がふさがってるじゃないですか。待ってください、ハンカチで………ハイ取れました」



かな子「え? え!? Pさん………こんな恥ずかしいことを平然と」



P「え………あ、僕もジェラート買ってきますね………買ってきました! おいしいですね」



かな子「はい………心なしかPさんと一緒に食べるとおいしく感じます」



P「へぇそうですか。魔法みたいですね」



かな子「はい。おいしくなる魔法にかけられたみたいですね。フフ」







P「話を聞きましたよ。今度結構大きなLIVEが開催されるって。かな子先生はその主役。僕の見立てではうまくいけばランクSRの14までランクアップしますね」



かな子「私のプロデューサーもそう言ってました。ですけど、本当にうまくいくんでしょうか………」



P「ヘマさえしなければ、かな子先生の実力ならうまくいきます」



かな子「ヘマさえ、ですか」



P「言葉間違えましたかね。大丈夫ですよ。来てくれるファンの方たちはみんなあなたのために来てくれるんですから」



かな子「でも、失敗してみんなに嫌な思いをさせて」



P「させてはだめです。そんな考えがあるから嫌な思いが生まれます」



かな子「でも………不安、なんです」



P「………魔法をかけましょう」



かな子「Pさんがですか?」



P「いいえ。かけるのはあなたです。と言うより、すでに僕がかかってます。このジェラートはあなたと一緒に食べています。あなたと一緒にジェラートを食べれることがとても幸せです。きっと、一人で食べるよりおいしく感じてると思いますよ」



かな子「私もPさんと食べると、いつもよりおいしく感じます」



P「それが魔法です。それをLIVEでもするんです。かな子先生がLIVEを心から楽しみ、LIVEを楽しむことをファンの皆さんに伝える。あなたが楽しくするだけで会場は魔法に包まれます」



かな子「ファンの、みなさんと」



P「楽しむと同時にもう一つの魔法を。ありがとうの魔法を忘れないでください。ファンのみんなに感謝をして、初めてLIVEが成功するでしょう」



かな子「………なら一つだけ、お願いです。私に緊張しない魔法をかけてください」



P「緊張しない魔法って………えっと、あーん」



かな子「? 食べさせてくれるんですか?」



P「あれですよ! 最近仕事の前には双葉さんに食べさせろって言われてまして。そうするとすごくいい感じに仕事をしてくれるんです。緊張したら時には好きなものをって思いまして」



かな子「………あむ。ありがとうございます。魔法、かけられちゃいました♪」



P「そうですか。頑張ってくださいね」



かな子「はい!」

杏「珍しく杏一人で、自主的に事務所に来ちゃった………どうしたんだろ。いつもならプロデューサーが迎えに来るまでダラダラしてるのに………これはプロデューサーのせいだね。杏のキャラをブレさせようとする陰謀だー。事務所で思いっきりだらだらしよ………ん? あれ、プロデューサーとかな子ちゃん?」



かな子『ありがとうございますPさんのおかげでLIVEは大成功でした!』



P『ええ、見事なライブだったと聞きましたよ。ランクSRの14に昇格おめでとうございます。でも僕の力じゃなくてかな子先生の力です。』



杏「そういえばプロデューサーがかな子ちゃんと仲がいいって話してたな。何の話をしてるんだろ」



かな子『いえいえ。Pさんの緊張しない魔法が聞いたんですよ』



杏「緊張しない魔法?」



P『いや、今思うとあんな恥ずかしいことを公然でしてしまうとは』



杏「は、恥ずかしいこと!?」



かな子『それで………こんなものなんですけど、お礼を』



P『お礼ですか? そんないいのに。ですけど、僕のために用意してくれたみたいですので。喜んでいただきますよ』



かな子『では、私も仕事があるので』



P『お疲れ様です。さて、もらった中身はなんだろな………チョコ?』



杏「チョコクッキーだね?」



P「うわぁ! 双葉さんいつの間に!?」



杏「何でそんなに驚くのさ」



P「驚きますよ。いつも家から噛みつくように出たがらないのに一人で事務所に来たんですか?」



杏「まあ、気紛れだよ気紛れ。もしかしたら次の瞬間には帰りたく………帰ろ」



P「帰らないでください。チョコクッキー分けますから」



杏「それはプロデューサーのためのなんだからプロデューサーが食べればいいじゃん」



P「そうですかでは遠慮なく………お、結構形凝ってますねー。星形に菱形………ハート形が多いみたいですね」



杏「………」

P「双葉さーん。双葉さーん! 全く。どこ行ったんでしょうか。最近自主的に事務所に来ると思えてきたのにそれに反して姿をくらますようになって、働くことへのアンチテーゼか」



杏「ぷ、プロデューサー!」



P「双葉さん! どこ行ってたんですか? 次の仕事のだだっ子お姫様の企画の話し合いをするって言ってたじゃないですか」



杏「助けて!」



P「は? 助けてって、何から、」



???「にょっ………!」



P「にょ?」



きらり「わー!!!」



P「わぁああああああああああああああ!!?」



杏「プロデューサー!!!! プロデューサー。かわいそうな杏のプロデューサー。たった今、私の目の前で若い命を散らせてしまって。大丈夫骨を拾うのはめんどくさいややっぱり。とりあえず一週間に一回ぐらいお供えしてあげるよ」



P「貴様ぁ。今僕を亡き者と見たな! いいでしょう。列島縦断レポーターの旅一ヶ月の仕事に処すことにします」



杏「ちょっ、嫌だ! 最近プロデューサー生意気になったね! 仕事しかくれないプロデューサーなんて嫌いぐえぇ」



きらり「うっきゃー! 杏ちゃーん。追いかけっこ楽しかったにぃ」



杏「ち、違う! 別にそんなつもりはないぞ!」



P「あなたはパッション部署の諸星さんですね」



きらり「にょわにょわ。そうだにぃ。諸星きらりだよぉ。きらりんって呼んでね☆」



P「わかりました。僕はPです。よろしくきらりん☆」



杏「順応早っ!」



P「双葉さんときらりんは同期の中でも特に仲がいいと評判でしたね。ですがキュート部署に来たのを見たのは初めてですよ」



きらり「うんとねぇ。杏ちゃんってあんまり事務所にいないから寂しかったんだにぃ。でも最近は事務所にいるからとーっても楽しい☆」



P「ほう。本当に親友なのですね。微笑ましい」



きらり「でしょー☆ ねー杏ちゃーん。久しぶりにきらりんルームに来ないー?」



杏「あ、あの部屋………そうだ! 今から杏、プロデューサーと仕事の打ち合わせしなくちゃいけないからいけないかなー?」



P「! 双葉さんが………仕事に積極的に………!」



きらり「そうなの? 一緒にいたくない?」



杏「そんなことはないって! でも今から大切な話だから! ね、プロデューサー」



P「双葉さんが仕事に自分から打ち込んでくれたー! 今日は最良の日ー!」



杏「聞いてよプロデューサー!」

P「確かに今からする打ち合わせはとても大切なものです。すみませんきらりん。双葉さんの言う通りなんです」



きらり「にょわにょわ………そうなんだ。ざーんねん☆ じゃあね杏ちゃん。また来るにぃ☆」



杏「うんバイバーイ………ふぅ嵐は去った」



P「別に巻き込まれるのは嫌いじゃないんですよね」



杏「まあね。きらりはいい子だし。お菓子とか服とかくれて誰かとは違って甘やかしてくれるし。きらりんハウスはヤバイけど」



P「そうですか」



杏「プロデューサー。きらりみたいに甘やかしてくれないと、仕事サボってきらりのところに戻っちゃうよ」



P「なら、何で戻って来たんですか? そのままきらりんルームに連れてかれればよかったじゃないですか」



杏「そんなのプロデューサーのほうがいいからに決まってるじゃん。何言ってんの。あ、膝に座らせてもらうからね」



P「………双葉さん」



杏「ここなら必要以上に弄られないしお菓子も飴も何でもあるからねー」



P「双葉さん………」



杏「でも、プロデューサーの方がいいってのは本当………かもしれないよ?」



P「そうですか。じゃあ戻らないように甘やかしますよ。お茶入れてきますね」



杏「………本当なんだよ」



P「それと!」



杏「行ったんじゃなかったの!?」



P「きらりんの最近の仕事にゴシックプリンセスってのがあったはずです。ですから、きらりんのプロデューサーと掛け合って共同企画にしようかなって思ってるんですよ」



杏「え? 何それ!?」



P「今思いつきました。と言うより前々からユニットの案が出てたので丁度いい機会です。すぐに連絡をします」



杏「うん………そうだね。共同企画って、サボれないじゃんか」

杏「そして仕事当日〜。杏は束縛されていた。とても煌びやかな箱の中〜。どうしよもないや。脳内の逃走計画を実行に移すのもめんどい………」



きらり「杏ちゃーんつんつーん。ハピハピが、足りない? ちゅーにゅーすゆー?」



杏「きらり………杏と違って楽しそうだね。杏は布団が恋しいよ」



きらり「じゃあ抱っこしてあげゆー。杏ちゃんふかふか〜☆」



杏「布団の代わりには………落ち着く〜。ん?」



P「いいねぇいいねぇ。凸凹コンビののどかなスキンシップ。写メを取りましょう」



杏「プロデューサー………出歯亀だねぇえっ!?」



きらり「取ってくれるの☆ うっぴゃー☆ 杏ちゃんほら! ポーズ☆」



P「いいですよぉ! はい撮りました。後で送りますね」



きらり「おにゃーしゃー☆」



杏「いてて。ん? ほらきらりの番だって。呼ばれてるよ」



きらり「りょーかい☆ いってくるにぃ」



杏「行ってらっしゃーい。じゃあ杏も行こうかな」



P「どこへですか。帰りの切符はまだ発行されてませんよ」



杏「杏が歩いた場所が帰り道になるのだ」



P「何言ってんだこのニート。きらりんも頑張ってるんですから、あなたも気合入れてください。新作の飴もありますよ〜」



杏「新作………!」

P「食べたければ仕事を頑張ることですね〜」



杏「くれないの?」



P「嘘です嘘です。ちゃんとあげますよ」



杏「飴〜………もう、ちょっとかな」



P「なかなかおいしいは出ないですね」



杏「まあ杏のおいしいは日によって変わるからね」



P「ランダムは厳しいですよ。そんなんじゃ永遠においしいにはたどり着かないじゃないですか双葉さんよ〜」



杏「………ねぇプロデューサー。今回の仕事がうまくいけばランクSRの………どれくらい行く?」



P「いきなりですね。僕の見立てでは17は堅いかと」



杏「じゃあさ。うまくいったら杏のお願い聞いてよ」



P「お? 珍しいですね双葉さんがそんなことを言うなんて。いいでしょう。モチベーションに繋がるなら聞いてあげますよ」



杏「んーとね。杏たちってコンビ組んで結構経つのに未だにプロデューサー名字で呼ぶじゃん。もうそろそろ名前で呼び合ってもいいんじゃないかな? まあ私は相も変わらずプロデューサー呼びだと思うけど」



P「ん? そうですかね。僕は好きですけどね双葉って呼びは。なんかこう。初々しい感じで」



杏「ロリコン?」



P「あなたはロリなのですか?」



杏「杏は花も恥じらう17歳だ! プロデューサーとあんまり変わんないだろ!」



P「でも僕の方が年上なのには変わりありませんよ。んんーそうですねぇ」



杏「だって、プロデューサーかな子ちゃんも名前で呼んでるじゃん。杏のプロデューサーなのに、杏よりかな子ちゃんの方が、距離は、その、あれ、近いの?」



P「言われてみれば、かな子先生を名前呼びしてますし。なら今から杏さんと呼ばせてもらいます」



杏「年下にさん付け………まあいいや。じゃあお願いしたいことだけど」



P「え? 名前呼びだけじゃあないんですか?」



杏「そんなわけないだろあんなんなら日頃普通に言うよ。その、仕事がうまくいったらどっかに連れてってくれない。ダラダラできる場所」



P「………ほんとにどうしたんですか杏さん。日本を代表するメディア露出型ニートのくせに自分から外出しようだなんて」



杏「別に杏は引きこもりじゃないんだから外に出たいとは思うよ。どうなのさ?」



P「そうですね。いいですよ。オフを合わせておきましょう」



杏「約束だかんね! 行ってくる!」



P「………やる気は出たみたいですね」

P「いよっし! ランクアップランクアップランクアップ! この前の仕事で杏さんときらりんが同時にランクSRの17に格上げ。もう名実ともにトップアイドルの一員とってもいいでしょうね!」



P「まあ、それはいいんですよね。それより問題なのは………杏さんの行きたい場所が皆目見当もつかないんですよねぇ」



P「どっかに連れてけと言われても、プロフィール欄に堂々と無趣味って書く人間ですからどこへ行こうが構わなそうと言えば構わなそうなんですけど………うーん」



かな子「おはようございますPさん」



P「あ、おはようございますかな子先生! 先のCM、メルティスイートの仕事。すごい好評でしたよ。これでランクSRの17ですね」



かな子「杏ちゃんもだだっ子お姫様の企画。ゴシックプリンセスと合わせてもうすごい話題になったって聞きましたよ」



P「はい。二人ともめでたくランクSRの17です。そして、あなたも。覚えてますか。僕が言った「杏さんにも負けない牙を持っている」って言葉を」



かな子「はい。覚えてますけど」



P「実現しましたね。杏さんもきらりんも最初はランクRの11でした。あなたはランクNの7からでした。スタート地点は違いましたがもう肩を並べてます。証明されましたね。僕の言葉が」



かな子「………今思えば、あの時から私はPさんの魔法をかけられてたんだと思います。あの時から………」



P「お役に立てて光栄です」



かな子「あの、これ。メルティスイートの仕事でもらったんです」



P「もらった? 系列の、ケーキバイキングの無料券」



かな子「よかったら一緒に行きませんか? 愛梨ちゃんも誘ったんですけど用事があるみたいで」



P「三人までって書いてありますね………そうだ。一ついいですか」

杏「プロデューサー。今日はどこに連れてってくれるんだろ。いやー楽しみ………杏も変わったなぁ。何で出かけるだけでこんなに口に出して楽しみにしてんだろ。まあ仕事に連れてかれるより何億倍もマシだしね。まず今日はどこに連れてかれようが〜まずは文句を言って、慌てるプロデューサーにフォローを入れる。そんなプロデューサーは杏に感動してこう言うんだ〜。「よし今月は全部仕事をキャンセルです」って。まいっちゃうな。お、インターホン。はいはーい」



P「おはようございますって、ちょっと! まだ着替えてないんですか」



杏「ん? まあね。やっぱりちゃんとおめかししなきゃダメ?」



P「おめかしと言うより、少なくとも今日行くところはそんなダラダラな恰好で行くようなところではないですので。七五三のごとく、小奇麗な恰好で来てください」



杏「小奇麗ねぇ。プロデューサーロリコンだから。杏の小奇麗な恰好にメロメロになったりして………あり得る」



P「安心してください。衣装合わせの時のあなたにいつでも魅入ってますので耐性は付いていますので」



杏「変態だね」



P「なら舐めまわしていいですか」



杏「やっぱり変態! プロデューサーってそんな性格だったけ!?」



P「冗談です。あなたにならこの程度の冗談を言ってもいいと思えるぐらいは仲がいいと思ったので」



杏「やっぱり性格変わってる。で、今日はどこ行くのさ? 杏のお眼鏡にかなうのか楽しみだ」



P「今日はあなたに甘くておいしいを提供します。ケーキバイキングです」



杏「ほう。プロデューサーにしちゃ乙女チックな場所選ぶじゃん。でも杏は」



P「残念ですけど選んだのは僕じゃないんです」



杏「ん? どーゆーことさ?」



P「今日のケーキバイキング。メルティスイートを提供してくれたのはかな子先生です」



かな子「杏ちゃん。今日はお願いしますね」



杏「あ、あれ? あれー?」

P「とうちゃーく。僕たちinケーキバイキングー。と言うわけで、僕は今日お菓子づくりの研究のためバリバリ食べます! ちなみに二人はちゃんと考えて食べるんですよ。アイドルは体系を維持しなくちゃいけないんですからね」



かな子「そんなぁPさん」



杏「杏はもとからそんなに食べないし、食べても太らないから別に考える必要ないけどね」



かな子「!?」



杏「そ、そんな目で見ないでよぅ」



P「はっはっは〜。じゃあ僕は何からいただこうかな………」



杏「行っちゃった。かな子ちゃんはどうする?」



かな子「え? もう取ってたけど」



杏「早いよそして多いよ! いきなりワンホール分出来る量じゃんかそれ」



かな子「でも本当に楽しみだったんだよ! 特にこのモンブランにマフィンにショコラ。食べ放題なんてもう二度とできないって言ってもいいくらいのブランドの数々。今食べないならいつ食べればいいんですか!」



杏「わかった! わかったよ。別に食べることに関しては杏は何も言わないよ。後で地獄を見たければの話だけどね」



かな子「ぐ………ちゃんとダイエットはします! はい、大丈夫、私!」



杏「あ、そう………ならとりあえず杏は適当なドーナツをもらおうかな」



かな子「いただきまーす♪」



杏「あむ………甘ーい。おいしー」



かな子「ほんとに、メルティスイートの仕事を受けてよかったぁ。私今………死んでもいい」



杏「この世に未練がないのか………」

かな子「幸せ〜」



杏「ねぇ。かな子ちゃんはさ。どういった経緯でプロデューサーと仲良くなったのさ?」



かな子「ごくもぐ………それはちひろさんと一緒に来たんですよ。杏ちゃんのためにお菓子を作りたいって。最初は自分の力だけで頑張るって言ってたけど、最初の飴が失敗したみたいで」



杏「あーあれ。あれはたしかにひどかったなぁ」



かな子「それから私が教えるようになったんですよ。どんどん上手になっていきましたよ。でもいつも言ってました。杏ちゃんにおいしいって言ってもらえなきゃ意味ないんだーって」



杏「そうなんだ。杏のためにお菓子作りの弟子入りかー」



かな子「杏ちゃんはどうして素直においしいって言わないんですか? Pさん悲しんでますよ」



杏「別に、飴奉行だからちょっとした欠点でも見逃してないだけだよ。うん。プロデューサーはまだまだ! それと、今日のケーキバイキング。最初からプロデューサーを誘う予定だったの?」



かな子「はい。愛梨ちゃんも呼んだんですけど用事って言われて。お菓子作りの手助けになるかなと。あとPさんには日頃のお礼を兼ねて」



杏「………どうも腑に落ちないな。お菓子作りの手助けは分かるけど、何で日頃お世話になってるって理由でプロデューサーを誘うのかが分からない」



かな子「どういうことですか。Pさんには日頃から」



杏「世話になってるのは分かってるって。杏が疑問に思ってるのは何で杏のプロデューサーを誘ったのかだよ。日頃世話になってるっていうなら、自分のプロデューサーを誘うべきじゃない。それこそ日頃世話になってるお礼で」



かな子「え、Pさんはお菓子作りの勉強も兼ねて」



杏「別に、理由を言ってほしいとは思ってないよ。ただ疑問に思っただけだよ。何で自分のプロデューサーじゃなくて他人のプロデューサーを誘うのか。それには何か「特別な理由」があるんじゃないかって、想ってね」



かな子「あ、杏ちゃん………」



杏「………かな子ちゃんはもしかしてさ。プロデューサーを」

P「コラ杏さん! 何かな子先生困らせてるんですか。今日ここに来れたのはかな子さんのおかげなんですよ」



杏「帰って来た。困らせるって、別にそんなつもりじゃ………」



P「全く。かな子さん。何か言われたんですか。ハトが豆鉄砲喰らったようで」



かな子「え、あ、いや! 何でもないです………杏ちゃんもしかして」



P「それと、そのケーキの量はちょっと食べ過ぎじゃあないですかね」



かな子「あ、いやこれは!」



P「まあいいでしょう。それと、お二人に仕事のことを話しておこうと思います」



杏「え? オフまで仕事の話ー? やだー!」



P「まあそう言わないでください。これは我がプロダクションそのものが総力を挙げて取り組む企画です。その名もワンダフルマジック。この企画の成功はトップアイドルとしての地位を確固たるものとするでしょう」



かな子「ワンダフル、マジックですか?」



P「大規模なプロモーション撮影なんですけど。我がプロダクションから何名を選出して、代表としてプロモーションに出てもらう企画です。そして、お二人。おめでとうございます。ワンダフルマジックに見事採用されました」



かな子「え………」



杏「えー………」



P「きっとお二人の「え」に込められた感情は全く別物なんでしょうけど。とりあえずこの場を借りて伝えさせてもらいま、」



かな子「やったぁ!! ありがとうございますPさん!」



P「ストップ! 今僕に鯖折りをかけようとしましたね。アイドルが公共の場でそんなことしないでください」



かな子「あ、ごめんなさい………」



P「杏さんも………嬉しくなさそうですね」



杏「あぁ………どんどんニート暮らしから遠ざかっていく。決めた。今すぐ引退しよう」



P「やめてください。と言うよりすでに引退をあなた自身の意思でどうにかできるって立場じゃないんですよ」



杏「うぇえ。どこで道間違ったんだろ………」



かな子「やった。やったよ………!」



杏「………」

P「本日のお仕事お疲れ様です二人とも」



かな子「お疲れ様です。にしても、ワンダフルマジックが終わるまで、私のプロデューサーはPさんなんですね」



P「僕は杏さんの担当しかしてませんし、仲がいいということでしばらくの間預かってくれと言われたんですよ」



かな子「本当にびっくりしましたよ。まさかPさんがプロデューサーになるなんて」



P「わかないものですね。それと、ずいぶん杏さんが静かですね。寝てるんですか」



杏「起きてるよー」



P「起きてるんですか。お疲れのようですね。ちゃんと寝てるんですか?」



杏「うるさいなー。ちょっとは静かにしてよ」



かな子(………杏ちゃん。怒ってませんか?)



P(そうなんですよ。最近、すっごい機嫌が悪くて。飴は食べるんですけどね)



杏「何二人で話してるのさー」



P「何でもないですよ。杏さんはこのまま自宅に直行ですか」



杏「………かな子ちゃんも家に帰るの?」



かな子「いえ、時間が結構余ってるのでPさんとケーキを作ろうと」



杏「………杏もまだ帰んないかな」



P「え!? 珍しい………」



杏「そんなの杏の勝手だろ!」



P「やっぱり、機嫌悪いじゃないですか」

P「うん、いい感じにスポンジができましたね」



かな子「じゃあ今からクリームを塗りましょう」



P「僕の職人技が試されますね………にしても珍しいですね。杏さんが調理場に来るなんて」



杏「暇だったし、本当にプロデューサーがケーキ作れるのかなーって思ったから確かめようと思って」



P「ならその二つの眼でよーく見ておくんですね。僕の華麗なるクリーム捌きを」



かな子「気を付けてください。言ってはあれですけど、結構ミス多いですよ」



P「わかってますよ」



杏「………待って。杏にクリーム塗らせてよ。それくらい杏にもできるよ」



P「これまた珍しいですね。杏さんがケーキを作ってみたいと言うなんて」



杏「別に作りたいなんて言ってないよ。クリームを塗らせてって言ってるだけ」



P「しかし、結構難しいですよ。最初は見てからの方が」



かな子「いいじゃないですかPさん。お菓子作りに興味を持ってくれたなら、まずやってもらった方がいいですよ」



P「かな子先生がそう言うなら、どうぞ杏さん」



杏「これくらい………これくらい………ん」



P「あんまりうまくいかないみたいですね」



かな子「最初ですし仕方ないですよ。すみません。ちょっと席外しますね」



P「はい………ん? あ、何か連絡入ってる。すみません杏さん。ちょっと席をはずしますのでケーキを見ていてください」



杏「………なんだよプロデューサー。うまくいかないって。これくらい、これくらい杏だって………きれいな形にならない。何でうまくいかないのさ………あ! スポンジが潰れた! どうしよ」



かな子「戻りましたー。あ」



P「別に重要な用じゃなかった。ん」



杏「あ、」

かな子「そのスポンジ………」



P「杏さん………だから言ったじゃないですか」



杏「ち、違う! まだ失敗じゃない! ここからちゃんとすれば」



P「ケーキ作りは思った以上に難しいんですよ。安心してください。別にケーキを作ってない人にあげないなんて言いませんから」



かな子「じゃあもう一度焼きますね」



P「お願いします。杏さんはここで大人して、ボクとかな子先生に任せてください」



杏「何………さ。何さかな子先生かな子先生って。プロデューサーは、杏のプロデューサーだろ!!!」



かな子「あ、杏ちゃん?」



P「どうしたんですか杏さん? そんな声を荒げて」



杏「何でなのさ! いつも飴を持ってくる時にかな子先生かな子先生って! この前の出かけようって勇気を出して言った時も、かな子ちゃんのおかげでケーキバイキングに来れたって! そんなんなら別にケーキバイキングじゃなくてもよかったよ!」



P「杏さん………」



杏「ワンダフルマジックの仕事が決まって、かな子ちゃんと一緒に仕事するようになったら。いつもかな子ちゃんと二人でお菓子の話ばっかり! 何で! かな子ちゃんはプロデューサーの担当じゃないじゃん! そうだろ!」



P「いえ、かな子先生の担当は僕です。ワンダフルマジックの期間の間ですけど」



杏「………やっぱりプロデューサーはかな子ちゃんをプロデュースしたかったんだ。杏より、かな子ちゃんの方がいいんでしょ」



P「何を言ってるんですか。そんなことはないですよ」



杏「そうかな。少なくとも、かな子ちゃんはそう思ってるに違いないよ」(あれ?)



かな子「杏ちゃん………?」



杏「そうだよねー。かな子ちゃんの方が女の子っぽいし。胸も大きいし。杏より全然魅力的だよね。きっと、プロデューサーにプロデュースされてるされてる杏を羨ましく、いや妬ましく思ってるかもね」(違うよ。何でそんな言葉が出てくるの)



かな子「そ、そんなことないよ杏ちゃん! 私は、」



杏「いーやそうだね! 杏にはわかる。だからプロデューサーが担当になって、杏からプロデューサーを取ろうとして! 杏は邪魔者だって思って!」(嫌だ、嫌だ! これ以上言ったら全部、今まで積み上げてきたものが全部!)



かな子「違う。私は………」



杏「かな子ちゃんは!」(プロデューサー!)

パシッ!



かな子「P………さん?」



杏「プロデューサー………叩いたね。アイドルの顔を」



P「ええ、叩きました。痛いですか」



杏「痛くないよ。全然。優しすぎるビンタだよ。でも、やっぱり杏よりかな子ちゃんの味方なんだね」



P「味方もなにもありません。あなたは悪いことをしています。悪いことをした子供を叱るのは大人の役目です」



杏「………もういい。もういいよ。もうたくさんだ! アイドルなんて最初からやりたくなかったし! プロデューサーはいつも無理やり仕事を押し付けてくる! 卒業だよ! 杏は今日をもって引退する!」



P「杏ぅ! どこに行こうとしてんだ!」



杏「離してよ!」



P「離しません。なぜ、かな子先生にあのようなことを言ったんですか」



杏「離して、離して………離して、よぉ」



P「杏さん………」



かな子「離してあげてくれませんか?」



P「かな子先生。でも」



杏「う、うぅ………」



P「………わかりました」



杏「ぐっ………!」



P「………やっぱり、ほっとけません! 杏さん!」



かな子「………杏ちゃん」

杏「うっ、うっ。何であんなこと言ったんだろ。かな子ちゃんは何も悪くないのに。全部杏が悪いのに」



かな子「杏ちゃん。こんなところにいましたか」



杏「かな子ちゃん………」



かな子「隣、いいですか?」



杏「………」



かな子「では失礼します。ちょっと狭いですね」



杏「何しに来たのさ。怒りに来たの」



かな子「はい。怒ってますよ。あんなことを言われたんですから」



杏「………」



かな子「でも、当たってるから何も言い返せなかった。羨ましかったんです。Pさんが担当の杏ちゃんが。いつもPさんのそばにいる杏ちゃんが」



杏「………」



かな子「杏ちゃんは飴をもらうとき。いつも私の話をするって言いましたよね。私もなんですよ。いつもお菓子を作っているとき。Pさんは杏ちゃんの話ばっかりするんです」



杏「え? プロデューサーが?」



かな子「はい。やっぱり飴の話題が多かったです。今日飴はこうだ。明日の飴はどうだって。たまに思うんです。杏ちゃんの話ばかりで、杏ちゃんのためにお菓子を教えてる気がして。Pさんにここまで思われてる杏ちゃんに嫉妬すら覚えたこともあります」



杏「杏は………かな子ちゃんがうらやましかった。お菓子作りが得意なんて女の子らしいし、優しくて人当たりがいい。それに私と違っておっぱいデカいし。女としての魅力はことごとく負けてて。それだからいつもプロデューサーに気にかけてらえてるんだって」



かな子「私も杏ちゃんがうらやましかった。Pさんが担当しているとかじゃなくて。才能があって、アイドルとしての魅力を持ってて、いつも自信満々で。決して自分自身を曲げないその強い心がプロデューサーさんとの繋がりを作ってるんだって」



杏「そうなんだ………似た者同士だね杏たち」



かな子「表裏一体って言ってもいいかもですね」



杏「ははは………は」



かな子「杏ちゃん………泣いてる?」



杏「ごめんなさい。あんなこと言って。杏が悪かったから。許してください」

かな子「杏ちゃん………私の方こそごめんなさい。杏ちゃんがあんな思いをしてるとは思いもしなくて。本当にごめんなさい」



杏「かな子ちゃんは、謝ばなくてもいい! 杏が、杏が悪いんだがら!」



かな子「フフ。アイドルなのにすごい泣き顔だよ。ほら、拭いてあげるから」



杏「う、う………うー………」



かな子「きゃ、杏ちゃん」



杏「ごべん。ぢょっとだけ胸を貸して、ぢょっとだけだから」



かな子「うん………いいよ」



杏「う、うぅ………あー、うあー、うあー」



―――――――――――――――――――――――



P「………ここにいましたかって、どうしたんですか?」



かな子「杏ちゃん、疲れて眠っちゃいました」



P「そうですか。なんとまあアイドルとは思えない顔ですね」



かな子「あんまりまじまじと見てはいけませんよ」



杏「ん、ん………プロ、デューサー?」



かな子「起きちゃいましたね」



杏「プロデューサー………プロデューサー!」



P「杏さん! 落ち着いて。僕の話を聞いてください」



杏「………うん」



P「ゴホン。先ほどの発言。これは悪いことです。それは変わりありません」



杏「うん」



P「ですけど、どうやら杏さんに寂しい思いをさせていたみたいですね」



杏「………別に。ん。何さ頭に手を置いて」



P「安心してください。僕はあなたのプロデューサーです。あなたがアイドルとして頑張っている間は決して目を逸らせたりはしません。いつでもあなたを思っています」



杏「………何さ。くっさいセリフ吐いて。杏は別に、あれ? 違うよ。これは涙じゃなくて目から汗でって何手を広げてるの?」



P「いや、こうすべきかなーって。俺の胸でお泣きみたいなっ。杏さん」



杏「プロデューサーの胸、堅い。かな子ちゃんと違う」



P「そりゃあ柔らかい方が問題ですよ。しかしうらやましいですね。かな子先生の胸を堪能したなんて。僕もお願いしたいところです」



かな子「え、それは………」



杏「ダメ! あの胸は杏専用にする」



かな子「えぇ!?」



P「あっはっは。そうですか」



杏「ねぇ、プロデューサー」



P「何ですか?」



杏「ごめんなさい。そして、ありがとう」

P「うん。似合ってますよ。杏さん」



杏「これって、フリフリのワンピース。結構いいんじゃん」



P「それ以外にもアイドルとしての衣装もあります。頑張ってくださいね」



杏「これがトップアイドルの最後の壁かぁ。ちなみにこれがうまくいけばどれくらいランクアップするの?」



P「聞かなくてもわかるでしょう。トップアイドル。ランクSRの19です」



杏「うーん頂かぁ。つまり印税でガッポガッポ! プロデューサー。この仕事がうまくいったご褒美に無期限長期休暇がほしいなぁ」



P「あはは。寝言は寝て言ってください」



杏「寝ていいんだ! ラッキー」



P「そういうことではありません!」



杏「チェー。ならさ、休みとってよ。その日に二人でどっかに出かけてダラダラしようよ」



P「休日ですか?」



杏「うん! 今度は二人でさ!」



P「………わかりました。では今から撮影の総仕上げです」



杏「でも、やっぱりめんどくさーい」



P「しょうがないですね。僕が魔法をかけてあげます」



杏「魔法? 何々って、いつもの飴じゃん」



P「この飴には頑張らない魔法をかけました。これを食べてしまうとたちまち頑張りたくなくなります」



杏「マジで!? 頂戴頂戴! あー」



P「ですから。この飴はあげれません」



杏「!?」



P「ですけど、この飴を食べても魔法にかからない方法があります。それは、この撮影を頑張る気持ちがあることです。杏さんはどうですか頑張る気持ちはありますか?」



杏「あ、あるかもしれないね、うん! だから頂戴! あー」



P「………いいでしょう。あなたの言葉を信じます」



杏「コロコロ………うん! 頑張らない魔法にかかったかな! これじゃ頑張る気にならないね!」



P「そうですか。じゃあ頑張ってきてください」



杏「頑張らないからなー」

杏「ふぅ。トップアイドルも疲れるな。ワンダフルマジックのせいですっごい有名いなっちゃったよ。こうやって事務所に来るだけでも人目を気にしなきゃいけないんだもん。さて今日のお菓子はなんだろなー」



P『どーいうことですか! 社長!』



杏「うぁ! 何? プロデューサーの声? すっごい怒ってる感じだけど」



P『それを納得しろって言うんですか。こちらの断りもなく! 私だけのことじゃないんですよ!』



杏「私だけのことじゃないって、結構重要な話なのかな」



P『………! わかりました。私も組織の人間です。社長がそうおっしゃるなら、それに従います』



杏「話は終わった?」



P「クソッ! 何でだよ。なんて言えばいいんだよ」



杏「どうしたのさプロデューサー?」



P「!? あ、杏さん?」



杏「社長と揉めてたみたいじゃん。わかった。お給料のことでしょ………違う?」



P「………いずれバレることです。今ここで言いましょう。杏さん。落ち着いて聞いてください」



杏「何さ………そんな神妙な顔つきで」



P「杏さんの担当を外れることになりました。僕はクール部署に転属だそうです」



杏「え? え? 今、なんて?」



P「………」



杏「やだなぁプロデューサー。そんな笑えない冗談言って。そんなこと言って。「杏さんがもっと仕事を頑張れば帳消しですけど」みたいな条件言ってくるんでしょ。杏は分かってるんだからね。だからあえて言おう。頑張らない!」



P「………」



杏「ねぇなんか言ってよ。なんか言ってよプロデューサー!」



P「すぐに外れるわけではありません。僕の引継ぎのプロデューサーが決まっていませんので。後一週間くらいはあなたのプロデューサーです」



杏「ほんと、なの?」



P「………今日も仕事が詰まってます。急いで行きますよ」



杏「プロデューサー………」

P「到着しましたよ。本当に家で下さなくてよかったんですか?」



杏「うん………事務所でいい」



P「そうですか………かな子先生」



かな子「Pさん………」



杏「………杏、先に戻ってるよ」



かな子「杏ちゃん」



杏「ちゃんと、話し合った方がいいよ」



かな子「ありがとう。Pさん。話は聞きました。クール部署に行くって」



P「そうです。あ、ワンダフルマジックでかな子先生もランクSRの19になりましたね。これで名実ともにトップアイドルです」



かな子「………Pさん!」



P「うわぁ! ちょっと、ムチムチで、柔らかいが密着!?」



かな子「もう、一緒にお菓子作りはできないんですか?」



P「………厳しいですね。違う部署のアイドルとはあまり交流を持つことがないですからね。あるとしたら合同企画やユニットくらいですか」



かな子「もしかしたら、こうやって会えるのも最後………」



P「それはないですよ。部署が変わるといっても同じ会社で敷地も同じです。まあ、こんな風に足を止めて会話することは難しいでしょうね」



かな子「それなら、言ってしまってもいいですよね」



P「………何をですか?」



かな子「行ってほしくない。お別れなんか嫌です。だって私はPさんのことがムグ」



P「それ以上はだめですよ。あなたはアイドルなんですから。と言うよりそれ以前にアイドルとプロデューサーなんですよ」



かな子「………あなたはそうやって私の決意すら、飲み込むんですね………なら、私がアイドルじゃなくなった時。今の言葉を聞いてくれますか?」



P「そんなの、十年早いですよ」



かな子「行っちゃった………大好きですよ。Pさん」

杏「ねぇ………今日はどこに連れてってくれるのさ」



P「さぁ、どこでしょうね。そんなのは決めてません。とりあえず行き当たりばったりの場所に行ってみましょう!」



P「まずは動物園!」



杏「あの猫みくちゃんに似てる」



P「はははあんなに凛々しくないですよ」



P「映画館!」



杏「かー」



P「寝てるこいつ」



P「プラネタリウム!」



杏「星が見える時間は寝る時間だよね」



P「さっき寝てたじゃないですか」



P「屋形船!」



杏「刺身がうまい」



P「風流だねぇ」



杏「うーん………疲れた」



P「一日でいろいろなところ行ったんですから。疲れるの当然ですよ」



杏「うん。いつの間にか夜になっちゃったね」



P「そうですね。ほら、あそこに観覧車が見えますよ。海にライトを照らして。きれいですねぇ」

杏「ねぇ。聞きたいんだけど、何で転属になっちゃったのさ。杏をトップアイドルに導いた、RPGで言う勇者じゃんプロデューサーは」



P「勇者はあなたですよ。そうですね。言ってしまえば、あなたをトップアイドルにしたからこそ転属になったんです」



杏「何で?」



P「トップアイドルとしてのポテンシャルを持つ杏さんですが、今まで幾多のプロデューサーが匙を投げた、いわばその問題児を見事にトップアイドルまで導いた。その手腕が買われて新規アイドル育成のためにクール部署に行くんです。どうやらあなた同様問題児がいるようなのでその子を担当することになりそうです」



杏「何それ………じゃあ、杏が頑張ったからプロデューサーがいなくなっちゃうの? じゃあ今まで頑張ったのはなんだったの!?」



P「頑張らなければ、僕が担当を外されてました。どちらにしてもいつかはあなたの元を去らなければならなかったんですよ」



杏「そんな………! なら今まで杏は何のために頑張って来たのさ! プロデューサーとこうやってお別れを言うのがエンディングだったの!?」



P「杏さん。何のために頑張って来たって。まさかあなたからそんな言葉が出るとは思いませんでしたよ」



杏「最初からわかってたんでしょ! こうなることを! あんなに怒鳴ってたけど、このことをプロデューサーが予測しなかったなんて嘘だ!」



P「僕を過大評価しすぎですよ。さすがに本当に外されるとは思ってなかったんですよ。それこそ、あなたにも話を通さないなんて」



杏「………嘘つき! 杏においしいって言わせるって言ってたじゃんか! まだ杏はおいしいって言ってないよ!」



P「………なら、これをどうぞ」



杏「これ、飴?」



P「僕の珠玉の逸品です。食べてください」



杏「………あむ」



P「どうですか?」



杏「………マズいよ」



P「え?」

杏「マズいよ! マズすぎるよ! 味はぐちゃぐちゃ! 食感は最悪! 最初にもらった飴にも劣ってる!」



P「杏さん………最後なんですよ。最後ぐらいいい感じに、」



杏「杏はまだ! おいしいって言ってない! 作り続けるんでしょ! 杏のために! おいしいって言わせるまで!」



P「………もう、何もかも終わりなんですよ」



杏「そんなの………杏は本当に、何のために頑張って来たのさ」



P「杏さん。アイドルがプロデューサーのために頑張っちゃいけないんですよ。あくまで、ファンのみんなのために頑張ってください」



杏「それだったら、もう頑張らない。もう杏は頑張りたくない」



P「………あの時かけた、頑張らない魔法が今になってかかっちゃいましたか。杏さん」



杏「そうだよかかったんだよぉう!?」



P「あっはっは! あすなろ抱きですかね?」



杏「何抱きついてんのさ!」



P「見てください! あの海の向こう側! 何も見えない………あなたがまだトップアイドルではない証拠です」



杏「何言ってるのさ。プロデューサーが自他ともに認めるトップアイドルだって」



P「海の向こう側ではあなたのことを知ってる人はいない。なるんですよ。世界のトップアイドルに」

杏「そんなの無理に決まってんじゃん。それに杏はもう頑張んないんだよ」



P「頑張らなくてもいいんです。そのまま頑張らない魔法にかかってください。正直言うと、頑張る頑張るって言ってるあなたはらしくないんです」



杏「矛盾してるね」



P「それもあなたらしさです。今度からは二人、違う道を歩むんです。確かに飴はもう作れません。けど、もう一つのことは守ります」



杏「何かあったっけ?」



P「あなたがアイドルである限り、決して目を逸らさずに、あなたのことを想っています」



杏「………ほんと? 絶対だよ」



P「はい。ですから、やめないでくださいね。アイドル」



杏「うん。やめないよプロデューサー。約束する」



P「そうですか。じゃあ帰りましょう。杏さんは17歳ですから22時までには帰らなければなりませんし」



杏「………そうだね」



P「駅を乗り継いで………到着です」



杏「プロデューサー。これで、お別れだね」



P「はい。もうこの扉を叩くこともないですが、引継ぎのプロデューサーとともに頑張ってくださいね。ではおやすみなさい」



杏「おやすみ………バイバイ。プロデューサー」

杏「………」



『杏! 迎えに来たぞ! 鍵を開けるんだ!』



杏「………やだ」



『やだじゃない! アイドルたるものきちんと約束事を守らなきゃいけないぞ!』



杏「別にそれはアイドルに限った話じゃないじゃん」



『揚げ足を取るな!』



杏「………ねぇ、飴作れる?」



―――――――――――――――――――――――



P「さーて今日からクール部署に転属となったけど。どうにもアイドルたちの雰囲気が違うなぁ」



ちひろ「どう違うんですか?」



P「なんかこう。キュートは暖色系でしたけどクールは冷色な感じですね」



ちひろ「クール部署ですから。そう感じても仕方ないですね。あの子があなたの担当アイドルです」



???「………」



P「ちっちゃ………杏さんよりは身長は高そうだけど、小学生か中学生ってところですか」



ちひろ「小学生ですよ」



P「よし。じゃあまず。小さい子なら名字呼びより名前呼びの方がいいかな。うん。えっと、僕はPです。よろしくねありすちゃん」



ありす「名前で呼ばないでください」



P「ん?」



ありす「ありすって名前、嫌いなんです。歌や音楽の仕事がしたいので、言われた仕事はこなします」



P「あー………」



ちひろ「頑張ってください。プロデューサーさん」



P「確かにこれは。問題児ですねぇ」

杏(結局、プロデューサーの引継ぎの人は辞めていった。最後の言葉が「何で頑張ろうとしないんだ」だったっけ。あの人ならそんなこと言わないのに)



杏(そして後任者も、そして後任者の後任者も辞めていって、この短期間で三人が辞めていった)



杏(やっぱり駄目だよ。みんな杏のこと何にもわかってない)



杏(でも杏だって悲しくないわけじゃない。今でも、あの人が来る以前でも。プロデューサーがいなくなった時は悲しんだ。まるで自分を拒否されてるみたいで)



杏(でも、あの人がいなくなるのは比べ物にならないくらい悲しかった。杏のために飴を作ってくれる人なんてあの人以外いやしない)



杏(あの時、かな子ちゃんとプロデューサーが最後に会った駐車場。かな子ちゃんは告白しようとしてた。止められてたけど。かな子ちゃんだから言わなかった。プロデューサーがいなくなった後に、独り言のように告白してた)



杏(杏も言えばよかったのかな? きっと止められるけど、それでも強引に言えば何か変わったのかもしれない)



杏「寂しいよ。プロデューサー………」



ピィーンポォーン



杏「………そういえば今日からまた新しいプロデューサーが来るんだっけ。いつも通り、杏から声をかける必要なんてないんだ」



???『飴は、いりませんか〜』



杏「!? 嘘………何で?」



???『おいしい。おいしい新作ですよ〜。頬っぺた蕩ける、ブドウ味〜』



杏「ハァッ………ハアッ!!」



P「飴、いかがですか?」



杏「プロデューサー………どうして?」



P「どうしてもこうしてもないですよ。あなた。後続のプロデューサー、ことごとく辞めてるみたいですね」



杏「だって、みんな杏に頑張れ頑張れ言うんだよ! プロデューサーならそんなこと言わないよね?」



P「言いますよ! 頑張ってくれって耳にたんこぶできるくらい言いますよ」



杏「え? だって、頑張らなくていいって言ったじゃん」



P「言いました。確かに頑張らない姿勢はあなたらしさです。ですが立場上頑張ってほしいと思うのは当然ですよ」



杏「な、何それ? 嘘つき!」



P「言葉の綾です! 確かに嘘つきかもしれません。ですけど、もう一つの破った約束は今果たします」



杏「破った約束………これって」



P「至高の一品です。感想をお願いします」



杏「………あむ、コロコロ」



P「どうですか」



杏「………しい」



P「何ですか、そんな涙流して」



杏「おいしい………合格だよ! プロデューサー!」



P「おおっと! そんなに飛びかかるほど飴が恋しかったんですか?」



杏「うるさい! また、杏のプロデューサーになってくれるの?」



P「はい。本日からまた、あなたのプロデューサーです」



杏「でも、どうして?」



P「次々辞めていくプロデューサーたちを見て、あなたのプロデューサーは僕にしか無理だって上が判断したんですよ」



杏「プロデューサー………! お帰りキュート部署に!」



P「あっと、それなんだけど。特別処置の形になってな。言ってしまえば」



ありす「何してるんですかプロデューサー?」

杏「この子、誰?」



P「橘ありす。クール部署の新人アイドルで僕の担当アイドルです」



杏「あれ? キュート部署に戻ったんじゃないの?」



P「特別措置として兼属、つまりキュートアイドルとクールアイドルを同時にプロデュースすることになりまして。この子も今日からクール部署に所属なんですがキュート部署に通う形になったんですよ」



杏「そうなんだ。双葉杏だよ。よろしくありすちゃん」



ありす「名前で呼ばないでください」



杏「あれ?」



P「橘さんは名前で呼ばれるのが苦手なんです」



ありす「プロデューサー! 名前で呼んでくださいって言ってるじゃないですか」



杏「………あれ?」



P「あー………名前は嫌いだけど、俺に呼ばれるのは好きらしいんだ」



杏「あ、ははは。プロデューサーってさ」



P「何?」



杏「やっぱりロリコン!」



P「違う! シャレになんないからー!」

杏『こうしてプロデューサーと別れたと思ったら、当たり前のように帰って来た。一人の幼女に毒牙を向けて』



P「お久しぶりです。お、かな子先生ー!」



杏『でも言葉を交わしてみればいつも通りのプロデューサー。まさに帰って来たと実感できる』



かな子「!? Pさぁん!!!」



杏『キュート部署のみんなはプロデューサーが帰ってきたことを聞くと集まり、わいわいと談笑を繰り広げた』



ありす「プロデューサー! 鼻の下を伸ばさないでください。下品ですよ」



杏『ちょっとの間の充電期間。杏はとても長く感じたけど、またまた歩き出す』



P「とりあえず、今から仕事です。ついで言うとかな子先生のプロデュースも今日からすることになりました。かな子先生のプロデューサーから直々に頼まれましたから」



杏『杏はまだ行き着いていない』



P「じゃあ三人とも準備してください。杏さんも、久しぶりに頑張ってくださいね」



杏『トップアイドルの向こう側。アイドルマスターに』



杏「嫌だ! 杏は働かないぞっ!」



キュートストーリー 終わり



17:30│双葉杏 
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