2014年04月12日

三浦あずさ「運命の人とはあなたですか」

あずさ「あらあら?、海に来たのなんて3年ぶりかしら?」



一人砂浜を前にしてつぶやく。

焼けつくような陽射し、気持ちの良い南風が吹く。





短大卒業後OLとして就職を決めた年の夏休み。

当ても無く車を運転していたところ海についてしまった



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1396705213



ひとしきり遊んで車に戻ろうとしたところ、辺りは今まで見ていたのとは違う景色に変わっていた。

海と砂浜という点は同じだが、人影は見当たらない。



どうやらまた迷子になってしまったらしい。



あずさ「どうしましょう......」



しばらくうろついているとそんな言葉が口から漏れる。

いつもなら、元の道を探していればいつの間にか帰ることが出来るのだが、どうにも今日は帰れない。



日が落ち始める、世界が赤く染まっていき、ふと不安になる。

このまま帰れないのだろうか。

普段は迷子になってもそんな事は思わない。

?「あのー......」



憂鬱な気分になっていたところ、いきなり声をかけられる。



?「こんなところでどうしたんですか?」



かぶっている帽子からライフセーバーだということが分かる。

今の私にはそれが誰でも、一人で無くなるというだけで嬉しかった。



あずさ「えーと...... 迷子になっちゃったみたいです?」



?「でしょうね、こんなひと気のない所に。お送りしましょう」



あずさ「お願いします」

浜辺を彼と歩いている間に色々な話をした。

彼はPという名前で、大学でライフセービングの競技をやっていた事。

就職した今もたまに海で救命のボランティアをしているらしいという事。



P「危ないッ!」

彼が叫ぶ。



砂に足を取られて転びそうになった私を抱き止める。



P「大丈夫ですか?」



あずさ「ええ...... ありがとうございます」



P「お怪我がなくて良かった」



夕焼けで彼には分からないだろうが私は、はっきり頬が熱くなるのを感じた。

私は小学校の頃から鈍臭く、あまり優しくされたことがなかった。

目を離せばすぐにいなくなってしまい、何をするのものろい、そんな子供だったから仕方がなかったのかもしれない。



そんな過去のせいか、今の彼の行動をとても嬉しく思った。

「心配されている」ということが感じれたからなのだろうか。

昔、ずっと昔。

私が少女と呼ばれるような年齢の頃、あるドラマを見た。

内容はほとんど覚えていないが一つだけ鮮明に記憶に残っているフレーズがあった。

『あなたが私の運命のひとですか?』

私はそれに憧れて、運命の人をいつも探していた。









彼が、私の運命の人なのかもしれない。







P「このあたりですかねえ?」



その声でふと周りを見ると昼に見たことのある風景であった。



あずさ「ここは見覚えがあります」



P「良かった、ここからなら帰れますか?」

P「はい?」



なんとか会話を続けたかった、

彼が運命の人なのか確かめたかった。



あずさ「ええと......」



他の人にこんな気持ちになったことはなかった。



P「何でしょう?」



もう恋は始まっていたのかもしれない。



あずさ「その.......」



何か言わなければ今日で終わってしまう。

あなたをもっと知りたい!

ただ傍にいたい!

その一言が出ない。



P「ああ、そうだ」



その後の彼の一言がすべてを吹き飛ばす。



P「三浦あずささん、アイドルになりませんか?」



あずさ「えっ?」



P「実は私、本業はアイドルのプロデューサーなんですよ。まだできたばかりの小さなプロダクションでアイドルも1人しかいませんが.......」



突然の事に思考がストップする。

心臓が波のように高鳴る。



彼がプロデュースするアイドルになれば、彼が運命の人かどうか分かるだろう。



そして何より.......

私は笑顔でこう答える。



あずさ「はい! よろしくお願いします......Pさん!」







ただ傍にいるだけで幸せだから。









運命の人とは、あなたですか?



-おわり-



23:30│三浦あずさ 
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