2016年01月21日

千早「あの、プロデューサー」

P「紅蓮翔舞…飛燕翔旋…レクイエムビート…」カチカチ



ピリリリ ピリリリ



P「ん………」パシ





P「……千早か」



P「大方明日の話だろうな…」



ピッ



P「ダークメタモルフォーゼ」



『あ、プロデューサーですか?明日の予定を確認しておきたいのですが』



P「え、あ…あ、ああ…」



『? どうかしましたか?』



P「いや…なんでもない…」



P(結構肝据わってんな…)



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『明日の件ですが、集合場所は駅前の広場で合ってますよね?』



P「ああ、合ってる」



『何か、持っていくものはありますか?』



P「あー……特にはないが、持って来たいものがあるならいいんじゃないか?」



『そうですね、分かりました』



P「おう、予定とか入るようなら連絡してくれよ」



『はい。……では』



P「おう、また明日」



『……おやすみなさい、プロデューサー』



プツッ



P「………妙に色っぽい言い方だったな……」



P「はぁ…俺もさっさと寝るか…」

翌日



P「………ん?」ザッ



千早「………あっ」



P「…………」



千早「…………」



P「……なあ、今日の集合時間ってさ」



千早「はい」



P「9時半だったよな」



千早「ええ、その通りです」



P「今何時だ?」



千早「9時ちょうどですね」



P「よかった、俺の時計が壊れてるのかと思った」



千早「お互い、考えることは一緒みたいですね」



P「寒空の下待たせるわけにもいかないからな」



千早「プロデューサーは優しいですね」



P「よせよ、男として当然のことだ」

P「さて……予定通りならこのまま水族館に直行だったんだが、まだ開館時間じゃないな」



千早「はい、どうしましょうか」



P「……喫茶店で時間でも潰すか」



千早「そうですね、そうしましょう」



P「腹減ってないか?軽いもんなら食べられるぞ」



千早「向こうに着いてから考えることにします」



P「そうか、なら行こう」



千早「はい」

千早「ここです」



ガチャ



チリンチリン



店員「いらっしゃいませ、2名様でよろしいでしょうかー」



千早「はい」



店員「かしこまりました、では奥の席が空いておりますのでそちらをご利用くださーい」



千早「ありがとうございます」



スタスタ



P「ほお…いい感じの店だな…」



千早「前に美希と春香に連れられて来たんです。その時に飲んだコーヒーが美味しかったので」



P「へえ…大人だな」



千早「プロデューサーもどうですか?」



P「俺は……まあ、せっかくだから飲む」

P「さて、何か食うものは…この時間だとモーニングはやってないか…」ピラッ



P(……高え……)



千早「……高いな、って顔をしてますね」



P「実際そう思ってるからな…」



千早「割と高級志向の店ですから、サンドイッチ一つでも結構な値段がしますよ」



P「……朝は何も食わなくてもいいかな」



千早「あら、費用なら私が持ちますよ?」



P「いいよ、そんな…年下に払わせるなんて」



千早「無理しなくてもいいですよ、ここは私に払わせてください」



P「…悪いな」



千早「ふふ、私が律子だったら怒られてますね」



P「それは勘弁だな…」

千早「…………」ズズ



P「…………」サーッ



千早「……砂糖もミルクもたっぷり、ですね?」



P「苦いのは好きじゃないんだよ」



千早「知っています、もうプロデューサーの好みは覚えました」



P「そういや雪歩が対抗心燃やしてたぞ、お前が俺にコーヒー淹れるようになってからお茶を飲んでくれる機会が減ったって」



千早「え、そうなんですか?」



P「千早が事務所にいる時は露骨にお前の動向を見てるからな。直接言い出せないんだろう」



千早「そうだったんですか…少し、遠慮した方がいいでしょうか…」



P「気にするなよ、雪歩だけがいる時は俺がお茶頼んで穴埋めしてやるから」



千早「…はい、助かります」

P「…美味いな、ここのハニートースト」



千早「ハニー…」



P「なんだ、美希の真似か?」



千早「…美希はプロデューサーにべったりしすぎだと思います」



P「そうだな、俺が一番そう思うよ」



千早「プロデューサーもですよ、ああいう子にはちゃんと注意してあげなければ」



P「一応忠告はしてるんだがな…まあ、若気の至りってやつだろ」



千早「それに…プロデューサーは美希だけのものではないですし…」



P「うん」



千早「私も、たまにはプロデューサーと遊んだりしたいと言うか…」



P「うんうん、言わんとしてることは分かるぞ」

千早「だから…とにかく、プロデューサーは他の子達にも気を配ってあげてください」



P「はいはい」



千早「はいは一回ですよ?」



P「はーい…律子も大概だけど、千早も結構口うるさいよな」



千早「私が口をうるさくするのはプロデューサーだけですよ?」



P「…何その、あなたは私のもの宣言みたいな」



千早「そのつもりで言いましたが」



P「えっ」



千早「ふふ、冗談です」



P(冗談に聞こえねえ…)

P「むう…コーヒーはあまり飲まないからよく分からんが、ここのは美味いな…」



千早「気に入ってもらえましたか?」



P「ああ…そういやさ」



千早「はい?」



P「お前はコーヒーが美味いって言ってたけど、春香と美希は何飲むんだ?あいつらコーヒーとか飲まないだろ」



千早「そうですね…春香は紅茶、美希はキャラメルマキアートを飲んでいました」



P「キャラメルマキアートか…相変わらずだな」



千早「褒めてましたよ、この店のは美味しいって」



P「ふーん…興味あるな…」



千早「また来ましょうね」



P(自然に約束取り付けたな…)

P「さてと…そろそろ開館時間だし出るか」



千早「はい、お腹も膨れましたし」



P「あー……払ってもらった分は、今度埋め合わせするからな」



千早「期待してますね…って、律子なら」



P「言うだろうな」



千早「私なら大丈夫です、普段プロデューサーが焼いてくれる世話に比べればこのでは安いくらいですし」



P「とは言ってもな…」



千早「聞かないようなら、この件は律子に言いつけますよ?」



P「ぐっ、嫌な脅しだな」



千早「ふふっ、プロデューサーが本気で嫌そうな顔をするのは珍しいですね」



P「だって…律子が怒ったら怖いだろ…」

千早「それはまあ、確かに」



P「ちょーっと仕事サボっただけでガミガミ言ってくるしさ、あいつの前世絶対鬼とか悪魔だぜ?ベルモンド家も近付かねえよ」



ピリリリ ピリリリ



千早「電話ですよ」



P「ん、悪い」スッ



P「…………」



千早「…?出ないんですか?」



P「……律子だ……」



千早「え?」



P「あいつ、デビルイヤーか何かなのか…」プチッ



千早(あ、切った…)





〜〜〜



律子「んもー!!次の仕事確認したいのになんで出ないのよー!!」

パタン



千早「はぁ……寒いですね…」



P「もう冬だからな」



千早「そのマフラー…手編みですよね?」



P「分かるのか?」



千早「ええ。誰にもらったんですか?」



P「自分で編んだんだよ」



千早「へぇ…プロデューサー、裁縫もできるんですね」



P「まあ、簡単なものしかできないけどな」



千早「料理もできるんですよね?春香に聞きましたよ、前にプロデューサーさんの家で食べたご飯すごく美味しかったって」



P「あ、ああ…あいつ、おしゃべりだな…」



千早「家事、完璧ですね。いいお嫁さんになれますよ」



P「男だっての…」

P「そういや千早は家事できるのか?」



千早「家のことは全部一人でやっていますよ」



P「飯も?」



千早「むっ、プロデューサーも私が料理できない人だと思ってるんですか?」



P「……そういや、自分で弁当作ってきてたよな?」



千早「はい、一度料理の番組で失敗してからなぜかそういうイメージがついたみたいで…」



P「ああ……あったな、そんなことも」



千早「別に料理ができないわけではないのですが…」



P「まあ一度ついたイメージってのはなかなか払拭できないもんだよな、ましてや芸能界だし」



千早「そうですね、春香も完全に芸人になってますし」



P「あいつは…アイドルの中でも異質だから…」

P「そういや、金の話に戻るけどさ」



千早「はあ」



P「やっぱり、女の子に奢られるってのは男の名がすたるってもんなんだよ」



千早「そうなんですか?」



P「でもな、俺と千早だと収入はどっちの方が上だ?」



千早「私ですね」



P「だろ?こうなると、収入が少ない俺が奢られるのが一般的に見て普通になる」



千早「はい」



P「でもな、千早は女の子で俺は男。こうなると収入関係なく男が奢るのが至極当然ってもんだ」



千早「そう……なのでしょうか」



P「今時の女の子はみんなそうだぞ、男が払わない時点でナシらしい」



千早「へえ…器が小さいですね…」



P「だよなぁ、俺の時代とは大違いだぜ」

千早「私なら、プロデューサーを養うくらいの余裕はあるんですけどね」



P「それ春香にも言われたよ…」



千早「あら…春香も?」



P「なんなんだ、収入あるからって養われるって…俺のプライドも尊重してくれてもいいだろ…」



千早「つまり、共働きがいいと」



P「それでもいいが、やっぱり主婦でしっかり家事とかして、家でゆっくり待っててほしいな」



千早「そうですか…分かりました、努力します」



P「おお……んっ?」



千早「あ、あれですね。行きましょう」



P「あ、ああ…?」

千早「わあ…大きい水族館ですね…」



スタッフ「いらっしゃいませ、入場券はどうされますか?」



P「大人一枚、高校生一枚で」



スタッフ「かしこまりました、少々お待ちください」



千早「あ…私が払おうと思ってたのに…」



P「さすがにここは出させてくれ、もう少ないけど…」



千早「あの…気になっていたのですが」



P「なんだ?」



千早「プロデューサーって、外に出るのに困るほど収入がないわけではないですよね?どうしてそんなに持ち合わせが少ないのでしょうか…」



P「いや……千早はこの手の話題には疎いかもしれないけど、最近新作ゲームが出ただろ?」



千早「え?ああ、亜美と真美がやっていましたね」



P「昨日それ買って…財布の中身……補充するの忘れてました…」



千早「…………」



P「…………」



千早「……だらしない大人……」



P「……すまん……」

P「そもそも……亜美真美が悪いんだよ…俺モンハンよりゴッドイーター派なのに買えって言うから…」



千早「人のせいにするのは良くないですよ、それに社会人ならカードくらい持っていてもいいはずです」



P「古い人間でごめんなさい…」



千早「まったく…将来的にプロデューサーのお財布は私が管理することになりそうですね」



P「そうだな…そうだな?」



千早「そうです」



P「そっかぁ」

千早「すごい……大きい水槽ですね……」



P「水族館、来たことなかったのか?」



千早「ええ…私、子供の頃はあまり…」



P「ああ、まあ…そうか…悪い」



千早「それはいいんです、今こうしてプロデューサーと一緒に思い出を作れるのが楽しみですから」



P「そう言ってくれると嬉しいが……まあなんだ、またどっか行きたいところとかあれば、連れてってやるからな」



千早「ふふ、楽しみにしていますね」

千早「そういえば、こんなに大量の水を入れてこのガラスは割れないのでしょうか…」



P「もし割れたら大変なことになるな」



千早「サメが飛び出してきたら……怖いですね…」



P「サメって鼻先押されただけで大人しくなるらしいぞ」



千早「へえ、詳しいですね」



P「聞いた話だから実際に効くかどうかは分からんがな」



千早「もしもの時はそれで守ってくださいね?」



P「はは、善処するよ」



P(アクリル板だから割れない、って言うのは無粋だよなあ…)

千早「本当に色んな種類の魚がいますね…」



P「エイもいるぞ、ほら」



千早「あ…お腹に何かくっついてますよ」



P「あれはコバンザメだな」



千早「あれは?」



P「アカドンコ」



千早「食べられるんですか?」



P「食用にされることもあるそうだ」



千早「じゃあ、あれは?」



P「キンメダイ。食用」



千早「あれは?」



P「食えない」



千早「あれは?」



P「食えない」

千早「プロデューサー、物知りですね」



P「親父が元漁師だったからな」



千早「なるほど、だから詳しいと」



P「よく親父に連れられて海に出てたからな、深海魚以外ならだいたい言えるぞ」



千早「親が漁師、ですか…すごいですね」



P「そうでもないさ、田舎育ちだっただけだよ」



千早「そういうの、少しだけ憧れてしまいます」



P「それはどっちの意味でだ?」



千早「どっちも、です」



P「そうでもないぞ、田舎って不便だし」

千早「でも、自然があれば遊べるんじゃないですか?」



P「他の奴はそうだったけど、俺はそうじゃなかったからな…」



千早「どうして?」



P「俺が産まれてすぐ母親が死んで…小学校に入る頃には親父が安心して海に出られるように家のこととか、弟たちの世話とかしてたから…なかなか暇なんてなかったんだよ」



千早「そう、だったんですか……すみません、嫌なことを思い出させてしまって…」



P「そう暗くなるなよ、物心がつく前にいなくなったから顔も声も覚えてないし、何より親父も弟たちも飯とか褒めてくれたから一人で生きていけるようになったんだ」



千早「強いですね…プロデューサーは」



P「お前も変わったよ、昔に比べたらな」

P「…なんか、暗い話題ばっかになってんな」



千早「そうですね…せっかく水族館に来たのですから、海に関係する話をしましょう」



P「海か………海といえば、夜の海はすげえ暗いんだぜ」



千早「怪談ですか?」



P「お、察しがいいな。前にみんなで旅行行ったことがあっただろ?」



千早「去年あたり…でしたね」



P「そうそう、その時に花火やったろ」



千早「はい、亜美と真美が聖火ランナーと言いながら走り回って律子に怒られていましたね」



P「あったなぁ…でさ、ヘビ花火ってあるだろ?火つけたらくるくる地面走り回るやつ」



千早「はい」



P「あれに黒い布かぶせて火つけて貴音の方に放り投げたらさ、暗闇の中蠢めく謎の塊にマジでビビっててさあ」



千早「ぶっ…くくく…」ピクピク



P「あれは面白かったなあ…」



千早「だ…ダメですよ、意地悪をしては…ぶふふ…」



P「ひいぃ!?とかリアルで言うやつ初めて見たよ」



千早「ぐっ、くひひひ…」プルプル

P「でもな、この話はこれで終わりじゃないんだよ」



千早「んふ…まだ何か続きが?」



P「俺が投げた花火は一つだけだったんだけどさ、あとで貴音にネタバラシしたらその黒い塊がいくつもあったって言うんだよ」



千早「えっ…?」



P「俺が投げたのは一つだけなのに、貴音はいくつもの塊を見た……これはどういうことなんだろうな…」



千早「霊的ななにかでしょうか…」



P「まあそれは嘘で普通にいっぱい投げたんだけどな」



千早「っぐふ!」ピクピク



P「一つしかし投げてないって言ったら貴音、恐怖で気絶しやがった」



千早「はふっ、ぷくく、くひひひひ…///」プルプル



P「笑いすぎて顔赤くなってるぞ」



千早「だ、だってぇ、こんなのずるい…ふひひ…」プルプル



P(相変わらずツボが掴めないな…)

千早「ふーっ、ふーっ…ふふふはは……」



P「ほら、いつまでも笑ってないで次行くぞ」



千早「はふぅ…はい」



P「人多いからな、はぐれるなよ」



千早「ええ、大丈夫です」



テクテク



P「……それにしてもあれだな」



千早「なんですか?」



P「これだけの群衆の中歩いてるのに、割と千早に気付く人はいないもんだな」



千早「そうですね、街を歩いていても声を掛けられるということはあまり経験がありません」



P「春香とか美希は変装しててもよく話しかけられるらしいんだが…千早は何もなしだもんな」



千早「有名人がこんなところにいるはずがない、という先入観があるせいで顔を見ていても私と認識できないことがあるのでは」



P「まあ、確かになあ…それもあるな……あ、そうだ。ちなみにな」



千早「?」



P「貴音はめっちゃ声かけられるらしい」



千早「ぶふ…」

千早「確かに、あの風貌はよく目立ちますね…ふふふ…」



P「そう考えると、千早ってそう珍しいビジュアルじゃないのかもな」



千早「そうですね、あとファンの層も起因しているのではないでしょうか」



P「んん……どちらかと言うと、千早のファンはアイドルらしい魅力よりは歌手らしいところに惹かれてる人が多いもんな」



千早「はい、ファンなのに顔も覚えていないという人もいました」



P「ふーん…色んな人がいるもんだな」



千早「ところで、私のファンの男女比はどれくらいなのでしょうか?」



P「男56%、女44%。普通だな」



千早「へえ…真は?」



P「男24%、女76%」



千早「か、変わりませんね…」

千早「……知らないうちに少し歩きましたね」



P「ん、おお…ここはマナティの水槽みたいだな…」



千早「……気持ちよさそうに泳いでますね…」



P「そうだな……」



千早「…………」



P「…………」



マナティ「」スィー…



千早「あ…」



P「来た…」



マナティ「」スィー…



ドンッ



P「」ビクッ



千早「…プロデューサー?」



P「な、なんだ?」



千早「今びくっとしましたよね?」



P「ゆ、油断してた…」

クラゲ「」ふよふよ



千早「……………」



P「……………」



クラゲ「」ふよふよ



千早「……クラゲですね」



P「クラゲだな……」



クラゲ「」ふよふよ



千早「……和みますね」



P「和むな……」



クラゲ「」ふよふよ



千早「……かわいいですね」



P「かわいいな……」



クラゲ「」ふよふよ

クラゲ「」ふよふよ



P「………クラゲってさ」



千早「はい」



クラゲ「」ふよふよ



P「………リラクゼーション効果があるって、科学的に証明されてるそうだ」



千早「そうなんですか……」



クラゲ「」ふよふよ



P「……………」



千早「……………」



クラゲ「」ふよふよ



P「……この話を亜美真美にしたらさ」



千早「はい……」



クラゲ「」ふよふよ



P「……えー、クラゲなんてキモいよー、それ考えた人絶対頭おかしいYO→って言われた」



千早「そうなんですか……」



クラゲ「」ふよふよ



P「……クラゲ、かわいいのにな」



千早「かわいいですね……」



クラゲ「」ふよふよ

千早「………そろそろ行きましょうか」



P「ん、ああ…ちょっと和みすぎたな」



スタスタ



千早「プロデューサー…見てください、エビですよ」



P「これはテナガエビだな」



千早「食べられるのでしょうか」



P「エビはだいたいそうだな、こいつは特に素揚げとかが美味いぞ」



千早「……素揚げ……」ゴクリ



P「お前…さては腹減ってるな」



千早「少しだけ…」



P「あと一時間ぐらい待ってくれ、その頃にはちょうどいい時間だろ」



千早「はい…」

千早「プロデューサー、これはなんですか?」



P「これは……ヒトデの一種だな」



千早「ヒトデ?不思議な形…」



P「こいつに限ったことじゃないが、深海に住んでる生物は大抵変なやつだからな。ほら、これとか」



千早「え…?だ、ダンゴムシ…?」



P「グソクムシ、っていう虫…なのか?一応フナムシに近い種類らしいが…」



千早「真が見たら泣きますね……」



P「もしこんなの海岸に打ち上がってたらビビるな…」

千早「この魚、私より大きいですね…」



P「ピラルクーだな…」



千早「…食べられるんでしょうか?」



P「さあ……淡水魚は管轄外だから…」



千早「そうですか…」シュン



P(なんで落ち込んでるんだ…)



千早「淡水魚というのは、どれも綺麗な模様をしていますね」



P「ん、そうだな、観賞用に飼う人もよくいるぞ」



千早「なるほど…確かに、見ていると落ち着きますし…」



P「でも水温の管理とか水槽の清掃とか大変らしいぞ。何より人とコミュニケーションとれないし」



千早「そうですね、直接触れ合えないのは少し寂しい気もします」

P「やっぱりペット飼うとしたら、直接触れ合ったりできる方がいいのか?」



千早「その質問は将来設計のことですか?」



P「ん、ん?え?いや、単純に聞きたいだけだが」



千早「そうですか…ちっ」



P(今舌打ちした…?)



千早「そうですね、ペットを飼うとしたら…おとなしい猫がいいですね」



P「猫か、それなら俺の実家に行けば会えるぞ」



千早「飼ってるのですか?」



P「いや、野良だけどな。昼になるとよく庭に集まってくるんだ」



千早「たくさん、ですか…?それは一度見てみたいですね…」



P「今度、俺の実家来るか?ろくなもてなしもできないけど」



千早「はい、お世話になr……」ピコーン



千早(ぷ…プロデューサーの実家…!?)



P「どうした?」



千早「…やっぱり将来設計の話ですね?」



P「んっ??」

千早「プロデューサー、あそこは…」



P「…あれはタッチプールだな」



千早「タッチプール?」



P「ああ、主に浅瀬にいる海の生き物を触れる場所だ」



千早「へぇ…でも、この時期に水に手を突っ込むのは…」



P「冷たいな…けど、子供たちは元気だぞ」



千早「…そうですね、私も少し触ってみます」



P「なら俺も付き合うか…」

千早「見てくださいプロデューサー、綺麗な模様の子がいますよ」



P「ウミウシだな。色んな種類のがいるぞ」



千早「ウミウシ………これもウミウシの仲間ですか?」パシャ



P「それはナマコ。握ってると自己防衛のために固くなってくるぞ」



千早「へええ……こうですかね?」ニギニギ



P「そうそう、そのまま刺激すると外敵を驚かせるために内臓を…」



ナマコ「」ビュルルル



千早「……………」



P「……………」



千早「……………」



P「……………」



ナマコ「」ビクンビクン

千早「卑猥なモノを見てしまった気が」



P「知らない知らない、何も見てない」



千早「ですよね、何も見ていませんよね」



P「ハハ、腹減ったし飯でも食うか」



千早「そうしましょう、うふふ」



P「ハハハ」



千早「ふふっ」

P「ふーん……海鮮バイキングか…」



千早「水族館らしいところですね」



P「値段は…一人1200円、安いな」



千早「プロデューサー、ちゃんと払えます?」



P「あ、当たり前だろ、これくらい」



千早「それなら大丈夫ですね、行きましょう」



P(財布の中身から差し引いて……残金、4000円か…)



P「はぁ…」



千早「プロデューサー?」



P「はいはい、今行く」



P(しばらくは節約するか…)

P「すげえ…ロブスターのボイルがあるぞ…」



千早「こちらにはお寿司もありますね…」



P「これで1200円ってマジかよ…?なんかヤバイもん入ってるとかあとで請求されるとかないよな?」



千早「さすがにそれはないと思いますが…」



P「まあいいや、とりあえず適当に見繕っていくか」



千早「そうですね。向こうにアサリの味噌汁もありますよ」



P「どれどれ…」



パタパタ

〜〜〜



P「ふぅ、食った食った」



千早「ん…すみません、すぐに食べ終えますので…」モグモグ



P「ゆっくりでいいって、普段落ち着いて飯食う暇もないんだろ」



千早「そう…ですね。ありがとうございます」



P「おう」



千早「……でも、やっぱり申し訳ないです…」



P「気にすんなって、俺も食ったばっかで動くのはしんどいし」



千早「こういう時、プロデューサーが手持ち無沙汰にならないように煙草でも持っていればいいのですが…」



P「煙草なあ、高校生の時は吸ってたんだがな」



千早「…それは違法なのでは?」



P「昔のことだからセーフだよ、それに身体に悪いからやめろって小鳥さんに言われてからはすっぱりだしな」



千早「そ、そうですか…」

千早「……ん?ちょっと待ってください、今小鳥さんと言いましたか?」



P「言ったが」



千早「高校生の頃から知り合いだったんですか?」



P「知り合いも何も幼馴染だからな」



千早「えっ!?」



P「あれ、言ってなかったか?」



千早「初耳です…」



P「…そういや誰にも言ってなかったっけ…」



千早「…どういう関係だったんですか?」



P「どうもなにも…普通の仲だったぞ」



千早「そうですか、ならいいんです」



P(ならってなんだ…)

P「煙草やめろって言われたのも懐かしいなあ…」



千早「高校生で煙草…ということは、不良ですか?」



P「不良ってほどでもないけどな、友達とつるんでた時にちょっと酒飲んだり煙草吸ったり髪染めたりとか」



千早「髪を染めてた?」



P「ああ、昔は茶髪にしてたんだぜ」



千早「へえ…プロデューサーも結構男らしくしていた時もあったんですね」



P「若気の至りだよ、若気の」



千早「その割には今もツンツンした髪型ですが」



P「これはビジネス用だよ、交渉とかするためのな」



千早「このツンツンがですか?」



P「ああ、そうだ」

千早「でも、そんな髪型だと悪いイメージが付くのでは…」



P「それがそうでもないんだよ、むしろ許容される範囲でこんな感じにちょっとコワいヘアスタイルだと相手が一歩引いてくれるんだ」



千早「はあ」



P「偉いさんの言うことにハイハイ頷いて仕事取る時代はもう古いんだぜ?これからはガンガン畳み掛けてこっちの譲歩を少なくするんだよ」



千早「なるほど…まあ、そうすればこちらの得が多くなりますね」



P「だろ?……って、社長が言ってた」



千早「受け売りですか…」



P「まあな、でもそれを実行するかしないかが問題だから俺は社長の指示に従ったまでよ」



千早「…でも、確かにプロデューサーの働きぶりは目を見張るものがありますね」



P「俺は仕事もらってるだけだよ、実際活躍してるのはお前たちだ」



千早「いえ……本当に、いつもありがとうございます」ニコ



P「お、おお…面と向かって言われると照れるな…」

P「さてと、そろそろ行くか」



千早「はい、ここは私が」



P「もう払った」



千早「えっ」



P「バイキングはだいたい先払いだろ」



千早「知りませんでした…」



P「…社会勉強、ちゃんとしていこうな」



千早「はい…」

P「う…ちょっと食いすぎたな…」



千早「大丈夫ですか?」



P「悪い、少し休憩させてくれ…」ストン



千早「何か飲み物を買ってきますね」



P「ああ、頼む…」



パタパタ



P「はぁ…サーモンの脂が…」



P「……………」



P(おっ……あのおねーさんすげえ乳だな……)ジー



グイ



千早「どこを見ているんですか?」ギュムム



P「いてててて、つねるなつねるな!」



千早「まったく、人が善意で動いてあげているというのにあなたは」スッ



P「すまんすまん、でもこれが男の性なんだよ」



千早「どうせ私にはありませんよーだ…」ムスッ



P「そう拗ねるなよぉ…」

バタバタ



千早「……なにやら子供たちが騒がしいですね」



P「もうすぐショーが始まるみたいだな」



千早「ショー…ですか」



P「見に行くか?」



千早「…いえ、いいです」



P「そうか?」



千早「はい、また今度来たときに見られればいいですから」



P「ならいいが…じゃ、どうする?」



千早「ここでゆっくり、魚たちを見ていましょう」



P「お前がそういうならそうするが…もっと別の場所でも」



コテン



千早「いいんです、このままで…今は私たちしかいませんから、このまま…」



P「……そうか」

P「……お前、昔に比べるとずいぶん変わったな」



千早「それはプロデューサーもそうです」



P「俺?俺はただ素を見せるようになっただけだよ」



千早「ふふ、信頼されているということでしょうか」



P「まあ、そうだな」



千早「私もこんなことをするのはプロデューサーだけですよ?」



P「それは信頼か?」



千早「さあ…どうでしょう」



P「くくく、昔の態度と比較したらすぐ分かるっての」



千早「むう…そこまで酷くはなかったと思いますが…」

P「初対面の時、お前なんて言ったか覚えてるか?」



千早「………ええと……」



P「……あれ?なんて言ったっけ?」



千早「プロデューサーも覚えてないじゃないですか…」



P「んまあ、初対面のことなんてだいたい覚えてないもんだって。でも印象は残ってるぞ」



千早「どう思いました?」



P「なんか、すげえキツい目で見られてマジでこいつがアイドルになるのか…って思った記憶がある」



千早「私も初めてプロデューサーと会った時は不真面目な印象を受けましたよ」



P「なんでだ」



千早「だって、ネクタイが緩んでましたし、上のボタンも開いてましたから」



P「あれは社長がいいって言ってたから…」



千早「でも、蓋を開けてみればとても真面目な人でしたね」



P「仕事しなきゃ金貰えないからな」



千早「そうやって照れ隠しをするのも覚えました」



P「…………」

千早「………そろそろ人が戻り始めましたね」



P「そうだな…そろそろ行くか」



千早「行くと言っても、どこへ?」



P「ウミガメとかペンギンとか…まだまだあるだろ、これだけ大きい水族館なら」



千早「ウミガメ、ですか?ロマンチックですね」



P「そんなもんかねえ」



千早「そんなものです、プロデューサーは乙女心が分かっていませんね」



P「男は男心しか持ち合わせてないんだよ」



千早「また子供みたいな屁理屈を…」



P「その台詞も何回も聞いたよ…」

ウミガメ「」パチャパチャ



千早「ウミガメ、かわいいですね」



P「ああ、でもこの時期に外に出るって珍しいな」



千早「そうなのですか?」



P「海の生き物は水の方が暖かいらしいからなあ」



千早「なるほど…日向ぼっこでもしているのでしょうか…」



P「かもなぁ…」



ウミガメ「」パチャパチャ

ペタペタ クー



千早「………ペンギン、ですね…」



P「ペンギンだな……」



千早「………春香が見たら喜びそうですね」



P「え?春香ってペンギン好きなのか?」



千早「あ、向こうの水槽にはカニもいますよ」



P「あ、ああ」



千早「真が見たら喜びそうですね」



P「え?真ってカニ好きなのか?」



千早「え?」



P「え?」

千早「ふぅ……色々見ましたね」



P「ああ、満足したか?」



千早「はい、とても楽しかったです」



P「ならよかった、そろそろ出るか」



千早「そうですね」



ガチャ



P「もう真っ暗だな…」



千早「ええ、すっかり夜ですね」



P「だな。飯食って帰るか」



千早「え?もう帰るのですか?」



P「ああ、なんか嫌か?」



千早「もう少し外に居てもいいと思うのですが…」



P「子供が夜に出歩くもんじゃないぞ」



千早「むっ…私だってもう大人です」



P「高校生ならまだいい子供だろ。ほら、早くしないと置いてくぞ」スタスタ



千早「ああっ、もう!」パタパタ

P「晩飯、食いたいものとかあるか?そんなに高くなけりゃどこでもいいぞ」



千早「そうですね……私、牛丼が食べてみたいです」



P「牛丼?そんなものでいいのか?」



千早「はい、実は牛丼を食べたことがなくて」



P「ぐ…ブルジョアめ…」



千早「構いませんか?」



P「あ、ああ…別にいいが、遠慮してるとかなら気にしなくていいんだぞ?」



千早「いえ、本当に興味があるんです」



P「そうか…安上がりな子だな…」



千早「嬉しいですか?」



P「正直、な」

P「思ったより人少ないな…」



千早「へぇ…これで食券を買うんですね」



P「おう、何がいい?」



千早「あ、プロデューサーから決めてください」



P「んじゃプレミアム牛めし大盛りで」



千早「では、私はプロデューサーと同じものを並でお願いします」



P「おう」ピッ



千早「しかし、プレミアムとそうでないのでは何が違うのでしょうか?」



P「さあ…でもプレミアムだぜ?色々とすごいんだろ」



千早「そ、そうですね…」



P「向こうのテーブル席空いてるな。そこ座るか」

P「ふぅ、あとは待つだけだな」



千早「お腹、空きましたね…」



P「そうだな、でも所詮米に肉とタマネギ乗っけるだけだからな。すぐ来るよ」



千早「安くて早い…どこかで聞いたキャッチコピーはこのことだったんですね」



P「ああ、二人でも千円超えない店はこことサイゼリヤぐらいなもんだな」



千早「庶民の味方ですね…」



P「まあ、これだけ安いから貧乏人やズボラな男が食うようなものだと思われるんだけどな…ほら、周りに千早以外の女の子いないだろ?」



千早「……言われてみれば」キョロキョロ



P「だから千早をこんなところに連れてくるのは抵抗があったんだが…まあ、千早はそんなこと気にしないよな」



千早「ええ、それにプロデューサーとならどこへ行っても楽しいですから」



P「はは…男冥利につきるよ」

P「庶民と言えばさ」



千早「はい?」



P「伊織ってすげえお金持ちだろ」



千早「ええ」



P「それこそこんなところに縁がないような子だと思ってたんだけどさあ…」



千早「そうですね、もっとフレンチとか食べているイメージがあります」



P「この前な、俺が事務所からどっかで昼飯食いに行こうとしたら「どこ行くの?」って聞いてきたんだよ」



千早「ぶふ…微妙に似てる…」フルフル



P「腹減ったから昼飯食ってくるー、って言ったら「私も連れて行きなさい!」って言うからとりあえず牛丼屋連れてったんだよ」



千早「お金がなかったんですか?」



P「いや、そのときはあったけど時間がなかったから牛丼にした」



千早「食べに行くだけ時間はあるじゃないですか?」



P「んまあ、ぶっちゃけサボり兼だったけどな」

P「店の中入ったらさ、なんと店員か案内してくれるのを待ってるんだよ。食券ってもんを知らなかったんだろうな」



千早「経験がなかったのでしょうね…」



P「とりあえず適当に子供が好きそうなチーズ牛丼とオレンジジュース選んで席に座らせたら「ここ、ほんとに美味しいの?」って怪訝な目で聞いてくるんだよ」



千早「相変わらず疑り深いですね…」



P「いざ食べてみたら「あにこえ!おいひい!」とか口いっぱいに頬張ってやがんの」



千早「ぶふっ…」



P「最近のチェーン店はどこも美味いってことを知らんのかねえ、さすがお嬢様は違うよ」



千早「でも、子供らしいところもあるじゃないですか」



P「そうだな、それから俺が昼飯食いに行くときはいっつも後ろついてくるようになった」



千早「分かりやすいですよね、本人は隠してるみたいですけれど…」

パクッ



千早「………!」



P「美味しい、って顔だな」



千早「牛肉にお米とタマネギ、シンプルですが…それゆえにいい味ですね…」モグモグ



P「一味とか、お好みでバーベキューソースとかかけてみても美味いぞ」



千早「はい、試してみます」



P(楽しそうでなにより、だな…)

〜〜〜



千早「……街もすっかりクリスマスムードですね」



P「そうだな…カップルたちが元気だ」



千早「…こうして歩いていれば、私たちも恋人同士に見えるでしょうか…」



P「さあな」



千早「もう…プロデューサーはそういったことに無頓着すぎます…」



P「それはお前もそうだろ」



千早「私は……」

千早「………私、プロデューサーにはとても感謝しています」



P「な、なんだ突然」



千早「私はプロデューサーのおかげで変われました。今までだって、今日だって…誰かと一緒に過ごす時間は楽しいと思うようになったんです」



P「あ、ああ」



千早「でも、プロデューサーと過ごす時間は特別で…友情や信頼とは違う、もっと特別な、暖かい気持ちを知りました」



P「…………」



千早「プロデューサー……私は、あなたのことが………」



P「待て」



千早「…………」



P「それ以上は…ダメだ」



千早「……はい」

千早「プロデューサーなら、そう言うと思っていました」



P「…すまん」



千早「分かっています、プロデューサーも私たちも、今は大事な時期ですから。だから、今度は…」



P「……?」



千早「私が、アイドルをやめたとき…もう一度、聞いてくれますか?」



P「………ああ」



千早「ふふ、ありがとうございます」



P「保証はしないからな」



千早「ええ、それまでに振り向かせてみせます」



P「前衛的だな…」

P「ほら、さっさと子供は帰りな」



千早「まだ帰りたくない、って言ったらどうします?」



P「引きずってでも帰す」



千早「あら、強情ですね」



P「流れでいくのは良くないだろ」



千早「それもそうですね」



P「さあもういいだろ、早く帰らないと風邪引くぞ」



千早「夜道を一人で歩かせるのですか?」クス



P「……はいはい、送ってけばいいんだろ」

P「はぁ……寒いな…」



千早「はい、プロデューサー」スッ



P「手袋?なんで片方だけなんだ?」



千早「もう片方は、はい」スッ



P「………握れと?」



千早「そうすれば二人とも暖かくなれますよ?」



P「…たまにはわがまま聞いてやるのもいいか」ギュ



千早「ふふっ♪」



おわり



08:30│如月千早 
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