2016年02月18日

相川千夏「頑張っている唯ちゃんに」


 以下の点にご注意を。

 セリフ前にキャラ名あり。

 ちなったんの一人称形式で書いています。

 そしてなにより、一番重大なことです。ゆいちな要素あり。











 事務所休憩室









唯「うぅー、今日もレッスンつっかれたぁー……」





 事務所の休憩室にあるソファーで読書をしていると、ドアが開くと共に唯ちゃんが帰ってきた。

 休憩室には私以外には誰もいなく、唯ちゃんが帰ってくる前まではページを捲る音しか聞こえなかった。





千夏「お疲れさま唯ちゃん」



唯「もうヘトヘトー……歩けないよぉ」





 余程レッスンがきつかったのだろう。

 唯ちゃんはフラフラな足取りで、だけどその場所が当たり前かのように私の隣に腰掛けた。



千夏「ここ最近は本当に忙しそうね」





 その行動を特に気にすることもなく、私は読んでいた洋書のページを捲った。





唯「うんー……」



唯「歌うのは好きだから全然苦じゃないんだけど、レッスンとか面倒でねー」





 タハハハ……と、力なく笑う唯ちゃん。

 珍しいなと思った。

 唯ちゃんだって人間だ。

 弱音を言ったり、愚痴る事だってある。私だってそうだ。

 それでも、この声だけで今の唯ちゃんの状態がかんばしくない事はわかった。



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千夏「……唯ちゃん」





 読んでいた本を閉じ、唯ちゃんを真っ直ぐに見る。





唯「いやちなったん、わかってるよ? ゆいだってレッスンが大事なことくらい」

 



 あまりにも真っ直ぐに見つめたからだろうか。

 怒られると思ったのだろう。唯ちゃんが慌てて取り繕った。





唯「それを教えてくれたのはちなったんだし」





 ゴニョゴニョと最後は聞き取れるか聞き取れないくらいの小さな言葉だった。

 しっかり聞こえたけど。

 唯ちゃんにレッスンが大切だと言った覚えはないのだけれど。そもそもそういう事はプロデューサーさん辺りが言ってるだろうし。

 だけど、今は言ったとか言ってないとかそんな些細な事はどうだっていい。





千夏「ねえ唯ちゃん、ちょっといいかしら?」





 静かに、だけど無機質な声にならないように優しく唯ちゃんに。





唯「やっぱり怒る?」





 笑顔を浮かべることを忘れていたわ。





千夏「怒らないし、違うわ。お願いを聞いてくれるかしら?」



唯「お願い?」



千夏「ええ。横になってくれるかしら?」



唯「え、でもそうしたら」



千夏「気にしないでいいから、ほら」



唯「う、うん」





 後押しするように、唯ちゃんの頭をこちら側に倒させる。

 唯ちゃんの方も観念したのか、綺麗な黄金色の髪を私の膝の上に乗せた。





千夏「どうかしら? 私の膝は」



唯「あったかくてやわらかいね」





 嬉しそうに笑う唯ちゃん。

 その姿を見られただけでも、膝枕をした甲斐があったというものだ。





千夏「そう、良かったわ」





 ただ一言。

 ウエーブが掛かった髪を手櫛で梳く。

 その髪質は柔らかく、いつまでも触っていたい程の心地よさだった。







唯「そんでいい匂い♪」



千夏「その言葉はちょっと恥ずかしいわね」



唯「本当のことだもん♪」



千夏「でも悪い気はしないわね」



唯「えへへへ♪」





千夏「知っているから」



唯「え?」



千夏「私は知っているから」





 唯ちゃんが頑張っている事。





千夏「面倒だと思ってもちゃんと頑張っている事」





 途中で投げ出すことなく、いつも一生懸命で。 





千夏「プロデューサーさんや私以外に弱音を吐かずに頑張っている事」





 同じ境遇の仲間がいたら自分よりもその子を優先して、大丈夫だよって明るく声掛けて安心させたり。





千夏「誰よりも笑顔で頑張っている事」





 それがどれくらいみんなの勇気になっているか。励まされているか。





千夏「唯ちゃんの事、知っているから。いつも見ているから」





 私だってその一人なのよ? 唯ちゃんは知らないでしょ?

 そんな唯ちゃんだからこそ、皆、唯ちゃんの事が大好きなのよ。





唯「ちなったん……」



千夏「頑張って、頑張って、ひたすら一生懸命走っている唯ちゃんを怒れないもの。怒れるはずがないわ」





 こんなに頑張っている唯ちゃんに、更に頑張れなんて言えない。





千夏「そして、頑張りすぎて今日みたいに唯ちゃんが疲れた時は、いくらでも私がこうしてあげる。お疲れさまって言って、唯ちゃんの頭を撫でるくらいね」



唯「ありがとう、ちなったん」



千夏「ふふ、どういたしまして」



唯「……なんだかゆい、眠くなって……きちゃった」



千夏「頑張りすぎて疲れちゃったのよ。気にしないで眠りなさい」



唯「う……ん。おやすみ、ちなったん……」



千夏「おやすみなさい、唯ちゃん」 





 次に起きた時は、また色々な唯ちゃんを私に見せてね。

 それまでは Fais de beaux reves(素敵な夢を)







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