2014年04月21日

双葉杏「ぬいぐるみ」

杏「ZZZ...」



モバP「おーい、杏〜?」



杏「Z...ん、ん?どしたのプロデューサー...ふぁあふ」





モバP「ほら、コレやる」ポイッ



杏「??何これ。飴?じゃないよね。大きいし」ガサガサ





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杏「...ぬいぐるみ?」



モバP「おう。ロケ現場の近くにあったファンシーショップに飾ってあったんだよ。どうだ、良い抱き心地だろ?」



杏「うん。モフモフだね」モフモフ



モバP「そうだろうそうだろう」



杏「じゃあこの子は返って家の枕元に飾るとしよう」モフモフ



モバP「なんでだよ!」



杏「は!?」ビクッ



杏「いやだって、レッスン終わったし...杏、今日はサボらず頑張ったよ?」



モバP「そうだな。お疲れ、よく頑張った」ナデナデ



杏「うぇへへ...じゃなくて」



モバP「なんだ」



杏「なんで杏が家に帰っちゃ駄目なの?」



モバP「は?あぁいや、そんな事言ってないぞ。俺が言いたいのはぬいぐるみの事だ」



杏「ぬいぐるみがどうしたの?ありがたく貰うけど」モフモフ



モバP「...持ち歩かないのかい?」



杏「んー、そのつもりだけど」



モバP「...どうしてだい?」



杏「いやだって、コイツいるし」ヒョイ



モバP「そうだよ。そのウサギだよ」



杏「なんだよ」

モバP「杏、そのウサギ、ポイしなさい」



杏「はぁ!?やだよ!」



モバP「なんでだ!お前が雑に扱うからボロボロじゃねぇか!」



杏「コイツはこれで良いの!」



モバP「良くねぇ!プライベートとは言えアイドルなんだから、持ち歩くにしてももっと綺麗なぬいぐるみを...」



杏「あ!まさかプロデューサー、最近杏に何個かぬいぐるみくれたのって...!」



モバP「あぁ、お前にウサギ離れをさせようと思ってな」



杏「ふざけんなー!!!」

杏「コイツは杏の大事な物だ!いくらプロデューサーが可愛いぬいぐるみを寄越そうと、コイツは手放さないぞ!!」ギュッ



モバP「大事な物っつったってなぁ。ゲーセンの景品じゃん」



杏「あ!そんな事言う!コイツの価値が分かってないな!」



モバP「うーん...だってそのウサギ」



杏「杏の故郷北海道は人が少なく、交通の弁が悪かったので...」



モバP「は?何?語るの?」



杏「杏はあまり都会の方へ遊びに行く事も無く、裏の家に住む年上の兄ちゃんとばかり遊んでいました」



───

──







──

───



杏「兄ちゃん、ベビースター取ってきて」ピコピコ



青年「対戦中によくそんな事言えるな」ピコピコ



杏「だってどうせもう負けるでしょ?ほいほいっと」ティロリロン



青年「くそっ、棒が...棒が来ない...!うわー!何段押し付けんだよお前!」ブブーッ



杏「兄ちゃん棒に頼り過ぎ。だから弱いんだよ。さぁ台所からベビースターを取ってきてよ」



青年「よっこいしょ。そもそも何で俺の家にベビースターがあるの知ってるんだよ...」

TV『目と目が逢う〜瞬間に〜♪』



杏「......」ボーッ



青年「ほらよ。って何だ、テレビ点けたのか」



杏「...兄ちゃん、この人何て名前だっけ」



青年「如月千早。やっぱ上手いなー歌」



杏「即答。さすがドルオタ...兄ちゃん、これ開けて」



青年「それくらい自分でやれよ」



杏「めんどい」

杏「それにしても、アイドルねぇ...」



青年「お、なんだ、興味あんのか?」バリリッ



杏「まさか。私は何が何でも働かないよ」



青年「またそんな事言って...将来どうするんだよ」



杏「んー...お嫁さん�」



青年「...ほらよ」



杏「兄ちゃん、養ってよ」ボリボリ



青年「やだよ。家事もしない嫁さんなんか」ボリボリ

青年「冗談抜きでどうするんだ?高校もやめちまったし」



杏「だって、メンドかったんだもん...」ボリボリ



青年「そうやってすぐ怠ける」



杏「なんだよ。兄ちゃんだって杏と一緒にダラダラしてんじゃん!」



青年「俺は大学卒業したんだっつーの!」



杏「そりゃ〜立派でござんすね〜」ボリボリ



青年「お前そんなんだとなぁ、ロクな大人になれないぞ!」



杏「最初からなる気無いもーん」



青年「勿体無いだろ!杏は無駄に色々とポテンシャル高いんだから、それを活かせば...」



杏「あーあー聞こえなーい聞ーこえな〜〜い」



青年「ちゃんと聞け!」



青年「いいか杏、よく聞け」



杏「...どしたの兄ちゃん。いつにも増してメンドい感じだけど」



青年「...俺な、春から東京行く」



杏「.........は?」





杏「...お、おー、何?卒業旅行?お土産よろしくー...」



青年「ふざけんな。向こうに就職決まった。向こうで一人暮らしするし多分一年は帰ってこない」



杏「......聞いてないけど」



青年「あぁ、今初めて言ったからな」



杏「おばさん達は知ってんの?」



青年「当たり前だ。俺が機会伺って言うからって、おふくろには口止めしてあった」



杏「......ふ」



青年「...」



杏「ふざけんなー!!」ブンッ



青年「って!ベビースター投げんじゃねぇ!」



杏「帰る!」バタバタ



青年「ちょ、待て杏!」



バタンッ



青年「......」

〜〜〜



杏「...」ゴロゴロ



杏「...ふざけんな...」



杏「...ん?」ポロポロ



杏「んっ...ぐしゅっ...ふざげんなぁ......ぼけぇ...」ボロボロ



〜〜〜

翌日



青年「...」ゴソゴソ



ガチャ



青年「?」



杏「...」ズカズカ



青年「...よう」



杏「...コタツ、ついてない」



青年「あぁ、俺使ってなかったからな」カチッ



杏「何してんの?」



青年「荷造り」



杏「...あっそ」



青年「おう」ゴソゴソ



杏「...」



青年「...」

杏「...お母さんがさー」



青年「んー?」



杏「お母さんが、向こう行く前にいっぺんご飯食べに来いって」



青年「おー。杏のかーちゃんの飯美味いもんな」



杏「ん...」



青年「...」





杏「......」



青年「.........」





杏「............」





青年「...あぁーーーーーーっ!!!!」



杏「何!?」ビクッ



青年「杏!遊びに行くぞ!!」



杏「...はぁ?」

〜〜〜



青年「...」



杏「...電車、五分前に出てるんだけど」



青年「...そうだな」



杏「次、五十五分後なんだけど」



青年「...そうだな」



杏「全く、突然遊びに行くとか言い出すからだよ...あーさぶっ...」ポスッ



青年「隣座れよ」



杏「やだよ。ベンチ冷たいもん」

杏「ジム・キャリー」



青年「リリーフランキー」



杏「キム・ガンモ」



青年「モーガン・フリーマン...あっ」



杏「はい杏の勝ちー」



青年「お、電車来たぞ電車」



杏「ちょっと、無視?」

タタン…ガタタン…タタン…



杏「兄ちゃんさ」



青年「ん?」



杏「東京までの新幹線とか、調べてあんの?」



青年「…あー、まだだ」



杏「早めにしないと困るよ」



青年「そうだな…」



杏「うん」



青年「杏はしっかりしてんなー」



杏「…してないよ。兄ちゃんがいないと何にも出来ないから」



兄ちゃん「そんなことないって」



杏「ホントに何も出来ないし…」

〜〜〜



青年「とうちゃーく」



杏「で、何すんの?」



青年「...ゲーセン」



杏「オーケー。何も考えて無いんだね」



青年「悪ぃ」



杏「良いよ別に。適当に何か見ようよ」



青年「おう」

〜〜〜



杏「...とりゃっ」ペタン



スコア『18』パフパフー



杏「…これ低いの?」



青年「さぁ?知らねぇよ」



杏「兄ちゃんやってみてよ」



青年「おう…むんっ!」ドゴン!!!



スコア『99!』ニューレコード!



杏「…これ高いの?」



青年「高いんじゃね。新記録だし」



杏「へーすげーすげー」ペチペチ



青年「適っ当だな…いや別にどうでも良いんだけどさ」



杏「お、新記録の名前を記入しろだって」



青年「ん?ん〜……anzuchangっと」



杏「いや何でさ!」

〜〜〜



杏「よっはっ」タタンッ



青年「何だよコレ!どこ踏めば良いの!?」ドタドタ



杏「だから画面のパネルが光った所だって」スタタンッ



青年「知ってるアイドルの曲ならなんとかなると思ったんだがな…!」バタバタ



杏「言っとくけど杏も初見だからねこの曲」タタタンッ



青年「ほんっとただのニートにしとくには勿体無い才能だなおい!」ピョンピョン



杏「疲れた〜まだ曲あんの〜?」タタタタタタタタ



青年「疲れてる様には見えない足捌きだよ…」ドタタ

〜〜〜



ウィーーーン



青年「…おぉぉ…もうちょい…」



ポテッ



青年「ああ!もっとしっかり掴めよ!」



杏「下手だねぇ兄ちゃん。変わってあげようか」



青年「…いや!コイツは俺が取る!」チャリン



杏「兄ちゃんがそんな可愛いの取ってどうすんの」



青年「待ってろよぴにゃこら太…!」



杏「え!?そのブサイクなの狙ってんの!?」



青年「え?おう」



杏「意味分かんない!手間のウサギの方が百倍可愛いよ!」



青年「え、そう?じゃあコッチで…」



ウィーーーン



ガコンッ



青年「…一発かよ」



杏「あのブサイクな方のぬいぐるみ重たいんじゃない?」

青年「やれやれ…ほらよ」



杏「ん?」



青年「ウサギ」



杏「え、杏にくれんの?」



青年「俺がコレ持っててどうすんだよ」



杏「…じゃあ貰うけど」



青年「アレだよ。それを俺の代わりだと思って大事にしてやってくれ」



杏「…何それ」



青年「はは、そんなウサギじゃあ俺の代わりは務まらないかな?」



杏「…コイツで充分だよ。枕ぐらいにはなるんじゃない?」



青年「俺枕レベル!?」



杏「あははっ」



青年「…帰るか」



杏「うん…」

〜〜〜







青年「それじゃ、行ってくる」



青年「え?あぁ、多分来年だけど、休みとか取れたら連絡するよ。うん」



青年「…杏?まだ寝てるんじゃね?」





青年「分かったって。ちゃんと挨拶ぐらいしてくるから」

青年「うおーさびー…」ガララ



青年「…お?」



杏「…よう」



青年「よう、早起きだな」



杏「全くだよ」



青年「…駅まで来るか?」



杏「……うん」

青年「…そのぬいぐるみ、持ち歩いてんのか?」



杏「うん。兄ちゃんの代わりって言ったじゃん」



青年「そんなに四六時中一緒にいた記憶ねぇけど」



杏「杏からしたら四六時中だよ。生まれた時から一緒でしょ?」



青年「…あぁ」

〜〜〜



青年「…あんまり昼寝ばっかすんじゃねぇぞ?夜眠れなくなるからな?」



杏「大丈夫。コイツ枕にしたら眠れるから」



青年「寝ながら何でもしようとするなよ?ジュースとか零したら大変だからな?」



杏「大丈夫。コイツで拭くから」



青年「寒いからってコタツで寝るなよ?風邪ひくからな?」



杏「大丈夫。コイツと一緒なら寒くないから」

青年「…なんだ、俺いなくても安心じゃん」



杏「うん大丈夫大丈夫。だから早く行け」グシグシ



青年「泣くなよ。あとウサギで拭くなよ」



杏「泣いてないし拭いてないよ…っ!」



青年「…電車来たわ」



杏「うん…」



青年「んじゃあ…また来年な」



杏「うん…」



青年「楽しみに待っとけよ?」



杏「…うん?」



───

──





──

───



杏「だから、このぬいぐるみは兄ちゃんの形見なのです」



モバP「兄ちゃん死んでねぇだろ。勝手に故人扱いすんな」



杏「とにかくコイツは手放さないから」



モバP「はいはい。そこまで言うなら止めませんよ。ほら、送ってくから車乗れ」



杏「うぃーす」トテトテ















モバP「…やっぱ東京も寒ぃな〜…」





杏「…あ、そうそう『兄ちゃん』」



モバP「んー?」



杏「今度帰って来たらご飯食べに来いってお母さんから電話来たよ」



モバP「おー。杏のかーちゃんの飯美味いもんな」



杏「ん…」













〜おわり〜



17:30│双葉杏 
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