2016年02月22日

高垣楓「言えなかった言葉」

はじめまして、モバマスssは始めて書きました。

書き溜めありの地の文ありです。



キャラをわかってないとか、下手だなとか、そういった事を無視して生暖かく見守ってください。





それではゆっくり投下しますよ。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1455631582



「あなたのプロデュース、出来なくなるかもしれません」



もうプロデュースできないと告げる彼。



「そう……ですか」



とぎこちない笑みを浮かべる私。



「……何も、……言わないんですか?」



「……面くらってしまって」



「そう、ですか……」



さく、さくと音を立てて私たちの足跡が残されていきます。

夕暮れの砂浜、誰もいないこの場所で私たちはどこに向かって歩いていくのでしょうか。

「……なぜ、プロデュース出来なくなるのですか?」



話の核心を突いてみました。



「海外研修の話が上がって……」



多分、半分は本当の事なのでしょう。

もう半分は……。



「何を隠しているんです?」



「楓さんには敵わないなぁ……」



困ったような微笑みをいつも見てきたけれど。

彼が見せたのは泣きそうな苦笑でした。



「……社長に僕らのことがバレました」



……言葉に詰まりました。

私は振り絞るように声を出す。



「それが原因……ですか?」



「遠因……です、きっかけではありました」



頭をガシガシと擦り、一息ついて彼は続けました。



「実のところ、社長は割と前から気づいていて黙っててくれてたんです」



「……社長は今になって何故、その話を?」



「感づくマスコミが出てきたそうで、揉み消した事を僕に教えてくれました」



俯く彼の表情が見えず、後悔を含んだ声音で呟きました。

「そこで、社長は二択を出したんです」



「二択……」



「ええ、簡潔に言うと夢をとるかあなたをとるかの二択を……」



「……なんて答えたんですか?」



「考えさせてくださいと」



彼は私と話し合って答えを出す気でしょう。

至極当然の事です。

……問題は私と彼の答えが食い違っていることが私にわかるということなんです。



「あなたは……どう、したいんですか?」



本当は聞く必要もない質問を投げかけました。

ほんの僅かな期待を乗せて。



「……社長はこうも言いました、楓さんを取った場合は事務所の総力を挙げて僕らを守るとその代わり夢を叶えるチャンスを与えないとのことでした」



耳を塞ぎたい衝動に駆られる前に彼は告げた。



「夢を取った場合、全力で僕のサポートをするとその代わり貴女の担当を今後一切僕にしない」



“そして、日本にいつ戻れるかわからないということを提示したんです。”

聞いた途端、胸にドンッとハンマーを叩かれたような衝撃でした。

鈍い心の痛み、一呼吸すら忘れるほどに私は動揺したのです。



「……もう、戻れないんですか?」



呼吸を整えるのがやっとで、頭の中がゴチャゴチャになりがならも問いかけました。



「先方は、こっちでの僕の仕事ぶりを大変高く評価していただいてるみたいで向こうでの大成も不可能ではないと」



それはつまり片道切符を2枚彼は持つことになる。

究極の二者択一を選ばざるを得ない状況になったということでした。



「……僕は、夢を追いかけてみたい、でも、楓さんを離したくは……ない」



彼の夢、世界的な音楽プロデューサーになること。

その発端はかの有名なキングオブポップを生み出した音楽プロデューサーの存在。

そんな中で日高舞を見てアイドルを輝かせてみたいと思ったと。

彼ははにかみながら教えてくれたことを私は覚えていました。



「僕は……、俺は一体どうしたら……!!」

頭を抱える彼に私は……。

……最初からこんな結末になると心のどこかで思っていたのかもしれません。

あなたの想いは恋愛だけじゃなく、自分の夢に進むことにも注ぎ込んでいましたから。

どちらを取るかわかっていたはずなのに。

優しくしてくれるあなたに私は甘えていたんです。

今度は私が……。



「私があなたに夢を与える番ですね……」



「……え?」



「夢を、追いかけてください、このチャンスを逃したら、あなたはこれからの生涯後悔することになると思います」



……ああ、言ってしまった。

もう戻れないのに。

でも、言わなきゃ私も後悔する。



「夢を……あなたは私に与えてくれました、だから、気にすることなんてないんです」



そう言う私は俯いていて説得力の欠片も感じない姿でした。

沈黙が場を凍らせていくのがわかります。

緩やかな波と風だけが騒いでいました。

「……ラッキーでしたね、そうです、ラッキーだったんですよ」



彼に会えて私はラッキーだった、それは間違いない。

これ以上にない場違いなセリフだったと思います。

そんな私に彼は優しく、哀しく微笑んでいました。



「あなただけ、悪くはありません」



あなたは優しいから、私を愛してくれたから、自分が悪いと思っているのかもしれない。

違います、誰も悪くなんてなかった。

今までの幸せといろんな間違いのしわ寄せがこのタイミングで現れただけなんです。



「……自分だけを責めないでください」



彼に抱きつき絞るように声を出す、温もりを感じる事がこれから先ないのかもしれないでしょうから……。



「楓さん……」



これ以上、この人の温もりを感じていると私が動けなくなるのでそっと身を離す。



「……ですから、立ち止まらないでください、振り返らないでください」



お互い、本当に欲しい言葉を言わないまま、精一杯の笑顔で彼を励ましてみました。

ただ、頬に伝うものだけは止めることができずに……。



「……ごめん、楓さん」



彼の手が頬に触れ、瞳から流れているものを指で優しく拭ってくれました。



「俺、……行きます」



ついに彼も言ってしまいました。

……皮肉ですね、こんな時に今までで一番かっこいい表情をするなんて。

泣きそうな顔をしているくせに。



「……いってらっしゃい」



“行かないで”

言いたい言葉を堪えた後、彼はいいなれた言葉を口にしました。



「……いってきます」



触れた唇には海に入ったわけでもないのに少ししょっぱく感じたのは夕日が眩しすぎたのでしょう。

そう、思うことにしました。



あの時の私たちに想いを返して。

夢を夢で終わらせないために、私はただただ前へ歩いていこう。

いつか、彼と笑いながら再会するその日まで。





21:30│高垣楓 
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