2016年03月04日

武内P「緒方さんと飲むことに」 智絵里「甘いジュースが好きです」

アニメ最終回後の設定です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456738500


346プロ 中庭


武内P「………」スタスタ

武内P「? あれは……」



智絵里「………」モクモク

智絵里「うーん。今日はなかなか見つからないなあ……」



武内P「緒方さん」

智絵里「きゃっ!? あ、プロデューサーさん……」

武内P「すみません。驚かせてしまいましたか」

智絵里「いえ、大丈夫です」

武内P「……四つ葉のクローバー探し、ですか」

智絵里「あ、はい。今日はこの後、お仕事もレッスンもないので……本腰を入れて探してます」

智絵里「でも……そういう時に限って、なかなか見つからなくて」エヘヘ


武内P「………」ガサガサ

智絵里「プロデューサーさん?」

武内P「自分も、手伝います」

智絵里「そ、そんな……悪いです。手も汚れちゃうし」

武内P「かまいません。夕方の会議まで、少し時間を持て余していたところですから」

武内P「それに……こうしていると、昔を思い出せます」

智絵里「昔……?」

武内P「子どもの頃は、自分も、四つ葉のクローバーを探していました」

智絵里「そうなんですか?」

武内P「はい。多くの大人が、一度は通る道かと」

智絵里「多くの人が……ちひろさんとか?」

武内P「ええ、おそらく」

智絵里「……美城専務、とか?」

武内P「………」

武内P「小さい頃は、あったのではないでしょうか」

智絵里「そういうものですか……専務が……」

智絵里「………」

智絵里「ぷっ」

武内P「……緒方さん?」

智絵里「あ、いえ、その。今のは……ちょっと、専務が四つ葉のクローバーを探している光景を想像したら、つい」ブンブン

智絵里「……誰にも、言わないでくださいね」モジモジ

武内P「はい。わかりました」


武内P「………」

武内P「……っ、これは」

智絵里「プロデューサーさん?」

武内P「見つかりました。四つ葉のクローバーです」スッ

智絵里「わあ……プロデューサーさん、すごいです。わたし、見落としていたみたい……」

武内P「たまたまです……どうぞ」

智絵里「ありがとうございます」ペコリ

智絵里「………」ガサガサ

武内P「緒方さん? まだ、探されるのですか?」

智絵里「え? だって、プロデューサーさんのぶんも見つけないと……」

武内P「私の?」

智絵里「一緒に探してくれたから……今度は、わたしがプロデューサーさんに、四つ葉のクローバーを見つけてあげる番です」グッ

武内P「いえ、そのお気持ちだけで」

智絵里「だ、ダメです。探しますっ」フンス

武内P「………」

武内P「わかりました。手伝います」

智絵里「がんばりましょう」ニコニコ

武内P「……はい」

武内P(彼女のプロデュースを始めて、もう一年半以上……)

武内P(今では、しっかり私の目を見て話してくれるようになった)


智絵里「あっ……ありました! 四つ葉ですっ」

武内P「おめでとうございます」

智絵里「はいっ。えと、じゃあ……どうぞ。これは、プロデューサーさんのクローバーです」

武内P「ありがとうございます」

智絵里「えへへ……ちょっと疲れちゃいました」

智絵里「喉、かわいちゃったなぁ……」

武内P「自分もです」

智絵里「………」

武内P「………」

智絵里(え、えっと)

武内P(この後、どう会話をつなげれば……)

武内P「……緒方さん」

智絵里「はい?」

武内P「よろしければ、向こうのカフェで……お茶でも、いかがでしょう」

智絵里「あ、はい。お茶しましょう、そうしましょう」

武内P(緒方さんと落ち着いて話す機会は久しぶりのはず……)

智絵里(久しぶりにプロデューサーさんとお話し……えっと、なにを話そうかな)



菜々「いらっしゃいませー!」

菜々「二名様ですね! こちらの席へどうぞ!」




武内P「コーヒーをひとつ、お願いします」

智絵里「わたしはクリームソーダと……あっ。このケーキ、新発売なんですか?」

菜々「ええ! 店長おすすめのメニューですよー」

智絵里「じゃあ、これも一緒に」

菜々「かしこまりました! 少々お待ちください」タタタッ


智絵里「えへへ、ケーキとクリームソーダ……」ニコニコ

武内P「……楽しみですか?」

智絵里「……はっ!?」

智絵里「あ、その……すみません。恥ずかしいところを見せちゃって」カアァ

智絵里「子どもっぽいですよね。クリームソーダではしゃいじゃって……でも、甘い物は好きで。かな子ちゃんとも、スイーツめぐりとかしてて」

武内P「……いいことだと、思います」

智絵里「え?」

武内P「誰かと好みを共有することは、楽しみにつながります」

武内P「それと……自分も、甘い物は好きなので」

智絵里「プロデューサーさん……」

武内P「つまり……美味しいから、大丈夫ではないかと」

智絵里「……ふふ、そうですね」


智絵里「体重はちゃんと管理してますから、安心してください。食べすぎたかなって思ったら、そのぶん運動します」

武内P「無理は、しないでください」

智絵里「はい」


菜々「大丈夫ですよ。若いうちは、多少いっぱい食べても代謝でどうにでもなりますから!」

菜々「その点、ナナはもう……っとと。おまたせしました! コーヒーとクリームソーダ、そして新発売のチョコレートケーキです!」

武内P「では、いただきましょう」

智絵里「いただきます」パン

菜々(よかったぁ。ナナをいじるタイプの人達じゃなくて……危ない危ない)



智絵里「おいしい……あとでかな子ちゃん達にも教えてあげよう」パクパク

武内P「………」

智絵里「……プロデューサーさん? わたしの顔、なにかついてますか?」

武内P「いえ」

武内P「……よく、笑顔を見せてくれるようになりました」

智絵里「笑顔……わたし、今笑ってました?」

武内P「はい。先ほど、四つ葉のクローバーを探していた時も……いい、笑顔でした」

智絵里「そ、そうかな……」アハハ

智絵里「でも……最近、ううん。もうずっと前から……毎日が楽しいんです」

智絵里「辛いこともあるけど……たくさんの人と出会って、だんだん人見知りもしないようになって……わたし、ちょっとずつ、変われているのかなって」

智絵里「バラエティ番組で揉まれているうちに、打たれ強くなれたのかも」


武内P「……初めてのバラエティ番組の収録では、こちらのミスで正しい収録内容を伝えられませんでした。あの時は、本当に……」

智絵里「あの時はびっくりしました。クイズ番組って聞いていたのに、マシュマロを飛ばしたり、粉まみれになったり……」

智絵里「でも、今はもう、いい思い出です。その後のバンジージャンプも含めて。KBYDの皆さんとも仲良くなれましたし」

智絵里「あれで、身体を張るお仕事にチャレンジするきっかけもつかめたし……えっと、怪我の功名? です、はい」

武内P「そう言っていただけると、こちらも救われます」

智絵里「最近は、バラエティにもすっかり慣れちゃいました。たとえば、この前の収録で――」



MC『智絵里ちゃんは四つ葉のクローバー集めるのが趣味なん?』

智絵里『はい。大好きです』

MC『そんなに集めてどうするん? ベジタリアン?』

智絵里『そうそう、サラダに混ぜるとおいしい……って、食べるわけじゃありませんっ』ナンデヤネン!

ギャラリー『かわいいー!』



智絵里「――という感じで、ノリツッコミもそれなりには」

武内P「あの番組は私も見ました。緒方さんの魅力が、視聴者の方にも伝わったのではないかと思います」

智絵里「だと、うれしいです。えへへ」


智絵里「ノリツッコミのやり方は、笑美ちゃんに教えてもらったんです」

武内P「難波さんに……」

智絵里「はい、そうです」

智絵里「他にも、わからないこととか、難しいこととかがあったら、みんなが力になってくれるんです。それがとても心強くて、安心できて」

智絵里「わたしが頑張れるのは、そうやってみんなが支えてくれるからなんだって思います」

智絵里「いつか、みんなにお返しができればいいんですけど……」

武内P「……特別に、意識する必要はありません」

武内P「緒方さんが、周りの方達に助けてもらっているように……緒方さんもきっと、知らず知らずのうちに、皆さんの力になっているはずです」


智絵里「そうなんでしょうか」

武内P「自分は、そう思います」

武内P「確認する方法は……皆さんに、直接お聞きすればわかるかと」

智絵里「そ、そんなことできませんっ。恥ずかしいです」ワタワタ

武内P「そうですか」

智絵里「そうですっ。……えっと、話、変えますね」

智絵里「プロデューサーさんにも、少し相談したいことがあって」

武内P「なんでしょう」

智絵里「ファンの人達のことなんですけど……あの、たまに握手会で、わたしとの将来設計を語る人とかがいて」

武内P「将来設計、ですか……」

智絵里「そういう人達には、どう接したらいいのかなって。もちろん、応援してくれるのはうれしいんですけど……」

智絵里「それで、男の人の気持ちは、同じ男の人に聞いてみるのがいいかと思ったんです」

智絵里「相談事ができる男の人って、プロデューサーさんしかいませんし……」


武内P「……わかりました。そういうことであれば、今後いつでも聞いてください」

武内P「私なりに考えて、意見を出していきます」

智絵里「ありがとうございます」

智絵里「やっぱりファンの人達には、ひとりひとりちゃんと向き合いたいので」ニコッ

武内P「……そうですね」

武内P「他にはなにか、困ったことなどはありませんか」

智絵里「困ったこと……は、ないです。でも、聞いてもらいたいことはいくつかあります」

智絵里「まずは、この前幸子ちゃんと一緒にお仕事をしたんですけど――」



智絵里「――なんてこともあって」フフ

武内P「それは、観客の方々も喜んだのではないでしょうか」

智絵里「たぶん、そうだと思います」

智絵里「それと、もうひとつ………あ」

武内P「どうかしましたか」

智絵里「いえ……なんだか、わたしだけ勝手におしゃべりしちゃってるかなと思って」

武内P「問題はありません。プロデューサーとして、緒方さんのお話はたくさん聞いておきたいので」

武内P「それに、双葉さんにも……」

智絵里「杏ちゃん? 杏ちゃんが、どうかしたんですか」

武内P「ええ……よく、緒方さんと三村さんの近況について聞かれます。その時、答えられることが多いほうがよいので」

智絵里「そうなんですか。……でも、それなら直接、メールとかでわたし達に聞けばいいのに。どうしてプロデューサーさんに……?」

武内P「それは……想像はつきますが、私の口からは、答えかねます」

智絵里「?」キョトン


武内P「今日いただいた四つ葉のクローバーは、本の栞にしようと考えています」

智絵里「いいですね。それなら、いつでも使えますし」

武内P「はい。大切にさせていただきます」

智絵里「えへへ」

智絵里「……やっぱり、同じなんですね」

武内P「?」

智絵里「四つ葉のクローバーと同じで……幸せは、自分から手を伸ばすものだなって、今思いました」

智絵里「待っているだけの頃には、もう戻りたくないですから」



智絵里「もうすぐ、冬ですね」

武内P「はい。紅葉の季節も終わって、風も冷たくなってきました」

智絵里「……わたし、昔は冬が好きじゃありませんでした。寒いのは、なんだか寂しくて」

智絵里「でも、今は違います。冬のいいところとか、だんだんわかってきて、好きになれそう」

智絵里「冬だけじゃないです。アイドルになってから、いろんなものを好きになれるようになったと思います」

智絵里「プロデューサーさんは、笑顔が増えたって言ってくれましたけど……きっと、その理由がこれなのかな」

武内P「緒方さん……」


智絵里「いろんな人を見て、聞いて、話して、感じて……いっぱいいっぱい、好きになれました」

智絵里「だから、これからもっと、たくさんのことを好きになっていきたいです」

智絵里「何年も経って……アイドルを引退した後も」

智絵里「……できる、かな」

武内P「………」

武内P「できます。今のあなたなら、きっと」

智絵里「プロデューサーさん……ありがとうございます」

智絵里「………」

智絵里「あっ……一応言っておきますけど、今のは別に、アイドルをやめる気とかそういうわけじゃないので」アタフタ

武内P「はい」

智絵里「なので……えっと」

智絵里「これからも、よろしくお願いします」

武内P「もちろんです。私は、あなたのプロデューサーですから」

智絵里「……はいっ!」


武内P「……そろそろ、会議の時間です」

智絵里「あ、はい。がんばってください」

武内P「はい。では、自分はこれで……」

武内P「………」

智絵里「どうかしましたか?」

武内P「ひとつ、言い忘れていたことがありました」


武内P「自分も、太鼓の達人を練習したので……今度、時間があれば一緒に」

智絵里「………」

智絵里「はい。プロデューサーさんの腕、見せてもらいます」キリッ

武内P(自信に満ち溢れた表情だ……やはり、緒方さんと好みを共有するなら、これか)



おわり



08:30│緒方智絵里 
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