2016年03月14日

凛「好き」

オムニバス形式のドラマみたいなの。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457336780



『this is love』 城ヶ崎美嘉




美嘉「とうとう手を出しちゃった…。カリスマギャルのアタシが…。」

誰にも見つからないように田舎の本屋さんで買った一冊のティーン向け雑誌。
震える手で袋から取り出して、表紙で大きく主張する見出し文をあらためて読み上げる。

美嘉「『This Is Love 〜恋愛のルールや法則、テクニック〜』かあ。」

いわゆる恋愛ハウツー特集。

美嘉「よく考えたらアタシの年齢でこの雑誌買っててもおかしくない訳だし?普通に買えばよかったかも・・・。」

ビニール紐の包装を解き、ページをめくる前に深呼吸。
今まで読んでいた雑誌で恋愛特集がなかったわけじゃないのに、意識して買うだけでこんなに恥ずかしいなんて。
そもそも莉嘉が『お姉ちゃん、実は奥手?P君との仲、全然進展してないよね☆』なんて言わなければアタシだって焦りを感じずにいられたのに。

美嘉「って誰に言い訳してんだか・・・。ダサすぎだよアタシ・・・。」

ようやく落ち着いたところでページをめくる。

美嘉「ふんふん・・・なるほどね★これで明日からはプロデューサーはアタシのこと意識しまくりだよね★」

ふひ、ふひひ★
カリスマギャルの夜は更けていく。

「お姉ちゃーん、少し静かにしてー。

翌日

美嘉「プロデューサー、お疲れ★」

P「おう、美嘉は直帰だよな?送っていこうか?」

美嘉「マジで!?・・・あ、やっぱいいや。アタシ寄るとこあるし。」

美嘉(レッスン1【押してだめなら引いてみること】だったよね★これで心配したプロデューサーからメールか電話がくるはず!)

P「そうか?珍しいな、いつもなら喜んで乗ってくるのに。」

美嘉「ま、アタシも暇じゃないってこと★じゃーねー。」

そう言ってまだなにか言いたげなプロデューサーを置いて足早に立ち去る。

美嘉(あれ?今のアタシかっこよくない!?マジ恋愛上級者みたいじゃん!ま、まあ元々がカリスマギャルじゃん?これくらい当たり前だったんだよね★)

アタシはそんなことを考えて、緩む頬を隠しながら回り道をして帰路についた。

美嘉「メール・・・来てない。電話もない・・・。え、どうなってんの?」

家に着いて三時間は経った。なのにアタシの携帯は音も出さないし、震えもしない。
正確に言えば莉嘉からメールが来ただけで、目当ての人からの連絡は一切なかった。


美嘉「どうせならとことん押せばよかったー!!」

せっかくの二人きりのドライブのチャンスを逃したことを今更になって後悔する。

美嘉「終わったことは仕方ないし・・・切り替えて次いこー★」

若干やけになりながら前向きに切り替えて、レッスン2、3を読みながらイメトレする。うん、明日こそはいける!


美嘉「今度こそプロデューサーを・・・ふひひ★」

カリスマギャルの夜は更けていく。

「お姉ちゃーん、うるさーい。」


美嘉「『今度皆で遊ぼーよ★クラスの男子も誘ってさ★』っと。」

レッスン2【気になるカレを嫉妬させちゃえ!】に従って男子と遊びに行く話をするために友達にメールを打った。
あとはこれをプロデューサーに話せばきっと・・・!

『学生はいいな!アイドル活動のいい息抜きになるだろうし、楽しんでこいよ!』

美嘉「あれ?まず嫉妬するかな?」

『でも男子交えてか。パパラッチには十分気をつけるんだぞ。』

美嘉「しかも結構危ない橋渡るよねこれ。」

そもそもなんの保証もないことに気づいたのが送信前でよかった。
レッスン2はないね、次いこー★

P「今日も直帰だよな?予定は大丈夫か?」

美嘉「おっけーだよ★それに。」

P「それに?」

美嘉「た、たまにはプロデューサーとゆっくり話がしたい気分だし・・・。」

レッスン3、【意外な一面をアピール!】しっかり者に見えても実は寂しがりやとかね★

美嘉(こ、これは結構恥ずかしい系だけど、ここまでしたらさすがのプロデューサーだって。)


P「ははは、本当に美嘉は可愛いな。普段はカリスマギャルやってるのになー!」

美嘉(っ!効果アリじゃん!まあアタシぐらいならこれくらい楽勝

P「それが美嘉らしいって感じだけどな!」

美嘉「え?」

P「ん?どうかしたか?」

美嘉(もしかして、もしかして。)

P「おーい、行くぞー?」

美嘉「意外な一面でもない!?」

P「なんの話だ?」


美嘉「もー!!!全然役に立たないじゃんこれ!」

少しページがよれた雑誌をテーブルからベッドに投げ捨てる。
その拍子に雑誌が開いて、折り目がついていたあのページが目に入る。

美嘉「アホらし・・・片付けよ・・・。ん?あれ、これ次のページもあるっぽい?」

レッスン3まで書かれたページの右下にポップな字体で『これでもだめなら次ページへ!』と綴ってあった。

美嘉「最後の手段ってやつ・・・?アタシこれでもまだ・・・ないんだけど。そういうのじゃないよね・・・?」

期待と不安がページを捲る手を鈍らせる。

美嘉「ええーい!どうにでもなれー!」

勇気を出して捲ったページの先には大きく一文だけ書かれていた。


P「どうした?事務所の屋上なんて呼び出して。」

美嘉「えっとさ、アタシ、プロデューサーに言いたいことがあるんだ。」

P「大丈夫か?神妙な雰囲気で・・・まさか!アイドル辞めるとか言わないよな!?」

美嘉「ち!違うって!ちゃんと話聞いてよ!」

P「す、すまん。」

美嘉「もーっ!おこだよ?」

P「悪かったって。で、話って?」

レッスン4

美嘉「アタシね、プロデューサーのこと好き。」

【いっそもう当たって砕けろ!】


長い沈黙。
息を飲む音が聞こえてきそうなくらいの静寂。
しばらくそれが続いた後、プロデューサーが苦しそうな表情で頭を下げた。

P「すまん。美嘉は魅力的な女の子だと思う。だけど俺はプロデューサーで美嘉はアイドルだ。それに美嘉にはもっと」

美嘉「なんちゃって★」

P「いい男が・・・え?なんだって?」

恋愛なら直球勝負?みんなはそう言うかもしんないけど

美嘉「ウソ、冗談だよ★へへー驚いた?」

P「なっ・・・!こら!大人をからかうもんじゃないぞ!!」

砕けるための恋じゃないんだし。今はこれでいい。

美嘉「ごめんってー!」

P「反省してるのかー!?」

美嘉「チョーしてるって!」

P「罰としてマストレさんに厳しいレッスン頼んどくからな!」

どうせなら彼女になりたいから。

美嘉「それしょっけんらんよーでしょー!?」

P「ん?足りないか?」

美嘉「あーそれでお願いしますっ!」

P「なあ、もしオッケーしてたらどうするつもりだった?」

美嘉「え?・・・ひみつ★」

今はこれでいい!

end

硝子の靴を履いて、舞踏会で踊るシンデレラ。
その美しい舞台には上れなかったシンデレラの恩人の魔法使い。
でも魔法使いには魔法が使える。どんな奇跡だって起こしてしまう魔法が。

まゆ「私、トップアイドルになりましたよぉ。これで二人を邪魔するものはありません。」

暗い部屋の中、プロデューサーさんの息遣いと私の声が響く。

まゆ「シンデレラガール・・・。私がなれたのもプロデューサーさんのおかげですねぇ。」

P「まゆ・・・。」

男らしくごつごつした指が私の肩を優しく握った。

まゆ「でも、もうみんなのアイドル、みんなの佐久間まゆはおしまいです。」

窓から見下ろす都会の夜景が、今日シンデレラガールの発表会で見たたくさんのサイリウムと被って見えた。

P「まゆ・・・。」

まゆ「はい♪まゆは今からプロデューサーさんだけのシンデレラですよぉ。」

『Abracadabra』 佐久間まゆ

私は昔から消極的な子だったと思います。
それは読者モデルになってもあまり変わらなくて。
やれることをやっていく、特にやりたいことはない。
それが私でした。

そんな私があの日、プロデューサーさんと出会った日に変わったんです。

まゆ「恋は世界を変える、なんて言いますけどこんなに変わるなんて思ってもいませんでしたぁ。」

さっきまで肩を優しく握っていた両手が私を抱きしめる。
その瞬間、頭の奥がピリッとして背筋をぞくぞくと電流が走った。

まゆ「今の、なんでしょう・・・。背徳感ってこういうことを言うんですかねぇ。」

一目惚れが存在するなんて、その初恋でこんなに衝動的になるなんて思いもしなかった。

まゆ「ねえプロデューサーさん、少し思い出話をしてもいいですかぁ?大丈夫です、時間はたっぷりありますからぁ。」

プロデューサーさんにスカウトされてアイドルになって上京して、それからが大変だったんですよぉ。
まず好みを調べましたぁ。プロデューサーさんがスカウトするってことはプロデューサーさん自身が魅力を感じてるってことですもんねぇ。

えぇ?怒ってませんよぉ?今はまゆが一番ですよねぇ?・・・ならいいんですよぉ。

好みはセクシーなタイプか可愛いタイプで狙いをつけてたんですけど当たってましたぁ?・・・ふふ、当然ですよぉ。だってプロデューサーさんのことなんですからぁ。
というより事務所にいるのがそういうタイプの子ばかりですしねぇ。

最初の頃、まゆの服装のジャンルがバラバラだったの覚えてますかぁ?
はい、そうですねぇ。フレアスカートも着てましたよぉ。その時は可愛いタイプを探ってましたぁ。
派手な服装だった時期はセクシーなタイプを、はいそうですよぉ。

結局可愛いタイプが好みだったみたいなので、いっぱい勉強して今の趣味に落ち着いたんです。
ふふ、元読者モデルですからぁ。服の好みを当てるなんて簡単ですよぉ。

それからプロデューサーさんとの会話も増えてきて、シンデレラ選挙の前にまゆが告白したんですよねぇ。
でも答えはNOでしたねぇ。そういうまじめなところもすごく好きですけどねぇ。

でもまゆは諦めませんでした。魔法を使ったんですよぉ。
どんな魔法かですかぁ?



そうそれは単純で、でも奇跡だって起こせてしまう魔法。
半信半疑、藁をもつかむ思いですがった手段。

P「まゆ・・・。・・・?まゆ?ここは・・・?」

まゆ「もう大分効果が長くなりましたねぇ。でもダメですよぉ。これからなんですからぁ。」

プロデューサーさんの口元に薬品を染み込ませた布を当てる。
昏倒したプロデューサーさんの耳元で囁く。




まゆのことを好きになってください。まゆのことを愛してください。



だんだんプロデューサーさんは恋をしたくなります。
だんだんまゆにハマっていきます。


P[まゆ・・・好きだ・・・まゆ・・・好きだ・・・まゆ・・・まゆ・・・。」

私のアブラカダブラ。それは暗示です。


意識が薄くなった状態で何度も暗示をかける。
元々少しでも好意がなければ効きませんけど、プロデューサーさんがまゆのことを嫌いなはずないですもんねぇ。

暗示はいつか解けてしまう。シンデレラの魔法のように。

だから今日、都会が見下ろせるホテルで。

硝子の靴という事実が必要なんです。


P「まゆ・・・。」

ぎゅっと強く抱きしめられる。
女としての快感を、喜びを感じながら耳元で囁く。

まゆ「目を、閉じてください。」

もう聞こえるのはさっきよりも荒い息遣いと、ちくたくと響く時計の音。

まゆ「プロデューサーさん。」

夢にまで見たこの日がきた。



まゆ「世界で一番可愛いのは誰ですか?」


end

アイドルのお仕事が落ち着いたある夏の日。
学校も長期休暇に入ったことを利用して、初めて一人旅をした。
周りの人達は不思議そうな、あるいは心配そうな顔をしてどうしたのか尋ねてきた。
特にこれといった理由はないんだけど。
強いて言うなら。

凛「気付いたからかな。」

そう答えた。

『好き』 渋谷凛



凛「プロデューサー。」

P「ん?どうした。」

凛「海、見に行きたいんだけどさ。」

P「一人でか?」

凛「うん。」

仕事終わり、テレビ局の駐車場は薄暗くてプロデューサーの表情は見えなかった。
でも声からするに、心配してくれていることは察知できた。

凛「そんなに遠くに行くつもりはないよ。日帰りのつもりだし。」

P「急にどうした。失恋でもしたのか?」

凛「デリカシー。」

P「う、すまん。」

凛「別にいいけど。」

半分正解だしね。

P「それで。海に行きたいんだけど、の続きは?」

凛「おすすめとかある?プロデューサーそういうの知ってそうだし。」

P「おすすめかー。そうだな、あそこなんていいかもな。」

これが一週間前のこと。

運転手「一色海岸です。ご乗車ありがとうございました。」

料金を払ってバスから降りるとあまり人気はなかった。冬だし、当然といえば当然だ。
少し歩くと海が見える。

凛「綺麗・・・。」

思わず声に出してつぶやいた。
天気は快晴で、水平線の向こう側まで見える。


凛「写真、撮らないと。」

スマートフォンを横に構えて、カメラアプリを起動した。
でも画面に映るそれは、私が見えているそれとどこか違った。

凛「・・・やっぱりプロデューサーに連れてきてもらえばよかったかな。」

綺麗な景色を見つけたよ、そう言って写真を見せる予定だったのにな。
もう後悔してる。

凛「やっぱりそういうことなのかな。」

遠くに見えるのは富士山かな、そんなことを考えて気を紛らわしていた。


海岸には犬の散歩をしている人がいた。

P『初めまして、渋谷凛さん。』

初めて会った日を思い出す。
あの時、私はなんて言ったっけ。

凛『ふーん、アンタが私のプロデューサー?……まあ、悪くないかな…。私は渋谷凛。今日からよろしくね。』

なんて、しっかり覚えている辺り私にとって消し去りたい過去なのかもしれない。
自嘲気味に考えると頬が自然と緩んだ。

P『趣味は犬の散歩か。名前はなんて言うんだ?』

凛『ハナコだよ。』

とりとめのない会話を思い出しながら海岸沿いを歩く。
ふとスマートフォンを取り出して時間を確認した。まだここに着いてから30分も経っていないことに驚く。

凛「プロデューサーと一緒にいたら、多分もっと早く感じていたのかな。」

なんとなくいつも一緒にいた。
でもプロデューサーがいないだけで一日が長く感じる。
それは今日だけじゃなくて、最近ずっとだ。

凛「もう自分の気持ちに嘘をつくのはやめよう。」

翌日、仕事が始まる前の少しの時間。
プロデューサーを楽屋に呼び出した。

P「どうした。なにか問題でもあったか?」

凛「あのさ、私。」

思ったよりも心臓の音はうるさくなくて。
それどころか撮影前の慌しい楽屋なのに、外の音も聞こえなかった。
昨日の海みたいに静かな空間。

凛「気づいたんだ。」

精一杯の笑顔で言葉を紡ぐ。

凛「プロデューサーが好きだって気づいたんだ。」

ゆっくり近づいていこう。
今はまだ少し慣れないけど。
多分私にとってプロデューサーは。

誰よりも大事な人だから。

end

17:30│渋谷凛 
相互RSS
Twitter
更新情報をつぶやきます。
記事検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: