2016年04月17日

的場梨沙「裸足の飛鳥とサインとお月さま」

ザーザー





心「あーあ、本降りだなぁ……雨はじめじめするからあんまり好きじゃないぞ」





梨沙「こんな天気なのになんでプロデューサーは迎えに来ないのよー。駅から事務所まで歩かなきゃいけないじゃない」



飛鳥「仕方ないさ。担当しているアイドルは複数いても、Pの身体はひとつしかないからね。天気の悪い日にいつも送迎してもらうわけにもいかないだろう」



梨沙「それはわかるけど……お仕事終わった後は疲れるのよね。あんまり歩きたくなーい」



心「お年寄りみたいなこと言わないの♪ 子どもは風の子、雨の日でも元気に走り回れ☆」



梨沙「そんなことしたら濡れて風邪ひくじゃない」



飛鳥「(風が風邪を呼ぶ……いや、これは言葉遊びというよりダジャレか。言わないでおこう)」



心「風の子だけに風邪ひいちゃうとか?」



梨沙「さむっ! ダジャレ言うならもっと面白いのにしてよねっ」



心「やーん、辛辣☆」



飛鳥「(やはり言わないで正解だった……心さんはすごいな、ある意味)」ウンウン





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1460223574



心「はぁとが梨沙ちゃんくらいのころは、雨が降ってても外で男子を追っかけまわして――」



梨沙「あっ! あのカフェオシャレっぽい! ねえねえ、あそこ寄っていかない?」



飛鳥「ふむ……いいかもしれないな。雨脚も弱まるかもしれないし」



梨沙「決まりね!」



心「おい☆聞けよ☆」



梨沙「なに? ハートさん行きたくないの?」



心「それは行く♪」



飛鳥「……騒がしい雨風も、彼女らの活気にはお手上げかもしれないな」フフ





心「いやぁ、ケーキおいしかった♪ 梨沙ちゃんが目を付けたお店はだいたい当たりだから助かるわ☆」



梨沙「ふふん、アタシのセンスに感謝しなさいよね」



梨沙「お茶してるうちに雨もやんだし、完璧ね!」



心「だいぶ降るかと思ったけど、にわか雨だったね」



飛鳥「きっと雨が逃げ出したんだろう。ここの高気圧に雲が押し出されたんだ」



心「へ?」



飛鳥「なんでもないさ」



梨沙「さ、また降らないうちに帰るわよ!」







心「傘さして歩くのも、たまにはいいんだけどねえ。お気に入りのマイ傘披露できるし♪」



飛鳥「ボクも雨は嫌いじゃない。迷いも悲しみも、全て洗い流してくれる気がするから」



梨沙「そう?」



飛鳥「梨沙も一度、雨に打たれながら考えてみるかい?」



飛鳥「あぁ、ただしやるなら梅雨以降だな。暖かくない時期にやると風邪をひく」



梨沙「言われなくてもやんないわよ」



心「というかその言い方、さては実体験だな〜?」



飛鳥「失敗のない人生は味気がない。玉ねぎのないカレーのようなものさ」



梨沙「ビミョーにわかりにくい……」



心「はぁとはカレーには絶対肉入れろ派だぞ☆」



梨沙「カレーといえば……うちのカレー、たまにジャガイモのかわりにサツマイモ入るんだけど、あれおいしいわよね」



心「サツマイモは英語でスウィーティーポテトだからな♪」



飛鳥「正しくはスイートポテトだ」



心「スウィート ポテイトオ♪」



飛鳥「今のがネイティブ風の発音だ」



梨沙「英語の授業?」



梨沙「とにかく、アタシはわざと雨で濡れるなんてイヤよ」



飛鳥「ボクだって強要はしないさ。これはマイノリティに属する行動だからね」



心「気持ちはわかんなくもないけどね♪ ドラマで女優が雨に打たれてるシーンとか、なんかグッとくるし♪」



飛鳥「頬をつたう雨が、まるで涙のように感じられる。強情で不器用なボクのかわりに、空が泣いてくれているかのようで」



飛鳥「そう。それはいわば――」



梨沙「あ。飛鳥、そこ」



飛鳥「ん?」



梨沙「足元――」





バシャーン!





梨沙「でっかい水たまりあるわよって言おうとしたんだけど……」



飛鳥「………」



心「その険しい顔、中まで浸水したと見た」



飛鳥「………ご名答」



P「なるほど。それで帰ってくるなりソックスを脱いでいるのか」



心「そゆこと♪」





梨沙「目つぶったまま、前向いて歩かないからそうなるのよ」



飛鳥「……反論できないのが辛い」



心「テンション上がって語ってるときは前見ないよな☆ わかるわ☆」



P「はは、確かに」



梨沙「ま、いいじゃない。失敗は玉ねぎなんでしょ?」



飛鳥「それだとまったく意味が理解らなくなるけど……」





心「にしても……」ジロジロ



飛鳥「?」



心「飛鳥ちゃんの素足、新鮮だな☆ 服着てる状態だと」



梨沙「お風呂の時とかは別だけど、飛鳥が裸足になってるのって珍しいかも」



P「基本、いつもなにか履いてるからな」



飛鳥「べつに、珍しいからといってじろじろ見るほどのものでもないと思うけど」



心「えいっ♪」タッチ



飛鳥「ひゃん!?」



心「おお、見たまんまのすべすべだ! うらやましいぞこの〜☆」スリスリ



梨沙「どれどれ?」ピトッ



飛鳥「き、キミまでなにを」



梨沙「む……確かに結構やるわね。アタシの脚といい勝負かも」



心「ちょっとぷにぷにしてるところが素晴らしい☆」



飛鳥「ちょ、くすぐったいからやめ……!」



心「プロデューサーも触ってみる?」



P「触りませんよ」



梨沙「プロデューサーはロリコンだから、小学生までしかキョーミないのよ」



P「ロリコンでもないからな」





飛鳥「はあ……やっと解放された」



心「普段の絶対領域もいいけど、たまにはおみあしをさらけ出すのもスウィーティー♪」



飛鳥「ありがたがるものじゃないだろう……だいたい、いつもソックスを履いているわけでもない」



梨沙「そうだっけ? じゃあいつ脱いでるのよ」



飛鳥「夏の学校のプールの授業とか」



心「はぁと達、それ見れないんだけど……あっ、そうだ♪」



心「プロデューサー」



P「飛鳥、夏になったら水着の仕事してみるか?」



心「食いつき速っ!」



梨沙「プロデューサーの仕事に関係あると速いのよね」



飛鳥「水着はあまり気乗りしないな……心さんがやるなら考えよう」



心「オイ、巻き込むなよ☆ こっちは水着着るとしたらダイエット必須なんだぞ☆」



飛鳥「ふふっ」







別の日





かきかき



飛鳥「ん……違うな」



かきかき



飛鳥「……これもしっくりこない」





心「飛鳥ちゃん、さっきからなにしてんの?」



梨沙「サイン書く練習だって。もっとボクのセカイを表現できるようなものをなんとかかんとかって」



心「要はもっといいサインをファンにあげたいってこと? アイドルの鑑だねぇ♪」



梨沙「悩んでるみたいだけどね」





飛鳥「うーん……これも微妙だな」



心「おっす、飛鳥ちゃん♪ どんな感じ?」



飛鳥「あぁ、心さん……文字に想いを込めるというのは、想像以上に難しいものだね」



心「どれどれ……わあ、いっぱい書いてるなぁ。軽く20パターンはあるんじゃない?」



飛鳥「ボクは凝るものには凝る主義でね」



心「うん、知ってる」



飛鳥「今のところ、一番マシなのはこれかな。それでも満足には程遠いけれど」



心「ふーん」ジーー



飛鳥「……どう?」



心「もっと派手でもいいんじゃない? ちょっとこじんまりしてるっていうか」



飛鳥「そうかな。そこそこ派手にはしたつもりなんだが……」



心「はぁとからしたらまだ地味すぎるくらいだぜ☆ もっと文字にハートつけまくるとかさ☆」



飛鳥「それは嫌だ」



梨沙「コアラでも描いたら?」ヒョコッ



飛鳥「なぜ急にコアラなんだ」



梨沙「ほら、オーストラリア行ったとき、ハグされてたでしょ? あの時すっごい笑顔だったの思い出したから、好きなのかなーって」



心「え、なにそれめっちゃ見たかった! すっごい笑顔の飛鳥ちゃん見たかった☆」



梨沙「コアラが嫌なら、鳥とか? 名前に入ってるし」



心「動物推しだね、梨沙ちゃん」



梨沙「動物描いたらかわいく見えるし!」



心「ハートマークでもかわいく見えるぞ♪」



飛鳥「あまりかわいい方向は目指してないんだが……」





数時間後





P「飛鳥、梨沙。まだ帰らないのか? もう外も暗くなってきてるぞ」



飛鳥「もう少し。もう少しでいいサインが書けそうなんだ」



梨沙「しょーがないからアタシも付き合ってあげてるのよ」



P「そうか……」



心「はぁとも付き合ってあげたいんだけど、今日はちょっとなあ」



梨沙「なにかあるの?」



心「お母さんが長野の実家から様子見に来るんだってさ。そろそろ空港に着くから迎えに行かないと」



P「せっかくだし、俺もこの後ご挨拶しようと思っていたんだ。だから心さんと一緒に帰ろうと思っていたんだけど……子どもたちだけ事務所に残すのはな」



ちひろ「でしたら、私がもう少し残りますよ」



P「ちひろさん。いいんですか?」



ちひろ「はい。私もちょっとやることがあるので」



P「ありがとうございます。よろしくお願いします」



心「サンキュー☆」



ちひろ「というわけで、飛鳥ちゃんも梨沙ちゃんも、サイン頑張ってくださいね」



P「いいもの、書けるといいな」



心「ファイトだぞ♪」



飛鳥「あぁ。ありがとう」



梨沙「頑張るのは飛鳥だけだけどね」





その後





飛鳥「………」





飛鳥「できた……!」



梨沙「うん、なかなかイケてるわね!」



ちひろ「これなら、ファンの皆さんももっと喜んでくれるでしょうね」



飛鳥「ふう……あとは、書き方を忘れないようにしておけば大丈夫」





飛鳥「もう外は真っ暗だね。窓から月が見えるし……」



ちひろ「今日は満月ですね」



梨沙「あ、ホントだ。気づかなかった」



梨沙「月かぁ……たまにちゃんと見ると、やっぱりきれいね」



飛鳥「……ふっ」



梨沙「? どうしたの、急に笑って」



飛鳥「あぁ、いや。たいしたことじゃない」



ちひろ「もしかして、『月がきれい』という言葉に反応したんじゃないですか?」



梨沙「それがどうかしたの?」



飛鳥「『月が綺麗ですね』という言葉は、愛の告白の婉曲的表現なのさ」



梨沙「エンキョク……?」



ちひろ「遠まわし、という意味ですよ」



ちひろ「夏目漱石の有名なうわさのひとつですね。『アイラブユー』を日本語に訳すと、『月が綺麗ですね』になるそうです」



梨沙「ふーん……なんで月がきれいだと愛の告白になるの?」



ちひろ「そこは……飛鳥ちゃん、知ってます?」



飛鳥「さあね。そもそもこれ、本当に漱石が言ったのかどうかも定かでないらしい」



飛鳥「ただ、奥手な日本人の感性にはよく合う……そう捉えられているから、人気の高いフレーズにもなっている」



飛鳥「なにより、ロマンチックだとは思わないかい」



梨沙「ロマンチックねー……好きなら好きってはっきり言えばいいじゃない。そんな回りくどい言い方じゃ伝わらないわよ」



梨沙「奥手なのは別にいいけど、告白の時くらいビシッと言いなさいよね!」



ちひろ「ふふ、梨沙ちゃんらしい答えですね」



飛鳥「キミならそう言うと思っていたよ」



飛鳥「けど、誰だって素直に言えないことのひとつやふたつはあるものさ。梨沙だってそうだろう」



梨沙「アタシはないわよ」



飛鳥「本当に?」



梨沙「ない、わよ……たぶん」



飛鳥「本当の本当に?」



ちひろ「本当の本当ですか?」



梨沙「な、なによちひろまで!?」



ちひろ「面白そうだったので♪」



梨沙「まったくもう……」





帰り道





飛鳥「都会の夜は、月明かりが必要ないほど明るいな……」



ちひろ「そうですね」



梨沙「でも、月がないとそれはそれで味気ないんじゃない?」



飛鳥「味気ない、か」



梨沙「そうそう。つまり、月も玉ねぎなのよ」



ちひろ「玉ねぎ?」



飛鳥「こっちの話さ。ふふ」



ちひろ「むむ。なんだか仲間外れにされているような……」



ちひろ「寂しいので手をつないで帰りましょうか」ギュッ



梨沙「わっ、びっくりした」



ちひろ「梨沙ちゃんがはぐれてもいけませんしね」



梨沙「そんな子どもじゃないわよ!」



梨沙「勝手にふらふらどこかへ行きそうっていうなら、飛鳥のほうがそれっぽいし」



飛鳥「ボクだってそんな放浪癖はない」



梨沙「アタシがちひろに手を握られるなら、飛鳥の手はアタシが握ってあげるわ!」ギュッ



飛鳥「……やれやれ。しょうがないな」フフ



ちひろ「うふふ」



一方そのころ





心「今日は月がきれいだねー」



P「本当ですねー」



心「こういう日は焼肉食べたいぞ♪」



P「いいですねー。月関係ないけど」



佐藤母「(相変わらずうちの娘は風情がわかってないねぇ。Pさんとは呼吸あってるみたいだけど)」







おしまい





12:30│的場梨沙 
相互RSS
Twitter
更新情報をつぶやきます。
記事検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: