2016年04月21日

モバP「きっと二人で明日、奏で」


デレマスSSです。

地の文と百合注意ってことで、よろしくお願いします。







SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459054672





1、始まりの一言





 ――――…… ねぇ、ボクへのキスは……偽物?





それは、不意に出てしまった一言だった。



目の前の相手は、何を言われたのか分かってないような表情をしている。



いつものボクなら、『痛いヤツ』として言葉を並べて武装しただろう……



でも、今のボクにはそんな余裕は無かった。



何でこのコトバを、今、この場で言ったのか?



その疑念が、ボクを縛りつけているようだ。





一言も言葉が増えずに流れる時間……その静寂を……



「お、二人揃ってる!ちょうどいい!仕事の話をしてもいいか?」



ボクのセカイを変えた1人が大声で空気を変える。



内心、ホッとしながら、いや、回答の無い空間に少し心を悩ませながら、



「全く、キミは空気が読めないようだね。でも、急いてるようにも見える……話を聞こうか」



話題をすり替える。



相手は……少し戸惑った顔をした後に、いつもの顔でプロデューサーに軽口を叩く



少しの誘惑を乗せて





彼……あぁ、プロデューサー曰く、2人でユニットを組む仕事が入ったようだ。



この空気で、この仲で、デュエットを歌うライブを企画しているらしい。



ユニット名は『Imitation KISS』



偽物の口付け



……どうにも出来すぎてて泣きそうだよ。



まるでキミに答えを代弁された気分だ。





ボクも相手も、否定する言葉は無い。



この仕事を実行することは決まっている。



ただ、お互い多忙の身だから、一緒に練習できるのは最終リハーサル前くらいみたいだ。



さて、これから、どう向き合おうか……



ボクと、相手と……この仕事と……





2、ラジオ



 仕事から帰ったボクは、一通りのことを済ませて……



思い出すことすら、今はしたくないから、ラジオを流した。



この時間は少しお気に入りの番組がやっている。



パーソナリティが1週間決めたテーマでリクエスト曲を流す。



その曲が絶版であろうが、インディーズであろうが、



パーソナリティが気に入れば見つけて来て流すこだわりの番組。



今日は月曜日……今週のテーマが決まる。





あぁ、なんてことだい……ここで、テーマが恋愛の曲とは……



ただ、ここの曲選びは好きだ。



だから、今週もきっと聴ける日は忘れずに聴くだろう。



……今日はすぐ準備できる楽曲ということもあり、



人気のJ-POPやアイドルソングが流れていた。



ボクの事務所の曲も流れていた。



ボクの曲も……いつかは聴けるのだろうか……なんて





さて、今日はここまでにしよう……寝る前にふと気になって鏡の前に立つ



あの人の唇が触れた部分を気付いたら撫でていて、



ボクは鏡を見ることが出来なくなっていた……



明日から、新しいレッスンじゃないか……しかも、あの人と



ボクは、少しの緊張を隠すように鏡から離れ、眠りに就く。



明日はきっと会えないだから大丈夫。



それが安堵なのか不安なのか分からない感情に身を委ね……毛布を抱きしめた。





3、偽りの意味



 出勤したボクは、プロデューサーに呼ばれ、デュエット曲の仮歌とダンスを確認する。



これが『ニセモノ』の意味なのか……



そこに映っていたのは、隣り合って歌う2人と……



最後の最後に視覚トリックでキスをしているように見える決めポーズ



お互いが真ん中を向くけど、8cm低いボクはそのまま、相手は一歩横に外して踏み込む



全く……14歳と17歳にこんなことをさせるなんて、キミも業が深いね。





そんな小言を言ってみたが、キミには通じなかったみたいだ。



今日はこの打ち合わせだけで、明日から本格レッスンらしい……



ボクは、仮歌のMP3をプレイヤーに入れ、歌詞カードをもらい、



何だか、独りで歌を聴きたい気分になった。



だから、自動販売機で、少し甘めの熱い缶コーヒーを買い、屋上に出かけた。





屋上の端っこに設置されている椅子。



その特等席に座り、ボクは仮歌を再生する。



お気に入りの場所で……二人で……隣同士で……歌う曲が流れる。



その歌詞を見て、ボクは……歌詞カードをポケットに入れ……ひざを抱く。



またボクだけのセカイに引き籠った気分だ。





「同胞よ、凍てつく悪魔に召されるやもしれぬぞ?」



……数刻、いや、どれくらい経ったか分からない。ポケットの缶コーヒーがすっかり冷えている。



そんな時に、ボクに向かって声が掛けられた。



全く、この相方には、バレているかのように見つかってしまう。



ボクは大丈夫だと答え、隣に座って欲しいと椅子の左側を優しく叩く



ふわりと漆黒のスカートを整え、闇の天使が舞い降りる。



「新たなる舞台……眷属を病ますほどの境地か?」



本当に、この子は優しい。





ボクは、大丈夫だと告げるが、納得していないという顔をしている。



分かってる同胞には伝わってしまう。



いや、そうでなくても、女子というネットワークで全て伝わっているのかもしれない。



「舞台でないのであれば……」



あえてその後を言わない。そうキミなら言わないと分かっている。



優しいね……本当に……





「同胞飛鳥よ、今宵、魔王と語らう余興はいらぬか?」



ふと、パジャマパーティのお誘いを受ける。



ボクは、もちろんと受け入れ、ボクの部屋に集まることが決まる。



魔王と名乗るには随分と可愛らしい笑顔で嬉しそうにするのは、



人を魅了する堕天使の名を欲するままにする彼女らしいと思う。





さて、やることが出来た。



ボクは、椅子から降りて思いっきり背伸びをしする。



魔王が好む供物を揃え、今宵の余興にふさわしい題材でも探そうか。



ボク達のセカイがそれを望んでいるから





4、Face



 帰宅し、いろいろな準備を終わられた少し後、控えめなノック音と共に魔王がやってきた。



「やぁ、待っていたよ」



出迎えの一言で満面の笑みを浮かべる魔王は、ズルいくらい可愛い。



だが、魔王はその笑顔を継続させず問いかけてきた。



「今宵は、愉悦の電波を受け入れず終えるのか?」



ボクがラジオを起動していないことが気になったらしい。



おしゃべりがメインなら不必要かと思っていたけど、そうでもないらしい。



ボクは、お言葉に甘えてラジオを起動し、いつもの周波数に合わせ、昨日と同じ番組を流す。





最近はお互いに忙しかったのもあり、まずは、お互いの近況報告からしていた。



栄光のガラスの靴を得た彼女の仕事量は……そうだね。いろいろ聴いてみたくはなるよ。



供物達も順調に減って、少し話が落ち着いたとき



ラジオから少し変わったチャイム音が聞こえた。



これは、パーソナリティが珍しいリクエストを流す前の合図



ちょっと気になってしまったボクは、同胞にそのことを教えて、少し聴く時間にする。





今回のリクエストは……ハードコアテクノというジャンルの曲



その中でも、ニュースタイルガバと呼ばれるらしく、歪んだキック音が鳴り響くのが特徴みたいだ。



オランダ発祥の音楽らしいけど、今回の曲の作曲者は日本人で、オランダでも評価されている人らしい。





曲の名前は 『Face』





顔……どんな恋愛が関わる曲なのか、今までの情報からでは想像できず、少し気持ちが昂るのを感じる。





曲が始まる……静かな場面、激しい場面、ゴスゴスでもドスドスでも適格な表現じゃない



不安やいろんな気持ちがまぜこぜになった……「濁った心音」のような音が鳴る



映画……ふとしたワードで、あの人を思い出す……



ねぇ、今私はどんな顔をしている?……そのコトバに数日前、ボクの一言の後に見せたあの人の顔が浮かぶ……



あぁ、この曲を聴いたのはきっと目の前の堕天使がくれた天啓だ……



濁った心音のリズムに心を揺らして、そんなことを考える





曲が終わり、静寂が二人を包む。



でも、その静寂はすぐに魔王が掻き消す……一つの画像を手渡しながら……



「同胞飛鳥よ、契約の口付けには数多の意味がある……そ、その、飛鳥ちゃんが受け取った意味は……どれ?」



それは、口付けされた場所にはそれぞれ意味があるという説明の画像



……ボクは、あの人の唇が触れた位置を探す。



あの人が、ボクにくれた意味は……思慕……そして、恋慕……



ボクが知っている限りで、あの人がボク以外に与えているのは……友情、愛玩、敬愛……





……あぁ、そういうことだったのか……



ボクは一人、泣きそうになる……嬉しさ半分悔しさ十分……



顔に唇が触れないだけで、ボクへの気持ちは違うものだと信じ込んでいた。



そんな幼稚さが余計に突き刺さる。





「同胞飛鳥よ、このままで良いのか?」



俯くボクに魔王が問いかける。



ボクは、頭を横に振る。



そんなボクの額に……優しく堕天使の祝福が施される。



「我が祝福を受けたからには、幸福に至らねばならぬぞ!」



彼女なりの応援を受ける。



こんな同胞に恵まれているだ……ボクはボクなりに決めるしかない。



少し、心が固まったボクは、一緒に片付けをして……



これからは、どんな時間でも自分の部屋に戻ると決めた同胞と、



手を繋いで眠る最後の一晩を過ごした。





5、ラストリハーサル



 あのパジャマパーティから、ボクは連日レッスンの日々を送っている。



横に誰も居ないダンス練習。



流石に、そろそろ相手が欲しいけど、無理やり作ったユニットのイベント



プロデューサーもかなり苦慮しているようだ。



たまに一緒になれる日も、そこまで時間は確保できず、確認事項だけで終わることも多い。



そんな日々が過ぎて……イベント前日のリハーサルの日になった。





流石に、この日はしっかりと練習が出来る。



二人で揃える声、揃えるダンス



どうやら、思っていた以上に相性はいいらしい。



いや、これくらい出来なくちゃボクが満足できない。



あと、少ししっくりこない微々たるレベルだけど、ボクはそれを感じている。



そんなことを考えつつ、



最後に舞台での動きを確認して、今日は終わった。





片付けの準備をしていると……ボクと彼女は2人だけになる。



荷物をまとめ、もうすぐ部屋を出る。



ボクは、今しかないと、呼び止める。



少し何かをはぐらかすような返事が聞こえる。



知っている。



その原因はボクなんだろう?



だから、ちゃんとボクが精算するよ。





気付かれないように深く呼吸を整えながら歩み寄る。



濁った心音がウルサイ、あの曲のような芸術性が無いのは、



これはただの緊張だからで、



……そんなことは分かっている。



ボクは『痛いヤツ』になりきれない自分を叱り飛ばし、アナタの元にたどり着く。





そして、ボクを見ようとしてくれないアナタの頬を両手で包んで、



『愛情』を伝えるキスをする。



優しく触れるように、でも、ちゃんと伝わるように……



唇が離れたあと……相手の顔を見る。





 綺麗だ。本当に綺麗で見惚れる。



この瞬間、この顔を見られるのはボクだけ



ボクの顔もきっと、想い人にしか見せない顔だろう。



そして、ボクは相手に伝えるんだ。



前に失敗したボクなりの言葉で





『ねぇ、このキスは偽物だと思う?』





さぁ、返事を聴かせて? 2人で明日を『奏』るために……



おわり



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