2016年04月30日

凛「前口上を」幸子「考えましょう!」

凛「ねぇ、プロデューサー…次の仕事のことなんだけど…」



P「ああ、とうとう次はソロでの野外フェス出演だな!凛にこんなに大きな仕事のオファーが来るようになるなんて、何だか感慨深いものがあるよ」



凛「うん…」





P「どうした?浮かない顔して」



凛「プロデューサー…正直な気持ちを言うと私、ちょっと不安なんだ」



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P「凛…?」



凛「フェスってことは、私のファン以外のお客さんも沢山来るってことでしょ?しかも私以外の出演者さん達は、みんな著名な人達ばかりで…」



凛「そんな人達を見に来たお客さんを、私なんかが満足させられるんだろうかって…最近そんなことばかり考えちゃってさ…」



P「…」



凛「くよくよ悩むなんて私らしくないって思うかもしれないけど、プロデューサーにだけはこの気持ち、話しておきたかったんだ…」



P「…凛!」



凛「…その広げた両手は何?」



P「え?いや、これは俺の胸の中に飛び込んでくる流れかなって思って…」



凛「いや、飛び込まないよ…」



P「あ、はい…すみません」



凛「…」

P「実を言うと最近、凛が思い悩んでいた事には気付いていたよ。そして、その原因がフェス出演に関係してるんじゃないかとも薄々感じていた。ごめんな、今の今まで何もしてやれなくて」



凛「…!」



P「でも俺も、どうすれば凛の力になれるかずっと考えてたんだ。確かに出演アーティストに名を連ねてるのは大物ばかりだ」



P「けど凛は、その中の誰にも負けていない。俺は強くそう思ってる。凛が全力でやれば、きっと会場にいる人々全員をファンにできるはずだ!俺も会場で、どこにいても凛に気付いて貰えるくらい全力で応援するからな!」



凛「…フフッ、ありがとう。プロデューサーにそう言って貰えて、心のモヤが晴れたよ」



P「更に応援の一環として、凛の魅力を最短距離で伝えられるように、キャッチーかつインパクトのある前口上も用意しておいた!」



凛「プロデューサー?せっかくモヤが晴れたところに、急に暗雲が立ち込めてきたよ?」

凛「それで、その前口上って何なの」



P「まずはこちらをご覧下さい」



幸子「はーい皆さーん!日本でイチバン!世界でイチバン!宇宙でイチバン!超絶カワイイアイドルといえばー?」



P「せーの、さっちィィィィィィィィィィェェェェア!!!!」



幸子「そう、超絶カワイイさっちーこと、輿水幸子でーす!」



P「うォォォァアアアッッッッフゥゥゥゥゥ!!!!」



凛「何これ」



幸子「フフーン!なかなか良いレスポンスだったんじゃないですか、プロデューサーさん?わざわざオフの日に事務所へ来た甲斐がありました!」



凛「そんなにヒマなんだ幸子」



幸子「おはようございます、凛さん。前口上というのはですね、今ボクがやってみせたような自己アピール、個人のキャッチコピーみたいなものです!」



P「そして今回は、事務所のみんなに凛の前口上を考えてもらいました。それをクジにしたものがこちらです」



凛「何?この事務所みんなヒマなの?」



P「凛にはこの箱からクジを一枚ずつ引いてもらい、中に書かれている前口上を、実際のライブをイメージし

ながら読んで貰います」



凛「勝手に変な企画準備して…私あんなのできないよ」



幸子「ちょっと凛さん、『あんなの』とは何ですか!『あんなの』とは!」



P「逃げるのか、凛!ここで恥ずかしがっているようじゃ、野外フェスの成功なんて夢のまた夢だぞ!」



凛「そ、そう言われると何か急に悔しさが…まぁ、せっかくみんなが考えてくれたんだし…」



凛「…わかった。やってみるよ」



P&幸子「わーーーパチパチパチーー」



凛「この箱の中から選ぶんだよね…うわ、なんか意外と沢山ある…うーん…じゃあこれ」



P「ではペンネームからお願いします」



凛「ペンネーム…『ロッキンガール』さん」



凛『みんなノってるかーい!?蒼い海に波飛沫をあげるロック、渋谷凛だよ!』



P&幸子「…」



凛「うん、平凡だね。青を『蒼』にした点は良かったと思うよ。でもその他がね…波飛沫をあげるロックって何?テトラポッドかな?危ないからそんな所にお客さん乗せちゃダメだよ、李衣奈」



幸子「なんか吹っ切れて評価し始めちゃいましたし、意外と毒舌評論家ですねぇ凛さん…」



P「頭も尻も隠す気の無いペンネームだが、名指しは止めてやれ…」



凛「こんな茶番、適当に一枚だけ読んで終わらせる気でいたけど、このままだと私が損しただけだからね。あと一枚だけいくよ」



P「思ってても口にして欲しくなかったよ、凛」

凛「えーと…ペンネーム『頑張りました』さん」



凛『みんなのこと、蒼く染めてみせるよ!駆け抜けるインディゴブルーの風、渋谷凛!』



P「…会場のみんなを蒼く染めるってどういうことだ?」



幸子「なんだか会場が映画のアバターみたいになりそうですねぇ」



凛「120点。流石卯月といったところだね」



P「一転して胸焼けのする甘々評価だな」



幸子「またもやペンネームが意味を成しませんでした」



凛「インディゴブルーの原料となる藍には『美しく装う』という花言葉があるんだ。この前口上はシンプルに見えて、実はとても奥深いものだったんだよ」



P「な、なんだってー!?」



幸子「ちょっと強引な気もしますが…」



凛「そうだね、GOIN'!!!だね。採用したいところだけど、もう少しだけ他のやつも見てみようかな。ペンネーム『ヨロイ元帥』さん」



凛『天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!悪を倒せと俺を呼ぶ!聞け、悪人共!俺は正義の戦士、仮面ライ』



P「みなまで言うな、凛!」

幸子「お客さんのこと悪人呼ばわりしちゃってますよ!」



凛「このままだとただの丸パクリだからね。もう一捻り欲しかったかな。ヨロイ元帥さんこと光にはしぶりんステッカーをあげるね」



幸子「勝手にノベルティを配り始めちゃいましたよ!」



凛「はい次。ペンネーム『名探偵』さん」



幸子「そしていつの間にかノリノリです!」



凛『私は高校生アイドル、渋谷凛。親友でユニットメンバーの北条加蓮と遊園地へ遊びに行って、黒ずくめの男の怪しい取引現場を目撃した。取引を見るのに夢中になっていた私は、背後から近付いてくる千川ちひろに気付かなかった。私は彼女に毒薬を飲まされ、目が覚めたら…体が』



凛「長いよ」



P「おォい!体がどうなったんだ!?ちひろさんからいつも何かを飲まされている身としては気になって仕方ない!」



凛「ペンネームは作者を都と思わせるミスリードだね。この字体から作者は奈緒と考えるのが妥当かな。遊園地へ遊びに行く面子に加蓮を書けても、自分まで書き加えるのは恥ずかしくて出来なかったところまで想像がつくよ」



幸子「探偵ばりの推理力ですね!」



P「おい、頼むから最後まで読んでくれ!」



凛「もし遊園地へ遊びに行くときは、ちゃんと奈緒も一緒だよ。次、ペンネーム…あれ?書いてないね」



凛『明日の11時に迎えに来なさい。時計の読み方は躾けてあげたばかりよね?一秒の遅れは1日で返して貰うわ』



幸子「もはや口上ですらない!これは、ただの伝言ですよ!そして名前は伏せてますけど明らかに時子さんからプロデューサーさん宛です!」

P「クジだと読まれない可能性があるんだから直接言ってくれよ…」



凛「…明日って時子さんオフじゃなかったっけ」



P「うん。この前も待ち合わせに遅刻しちゃってさ。お詫びに明日、一緒にランチする約束をしてるんだよ」



凛&幸子「…」



幸子「多分、こうやってわざと遅刻させてプロデューサーさんを拘束してるんじゃないですかね」



P「こ、拘束だなんて何をハレンチなこと言ってるんだ!」



幸子「物理的にじゃないですよ!…でも、ちょっと不公平を感じますね。た、たまにはボクの事もご飯に連れて行ってくれたりした方がいいんじゃないですかねー?日頃頑張ってるご褒美として!」



P「いや、ご飯くらい連れて行ったるけど…」



幸子「…!ほ、本当ですか!?約束ですよ!?」



凛「…はい次、ペンネーム『紅のお嬢』さん」



凛『お控えなすって。手前生国と発しますところは関東、東京の生まれにございます。性は渋谷、名は凛、人呼んでしぶりんと申します。以後面体お見知りおかれまして万事万端、宜しくお頼み申します…』



幸子「な、なんだか今の凛さん、凄い迫力でしたねぇ」



凛「ペンネームの『紅』が頂けないかな。巴にはプリンセスブルーを進呈するよ。同じ理由で『レッドアリス』さんと『運命の紅いリボン』さんにも同じものを送りつけておくね」



幸子「凛さんの悪い癖が暴走しています!」



P「プリンセスブルーってカーネーションの一種だよな。いいのか実家の売り物を勝手に…」



凛「勿論無料じゃないよ。花の代金はちひろさんに頼んで、プロデューサーのお給料から天引きしておいて貰うから」



P「何で!?」

凛「さて、そろそろ次で最後にするよ。えっと…ペンネーム『鍵盤ハーモニカ』さん」



凛『凛さんはそのままでとっても素敵だと思います。次のお仕事、頑張って下さい』



凛「答えが出たね」



幸子「ここまでやっておきながら!?」



凛「前口上なんて無くても、私らしくやればきっと上手くいく。そうだよね、プロデューサー」



P「はい、その通りだと思います…」



幸子「居たたまれない…」



凛「確かに、こんなところでじっとしてられないね。ちょっと自主練に付き合ってくれないかな、幸子」



幸子「え…あ、はい!それではプロデューサーさん、約束忘れないで下さいね!」



凛「それじゃあ行ってくるねプロデューサー。あと、千枝にはしぶりんタオルを贈呈するよ」



P「おう、二人とも頑張って来い…ふぅ」



未央「よっ、プロデューサー!お疲れ様!」



P「何だよ未央、いたのか」

未央「全部見てたよ!しぶりんへの遠回しなサポート、上手くいったね!ふざけたフリして、本当はしぶりんの肩の力を抜いてあげようとしてたんでしょ?」



P「え…あ、うん。はい」



未央「けどあの様子だと、しぶりんも気付いてノってくれてたんじゃないかなぁ。とにかく、これでいつものしぶりんでお仕事に臨めるね!」



P「そ、そうだな!いやー我ながら上手くいった…のかなぁ…」



未央「…あ、あれ?えっ!?プロデューサー…もしかして…」



P「あは、あはは…」





【そして野外フェス当日】



P(あの後、確かに自然体のまま日々のレッスンをこなして、この日を迎えることができた凛だったけど…やはり当日となると、流石に緊張している様子だったな)



P(次はいよいよ凛の出番か…)



凛『…』



P(場所は会場の隅の方になってしまったけど、言った通り、ここからお前を全力で応援するからな…!)



凛『…』



凛『…トップアイドル目指して駆け抜けるよ!そしていつか…



(トップアイドルになれた、その後で…フフッ)



きっと貴方の胸の中に!渋谷凛、歌います!聞いて下さい!』



P「…!」



その日の凛のライブは、大成功を収めたのでした…



おしまい



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