2014年05月12日

美希「デコシック」


伊織「……」ジーッ



美希「……なに?」





伊織「なんでもないわ」



美希「……でこちゃん。あんまり見られるとミキ、照れちゃうっていうか」



伊織「……」ジーッ





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美希「なんでもないわけないの。どうしたの?」



伊織「なんでも」



美希「なくないの。ほら、ミキに教えて?」



伊織「……」



美希「また、だんまり?」





伊織「……驚かないでよ?」



美希「うん。大丈夫なの」



伊織「美希を見てないと死ぬ病気にかかったの」



美希「……え?」



伊織「美希から目を離すと心臓が苦しくなるのよ」





美希「でこちゃん、お願いだからちゃんと」



伊織「本当よ、アンタを見てないといけないの」



美希「疲れてるの?」



伊織「本当なのよ」



美希「うさんくさいなあ」





伊織「私にも良く分かってないけど、医者に言われたんだから間違いないわ」



美希「病院で言われたの?」



伊織「そうよ」



美希「『星井美希さんを見てないと死にます』って?」



伊織「違うわよ」





美希「へ?」



伊織「あなたの愛する人から目を離さないでください、って」



美希「愛する人?」



伊織「ええ」



美希「ミキのこと?」





伊織「うん」



美希「でこちゃんってミキのこと愛してるの?」



伊織「言わせないでよね」



美希「てっきりミキの片思いだと思ってたの」



伊織「好きでもない相手と同じご飯食べたり同じ布団で寝ないわよ」





美希「全然関係ないけどさ、でこちゃん」



伊織「なに?」



美希「なんでこの家って、布団は一組しかないの?」



伊織「売り切れてたのよ」





美希「そうなの?」



伊織「そうよ」



美希「いや、でも……だったら二組買えるお店に行かない?」



伊織「一組でも良いじゃない」



美希「なんで」





伊織「美希は私と一緒は嫌?」



美希「ずっるいの、それ」



伊織「何がよ」



美希「それ、上目遣いって言うんだよ」



伊織「知らなかったわ」





美希「うっそだぁ」



伊織「そんなつまらない嘘、つかないわよ」



美希「本当なの?」



伊織「ミナセイオリ、ウソ、ツカナイ」



美希「なんで片言なの?」





伊織「なんとなくよ」



美希「なんかでこちゃん、テンション高いね」



伊織「病気なのに高いわけないでしょ」



美希「病気なのに上目遣いとかする?」



伊織「するんじゃないの、知らなかったし」





美希「……本当に知らなかったの?」



伊織「知らなかった」



美希「そっか」



伊織「恋人に媚びるポーズってのは聞いてたわ、春香から」



美希「知ってんじゃん!」





伊織「名前は知ら……」



美希「名前を知らなくても効果を知ってたら同じなの!」



伊織「そうなの?」



美希「今日のでこちゃん、絶対おかしいよ。風邪?」



伊織「だから、美希を見ないと死ぬ病気なんだってば」





美希「ああ……そうだったね」



伊織「……私、アイドルはもう続けられないかしら?」



美希「え、そんな深刻な話?」



伊織「だって、竜宮小町の仕事とかになると、同じ場所にアンタは居ないし」





美希「1秒でも目を離しちゃいけないの?」



伊織「じゃないかしら」



美希「そうなんだ」



伊織「そうよ」



美希「じゃあ、ずっとこのまま?」



伊織「かもしれないわね」





美希「じゃあ、でこちゃん」



伊織「え?」



美希「目隠しっ」バッ



伊織「ひゃあっ!」



美希「…………そろそろいいかな。でこちゃん!」





美希「分かった? ミキにつまんない嘘は通用しな、い、の……?」



伊織「……」



美希「で、でこちゃん?」



伊織「……」



美希「でこちゃん目を覚ましてっ! ごめんなさいなの! ミキが悪かったの!」ユサユサ





伊織「……っ!」



美希「でこちゃんっ!」



伊織「っはあ、はあ……殺す気なのアンタ!?」



美希「ごっ、ごめんなさいなの……」





伊織「死ぬかと思ったじゃない」



美希「だって、本当の話だと思えなかったから」



伊織「美希に殺されるなんてまっぴらよ、ったく」



美希「そもそも今死んじゃったら早すぎるよ、でこちゃん」



伊織「本当ね。良かったわ」





美希「……それで、さ」



伊織「ん?」



美希「やっぱり、ずっとミキを見てなきゃダメなの?」



伊織「そうだって言ってるでしょ」





美希「そっか」



伊織「ええ」



美希「でこちゃんはそれ、つらくない?」



伊織「別に」





美希「だって、ミキしか見られないんだよ?」



伊織「ミキのことをずっと見ていられるのよ?」



美希「まあ、そうだけど」



伊織「つらくなんかないわよ」



美希「だったら、いっか」





伊織「美希は平気?」



美希「えっ?」



伊織「私にずっと、見つめられること」



美希「平気なの」



伊織「……悪いわね」





美希「ねぇ、でこちゃん。その病気って、なんて名前なの?」



伊織「他に症例がないらしいから、私の名前がつくのかしらね」



美希「『デコシック』とか?」



伊織「名前って言ってるでしょうが」



美希「でも、響き可愛いし」





伊織「律子に説明するときにそういうの?」



美希「うん。『デコシックになったわ』って」



伊織「だいたい、律子に説明できないじゃない」



美希「え、そう?」





伊織「ずっとアンタを見てなきゃいけないのよ」



美希「だったら、ミキが横にいるの」



伊織「そう?」



美希「そう」



伊織「なら、安心ね」





美希「それで、どうするの?」



伊織「どうって?」



美希「律子に説明、するんだよね」



伊織「そうね。今日は病院に行ったから、事務所はお休みしたし」



美希「だいたい、病院に行った時とかはどうしてたの?」





伊織「ずっとアンタの写真を見てたわ」



美希「あっ、それでもいいんだ」



伊織「写真だとやっぱり息苦しくなるのよ」



美希「そうなの?」



伊織「そう。酸素が足りないの」





美希「大変だね、デコシック」



伊織「デコシック言うな」



美希「でこちゃんって呼ぶのは良いのに?」



伊織「それはもう慣れたわ」



美希「あー、そっか」





美希「でもさ」



伊織「うん?」



美希「写真で良いなら、律子に説明するときも写真を持っていけばいいんじゃないの?」



伊織「苦しくなるからあんまりやりたくないのよ」



美希「そんなに苦しいの?」





伊織「ええ」



美希「どのくらい?」



伊織「三キロぐらい走った後みたいになるわね」



美希「キッツいの」



伊織「キツいのよ」





美希「それじゃ、やっぱミキがついてなきゃだね」



伊織「ええ。手を繋ぐのも効果的ね」



美希「そうなんだ……手?」



伊織「そうよ。手」





美希「でこちゃん、本当に病気なの、それ」



伊織「どういうこと?」



美希「ミキとイチャイチャしたいだけじゃない?」



伊織「そんなこと無いわよ」



美希「そう?」





伊織「そうよ」



美希「じゃあ、一緒に行かなきゃなの」



伊織「ええ。よろしく頼むわね?」



美希「うんっ」





伊織「それじゃあ、寝るわ」



美希「うん。おやすみなさいなの」



伊織「……美希、言いにくいんだけど」



美希「え、なんかあった?」



伊織「今度から一緒の時間に寝てもらわないといけないわね」





美希「あぁ……そうだね」



伊織「ええ」



美希「じゃあ、もう寝ちゃおっか?」



伊織「お願いできる? おやすみのキス」



美希「それは聞いてないの!」



おわり



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