2016年06月21日

佐藤心「はぁとが止まらない」

佐藤心さんのssです。



地の分メイン



佐藤心「はぁとが走り出す」



http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1465794060/



の続編です。



前作より文字数多いし、文章も固いかも



よろしくお願いします



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1466395824



「こっちは可愛いし、でもこっちのセクシーなのも……」

  

 ごーごーと稼働するエアコン

 じーじーと鳴くセミの声

 

 部屋の鏡の前ではぁとは一人、ファッションショーをしている。



 じりりりと時計がなった。



 ファッションショーにすっかり夢中で、アラームのことなど忘れていたはぁとは、

 突然の音に、そして時間の早さに驚いた。



 ファッションショーを開始してから30分が過ぎていて、

 タイムリミットも残り30分弱だった。



 このままだと水着よりももっと大胆な姿のはぁとを見せることになっちゃう☆



 アラームを約束の時間の5分前に設定しなおし

 はぁとは一人ファッションショーを再開した。



 二つの水着のテーマは、いつも以上のはぁとと、いつもと違うはぁとだった。



 メインのオレンジにピンクとホワイトを散りばめたスウィーティ―なビキニと

 黒一色で何も飾られていないアダルティ―なビキニ



 オレンジのビキニは、はぁと持ち前の天真爛漫さに磨きをかけ、

 スタイルの良さもアピールできるものだった。

 

 それに対して、

 黒のビキニは、はぁと自身も別人と思えるほど、妖艶なはぁとを演出した。

  

 どちらもはぁとに似合っていた。

 だからはぁとは余計悩んだ。

 二つの水着を交互に着てポーズをとるが、なかなか答えが出せなかった。



 いっそのことプロデューサーに聞いてやろうか☆



 答えが出ないことに対してやけくそ気味になったはぁとはファッションショーを中断し、

 充電器からスマホを外した。



 直ぐに電話をかけられるようにと、ショートカット登録してあるページを開いて、

 通話ボタンを押そうとしたところで、はぁとは我に返った。



 ここで聞いたら、一週間の努力が水の泡になる気がした。



 プロデューサーはどっちのはぁとが見たいのだろう。



 画面に映るプロデューサーにはぁとは問いかけるが、答えは浮かんでこなかった。

 プロデューサーと表示されたままのスマホを机に置き、はぁとは裸のままベッドにダイブした。



 しばらく白い天井をぼぅっと見つめていると、



 プロデューサーなら、どっちの水着姿のはぁとでも喜んでくれる。



 はぁとはそう思えた。



 鏡の前で自分のスタイルを確認する。

 はぁとにはプロデューサーを喜ばせられる自信があった。



 どっちの水着を見せても喜んでくれるなら、はぁとの見せたい水着を選ぼう。



 どちらのはぁとを見てもらいたいか。

 そう考えるとすぐに答えがでた。



 

 じりりりと時計がなった。



 ぴんぽんとインターフォンがなり、画面にプロデューサーの顔が映った。



「はぁとさん、僕です」

「うん☆ 今行くからそこで待ってて」



 最後にもう一度、荷物と鏡を確認してはぁとは部屋を出た。



「おはようございます。ちゃんと起きてたんですね」

「当たり前だろ☆ 楽しみすぎてずっと起きてたぞ☆」

「遠足前の子供じゃないですかはぁとさん……」

「冗談!冗談だから!ほら!早く行こう☆」



 白のポロシャツに緑のハーフパンツ、足元は白のスニーカー

 

 シンプルかつ小ぎれいなファッションに、はぁとは喜びを感じつつ車に乗り込んだ。







「湘南で見た 葦簀の君は」

 

 車の中はプロデューサーが用意したのか、夏の名曲がメドレーでかかっていた。



「今日はこの後、高速にのってですね……」



 プロデューサーが語る本日のデートプランを片隅に、



 この曲のようなひと夏の恋には絶対にさせないぞ☆



 はぁとは燃えていた。



「あー夏休み チョイト泳ぎ切れ 胸に」



 夏の名曲メドレーが3週目に入ったころ、はぁとの目に海が映った。



「プロデューサー、海見えてきたよ!海!」

「そうですね。目的地にももうすぐ着きます」



 仕事以外で海に来るのははぁとにとって随分久しぶりだった。

 はぁとの出身県である長野は内陸県なので、海に行きたいといって気軽にいけるものではなかった。

 それでも何度かは、はぁとと妹の「海にいきたい」という声に応えて、家族全員、

 父の運転する車で新潟の海まで遊びに行った記憶がある。





「懐かしいなー」

「何がですか」

「いやー海に来るなんて久しぶりな気がしたから☆」

「仕事で何回か行ってませんでしたっけ?」

「……窓開けていい?」

「どうぞ」

  

 冷房を切ろうとしているプロデューサーに対して

 

 プライベートで!ってこと!

 

 と叫けびたくなる気持ちを抑えながら窓を開けると、強烈な風がはぁとを襲った。



「うわっ」

「あはは、すごい風ですね。」

「ほんとに。……もう少し開けてていい?」

 

 そういえば、風が潮の香りを運ぶっていうけど、どんな匂いだろう。



 はぁとは鼻に意識を向けるが、感じたのは、道路と車の匂いだけだった。



 全然、スウィーティーじゃない!



 はぁとは叫んだ。



「潮の香りしましたか?」

「まったくしなかった」

「海に着いてからの方がわかりやすいんじゃないですか?」

「そうかもね」

 

 むすっとしながら、はぁとは窓を閉めた。



「ヘコむ毎日 取り戻す日々 きみに会って 笑いあって はじまるよ 夏休み」



 それからも会話は続いた。

 途中、ふてくされたはぁとだったが、すぐに会話を楽しめるようになっていた。

 

「あ、冷房つけなくていいよ」



 じわじわと暑くなった車内で、冷房に手をかけたプロデューサーをはぁとは止めた。



「大丈夫ですか?」

「大丈夫☆この暑さも夏!って感じがするじゃん?そう思うと気持ちいいというか……

 それに暑かったら窓開ければいいじゃん☆」

「まぁ言われてみればそうですね。もうすぐ着きますし、このままでいきましょうか」



 すぐそこに見える海は、陽の光をたくさん浴び、それを一気に放出するようにきらきらと輝いていた。



 今なら潮の香りもするかもと思ったが、はぁとは窓を開けなかった。

 

 この暑さがはぁとには心地よかった。

 

 この暑さがはぁとを熱くしていった。



 海水浴場はたくさんの人で溢れていた。



 大きなボートをもった家族連れ、

 手をつないで海に走る若いカップル、

 いかにもナンパ目的の派手な男性と女性

 

 楽しみ方はそれぞれだが、みんな夏を満喫していた。



 

「はぁとさんパラソル立ちましたよ」

 

 サンダルに履き替えたプロデューサーが海を見ていたはぁとを呼びに来た。 

 

 車で話を聞いていた時から思っていたが、彼が今日のために計画を綿密に立てていたり、

 いろいろと下準備をしてくれていたことが、はぁとは嬉しかった。





「うん。ありがとう」

「日焼け止めもってきましたか?」



 そう言って彼ははぁとに日焼け止めを差し出す。

 

 いや☆そこまでしなくていいだろ☆嬉しいけど!!



「うん。もってきてるよー もしかしてプロデューサー塗ってくれるの?」

「ぬ、塗りませんよ!自分で塗ってください!」

「わかってるよ☆もう!可愛いなぁ!」



 自分のバックから日焼け止めを取り出し、服を脱ごうとするとプロデューサーの視線を感じた。



 からかわれて真っ赤になった可愛いプロデューサー

 

 今からもっと真っ赤にしてやるからな☆

 

 くらえ!はぁとの爆弾を!! 

 

 一週間と一時間かけて仕込んだ爆弾を、はぁとは爆発させた。



「……どう?」

「……すごく似合ってます」



 はぁとの身体から目を背けながら、真っ赤なプロデューサーが答えた。

 

 効いてる効いてる。

 この一週間頑張ったかいがあった。

 

 爆弾の威力にはぁとが満足しながら日焼け止めを塗っていると



「はぁとさんらしさ全開なのに、いつもより眩しくて……

 ……目のやりどころに困ります」

「なっ」

 

 はぁとも爆発に巻き込まれた。





「日焼け止め塗り終わったから、先に海に行ってるね」



 サンダルを脱ぎ捨て、熱さを踏みしめながら、はぁとは海へと走り出した。





 ざーざーと、大きな波や小さな波が音を刻み、海は動いていた。



 その様子を見て、はぁとは一度立ち止まり、

 そしてゆっくりとはぁとは足だけを入れた。



 ぴちゃり、

 

 海水はひんやりとしていて火照ったはぁとにはちょうど良かった。



 ぴちゃり、ぴちゃり、ざぶ、ざぶ、



 はぁとはどんどん海に向かって進んでいく。



 まさか反撃をくらうとは思っていなかったぞ……



 足元の方は、だいぶ涼しくなったが、はぁとの胸と頭は爆発寸前だった。

 



「はぁとさーん!」

 

 胸のあたりまで水に浸かってきたころ、プロデューサーがやってきた。

 



「遅いよプロデューサー! というか…… プロデューサーもっと体鍛えたら?」

「本当は鍛えたいんですけどね。時間がなくてですね」

「時間を言い訳にしたらダメだよ。ほら☆はぁとを見習って!」

「確かにそうですけど……」



 はぁとの胸元をちらっと見た後、少し痩せ気味のプロデューサーは目を泳がせた。



 はぁとの爆弾の威力強すぎたな☆



 ぎこちないままのプロデューサーの手を掴み、はぁとは思いっきり引っ張った。





「ちょっと!いきなり何するんですかはぁとさん!塩水飲んじゃったじゃないですか!」

「あははは☆はぁとが筋トレに付き合ってあげる☆ ほら向こうまで泳ごう☆ね☆」

 

 手に着いた潮水がなんとなく気になり、潮の味を確かめた後、はぁとはスタートを切った。



 はぁとが思っていたほど、潮水はしょっぱくはなかった。





 プロデューサーは意外にも泳ぐのが上手だった。

 先にスタートを切ったはぁとに、すぐに追いつかれた。



「プロデューサー意外と泳ぐの得意なんだね」

「まぁ昔スイミングしてましたからね。久しぶりなので、ちゃんと泳げるか不安でしたけど」 

 

 落ちつきを取り戻したのか、お互いいつもと同じようなやり取りができるようになっていた。



「よし。じゃあ第二ラウンドね☆ ゴールは海の家! 負けた方が昼食おごり☆

 あと、プロデューサーはクロール禁止☆」

「えっ、それほぼ出来レースなんじゃ……」

「よーいスタート!」





 



 はぁとは海を満喫した。

 

 海の家特有のもさもさっとした焼きそばを二人で食べ、

 プロデューサーが持ってきたボールでバレーのようなこともした。

 

 こんなに全力で遊んだ休日ははぁとには久しぶりだった。



「この時間だと、少し予定より帰りは遅れそうですね」



 今朝より少し赤くなったプロデューサーが言った。

 青かった空もだんだん赤を帯び始めていた。 



「そうだね。まぁ楽しかったからいいや☆」

 

 心からの本心ではぁとはそう答える。



「僕も楽しかったです」

「ね☆ほんとに今日は全力で遊んだなー また……」 



 また一緒にいこうね

 と言いそうになり、はぁとは言葉を飲み込んだ。



 少し前を歩く背中を見る。

  

 その背中にはぁとは期待した。



「はぁとさん? どうかしました?」

「べつにー 何もないよ」

 

 はぁとの期待を余所に、白い背中は前を歩いていった。











「さぁ急いで帰りましょう」

 

 星の形の栄養ドリンクを一気飲みしてから、プロデューサーはキーを回わした。



「君がいた夏は遠い夢の中」

 

 曲がかかり、車は動き出した。



「許してね恋心よ、甘い夢は波にさらわれたの」



 帰りの車の中は行きの車より会話は少なかった。



 はしゃぎすぎたせいか、はぁとは少し疲れていたし、プロデューサーにも疲れが見えていた。



「はぁとさん、眠たかったら寝てもいいですよ」

「大丈夫だから☆」

 

 もちろんはぁとは眠気を感じていたが、寝るという選択肢はなかった。

 横で運転しているプロデューサーに失礼な気がしたし、

 いつ彼から次の誘いが来るかもしれないのに、寝るわけにはいかなかった。



「夏!恋人たちを大胆に」

 

 車は高速の渋滞に捕まっていた。

 空もすっかり黒くなっていた。



「これは明日の仕事大変そうだな……」



 二本目の栄養ドリンクを飲みながら、明日のことを考えているプロデューサーの横で、

 はぁとは今のことを考えていた。



 こうなったら、こっちから誘うしか……

 でもそんなの全然、スウィーティーじゃない。

 でも誘わないと……



 ファッションショーのように、はぁとは行ったり来たりを繰り返していた。

 



ひゅ〜〜どんっ



 突然、音が響いた。



ショーを中断し、窓の外を見ると、

 夜空に大きな花火が打ちあがっていた。



「おっ、はぁとさん花火ですよ」

  

 そう言ってプロデューサーはステレオの電源を切った。



「そうだね 花火が見られるなんてはぁと達ラッキーかも☆」

 

 周りの車が赤や青や黄色に変化するのを見てから、はぁとは夜空を見上げる。





 ひゅ〜っと音を立て、夜空に咲き、消えていく。

 

 まるで人のようだと、はぁとには思えた。

 公園でのことが頭に浮かんだ。

 そして、はぁとは運転席の方を見た。



 はぁとが燃え尽きたら、はぁとのことを拾い集めてくれますか?



 うん。花火が終わったら、次の約束を取り付けよう。

 なりふり構っていられない。



 はぁとは決心する。



 ひゅ〜〜どんっ、どんっ、どんっ、

 

 まさにラストスパートといわんばかりの大量の花が咲いた後、

 車たちは元の色に戻り、渋滞の波の中を泳ぎ始めた。 

 

「いやー すごかったですね」

「そうだね☆ すごく綺麗だった☆」



 

 言え!はぁと!ここで言わなければ女じゃない。

 

 はぁとはエンジンをかける。





「次はお祭りでも見に行きますか、はぁとさん」



 

 時間が止まった気がした。 



 どくん、どくん



 と音が聞こえてきた。



 はぁとが鳴っている。



 火が点いたそれはどんどん上へあがっていく。





 どくん、どくん



 はぁとが止まらない。



 それは音を立て、輝きながら一直線に上がり、そして咲いた。



 

「うん☆」

 

 

 大きな返事が車内に鳴り響いた。 





21:30│佐藤心 
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