2016年06月23日

モバP「楓さんも泣いたりするんですか?」


楓「えっ?」



P「あ、いえ、ふと思っただけなんですが」





楓「泣く……」



P「そういえば見た事無いかもしれないな、と思いまして」



楓「……」



P「楓さん?」



楓「私、生まれた時から泣きっぱなしですよ?」



P「えっ」









楓「ほら」



P「いやそれ泣きぼくろじゃないですか」



楓「そうとも言います」



P「そうとしか言いませんよ」







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楓「うーん……確かに、最近は泣いた記憶がありませんね」



P「ですよね」



楓「あ、去年ドラマのお仕事で泣いた事がありますよ」



P「そういえば」



楓「泣いてましたね、私」



P「うーん……」



楓「プロデューサー?」



P「……でも、結局の所は泣く演技ですよね?」



楓「ええ、まぁ」



P「泣いてる訳じゃないんですよね……」



楓「プロデューサー」



P「はい」



楓「泣いてる私が見たいんですか?」







P「……ちょっとだけ」



楓「正直なのは良い事だと思います」







楓「でも、女の涙は安くありませんよ?」



P「そこを何とかなりませんか?」



楓「そこを何とかするのがプロデューサーのお仕事じゃないですか?」



P「……」



楓「……」







P「誕生日おめでとうございます!!!!!」



楓「……!?」



P「これをどうぞ」



楓「……あら、素敵なブローチでアプローチ?」



P「楓さん、いつもありがとうございます。本当に、楓さんには感謝しっぱなしなんです」



楓「……」



P「……はは。いつもは気恥ずかしくて言えませんけどね。今日ぐらいは、いいですよね?」



楓「……プロデューサー」







P「泣きました?」



楓「いえ、とても嬉しいだけですね。ありがとうございます」



P「あ、どうも」







P「……」



楓「……」



P「……ナイター」







楓「……」



P「……」







P「そういえば楓さん、野球とかって興味あります?」



楓「いえ、別にナイターに行ったからと言って泣く訳では」



P「でも駄洒落ですよ」



楓「プロデューサーは私を何だと思ってるんですか?」







P「うーむ……」



楓「……あの」



P「はい」



楓「そんなに私の涙が見たいんですか?」



P「ええ、まぁ」



楓「どうしてですか?」



P「……半ば、意地になってきたと言いますか」



楓「はい」







P「……楓さんにも、俺の知らない表情があるってのが、何だか悔しく感じてきて」



楓「……えっ」







P「すみません、下らない理由で」



楓「……下らなくないです」



P「え?」



楓「下らなくなんてないです」



P「え、あの、どうしてですか?」



楓「自分で言ったじゃないですか」



P「……?」





楓「決めました。私も協力します」



P「は、はぁ。それは……ありがとうございます」



楓「それで、どうしましょう。悲しい事でも想像しましょうか」



P「いえ、それも結局は演技のようなものですし」



楓「確かに……あ、それならこういうのは」



P「はい」



楓「プロデューサーが試しに私へひどい事を言ってみるというのはどうでしょうか」



P「……」



楓「……プロデューサー?」







P「……っく、うぅ……」



楓「あの、どうしてプロデューサーの方が涙目に……?」



P「すみません……想像しただけで、心が……」



楓「す、すみません……」



P「これはやめましょう……お願いですから……」



楓「は、はい……」





楓「……落ち着きました?」



P「えぇ、取り乱してすみません。さてどうするか……」



楓「何か良い方法……あっ」



P「思い付きました?」



楓「感動するような映画を観るというのはどうですか?」



P「……なるほど、良い考えですね。じゃあ帰りに早速レンタル屋寄って」



楓「プロデューサー、再来週に私とオフ重なってましたよね?」



P「え? ええ」



楓「じゃあ、お昼前から待ち合わせて一緒に映画を観に行きましょう」



P「えっ」



楓「ついでにお洋服とかも見て回りたいです」



P「えっ?」



楓「詳細はまたメールします。お洒落してきてくださいね。お疲れ様でした」



P「え?」







P「……あれっ?」







楓「良い映画でしたね」



P「ええ。思わずウルっときました」



楓「奏ちゃんにオススメを訊いといて良かったです」



P「速水さん、恋愛映画は観ないと言ってる割に詳しいですよね」



楓「映画が好きなんでしょうね」



P「楓さんは泣きませんでしたけどね」



楓「すみません、良い作品だったんですけれど」



P「ああ、いえ。お気になさらず」



楓「はい。美味しいですね、ここのイタリアン」



P「魚介が良いですよね。午後はどうします?」



楓「プロデューサーに服を見繕ってみたいです」



P「それは悪いですよ」



楓「悪くないです。あと、水族館にも行きたいです」







P「……あれ?」



楓「どうかしましたか?」



P「俺達、今日は何しに来たんでしたっけ?」



楓「プロデューサー、このマリネも美味しいですよ」



P「え? あ、ホントだ旨い」







P「……ふー」



楓「お疲れ様です、プロデューサー」



P「楓さんもお疲れ様です」



楓「この前は楽しかったですね」



P「ええ…………あっ」



楓「どうかしましたか?」



P「そうだ、涙が見たいんだった」



楓「…………あっ」



P「すっかり忘れてましたね」



楓「そういえば、そうでしたね」



P「そうそう、それで良いアイデアがあるんですよ」



楓「何でしょう?」



P「思うに、この前は恋愛映画だったからダメだったと思うんです」



楓「なるほど」



P「ですから白坂さんからお借りしたこの」



楓「プロデューサー」



P「はい」



楓「甘いですね」



P「え?」



楓「奏ちゃんと小梅ちゃんには申し訳無いですけれど、やはり映画では力不足じゃないかと」



P「うーん……なら白坂さんに直接……いやそれは洒落にならないか」



楓「そこで良いアイデアがあるんですよ」



P「ほう」



楓「折衷案です。とても怖いと評判のお化け屋敷に行ってみましょう」



P「ナントカ迷宮でしたっけ」



楓「ええ。私も流石に泣いちゃうかもしれません」



P「なるほど……ん? でもそうすると俺は見れ」



楓「プロデューサー、再来週に私とオフ重なってましたよね?」



P「え? ええ」



楓「じゃあ、お昼前から待ち合わせて一緒に遊園地に行きましょう」



P「えっ」



楓「ついでに近くの展望台とかにも寄ってみたいです」



P「えっ?」



楓「詳細はまたメールします。お洒落してきてくださいね。お疲れ様でした」



P「え?」







P「……あれっ?」







P「……」



楓「きゃあ♪」



幽霊「コロスゾ……マジデコロスゾオマエ……」



P「……」



楓「こわいよー♪」



幽霊「ザッケンナヨ……コロスゾホント……オマエ……」



P「……あの、楓さん」



楓「どうかしましたか?」



P「何で俺に抱き着いてるんですか?」







楓「怖いからです」



P「なるほど。そろそろ泣きそうですか」



楓「かもしれないし、否定の根拠はないのかもしれません」



P「なるほど」



楓「きゃあっ♪」



幽霊「オマエ……コロスゾオマエ…………」







楓「怖かったですね」



P「そうですね」



楓「流石に泣いちゃうかと思いました」



P「結局泣いてくれませんでしたけどね」



楓「すみません、本当に怖かったんですけれど」



P「ああ、いえ。お気になさらず」



楓「はい。綺麗ですね、夜景」



P「数年ぶりですけど、乗ってみると案外良い物ですね、観覧車」



楓「ジェットコースターも楽しかったですけど、やっぱりこういう方が落ち着きます」



P「俺も同感です」



楓「ふふ。プロデューサーの方が怖がってるのは面白かったです」







P「……あれ?」



楓「どうかしましたか?」



P「俺達、今日は何しに来たんでしたっけ?」



楓「プロデューサー。ほら、向こうで花火が上がってますよ」



P「え? あ、ホントだ綺麗だな」







P「……ふー」



楓「お疲れ様です、プロデューサー」



P「楓さんもお疲れ様です」



楓「この前は楽しかったですね」



P「ええ…………あっ」



楓「どうかしましたか?」



P「違いますよ、涙が見たいんですよ俺は」



楓「…………あっ」



P「すっかり忘れてましたよ」



楓「そういえば、そうでしたね」



P「今になって考えてみれば、楓さんぜんっぜん怖がってなかったじゃないですか」



楓「そうでしたっけ」



P「そうですよ……楓さん、本当は何が怖いんですか?」



楓「……」



P「楓さん?」



楓「……これは、誰にもナイショですよ?」



P「あ、はい」



楓「実は…………スコッチがすっごく怖くて……」



楓「ふぅ……」



P「結構強いなコレ」



楓「でも、良い香りでしょう?」



P「確かに」



楓「ふふっ」



P「楓さん」



楓「はい」



P「これ、まんじゅうこわいですよね?」







楓「バレました?」



P「バレますよ。五杯目を空にした辺りから何かおかしいなって思い始めてましたよ」



楓「ごめんなさい。プロデューサーと一緒にお酒が飲みたくて……」



P「まぁそれはいいんですけど、いやよくないですけど」



楓「はい」



P「そもそも何が怖いとかじゃなくて楓さんの涙が見たいんですよ俺」



楓「でも、女の涙は安くありませんよ?」



P「ループさせようとしない」







P「……あ、そうだ」



楓「はい?」



P「いっそお酒を禁止にでもぐッ……」







楓「……ぷ、プロデューサー?」



P「ぐ……う……す、すみません……」



楓「ど、どうかしましたか?」



P「いえ、その、猛烈にイヤな予感……違うな、記憶……?」



楓「……?」



P「と、とにかく何でもないですから」



楓「は、はい」







楓「プロデューサー」



P「どうしました?」



楓「どうしても私が泣いてるところ、見てみたいんですか?」



P「もうここまで来たら何が何でも見てみないと気が済みませんよ」



楓「絶対に?」



P「絶対に」



楓「……」



P「楓さん?」



楓「実は、私もきっと泣いちゃうだろうな、っていうのがあるんです。一つだけ」



P「本当に?」



楓「本当に」



P「こうなったら試してみるしかありませんよ」



楓「本当に?」



P「本当に」



楓「私、何となくですけれど、昔からずっと思ってたんです」



P「ふむ」







楓「素敵なひとのお嫁さんになれたら――きっと、わんわん泣いちゃうんだろうなって」





 ― = ― ≡ ― = ―





「楓さん」





「はい」



「やっぱり嘘じゃないですか」



「嘘?」



「まさかここに至っても泣かないとは思いませんでしたよ」



「……いえ。本当に、今にも泣き出しちゃいそうなんです。でも、頑張って我慢してるんです」



「我慢……?」



「結婚式、ですから。今は、今だけは、絶対に我慢しなくちゃいけないんです」



「どうしてですか。我慢なんてしなくても大丈夫ですよ」



「だって、皆さんにちゃんと伝えなきゃいけないですから」



「……? 何を、ですか?」



「ふふっ……決まってるじゃないですか」









「――私の夫は、妻を泣かせるような人じゃありませんよ、って」







おしまい。







17:30│高垣楓 
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