2016年07月20日

二宮飛鳥「話をしよう」 結城晴「いきなりだな」

晴「急にどうしたんだよ」



飛鳥「今、この部屋にはボクとキミしかいない。暇を持て余すついでに、会話を楽しむのも一興……そう考えるのは不自然じゃないだろう」



晴「でも、飛鳥の方からオレに話しかけてくるって結構珍しいからな……まあ、いいか。暇なのは事実だし」





飛鳥「では、決まりだ。キミとボクとで紡ぎ出そう、新たな詩篇の一ページを」



晴「よくわかんないけど、すげー大げさに言ってることだけはわかるぞ」





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飛鳥「さて、何の話をしたものか」



晴「いきなりかよ。アンタから振ったんだぞ」



飛鳥「あぁ、そうなんだが……うん、なら」



飛鳥「サッカーのやり方を教えてもらおう。学校の球技大会で割り当てられたんだ」



晴「へー」



飛鳥「普段からボールと慣れ親しんでいるキミに、実技をご教授願いたい」



晴「教えるのはいいぜ。オレもサッカーできるヤツが増えるのはうれしいし」



晴「でも」





ざーざーざー





晴「今、急に雨が降り出した」



飛鳥「………」



飛鳥「フッ……天の悪戯といったところかな。いいさ、ひとつの試練と受け取ろう」



晴「だからいちいち大げさだっての」





晴「はー、喉渇いたな。なんかジュース残ってたっけ」



飛鳥「冷蔵庫にいくつかあったはずだ」



晴「サンキュ。飲むかー」スタスタ



飛鳥「確か、今しがたダンスレッスンを終えたところだったか」



晴「そうそう。終わってすぐ水分補給したんだけど、また渇いてきた」



飛鳥「そう」



飛鳥「……疲れた?」



晴「そりゃ疲れるには疲れるって。けど、ちゃんと最後までついていったぜ!」ニカッ



晴「アイドル始めたばかりの頃は、後半バテて休まされちまったからな。ああいう悔しい思いをするのは、もうゴメンだ」



飛鳥「負けず嫌いなんだね、晴は」



晴「勝ち負けの問題じゃない気もするけどな。飛鳥は違うのか?」



飛鳥「ボクは……そうだな。確かに、自身が成す術もない状況は好きじゃない」



飛鳥「けど」



晴「けど?」



飛鳥「適度に休息は欲しい」ハア



晴「すげー遠い目してるぞ……大丈夫か?」



飛鳥「最近、少々ハードなレッスンを経験してね……ありすにでも聞いてくれ」



ザーザーザー





飛鳥「しかし、この時期は天気が変わりやすいね。さっきまで晴れていたのに」



晴「雷とか、落ちなきゃいいんだけどな」



飛鳥「怖いの?」



晴「オレはそうでもないけど。怖がるヤツ、結構いるだろ。この事務所」



飛鳥「あぁ、そういうことか」



飛鳥「優しいね」



晴「べ、べつにそんなんじゃねーし」



飛鳥「ふふ」



晴「なんだよ」



飛鳥「素直じゃないと思ってね」



晴「飛鳥にだけは言われたくねーぞ……」



晴「いや、飛鳥にだけじゃないな。梨沙とかにも言われたくない」



飛鳥「結構多そうだね」



晴「だな。ここ、いろんなヤツがいるし」



晴「ホント、個性の塊だよな。うちの事務所」



晴「オレなんて、サッカーが好きな一般人って感じだ」



飛鳥「彼女らと共に偶像世界を往く時点で、キミもまた特別な人間さ」



飛鳥「そこに貴賎はない。きっとね」



晴「偶像世界……アイドルってことか?」



飛鳥「イグザクトリィ」



晴「オーストラリアでも、そんなこと言ってたもんな。思い出した」



晴「あの時と比べると……飛鳥、結構変わったよな」



飛鳥「変わった? どんなふうに」



晴「うーん。なんていうか」



晴「……アレだ。かっこよくなった」



飛鳥「かっこよく?」



晴「そうそう。うまく言えないけど……うん、かっこよくなった」



飛鳥「ファンレターでは、かわいらしくなったという声が多いんだけど」



晴「そうなのか? まあ、確かにそれもわかるけど」



晴「でもやっぱり、オレは『かっこよくなった』と思うぜ」



飛鳥「そうか……なんにせよ、どちらの声も喜ばしい」



晴「オレはどう? オーストラリアの頃と比べて、何か変わったか?」



飛鳥「晴のほうは、最初からずっと、同じ方向へまっすぐ進んでいるイメージがある」



飛鳥「正統進化を続けている。そんな感じだ」



晴「正統進化か……へへっ、なんかかっこよさそうだな、それ!」



晴「アイドルもサッカーも、頑張ってやったぶん力がついてきてる気はするんだ。だからオレは、これからもどんどん強くなっていくぜ」



飛鳥「かっこいいね」



晴「へへっ」



晴「けど、なぜかかわいい系の衣装もやたらと着せられるんだよなぁ」



飛鳥「需要というヤツさ。Pもいろいろと考えているんだろう」



晴「けどなあ。ただかわいいだけとか、スカート履くだけとかならまだいいんだけどさ」



晴「バニーとか、ウェディングドレスとか。極端なんだよなあ。何かを感じるぜ」



飛鳥「ははっ」



晴「笑い事じゃないんだぞ。飛鳥もそういう仕事回されたらわかるだろうけど」



飛鳥「………」



飛鳥「確かに、ウェディングはともかくバニーは……回されたらPに一言つけるところから始まるだろうね」



晴「ウェディングはいいのか」



飛鳥「………」



飛鳥「まあ、ね」エクステイジイジ



晴「まあ……ちょっと文句も言ったけど。Pには感謝だな」



晴「いろんな楽しいこと、オレに教えてくれたから。ヘンタイだし、すぐ調子に乗るけど……いいヤツだし。オレのこと、よくわかってるし」



晴「みんなの前で歌うのがこんなに好きになるなんて、ちょっと前までは想像もしなかったからな」



晴「……な、なんか改めて言うと照れくさいな」ヘヘ



飛鳥「いいじゃないか。嘘じゃないんだろう」



晴「ああ。本当に思ってることだよ」



晴「Pのおかげで、夢がどんどん膨らんでいくし」



晴「あいつの夢も、叶えてやりたいって思うよな」



飛鳥「トップアイドルを育てあげる、か」



晴「どうせなら、みんなでなってやろうぜ」



晴「Pが幸せすぎてぶっ倒れるくらいに」ニカッ



飛鳥「……あぁ。それはきっと、愉快だろうな」





晴「それでさ、話は変わるんだけど」



飛鳥「………」



晴「飛鳥?」



飛鳥「どうやら、成功らしい」



晴「は? 成功?」



飛鳥「ついてきてくれ」スタスタ



晴「あ、おい! いったいなんだよ急に!」













飛鳥「この部屋だ」



晴「ったく、連れてくる前にちゃんと説明を――」ガチャ





パーン! パーン! パーン!





『晴(ちゃん)、お誕生日おめでとー!!』





晴「……え」



飛鳥「7月17日。キミの誕生日」



飛鳥「少し部屋の準備に手間取っていてね。キミをあの場に留めておくために、ボクが時間稼ぎをさせてもらった」



飛鳥「指名理由は、梨沙いわく『話が長いから』だそうだ」



飛鳥「まあ、このサプライズはある程度予想がついていたかもしれないけれど……」



晴「」ポカン



飛鳥「どうやら、完全に不意打ちだったらしい」





P「サプライズパーティー、大成功だな」



晴「P……なんだよ。先に言ってくれよな! こんな、部屋に飾りつけまでして」



梨沙「バカね、先に言ったらサプライズにならないでしょ!」



裕子「お仕事の都合で、あんまりたくさんの人は集められませんでしたけど」



ネネ「そのぶん、気持ちはこもっていますから。ほら、ケーキもありますよ」



飛鳥「まあ、そういうことだ」



晴「どういうことだよっ!」



晴「ったく、みんな本当に……わざわざこんなことしなくても、毎日会ってるんだから普通に祝ってくれれば……」



梨沙「とか言いつつ、顔がにやけてるんじゃない?」ニヤニヤ



晴「ばっ! なっ……に、にやけてなんかねーし!!」



梨沙「にやにや」



P「にやにや」



裕子「にやにや!」



ネネ「にやにや?」



飛鳥「………にやにや」



晴「あーもう! なんだよその連帯感!?」カアァ



飛鳥「異国の地で、幾度の夜を共に越えた仲だからね」





晴「ったく! 本当に、まったく!」



晴「………」





晴「……ありがとな、みんな」



飛鳥「ふふっ」



P「どういたしまして、だな」



梨沙「素直じゃないんだから」



晴「梨沙には言われたくないっ!」

P「さ、じゃあケーキにロウソク立てるか」



ネネ「ライター、持ってきますね」





晴「そういえば。飛鳥がオレの相手をしてたっていうのはわかったんだけど……どうやってパーティーの準備が終わったことを知ったんだ?」



飛鳥「あぁ。それは」



裕子「もちろん、エスパーユッコのサイキックミラクルテレパシーで」



飛鳥「インカムを使って、無線で連絡を取っていたんだ。準備ができたら伝えてもらうようにしていた」



裕子「飛鳥ちゃーん、ちょっとくらい私にかっこつけさせてくださいよー」ブーブー



飛鳥「あぁ、すまない」



梨沙「でも、ユッコのアドバイスほとんど役に立ってなかったじゃない。雨なのにサッカーの提案するし」



裕子「あれはタイミングの問題です。急に降り始めるんだから」



晴「もしかして、オレと飛鳥の会話も聞こえてたのか」



飛鳥「あぁ。双方向だ」



晴「そうか」



晴「………」



晴「………いや、ちょっと待て」



晴「じゃあ、じゃあ……オレがPのこと、感謝してるとかどうとか言ってたのも」



飛鳥「………」チラ



P「……あー、その」







P「……どう、いたしまして?」



ネネ「よかったですね、Pさん♪」



晴「………」







晴「わ、忘れろーっ!」カアァ



P「うわっ、追いかけてきた!」



晴「待て、逃げんな!!」







裕子「仲良きことは美しきかな、ですね!」



梨沙「そうなの? アレ」



裕子「そうですよ。間違いありません!」



梨沙「……ま、確かにそうなのかも」







おしまい







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