2016年07月26日

佐藤心「はぁとが甘い」


佐藤心さん誕生日おめでとうSS



地の分。





よろしくお願いします







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 白とオレンジのフレアスカートに、シンプルなTブラウス。

 はぁとらしさを残しつつも、いつもより少し大人っぽいファッション。



「どこも変なところはないよね」

 鏡でもう一度はぁとは自分の恰好をたしかめた。



「うん。よく似合っている☆」

  

 お気に入りの白いパンプスを履き、はぁとは扉を開けた。

 

 夏がはぁとを熱くした。



 今日は朝一で事務所に向かい、

 そこからは握手会やテレビ撮影など一日中仕事が盛りだくさん詰まっている。

 事務所に向かいがてら、はぁとは予定を確認する。





「誕生日ですから、みんなはぁとさんのことをお祝いしたいんですよ」

 

 今日の予定をはぁとに説明しているときに、プロデューサーが何気なく言った。

 

 

 誕生日。

 20を少し過ぎたあたりから、はぁとは誕生日を素直に喜べなくなった。

 祝ってくれる人は年々少なくなっていたし、

 数字が一つ増えただけで、周りの評価が厳しくなった。

 

 数が一つ増えただけで人ってそこまで変わるかよ!

 誕生日を迎えるたびに、はぁとは世間にツッコミをいれた。 



 

 でも今年は違う。

 

 はぁとはアイドルになった。

 素敵な仲間や応援してくるファンのみんな。そして……

 たくさんの出会いがはぁとにはあった。



「みんなお祝いしたいんですよ」

 プロデューサーが言ったその言葉にはぁとは期待した。

 

 渡された予定表は仕事のことだけで埋め尽くされていたが、今日は素敵な一日になる。

 そんな予感がはぁとをときめかせた。



「おはようございまーす☆」

「おはようございます心さん」



 事務所に着くと事務員のちひろさんがはぁとを迎えた。



「まだ誰もいないんだね☆」

「えぇ、朝一ですから。プロデューサーさんも朝は苦手らしいので…… 

 もう少ししたらいらっしゃると思いますよ。あ、心さんお誕生日おめでとうございます♪」



 まさにアイドル顔負けの、素敵な笑顔とともにちひろさんは大きな紙袋をはぁとに手渡した。



「これは?」

「今日は誕生日ですから貰ったものを入れるための袋です。底にわたしからのプレゼントも入れてありますので♪」

「ありがとうちひろさん☆開けていい?」

「どうぞ♪」



 紙袋の中から丁寧にラッピングされた小包を取り出し、丁寧にはがしていく。



「かわいい☆」

「喜んでもらえたならよかったです♪」

 

 真ん中に大きなハートが書かれたピンク色の裁縫道具入れ。

 

 家に帰ったら道具を全部こっちに移さなきゃ。

 はぁとは心に決める。



「ちひろさんの誕生日にも何かお返しするね♪」

「ありがとうございます。楽しみにしていますね」

「すいません遅れました!!!」



 はぁとが素敵な誕生日の朝を過ごしていると、すごい勢いでプロデューサーが入ってきた。

 素敵な朝が台無しと思うと同時に、どこかはぁとがうずうずする。



「おはようございますプロデューサーさん」

「おはようプロデューサー☆」

「おはようございます。じゃなくて!はぁとさん!急がないと!」

「へ?」



 はぁとは時間をたしかめる。やばっ、もうこんな時間。





「というわけでちひろさん。行ってきます」

 慌てて準備をするはぁとの腕を引っ張り、プロデューサーは走り出した。



「あ、ちょ。引っ張るな☆おい☆」

 つられてはぁとも走り出す。



 朝から晩まで仕事が入っていたが、とくにつらいと感じることもなく、

 時間はあっという間に過ぎていった。

 今日のことをはぁとは振り返る。



「はぁとちゃん今日誕生日なんだって?」

「はい♪はぁと一段とスウィーティーになりました♪」

「おめでとう!ということで番組からのプレゼントです」



 メッセージプレートに、はぁとの似顔絵と

「心さん誕生日おめでとう♪」の文字がかかれた大きな誕生日ケーキがはぁとの前に運ばれた。



「わー♪ありがとうございます♪」



 番組の出演者、スタッフ、お客さん。

 一人一人に丁寧に、はぁとはケーキを切り分けた。



「んー♪とってもスウィーティ―♪みんなありがと―☆」



 ケーキを食べ終えた後、会場にいた人達全員に感謝を伝え、はぁとは次の現場に向かった。





「はぁとさん誕生日おめでとうございます」

「ありがとー♪これからも応援よろしくね☆」

「ところで」

「うん?」

「いったいおいくつになられたんですか?」

「こらこらー☆女の子に年齢のことは聞いたらダメだぞ☆聞くな☆」



 一人一人、手に力を込めて、はぁとはファンのみんなと握手をして写真をとった。









 



 今日出会った人みんな笑顔だった。



 ちひろさん、共演者、スタッフ、ファンのみんな、そしてはぁとも。

 

 笑顔が笑顔を呼び、みんなが魔法にかかっていた。

 とても素敵な時間だった。

 改めてはぁとはみんなに感謝した。





「今日は一日おつかれさまでした」



 ふぅっと一息ついてからプロデューサーはキィを回した。



「うん☆おつかれさま♪」



 お疲れ気味のプロデューサーにとびきりの笑顔ではぁとは答える。



「なんか今日はご機嫌ですね」

「うん☆みんなお祝いしてくれてとっても嬉しかった☆」

「そうですか。では帰りましょうか」



 プロデューサーは車を走らせた。

 



「みんなお祝いしたいんですよ」

 横で運転している彼が言った言葉についてはぁとは考える。



 確かにたくさんの人がはぁとをお祝いしてくれた。

 今日は素敵な一日になるというはぁとの予感も的中した。

 今日は素敵な一日だ……。

 ……。

 







「あっ」

 プロデューサーが突然声をあげた。

 

「どうしたの?」

「事務所に忘れ物をしてしまいまして…… 取りに戻っても大丈夫ですか?」

「いいよ☆」



 時間を見ると11時を少し過ぎたくらい。

 まだ日付は変わっていない。



「みんなお祝いしたいんですよ」

 

 窓ガラス越しに運転している彼をはぁとはじっと見つめる。

 

 はぁとのときめきはまだ消えてはいなかった。







「すいませんほんと」

「いいから☆ほんと気にしてないよ」



 事務所はみんな帰ったらしく明かりは灯っていなかった。

 鞄から鍵を取り出してプロデューサーは鍵を開けた。





「夜の事務所って雰囲気全然違うね」

「そうですね。暗いので足元気を付けてください」



 ほぼ毎日事務所に来ているからか、多少うす暗くても、大体の物の位置をはぁとは覚えていた。



「先に奥行ってるね」

「僕はブレーカー上げてきます」



 物にぶつからないようにと注意しつつはぁとは奥に進んでいった。





「はぁとさん電気つきますよ」

「おっけー☆」

  

 壁にあるスイッチをまとめて全部はぁとは押した。

 事務所は一気に明るくなった。



「えっ。なにこれ」

 はぁとは思わず声をあげた。



 いつもはぁとが使っている机やソファ。

 その上にたくさんのラッピングされた箱や袋が置いてあった。



「びっくりしましたか」



 戻ってきたプロデューサーはとても嬉しそうな顔をしていた。



「うん。ずっと計画してたの?」

「そうですね。忘れ物をしたというのも嘘です。

 あ、その紙袋だけだと入らなさそうなので、別の袋を探してきますね。

 はぁとさんはプレゼントの整理しといてください」



 

 一つてきとうに小包をとると、横にメッセージカードが付属されていて、



「はぁとちゃんへ。お誕生日おめでとうございます。お互い、身体には気を付けていきましょう。

 あ、ナナは17歳だから大丈夫ですけど」と書かれてあった。



 アイドルをやってよかった。

 アイドルをやってなければこんな素敵な思いはできなかったなぁ。

 

 

 一つ一つプレゼントを、はぁとは丁寧に拾っていく。

 一つ拾うたびにどんどんはぁとが暖かくなる。

 

 ちひろさんからもらった袋は、はぁとの心と同様、すぐにいっぱいになった。







「はぁとさん入りましたか?」



 新しい袋を持ってきたプロデューサー、

 はぁとをアイドルにしてくれた彼が紙袋と小さな箱を持ってはぁとに声をかけた。



「それは?」

「僕からの誕生日プレゼントです」

「開けていい?」

「どうぞ」



 小さな箱をゆっくりと開ける。

 

 中には本日二度目の誕生日ケーキが入っていた。





「コーヒー入れてきますね」



 皿とフォークをおき、彼はコーヒーを入れにキッチンへ向かった。



 はぁとは箱からケーキを取り出し、皿に乗せる。



 ホール型なのだが、小さく、一人前サイズで。

 メッセージプレートやろうそくの代わりに、真っ赤なハートがのった綺麗なケーキだった。



「それ砂糖でできた飴なので食べられますよ」



 ケーキをじっと見つめていたはぁとにプロデューサーはコーヒーを手渡した。





「これどうしたの?こんなケーキ見たことないんだけど」

「わざわざ作ってもらいましたからね。はぁとさんらしくないですか?しゅがーはぁと」



 

 ハートを手でつまみ、先っぽの部分を少しかじってみた。



 甘い。

 くどすぎることもなく、すっきりと甘い。

 

「飴って嫌いな人いないじゃないですか」

 飴をかじっているはぁとを見て、プロデューサーは続ける。



「はぁとさんも誰からも好かれる人だと思ったので」



 見ると、ハートと同じくらい赤くなっている。

 

 そしておそらく、はぁとも同じくらい赤くて熱い。





「プロデューサーもさ」

「はい?」

「……ううん。なんでもない。プレゼントありがとう♪すごく嬉しい☆」



 はぁとのこと好き?

 

 今にも口から出かかった言葉を慌てて飲み込む。



 

 はぁとも女の子。

 最後までちゃんと魔法をかけてほしい。



 もう一口飴をかじった。



 飴は口の中で溶け、甘さは静かに広がっていく。

 

 ぱーっと花開いたそれは、はぁとの全身を、そしてこのひと時を甘く染め上げていった。

 





17:30│佐藤心 
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