2016年07月27日

藍子「写真コンテスト…ですか?」

茜「うーん、潮風が気持ちいいーっ!!」



未央「海沿いの公園って爽やかな気分になるよね。晴れてよかったー」



パシャリ





藍子「よし、っと」



未央「あれ? あーちゃん、何撮ってんの?」



藍子「何と言われると…これですよ」



茜「おお、海の写真ですか! 青くて綺麗です!」



未央「あ、ほんとだ。海がキラキラ輝いてて見えるね!」



藍子「ふふっ。お二人もそう思いますか?」



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ざわ… ざわ…



茜「あれ? なんでしょう、人が集まってますね」



未央「そこの人に聞いてみよう。すみませーん、ここで何かやってるんですか?」



そこの人「これから、この辺りで写真コンテストをやるそうだ」



藍子「写真コンテスト…ですか?」



そこの人「ああ。詳しいことはそこの受付で聞くといいよ」



茜「面白そうですね、行ってみましょう!」



未央「そうだね! ありがとうございました! ほらほらあーちゃんも早く!」ぐいぐい



藍子「わわっ、そんなに押さなくても…」

未央「すみませーん、受付ってここですか?」



受付「はい。コンテストにご参加ですか? ここに、お名前の記入をお願いします」



未央「よし、高森藍子…っと」



藍子「えっ? 私が参加するんですか?」



未央「他に誰がいるのさ。私達、カメラなんてスマホのしかないし」



茜「これはチャンスですよ!! 藍子ちゃんのカメラの実力を世に知らしめるための!!」



藍子「実力って、そんな大したものでは…」



受付「はい、高森藍子…どこかで聞いたような…えーと、今日の日没までに写真を1枚撮って、フィルムかデジカメのデータを提出してもらいます」



未央「え、デジカメのデータって、デジカメ渡さないとダメですか?」



受付「提出次第すぐに返却しますが、スタッフが他の写真を見ることになるかもしれないことをご了承ください」



未央「そうですかー。まぁ、見られて困るような写真、あーちゃんは撮ってないよね」



受付「他にご質問は?」



藍子「撮るものは、なんでもいいんですか?」



茜「おっ、藍子ちゃんやる気ですね!」



藍子「茜ちゃんや未央ちゃんが引っ張ってくれましたからね。それに、やる以上は失礼のないようにしたいですから」



受付「いえ、テーマに沿ったものを提出していただきます。テーマは『花』です」



藍子「花の写真、かぁ…」

未央「よーし、それじゃ早速お花を探しに行こう!」



藍子「あ…ちょっと、待ってください」タタッ



未央「あれ、あーちゃん? どこ行くの?」



藍子「椿さーん!」



椿「あれ…藍子ちゃん?」



藍子「後ろ姿を見て、もしかしたら…と思いましたけど、やっぱり椿さんでした」



未央「おぉー、えがみん! そっか、写真コンテストならえがみんも出るよね」



椿「せっかくだから、参加しようと思って。写真コンテストをやるから来た、ってわけじゃないんだけどね」



藍子「ということは、椿さんもここが目当てで?」



椿「ええ…ここの公園は、海からの風が気持ちいいから」



藍子「そうですよね。今日は、日差しも暖かくて…」



未央「ストップストップ! 脱線してゆるふわトーク始めない!」

茜「あ、あのっ」



椿「あら? この子は…藍子ちゃんや未央ちゃんと同じグループの子よね」



茜「は、はい!! 日野茜です!!」



椿「江上椿と申します。藍子ちゃんのカメラ仲間で、いちおう、同じ事務所のアイドルよ」



茜「え、アイドルの方ですか!?」



未央「えがみんは、活躍してる方面が違うからねー。私は、あちこちにちょっかいだしてるから知ったんだけど」



茜「す、すみません! 私、椿さんのこと、よく知らなくて…」



椿「いいえ。これから仲良くなっていけばいいから…ね?」



茜「あ…はいっ!! よろしくお願いします!!」



椿「よろしくね、茜ちゃん」



なでなで



茜「あ、あのー? 何故、私の頭を撫でるんですか!?」



椿「あ、ごめんなさい…なんだか、撫でたくなってしまって」



未央「わかる」



藍子「わかります」



茜「えぇ…!? ど、どういうことですか…!?」

未央「それにしても、えがみんが参加するってことは…」



椿「うん。せっかくだから、優勝狙っちゃおうかなって」ジャキン



未央「おお、相変わらずごっついカメラだ…!」



茜「藍子ちゃんのと違って、全然オモチャっぽくないですね!!」



藍子「おもちゃ…事実、トイカメラですけど…」



椿「え、えっと…」



未央「こいつは強敵だぜ…」



藍子「椿さんなら、きっと優勝できると思いますよ」



茜「何言ってるんですか藍子ちゃん!? 藍子ちゃんも優勝狙いましょうよ!」



藍子「え?」



未央「この大会で師匠越えだ! 君ならできる!」



藍子「師匠越え…できれば、いいですねぇ」



未央「ゆるい!!」



椿「藍子ちゃんのところは、にぎやかでいいわね」



藍子「ふふっ。はい、そうなんですよ。この前も…」



未央「だから、ゆるふわトークやめーっ! 写真撮る前に日が暮れちゃうから、そういうのは後でやりなさい!!」

椿「そうだ藍子ちゃん、一緒に回らない? よさそうなスポット、幾つか知ってるの」



藍子「本当ですか? 是非、お願いします」



未央「待った待った待った!」



藍子「ほぇ?」



未央「カメラの腕はえがみんの方が上なんだよ、同じとこ回ってたら勝てないって!」



藍子「それは…そうかもしれないですけど」



茜「椿さんとも仲良くしたいのは山々なんですが…我々はライバルなんです!! 藍子ちゃんのためにも、心を鬼にしなければ!!」



未央「そう。悪く思わないでくれえがみん。我々はあーちゃんを勝たせたいのだ…」



藍子「…それなら、そうですね。ごめんなさい椿さん、私、未央ちゃんと茜ちゃんと一緒に行きます」



椿「そっかぁ。それじゃ、ここからは別行動ね」



藍子「はい。後でまたお会いしましょう」

スタスタ…



未央「行ったか…」



茜「あの方向は、公園のシンボル、でっかい花時計がある方ですね。他の参加者も、みんなあっちに向かってるみたいです」



未央「手堅いところから攻めていくなぁ、えがみん」



藍子「それでもきっと、誰よりも素敵な写真を撮るのでしょうね」



未央「同じ景色を撮ったんじゃえがみんには勝てない」



藍子「そうですね…色々教えてもらったんですけど、まだ覚えきれないことばかりで」



茜「よさそうなスポットを知ってるって言ってましたね。花時計の他にも、色々な場所を知ってそうです」



未央「だったら…」



藍子「私達は…」



「「「誰も知らないを景色を探しに行こう!」」」

藍子「ふふっ。やっぱり、それしかないですよね」



茜「はい! 全力全開で探しましょう!!」



未央「そういうのを探すのは、あーちゃんの得意分野だ!」



茜「それじゃ、行きますよー!! うおおおおおおおお!! ボンバーッ!!」



ダッ!



未央「よっしゃー!! 行くぞ、まだ見ぬ世界を探して!」



ダダッ!!



藍子「わぁ…」



パシャパシャ



茜「って、藍子ちゃん、何を撮ってるんですか!?」



藍子「あ、ごめんなさい。ここの草の生え方、面白いなぁって思って」



未央「マイペース!!」

未央「探しに行こう、とは言ったものの…」



ザワザワ…



未央「うーん、町中だから、どこもかしこも人で溢れかえってるなぁ。誰も知らない場所って、どこ行けばいいんだろ」



茜「路地裏とか入ってみるのはどうでしょう!?」



未央「うーん。どうだろ?」



未央「って、あれ? あーちゃんは?」キョロキョロ



藍子「ほら、こっちおいでおいで」チロチロ



猫「にゃー」



未央「猫呼び寄せてるーッ!!」



藍子「よしよし」グリグリ



猫「ふにゃ…」ゴロゴロ



茜「ふおお…撫でられて喉鳴らしてます、かわいい…」



藍子「茜ちゃんも、撫でてみますか?」



茜「いいんですかっ!? やった!!」ナデナデ



猫「にゃあ、ふにゃお…」



未央「ちょっと、二人とも!」



藍子「未央ちゃん?」



未央「私にも撫でさせろー!!」

未央「ふぅ、堪能した…さて、猫をかわいがるのはこの辺にして、写真の方を…」



藍子「待って、未央ちゃん」



未央「ん、どしたの? 猫が可愛いからってうちでは飼えないよ?」



藍子「そうじゃなくて、ほら。この子、首輪ついてる」



猫「にゃ…」



未央「あ、ほんとだ…毛で埋もれてて見えなかったよ」



茜「飼い猫なんですね。だから人に慣れてたのかぁ」



藍子「飼い主さん、きっと探してると思います」



未央「そうだなぁ。放っとくわけにもいかないか」



茜「交番に届けましょう!!」



藍子「はいっ、行きましょう」



未央「あ、ちょっと! 行かないでよ〜、今スマホで交番の場所探してるから!」

茜「ありがとうございました! いつもお疲れ様です!!」



藍子「ちゃんと、飼い主のもとへ帰れるといいな」



未央「それにしても…結構、時間食っちゃったね」



藍子「あ、もうこんな時間…」



未央「ま、でも日没にはまだ時間あるよ」



茜「それじゃ、探索再開です!!」

未央「それから…」



未央「ビルの裏とか…」



未央「神社の境内とか…」



未央「ちょっとした雑木林とか…」



未央「一度戻って海沿いの公園の中とか…」



未央「色々…探してみたけれど…」



未央「マル秘スポットなんて、どこにもなーい!!」



茜「人が知らないところって意外とないんですね。それっぽい場所でも、草がボーボーなだけで花が咲いてないです」



未央「先に写真撮ってる人がいたりね。同じこと考えてる人って、結構いるんだね…」



パシャリ



藍子「ふぅ」



未央「あーちゃんはマイペースだし…」



茜「うおー、どこだー、誰も知らない場所ー!!」



藍子「あの、未央ちゃん、茜ちゃん。そこのカフェで、少し休憩しませんか?」



未央「へ? カフェ?」



藍子「ほら、そこ。ちょっといい雰囲気じゃありませんか?」



未央「あ、ほんとだ…でも、もう時間もなくなってきたし…」



藍子「疲れたまま探していても、上手くいきませんよ」



未央「まぁ…それはそうかもしんないけど」



茜「っていうか私達、いつの間にか商店街にいたんですね。人がいるかどうかばっかり見てた気がします」



藍子「さ、行こう?」

カランカラン



未央「あー、座ったら足が溶ける〜」



藍子「随分歩いてきましたからね」



茜「冷房が効いてて、涼しいです」



カランカラン



椿「あ、やっぱり藍子ちゃん達だった」



藍子「あ、椿さん」



椿「席、一緒でいいかな?」



藍子「はい、どうぞ」



椿「ありがとう。それで、調子はどう?」



未央「え、えーっと…まぁまぁってとこかな、うん」



茜「椿さんはどうですか?」



椿「何枚か撮ってみたの。見てくれる?」



茜「はい、是非!」

藍子「わぁ…」



茜「す、すごい…まるでプロみたいです…」



未央「え、なにこの写真!? こんな場所、どこにあったの!?」



椿「ちょっと、わかりにくいところにあるかな。私もたまたま見つけたんだけど」



未央「なんてこった、レベルが違う…」



椿「藍子ちゃんの写真も見せてくれる?」



藍子「はい。今日は、こんな感じです」



椿「へぇ…なるほどねぇ。藍子ちゃんらしい…わ、こんなのまで撮ってるんだ」



未央「あーちゃん、関係ないものまで撮りまくってたからね…」



藍子「これなんか、どうですか? 可愛いですよね?」



椿「ええ、とっても…ふふっ♪」



藍子「うふふ♪」



未央「ぐっ! あーちゃんとえがみんで2倍のゆるふわオーラ…た、耐えられない…!」



茜「ふぁ…未央ちゃん、なんだか私、眠くなってきました…!」



未央「寝ちゃダメだ茜ちん! 戻ってこれなくなるぞー!!」



椿「ねぇ藍子ちゃん、二人は何を?」



藍子「気にしなくていいですよ、いつものことですから」

未央「ふらり立ち寄ったカフェで、のんびりとカフェオレを飲む…か。いいね、こういうのも」



茜「たまには紅茶もいいですね!! やっぱりお茶の名前がつくものは美味しいです!!」



椿「さてと…そろそろ行かないと」



未央「ん? もう行っちゃうの?」



椿「ほら、そろそろ日が沈んじゃうから。写真を提出しないと」



未央「あっ、外が夕焼けで赤い!?」



茜「もうそんな時間なんですか!?」



未央「うわ、まだちょっとくらい大丈夫かと思ったのに、ゆるふわ空間にやられた…!」



藍子「それじゃ、私達も一緒に行きましょうか」



未央「え!? で、でもあーちゃん! 写真は…」



藍子「大丈夫」



未央「へ?」



藍子「大丈夫だから。ね?」

藍子「はい。じゃあこの写真、よろしくお願いします」



受付「ありがとうございます。審査の後発表に移りますので、しばらくお待ち下さい」



未央「提出は間に合った…けど…」



茜「結局、見つけられませんでしたね。誰も知らない景色…」



藍子「?」



未央「はぁ…がっくし」



藍子「…あっ。見て、未央ちゃん、茜ちゃん」



未央「へ?」



茜「あ…」



キラキラ



未央「綺麗な夕焼け…」



茜「一日の終わり…って感じです」



藍子「よかった。下を向いてたら、きっと見逃しちゃってたから」



未央「あーちゃんはさ、のんびりしてるってよく言われるけど…」



未央「それだけじゃなくて、たくさんのものをじっくりと噛み締めてるんだよね。私達より、ずっと広い視野で」



藍子「買いかぶりすぎですよ。でも、ありがとうございます」

審査員「ただいまより、コンテストの発表を行います」



未央「でも、今回のコンテストは…」



審査員「厳正な審査の結果、最優秀賞は江上椿さんの写真に決まりました!」



茜「あぁ〜」



藍子「やっぱり、椿さんかぁ…すごいなぁ」



審査員「この花時計は提出多数でしたが、その中でもこの写真は一際目を引きました。この写真の花は、まるで生きて息を吹いているように感じられて…」



未央「ま、しょうがないね。誰が見たってあれ、凄いと思うもん」



審査員「また、審査員特別賞も数名発表させていただきます」



未央「ん?」



審査員「まず、一つ目は…高森藍子さんの写真です」



藍子「あ…」



茜「え!? あ、藍子ちゃんの写真が…」



未央「これは…あの商店街? 地面の隙間から、花が出てる…」



審査員「石畳の隙間から一本の花が芽吹いている、この写真。生命の力強さを感じさせます」



審査員「そして、同じ花の写真を撮っている人は他に誰もいませんでした。誰も気に留めないような、隅っこに生えている花を見つけ出したということも、私は評価したいです」

茜「藍子ちゃん、あんなところにある花を撮ってたんですね!!」



未央「うんうん、人がいっぱいいる商店街で…あんな、他の誰も撮れないような写真を撮るなんて」



藍子「誰も知らない景色って、なにか特別な感じがしますけど…」



藍子「そんなことはないんですよ。見ようとすれば、きっとどこにだって素敵なものはあるはずです」



未央「あーちゃんには敵わないなぁ。結局、色々探し回ったのはムダだったってことか」



藍子「ううん、そんなことはないですよ」



未央「?」



藍子「私は、未央ちゃんと茜ちゃんと一緒にいろんな場所を歩きまわって…椿さんと撮った写真を見せ合って…とても楽しかったですよ」



藍子「だから、今日のことが無駄だったなんて、私は思いません」



藍子「審査員特別賞なんて貰っちゃったけど…もしもそうじゃなくても、きっと今日は素敵な一日でしたよ」



茜「ふおお…そ、そうですねっ!! かけがえのない思い出です!!」



未央「やれやれ。ほんと、あーちゃんには敵わないなぁ…」

茜「それにしても…いいですね、写真!! 私も、カメラが欲しくなってきました!!」



椿「それなら、今から買いに行かない?」



藍子「あ、椿さん。最優秀賞、おめでとうございます」



茜「おめでとうございます!」



未央「おめでとー、えがみん!」



椿「ありがとうございます。それで、優勝商品として商品券を貰ったの。これで茜ちゃんのカメラ、買いましょう」



茜「え!? つ、椿さんが貰ったもので、そんなことしてもらうわけには…」



椿「いいの。カメラ仲間が増えるなら、私も嬉しいから」



茜「そ、そうなんですか…? それなら、甘えさせていただきます!! ありがとうございます!!」ペコッ



椿「ふふっ。茜ちゃんは素直でいいわね」



未央「よーし、そうと決まったら近くの店にレッツゴー!」



茜「ゴーッ!!」



藍子「ふふ。茜ちゃん、未央ちゃん、そんなに急がなくても大丈夫ですよ」



未央「そんなこと言っても、早く行かないとお店閉まっちゃうよ!」



藍子「閉まってたら、またみんなで集まって、茜ちゃんのカメラを探しに行きましょう」



未央「それもいいかもしんないけど、今日みたいに予定が合う日なんて滅多にないって!」

茜「椿さん! オススメのカメラを教えてくれますか!」



椿「ええ、任せて。茜ちゃんにピッタリのカメラ、探してあげる」



未央「うーん…ついでだし、私もデジカメ買っちゃおっかなー」



藍子「………」



パシャリ



未央「あれ? あーちゃん、何撮ったの?」



藍子「うふふ。ちょっと、夕美さんみたいなことを言っちゃいますけど…」



藍子「私が見つけた、素敵なお花畑…かな?」



終わり



20:30│高森藍子 
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