2016年09月14日

いつき「肇ちゃんの下着ってさぁ」

短め。

よろしくおねがいします。



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まだ暑さの残る秋口の午後。



ダンスレッスンが終わり、更衣室で着替えていると、ふといつきさんがこちらを見ながらつぶやいた。



肇「な、なんですか……?」



いつき「なんか、地味じゃない?」



肇「!?」



紗枝「ん〜〜、せやなぁ。」



聖來「確かに、質素なのを着けてるのが多いよね。」



先に着替えを終えて待っていてくれた二人も、うんうんと頷いている。



肇「……そ、そうなんでしょうか?」



思わず、汗を拭いていたタオルで身体を隠してしまう。



いつき「そうだよー。なんかいつも見ても、白ばっかりじゃない?私もスポブラとか多いし派手なのはつけないけど、それにしたって地味だよー。」



聖來「まぁ、肇ちゃんの場合は素朴な感じもするから、そういう路線なのかなーって思ってたんだけど。」



紗枝「素朴、どすか?」



肇「あっ、いえ、そういうことは、考えてなくて…」



あまり、意識したことはなかった。



確かに聖來さんや、年上のアイドルの人たちは、おしゃれなものをつけていて。



何度か、羨ましく思ったことはあったけれど。



肇「動きやすければいいかなぁって……。」



ごにょごにょと、尻すぼみになる。



だんだん恥ずかしくなってきて、俯いてしまった。



聖來「そんなことない!そんなことはないよ肇ちゃん!」



突然、ガシッと肩を掴まれる。



驚いて顔を上げると、目の前に聖來さんが。

聖來「確かにね、下着っていうのは服の下に隠れちゃうし、人に見せるものでもないよ。でも、だからって手を抜いちゃいけないの!」



肇「で、でも、大人っぽいのって、私にはまだ早いんじゃ…」



聖來「なに言ってるの!アイドルでしょ!?女の子でしょ!??」



掴まれた肩が、前後にガクガクと揺さぶられる。



かつてないほど真剣な眼差しがまっすぐにこちらを見ている。

聖來「そんなんじゃ、いざって時に困っちゃうよ!?」



肇「いざって時ってなんですか!?」



聖來「Pさんもガッカリしちゃうよ!?」



肇「どうしてここでPさんの名前が出てくるんですか!?」



いつき「あれ?Pさんと付き合ってるんじゃないの?」



紗枝「あらまぁ、うちらはてっきり…」



肇「違います!全然、ほんと、そんなんじゃなくて!」



いつき「ありゃ、まだ片想いだったかー。」



紗枝「肇はん、うち応援してますえ!」



肇「だから違くて!」



聖來「だったら余計に大事じゃない!!」



肇「あーーもーー!!!」



収拾がつかない。



どうしてこうなっちゃうんだろう。



結局その後、ヒートアップした聖來さんに「こうしちゃいられない!」と押し切られて、買い物へいくことに。



いつきさんと紗枝ちゃんも一緒にくることになったけど、この二人は絶対に面白がっているだけだ。

いつき「そういえば気になってたんだけどさ。」



道中、いつきさんが思いついたように口を開く。



いつき「紗枝ちゃんも、下着つけてるんだね。」



そういって紗枝ちゃんを見る。



視線が胸にいっているような気が、しないでもない。



紗枝「……いつきはん?それ、どういう意味なんやろか?」



にっこーっと、とっても良い笑顔で聞き返す紗枝ちゃん。



あ、まずい。





いつき「ち、違う違う!紗枝ちゃんって和服よく来てるじゃん!?和服って下着つけないって聞くし!ほんと!それだけ!」



聖來「あ、それあたしも気になってたんだー。」



両手をぶんぶん振るいつきさんに、聖來さんがさらっとフォローを入れる。



ふーっと息をつく紗枝ちゃんを見て、二人でほっと胸を撫で下ろしている。

紗枝「和服かて、下着は着けますえ。そら、昔は着けへんかったみたいやけど、今やとそれはご年配の方くらいやろか。」



そう教えてくれる紗枝ちゃんは、今は制服姿だ。



紗枝「それにうち、制服はせーらー服やし。」



そういって胸のスカーフをひらひらさせる。



確かに、セーラー服で下着を着けないのは色々と問題があるだろう。



紗枝「だから、うちもちゃあんと、かいらしいの持ってますえ〜。」

―――――――



そんなやりとりをしつつ、お店に到着。



入ったことのない雰囲気に思わず後ずさりしそうになっていると、



聖來「なにしてるの。さっさと行くよー!」



いつき「ほーら、観念しなー。」



紗枝「おひとり様、ごあんな〜い♪」



と、聖來さんに引っぱられ、いつきさんと紗枝ちゃんに背中を押されて、連れ込まれてしまった。

可愛らしい内装に色とりどりの下着が並んでいる店内。



その中を、聖來さんを先頭にずんずんと奥へ進んでいくと、そのまま試着室へ放り込まれる。



聖來「さぁ、覚悟しなさい!」



肇「お、お手柔らかに……」



いつき「とりあえず、どうする?」



聖來「似合いそうなのを、片っ端から!紗枝ちゃん!」



紗枝「はいな〜♪」



応じた紗枝ちゃんの手には、いつの間にやら、ブラが一杯。



ほんと、どうやって持ってきたのその量。

紗枝「これなんかいかがやろか?」



聖來「うーん、ちょっと派手すぎないかな?」



いつき「えー、そうかなぁ?冒険してみるのもありじゃない?」



紗枝「ほんなら、こっちは?」



聖來「あっ、いいかも。」



いつき「落ち着きすぎな気がするけどー?」

紗枝「ほんなら……これ?」



いつき「わーぉ……」



聖來「……意外と、イケる、かも?」



数々のブラを試しながら、あーでもない、こーでもない、と言い合っている。



私はもう着せ替え人形状態だ。



まぁ、私のためにやってくれていることなので、大人しくすることにした。

紗枝「肇はん、お次はこれやでー。」



肇「はーい……って、何コレ?!ほとんど紐じゃないですか!?」



聖來「あっ、気づいた。」



肇「こ、こ、こんなの着られるわけないじゃないですか!!」



手渡されたのは、紐の様な細い布が1本。



これは下着と言えるのだろうか。



いや、言えるとしてもこれはさすがに着けられない。



恥ずかしすぎる。



というか、こんなものまで売ってるの?!

いつき「いやー、されるがままになってるからさー。つい。」



肇「つい、じゃないです!」



紗枝「似合うと思たんやけどなぁ。」



肇「本気で言ってるの!?」



前言撤回、やっぱり、遊ばれてるだけかも。



―――――――



その後も何度か、アブナイものを着せられそうになりつつ、何とか一組、選んでもらった。



聖來さんが勧めてくれた、水色に白のフリルがついたブラ。



胸元には、ワンポイントに小さな紺のリボン。



ショーツは、お揃いの水色のレースのもの。



なぜか買うだけで緊張してしまい、お店を出た時にはすっかり疲れ果ててしまった。

肇「はぁ〜〜〜〜〜〜〜……」



聖來「お疲れさま♪」



肇「ほんと、こんなに疲れるとは思いませんでした…」

いつき「いやー、ファッションショーみたいで面白かったね!」



肇「おかげさまで……」



紗枝「ひも……」



肇「紗枝ちゃんまだ言ってるの…」



なぜか名残惜しそうな紗枝ちゃんを引っ張って、四人で事務所に戻る。

着いた頃には、もうすっかり日も傾いて綺麗な夕焼け空だった。



遊ばれはしたものの、またこの3人にはお世話になってしまった。



ちゃんと、お礼は言わないと。

肇「あ、あの、ありがとうございました!」



いつき「いいよいいよー、楽しかったしねー。」



紗枝「またお買い物、いきましょな〜。」



二人がひらひらと手を振って、先に事務所に入っていく。

肇「あの、聖來さんも、色々と、教えてくれて…」



聖來「いいよいいよー。いつきも言ってたけど、あたしたちも楽しかったし。あ、でもちゃんと大事な時に着けるんだよ?」



肇「???」



聖來「だってその色、Pさんが好きな色だから♪」



そう告げて、足早に事務所へ駆けていく。

一瞬、何を言われたのかわからず立ち尽くしてしまう。



ドウイウコト?



コレ、Pサンノスキナイロ……?



思わず、紙袋を持った手にキュッと力がこもる。



肇「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!」







言われた意味を理解した途端、ボッと顔が赤くなる。



今なら多分、夕日にも負けてない。



熱くなりすぎて、焼き物も焼けるんじゃないか。

入り口のドアで待っていた聖來さんは、いたずらっぽくニッと笑う。



聖來「たっだいま戻りました〜!あ、Pさん、聞いて聞いて〜!」



肇「あああああ!!だ、ダメですーっ!聖來さん!Pさんも聞かないでくださいーー!!」

大慌てで追いかける。



まだしばらくは、聖來さんには頭が上がらないことになりそうだ。



でも今は、とにかくあの口を塞がせないと。



何を言おうとしたのかのフォローも考えなきゃ。



様々なことを考えながら、私も事務所に入っていった。



23:30│藤原肇 
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