2016年09月21日

ボノノ13「沈黙のMC戦争」

CGプロ――東京――







P「お疲れ様! 今日もバッチリだったぞ!」





凛「当然だよ」フフン



卯月「がんばりました!」



未央「どうどう? 私のファン増えた?」



P「俺が知るかよ! 視聴率計算するマシーンじゃあるまいし!」



4人「「HAHAHAHA」」











■この作品はフィクションです



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1473171475



P「さて、お前たちにもそろそろ伝えておく必要があるな」



凛「何が?」



P「本当はまだ企画段階だから他言厳禁なんだが……」



P「俺の見立てでは十中八九、お前たちの仕事になりそうだからな」



未央「えっ! 新しいお仕事?!」



P「そう! うちのアイドル3名をパーソナリティにすえた、インターネットラジオだ!」



卯月「もしかしてそれ、CGプロ独占ってことですか!?」



P「その通り! あのニヤニヤ動画に週1で放送することが、ほぼ決定した!」



NG「「おぉ〜!!!」」パチパチ

P「俺の方からはNGの3人を強く薦めておいたぞ」



P「実際には、今度の総選挙の結果も加味されるから、少し変わるかも知れないが……」



凛「でも、頑張れば私たち3人で、ラジオに出られるんだよね?」



P「もちろん! 上位30位に入れば、確実と思っていいだろう」



卯月「凛ちゃん! 未央ちゃん! 絶対一緒にでようね!?」



凛「うんっ」



未央「あたしに任せなさーい!」



P「いや、俺は未央が心配だなぁ」



未央「おいおーい! ここでテンション下げてどうするのさー!」ビシッ



4人「「HAHAHAHA」」



















美嘉「……」キキミミ



美嘉「聞いちゃった……」



美嘉「ネットラジオ……しかも、CGプロの顔として……」



美嘉「出たい……アタシだって出たいのに……!」



美嘉「いくら売り出しの時期だからって、NGばっかりずるい……!」



美嘉「アタシだって……!」ギリッ

【Part 1 カリスマJKの憂鬱】







トレーニングルーム――







P「お疲れ様です」



ベテトレ「おや、君か」



ベテトレ「珍しいな、ここまで足を運ぶなんて、滅多にないはずだろう?」



P「いやぁ、あいつらの様子を見ておきたいと思って……」



ベテトレ「……フッ、君はどうやら、あの子達に夢中と見える」



P「でしょうね。何せ俺は、NGのファン第1号ですから」



ベテトレ「彼女たちは先ほど終わったばかりだ、今は着替えているところだろう」



ベテトレ「簡単でよければ、今日のレッスンの報告をまとめておくが、どうだ?」



P「お願いします」



ベテトレ「了解した、では適当にくつろいでいてくれ」



美嘉「……」

美嘉「あっれー? Pさんじゃん、ひさしぶりー★」



P「やぁ、美嘉。元気そうだな」



美嘉「莉嘉には負けるけどね」



P「今度のライブの練習ははかどってるか?」



美嘉「うーん……今以上にTOKIMEKUにはどうするか、悩んでるんだー」



美嘉「今日思いついたのは『終盤になるまで、ずっと仲間にならない』って方法なんだけど……」



P「なるほど、さすがカリスマJKだな! それはすごくTOKIMEKUこと請け合いだぞ!」



美嘉「へっへーん★」

美嘉「……風の噂に聞いたんだけどさ」



美嘉「なんか、大きな仕事が決まりそうなんだって?」



P「おっ、よく聞きつけたな?」



P「……絶対に内緒だぞ」ヒソヒソ



美嘉「アタシを信じて、ね?」



P「実は、CGプロ独占ネットラジオの企画が、ほぼ決定したんだよ」



美嘉「それは凄いじゃん!」



P「あぁ! あとは、パーソナリティを3人決めるだけだ」

美嘉「それ、何で3人なワケ?」



P「所属だよ」



P「うちのアイドルはキュート・クール・パッションのどれかに所属するだろ?」



P「CGプロの紹介も入るから、全所属から代表として1人ずつ出演してもらうわけだ」



美嘉「へー」



P「俺はNGを推薦しているんだが……ま、総選挙次第だな」



美嘉「3人とも、有名になってきたもんね」



P「スカウトからずっと見てきたから、感慨深いなぁ……」



美嘉「おじいちゃんみたいなこと言ってたら、すぐ老けちゃうぞー」アハハ



P「ハッハッハ」



















美嘉「……」

【Part 2 13回目の記念日】







喫茶店『宇佐見ん家』――東京――







店員「いらっしゃいませ〜! お1人様ですか〜?」



客「は、はい……」



店員「奥のテーブル席へどうぞっ! キャハッ☆」



客「えっと、ここかな……?」ガラガラガツンッ!



客「あ……背中、ご、ゴメンなさい」



美嘉(変装)「あ、いえ、大丈夫です」



客「……」ペコリ



美嘉(少し小さい店だから、あまり椅子を出して座ってると、ぶつかっちゃうな……)



美嘉(今来た後ろの子のために、ちょっと椅子を引いておこうっと)ガラッ

美嘉「……」ゴクゴク



美嘉(と、とうとう、ここまで来ちゃった……)



美嘉(昨日の新聞に掲載してもらった、この三行広告……)ガサッ



『13回目の記念日を祝ってくれた方へ、いつもの場所で』



美嘉(これでプロフェッショナルとコンタクトが取れるって聞いたけど……)



美嘉(まだかな……?)



















「それで、依頼はなんですか?」



美嘉「えっ?!」クルッ

ボノノ「あ、そのまま! そのまま! こっちは見ないで!」



美嘉「えっと……ゴメンなさい」



ボノノ「前を向きながら、私にしゃべって下さい」



美嘉「はい……」



美嘉(い……一体いつの間に!)



美嘉(ドリルヘアーの小柄な女の子が座った場所に、いつの間にか噂のプロフェッショナルが座ってた……!)



美嘉(これが……プロの仕事……!)



美嘉「……」



ボノノ「……」



美嘉「……」



ボノノ(劇画調)「早くしてほしいんですけど(おこ)」



美嘉「あっ、ゴメンなさい……///」

美嘉「……今度、うちの事務所で総選挙が開かれるんだ」



美嘉「そこで、あるアイドルを圏外にして欲しいの」



ボノノ「……それが本田未央というわけですか」



美嘉「ど、どうしてそれを?!」



ボノノ「私の耳を甘くみないでください」



美嘉「さすがはプロ、情報にも強いんだね」



美嘉「そう。未央を圏外に落とせば、私がラジオのパーソナリティに選ばれる可能性が高くなる……!」



美嘉「先にこの業界で活躍したのはアタシなんだから、チャンスの1つや2つあっても、いいと思わない?」



ボノノ「……」

美嘉「とにかく、アタシの依頼は、未央を圏外にすること」



ボノノ「でも、CGプロの集計システムは、とても正確な機械を導入するという話です」



ボノノ「一度集計が始まれば、一瞬で数値がたたき出されるでしょう……」



ボノノ「なので、この依頼はむーりぃーということで――」



美嘉「ま、待って!」

美嘉「確かに集計が始まれば、不正は難しいと思う……」



美嘉「でも、今回に限り、それは大丈夫です!」



ボノノ「……続きを」



美嘉「アタシが調べたところ、その日はラジオの関係者が立ち会うって情報を手に入れたんだ」



美嘉「そんな重要なときに、投票券の不備で集計ができない、なんてことは出来ない……!」



美嘉「未央の投票券が狙撃で大量に集計不可になっても、それを理由に集計を中止することは事実上不可能……!」



美嘉「他のアイドルに黙ったまま、ゴミ箱にポイするしか道はない」



美嘉「どう? これは依頼遂行しやすい条件のはずだよ」



ボノノ「……」

美嘉「お願いします、この依頼を受けてください!」



ボノノ「……」



















ボノノ「分かりました、やりましょう」



美嘉「やった★」



ボノノ「報酬は、収録中に困っている森久保乃々を4回助けることです」



美嘉「えっ、なんでそこで乃々ちゃんが?」



ボノノ(劇画調)「いいから(おこ)」



美嘉「アッハイ」

ボノノ「では、開票日まで――」ス



美嘉「待って!」



ボノノ「……」



美嘉「乃々ちゃんも助けるけど……」



美嘉「この業界に首突っ込んで疲れてるあなたも……助けていい、かな?」///



ボノノ「……」



美嘉「これは、アタシの個人的な頼みなの……!」



美嘉「先輩だから平気な顔してるけど、NGに全部持ってかれるんじゃないかって、毎日不安で……!」グス



美嘉「お願い……私を楽にして……」ギュ



ボノノ「……」

【Part 3 カリスマ★ブレイク】







某お城のような建物――







美嘉「あおぉぉ〜!」



ボノノ「……」パンパン



美嘉「すごい! やっぱりアンタすごい!」



ボノノ「……」パンパン



美嘉「今だけはカリスマをただの女にして〜!」



ボノノ「……」ドピュッ



美嘉「いぃ……フヒ……★」



















ピロートーク中――







ボノノ「……」



美嘉「依頼人の私が言うのもアレだけど……」



美嘉「どうやって未央の投票だけを無効にするつもりなの?」



美嘉「総選挙は、全国から送られてくる投票券を、区別なしに機械に投入する仕組みなのに……」



美嘉「ねぇ、分かってる? 他の子の票を無効にするのは、無しなんだからね?」



ボノノ「……」



美嘉「……もうっ! つれないなぁ……」フンッ



ボノノ「……」

【Part 4 前夜の調整(ラスト・アライメント)】







開票前夜――

CGプロ――第1会議室――







『第1回総選挙運営特設本部』



晶葉「よし、こんなものかな」



泉「それじゃ試運転ね」



晶葉「チェック用の投票券はバッチリだぞ」



志希「……おっ、やってるねぇ」テクテク



泉「お疲れ様ー」



晶葉「せっかくだ、見学していくかい?」



志希「良いの? やったー!」

晶葉「それじゃ、いくぞ!」ヒョイヒョイ



志希「おー! 挿入口に入れた投票券が、どんどん吸い込まれていくねー!」



晶葉「泉、カウントはどうだ?」



泉「……うん、今のところ大丈夫」



志希「なるほどー、投票券の文字を読み取って、自動的に投票数をカウントしてくれるのかー、賢いなーチミチミー」ナデナデ



投票システム「ウス」ウィーン

志希「でもさ、読み取れないくらい汚い字の時は、どうするつもり?」



晶葉「この投票システムは精度が重要だからな。だがそこも抜かりはない」



晶葉「このような悪筆の投票券の場合……」ヒョイ



投票システム「ぺっ」



志希「あ! 別の箱に吐き出した!」



泉「ここに、確実といえない投票券を集めてくれるの」



泉「全ての投票が終われば、ここの投票券を目視でチェックすれば良いでしょ?」



志希「にゃるほどにゃるほど……機械と人間のダブルチェックというわけかー」

泉「……うん、大丈夫」



晶葉「よし、これで調整は完了だな」



志希「いやー……2人が担当しただけあって、立派なシステムが出来上がったねぇ」



志希「これじゃ、不正は無理かな?」



晶葉「もちろんだ! 市販品ならともかく、これは私たちの共同製作による完全オリジナルだぞ!」



晶葉「物理的にも電子的にも、細工は不可能だと保証しよう!」

志希「それじゃ、そんな素晴らしいシステムを作り上げたお2人に、ご飯を奢ってあげちゃおー!」



晶葉「そういえば、最近叙々苑に寄っていなかったな」



泉「私、一度銀座の久兵衛に行ってみたかったんだ」



志希「ちょ、ま、2人とも遠慮無さすぎ!」アセアセ



「「HAHAHAHA」」



















ボノノ(……)

ボノノ(思ったとおり、投票システムに不正の介入は不可能……)



ボノノ(やっぱり、仕掛けるとするなら……!)



ちひろ「……えっ、誰ですか?!」ガタッ



乃々「私ですけど……」



ちひろ「なーんだ、乃々ちゃんか」



ちひろ「私はてっきり、劇画調のプロの狙撃手かと思っちゃいました……」



乃々「そんな不審者、見てませんよ……」



ちひろ「うーん……総選挙前日だから、ちょっとピリピリしすぎてるのかしら……?」

乃々「それなら……私、お手伝いしますから……」



ちひろ「……えぇ!? 乃々ちゃんが、お、おお、お手伝い!?」



ちひろ(いつもお仕事に消極的な乃々ちゃんが、こんなに積極的だなんて……!)



乃々「ちひろさん……明日も忙しいから……」



乃々「私が、手伝います」



ちひろ「……そうね。後は戸締りするだけだし……」



ちひろ(それに、このやる気をそぐようなことはしてはいけない……)



ちひろ「それじゃ、お願いしちゃいます」

ちひろ「後はこのフロアの戸締りの確認と施錠だけだから」



ちひろ「特に、投票システムのある第1会議室と、投票券の詰まったダンボールの置いてある第2会議室は、必ず施錠してください」



乃々「はい」



ちひろ「これがその鍵です。なくさないようにね?」つ鍵



乃々「任せてください」ウケトリ



ちひろ「それでは、乃々ちゃんのお言葉に甘えて、今日は失礼します」ペコリ



乃々「あの……明日、頑張ってください」



ちひろ「お姉さんに任せてちょうだい!」コッコッコッ...



乃々「……」ペコリ



















ボノノ「……」

【Part 5 ちゃんみおは不憫】







開票当日――

CGプロ――第1会議室――







『第1回総選挙運営特設本部』



ちひろ「投票システム、特に異常ありません」



P「よし、それじゃ集計開始!」



















凛「ついにはじまったね」



卯月「緊張します……」



未央「へぇ〜、あの機械で全部済ませちゃうんだ〜!」



杏「もう帰っていいかな?」



きらり「ダーメっ。最後まで立ち会うにぃ!」

乃々「どうして私たちまで……」



美玲「そうだそうだ! ウチらは入社日の都合で、参加してないんだぞッ!」



輝子「私が参加しているから……らしい」



輝子「面倒かけて……す、すまない」



美玲「謝るくらいなら、上位に入れよなッ!」



輝子「が、がんばる……フヒ」



乃々「ダメでも、パーティを開いて、慰めてあげますから……」

ラジオディレクター(以降D)「やぁ、君たちがNGだね?」



P「今日はここまでお越しいただき、ありがとうございます」ペコリ



D「なぁに、こんなに面白いものが見られるんだ、気にしてないよ」



P「凛、卯月、未央! この方が今度のラジオのディレクターさんだ」



NG「「こんにちは!!!」」ペコリ



D「うんうん、行儀良くて良い子たちじゃないか」



















美嘉(くっ……!)



美嘉(私には、声をかけてくれないんだ……!)ギリッ

P「ふぅ〜……個人票はこんなものかな?」



P「1枚ずつ入れてみましたが、特に問題はなさそうです」



ちひろ「それじゃ、本番を開始しましょうか」



ちひろ「残りの個人票は見つけ次第、追々やっていきましょう」



P「そうですね」



P「よぉし! それじゃ、運んできます!」タッタッタ



ちひろ「お願いします」



















美嘉「?」



美嘉「あれ、Pさんは何してるの?」



美嘉「まだ開票途中だってのに?」



未央「あれ? 美嘉ねぇ、知らないの?」



美嘉「何が?」

未央「総選挙の投票って、大きく分けて2種類あるんだって」



未央「1つは今みたいに、1枚ずつ投票されるもの」



未央「もう1つは、一度に大量に投票されるもの」



未央「そういうのは郵便局の方で、輪ゴムでとめられて郵送されてくるんだってさ」



未央「だから先に、ダンボールでアイドルごとに仕分けておいてあったんだよ」



未央「機械に一気に投入したいからって」



P「まずは、凛からなー」ドサッ



















美嘉(こ、これか――!!)

美嘉(私は今まで、すべての投票券が1枚単位で送られてくるものとばかり考えていた……)



P「これはかな子のだなー」ドサッ



美嘉(でも実際は、こうして束で送られるケースが存在する……)



P「おっ、杏のも大量だぞー」ドサッ



杏「げっ! 休ませてよもう……」



美嘉(特に人気のアイドルは、塊で送られることがほとんどのはず……)



P「愛梨のは……なんだこれ、重っ!?」ズンッ



美嘉(それをまとめたダンボールを狙撃すれば、他の子に迷惑をかけることなく、大量の無効票を作ることができる……!)



P「今回は、パッションの子が人気みたいだなー」ドサッ



美嘉(つまり、ボノノ13の真の狙いは――!)

P「これも相当あるぞ……未央の票だ」ドサッ



未央「うわぁ……!」キラキラ



卯月「未央ちゃんの票、すごい量ですね!」



凛「これ、私たちよりも多くない?」



P「パッション景気のおかげかもな」



P「さ、全部機械に投入するから、ちょっと下がってなさい」



NG「「はーい」」



ボノノ(……)



















ズキューン!!



















ダンボール『ぼわっ!!』







未央「きゃあっ!?」



凛「火が……!」



卯月「あわわわ……」



P「おい、全員離れて!」



ちひろ「Pさんコレを!」つ消火器



P「ありがとうございます」ウケトリッ!







消火器『ぶしゅー!』







未央「しまむー、大丈夫?!」



卯月「だ、大丈夫……」

凛「誰か、火傷した子はいる?!」



きらり「ソファ側、大丈夫……!」



加蓮「高校生組は大丈夫だよ!」



桃華「年少組は全員無事ですわ!」



幸子「中学生組も問題ありません!」



美波「大人組、全員の無事を確認しました!」



ちひろ「けが人がいないのは幸いですね」

P「鎮火確認!」



P「それにしても……うわぁ……」



卯月「あっ……!」



凛「投票券が……!」



未央「黒こげ……」



P「くそ! 未央の分はまだ入れる前だったから……!」



卯月「あ、あの! これ……どうなっちゃうんですか!?」



P「……」



P「規定では、破損した投票券は無効となる……」



P「この箱の投票券は全部……無効ということだ」



卯月「そんな……!」

卯月「Pさんも、みんなも、見たじゃないですか!」



卯月「未央ちゃんに、あんなにたくさん投票されてたところを!」



凛「卯月……」



未央「しまむー……」



卯月「全部は無理でも、せめて厚みから大体の数を投票すれば――!」



杏「バカ言っちゃダメだよ」グデーン...



きらり「杏ちゃん?」

杏「よっと」スタッ



杏「たとえば……この焦げ山の上から130枚目」



杏「実はこれ、杏の投票券なんだよ」



卯月「……へっ?」



杏「いやー残念だなーせっかくの投票券が無効になっちゃったよー」



卯月「えっでも、これは未央ちゃん宛の――!」



杏「……ね?」



杏「いくら同時にたくさん送られてきたからって、この1枚が杏のだってこと、否定も肯定もできないでしょ?」



杏「それが分からないまま、全てを未央ちゃんの票にするのは……良くないんじゃないかな?」



卯月「うぅ……」

杏「そういうことにならないようにするための、ルールなんだよ」



杏「投票券の破損は全て無効――最初からそう決まってるんだから、それに従わなきゃ」



杏「……杏だって、杏への投票は受け止めてるんだから……この処置も受け止めるべきでしょ?」



卯月「……うん……」



杏「……あ〜……長いこと喋ったから疲れた〜……」フワァ...



杏「きらり、膝枕」ポフッ



杏「終わるまで起こさないでねー……」ダラーン



きらり「……うん」ナデナデ

未央「杏ちゃんの言うとおりだよ」



未央「ルールは守らなきゃ」



卯月「でも……でも゛……!」グスッ



卯月「これじゃ……未央ちゃんが……!」



凛「Pさん!」



P「……どうですか?」



D「……仕方ないでしょう……」ムゥ...



P「……そういうことだ」



















P「今度のラジオのMC……残念だが未央は、選ばれないだろう……」



凛「くっ……!」

未央「もう良いよ」



未央「私は選ばれなかった……ただそれだけだから」



卯月「私、や゛だよ……! 一緒にラジオしたかったのにぃ……!」グスッ



未央「これが運命だったんだよ、なら受け入れなきゃ」



卯月「だからって……こんな゛の、可哀想……!」ヒッグ



未央「大丈夫」



未央「確かに、私の票数は少ないけど……」



未央「あのたくさんの投票券の姿は、私たちの心の中にあるじゃん……!」



卯月「ぐすっ……う゛ん……!」



凛「うん……そうだね……!」

未央「あれだけで私は、頑張っていける!」



未央「そして絶対、返り咲いてみせる!」



未央「だからしまむーたちは、私を信じて頑張って!」



未央「それまで、私の席を確保しといてよねっ」



卯月「う゛ん……うん……!」コクコク



凛「約束するよ」



凛「それまで絶対、ラジオを続けてみせるから」



凛「でも、早めにお願いだよ?」



凛「いくらヒーローが遅れてやって来るって言っても、待たせて良いってワケじゃないんだから」



未央「フフン! この本田未央に、まっかせなさい!」

P「未央、本当にすまない……」



未央「ホラホラ! Pさんまで湿っぽくなってどうするのさ!」



未央「まだまだ投票券は残ってるんだよ?」



P「……あぁ!」



P「同じことが起こらないよう、細心の注意をはらって、作業を続けよう!」



P「みんなも気をつけてくれ!」



P「それでは、集計作業を再開する!」



















美嘉(すごい……本当に未央の票だけが消えた……!)



美嘉(流石……ボノノ13……!)

【Part 6 試合に勝って……】







CGプロ――屋上――







美嘉「……」







――

――――



P『この間話したネットラジオの件だが……』



P『パッション代表を、美嘉にしようと思う』



P『カリスマギャルとしての実績があり、知名度が高い上、今回の総選挙で良好な結果を出している』



P『期待しているぞ!』



――――

――







美嘉(結局、パッション代表は私に決まった……)

未央「……」ガチャリ



未央「あ、いた」



美嘉「……?!」



未央「さっきPさんから聞いたよ」



未央「MCおめでとう」



美嘉「あ、ありがと★」



未央「今回は、こんな結果になっちゃったけどさ……」



未央「でも私は、美嘉ねぇが選ばれて、本当にうれしいんだ!」

未央「美嘉ねぇなら、無愛想な凛や、意外と繊細な卯月のことを、支えてくれるって信じてるから」



美嘉「あ、アタシにできるかな……?」



未央「絶対できる! 私が言うんだから、間違いなし!」エッヘン



未央「……」



未央「2人を、お願いします」ペコリ



美嘉「あ、あぁ……うん、オッケー!」



美嘉「ラジオは絶対に盛り上げて見せるから、心配しないで!」



未央「……やっぱり、美嘉ねぇで良かった……」ポツリ



美嘉(――!)



未央「それじゃ、おやすみなさーい!」タッタッタ



美嘉(……)

美嘉(結局、私の思惑通りに全てが進んだ……)



美嘉(なのにどうして、こんなに胸が苦しいの……?!)



美嘉(ダメ……どうしても、あの未央の投票券の山が、頭から消えない……!)



美嘉「くっ……こんなハズじゃ……!」ガクッ



















【Part 7 全ては燃えた】







第1会議室――







早苗「……やっぱり!」



P「何か見つかりましたか?」



早苗「わずかだけど、燃料オイルのにおいがするわ」スンスン



早苗「投票券にはあらかじめ、この可燃性オイルがまかれていたのよ」



早苗「これなら、わずかな火種で、投票券を損傷させることができるわね」



P「しかし、そういうオイルはたいてい、揮発性が高いですよね?」



P「元から投票券に染み込ませていたとしても、もう乾燥しているハズですよ」

早苗「……」



早苗「つまり、内部犯の仕業でしょう」



P「ば、バカな!」



P「そんなことをするやつが、CGプロにいるなんて……!」



早苗「まぁ、内部犯は私の想像だけど……」



早苗「どちらにしても、犯人が可燃性オイルで投票券を焼いたのは事実よ」ガサゴソ



早苗「発火装置は……コレね」つ弾丸



P「これは……銃弾?!」



早苗「このダンボールの底に、鉄板が仕込まれていたわ」



早苗「底部分に鉄板をガムテで貼るという、かなり単純な仕掛けよ」



早苗「中には大量の投票券が入っていたから、多少重くなってても分からなかったでしょうね」

早苗「犯人は鉄板に向けて弾丸を衝突させ、火花を発生させる……」



早苗「それが可燃性オイルに引火し、投票券を焼いた……」



P「バカな! ここは密室ですよ!?」



P「部屋の中で、ダンボールに発砲した犯人がいるって言うんですか!?」



早苗「証拠はそう物語っているわ」



早苗「だけど……犯人につながる目撃証言が、存在しない……!」

P「くっ……一体誰が、そんなことを……!」



P「箱を開けた直後はすぐそばに、小道具の猟銃を持った乃々が銃口を箱に向けていたこと以外、何もおかしいところはなかったのに……!」



早苗「これは……迷宮入りね」



P「くそっ!」ダンッ



















早苗「……」



早苗(この手際のよさ……まさか、あの伝説の……?!)



早苗(……いえ、邪推はやめておきましょう)



早苗(真相はもう、燃えてしまったんだから……)











END



08:30│森久保乃々 
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