2016年09月21日

周子「一人より二人、二人より三人」

周子「奏ちゃん今ひまー?」



奏「……」



周子「え、なにその顔」





奏「なんだか嫌な予感がしたのよ」



周子「なにそれ、傷つくわー。それよりさ、ちょっと時間ある?」



奏「今すごく忙しいの。見てわからない?」



周子「いやいや、さっきまで映画情報誌めくってたよね。今日このあと暇だから映画でも見に行こうかしら、あーでも面白そうなのやってないわね……って感じだったじゃん」



奏「わかってるならなんで聞いたのよ」



周子「奏ちゃんそういうの大事にするじゃん。でさ、緊急事態なんだけど手伝ってくれない?」



奏「緊急事態ねえ」



周子「そう、さすがの周子ちゃんも困っちゃうくらいの一大事なの。猫の手も借りたいくらい」



奏「はいはい、で本題は?」



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周子「今夜、実は寮で鍋パーティをしようって話があって」



奏「急に深刻さが消えたわね」



周子「いやいや、大事だよ鍋。日本人たるもの鍋を囲んで初めて親しくなれるみたいなところあるじゃん?」



奏「まあ、私も嫌いではないけど」



周子「お、やったー! 奏ちゃんも来る? 来るよね?」



奏「考えておくわ。で、それと緊急事態がどう関係があるのかしら」



周子「それがね、今回結構真面目に計画しててさ。ほら、寮に住んでても全然会わない人とかいるじゃん。プロデューサーや部門が違うと仕事でも会わないし、せっかく同じ屋根の下で暮らしてるんだから、それってなんかもったいないなーと思って」



奏「確かにね」



周子「だから珍しくこの周子ちゃんが一肌脱いで、鍋パーティを主催して参加者を募り、スケジュールの調整まで完璧に済ませたわけですよ」



奏「いいことじゃない。見なおしたわ」



周子「で、買い出し担当もあたしだったんだけどさっきまですっかり忘れててさー」



奏「前言撤回」



周子「というわけなので奏ちゃん今から買い物付き合ってくれない?」



奏「はあ……しょうがないわね。面白そうな映画もなかったし付き合うわよ」



周子「ありがとね。あ、そうだ今度DVD貸してあげるよー、フレちゃんとパケ買いしたんだけど結構面白かったよ。サメが台風に乗ってやってくるやつ」



奏「理解に苦しむわ……」



奏「それで、買い物に向かうんじゃなかったの?」



周子「いやー実はもう一人呼んでたんだよね。奏ちゃんが忙しかった時のために」



奏「あら、じゃあ私、お邪魔だったかしら」



周子「いやいやいや、一人より二人、二人より三人でしょ。荷物多くなったら困るしね。あ、ほら来た来た」



アナスタシア「イズヴィニーチェ……ごめんなさい、待ちましたか?」



周子「大丈夫、あたしたちも今来たところだよ。さっきメールにも書いたけど奏ちゃんも手伝ってくれるってさ」



奏「あら、アーニャじゃない。あなたも周子のお手伝い?」



アナスタシア「ダー。アーニャ、今日は買い物のお手伝い頑張ります。カナデ、よろしくですね」



奏「こちらこそ、頼もしいわ。周子の買い食いを止めなきゃいけないから」



周子「ちょっとちょっと」



アナスタシア「シューコ、材料食べちゃいますか?」



奏「買い物カゴはもたせちゃだめよアーニャ」



アナスタシア「ダー!」



周子「あれあたしもしかして味方いない?」

奏「それで、何を作るつもり?」



周子「え? 鍋だよ」



アナスタシア「鍋ですよ」



奏「それはわかるけど、何鍋にするかで材料が変わってくるじゃない。ちゃんと決めてあるのかと思って」



周子「えー、なんか普通のやつでいいよ。適当に出汁取って具材入れれば鍋になるでしょー」



奏「京娘とは思えないほどアバウトね」



アナスタシア「普通、ですか。ボルシチは入りませんね」



周子「お、それいいかも。ボルシチってロシアの鍋でしょ」



アナスタシア「ンー、肉じゃがと似てますね。アーニャの家ではよく食べます」



周子「あれ、肉じゃがなんだ。でも肉じゃがもいいなー、しゅーこちゃんお腹すいたん」



奏「はあ……先行きが危ういわね。このままじゃスーパーで飢え死によ」



周子「ごめん冗談。じゃあボルシチはまた今度ね、アーニャちゃん」



アナスタシア「また今度、みんなで食べましょう」



奏「それで、まず出汁は?」



周子「すっぽん以外だよね」



奏「どこで買うのよそれ……」



アナスタシア「アーニャの家では、いつも昆布を使ってました」



周子「あたしのところは鰹節も使ったよ」



奏「両方使ってもいいんじゃない?」



周子「そうだねー アーニャちゃんはどう?」



アナスタシア「ダー、いいですね」



周子「じゃ、そういうことで」



奏「第一段階は無事クリアね……」



周子「いやいや、こんなところで揉めないってば」



アナスタシア「シューコ、カナデと仲悪いですか……?」



周子「まさかー」



奏「ノーコメント」



周子「え」



アナスタシア「?」

周子「奏ちゃんは普段どういう鍋食べるの?」



奏「そうね……水炊きとかかしら」



周子「いいね簡単だし。出汁もちょうどいいしそれでいこうか」



アナスタシア「ミズタキ、ですか?」



周子「そうそう。東北とかだとあまり食べないんだっけ? こっちでは定番だよ」



奏「昆布だしで水から煮て、そこに鶏肉や白菜を入れてポン酢で食べるのよね」



周子「お、奏ちゃんはそっちかー」



奏「そっちって?」



周子「博多風とかもあるからね。鶏肉から出汁をとってキャベツを入れたりするんだけど、今日は白菜と昆布にしようか」



アナスタシア「どっちも美味しそう、ですね」



周子「今日は関西風ということで。さ、材料買おうか」



周子「そういうわけで食品売り場についたわけです。そして見よ、この潤沢な予算」



アナスタシア「ハラショー」



周子「そしてこの美味しそうで高そうな鶏もも肉をカゴにどん!」



奏「迷いがないわね」



周子「どうせなら美味しく作りたいしねー。あ、そうだアーニャちゃん昆布選んできてもらっていい?」



アーニャ「ダー。北海道の、あるといいですね。羅臼昆布が特に美味しいです」



周子「その間あたしと奏ちゃんで白菜とかキノコ選んでるから」



アーニャ「行ってきます!」



奏「……これ、私来る意味あったのかしら」



周子「まあまあ。とりあえず白菜はこれにして、と。キノコは何がいい?」



奏「普通はしいたけじゃない?」



周子「もう一声!」



奏「えのき」



周子「両方採用!」



奏「主催とは思えないほど他人任せね……」



周子「え、闇鍋が良かったの」



奏「参加しなくていいなら」



周子「普通のにするからぜひ参加してください」



奏「ふふ、どうしようかしら」



周子「えーとネギも買っていかなきゃ。そういえば奏ちゃん嫌いなものある?」



奏「私はないわよ。アーニャとか他の参加者は大丈夫なの?」



周子「それは確認済みだよー。あと豆腐は入れる派?」



奏「いいと思うけど」



周子「春菊とか好き?」



奏「苦手じゃないわよ」



周子「おっけー」



奏「そういえば今日、他に誰が来るの?」



周子「えーと、蘭子ちゃんとか飛鳥ちゃんとか小梅ちゃんとか」



奏「……なんか年齢層低くないかしら。本当に鍋でいいの?」



周子「大丈夫大丈夫」



奏「しかし周子がそのメンバーを集めるなんてなんか意外ね」



周子「だから言ったじゃん、普段ない組み合わせにしたかったって」



奏「なんか怪しいわね」



周子「いやいや裏なんてないですよ。裏表のないしゅーこちゃんで有名じゃない」



奏「ま、いいわ。せっかくだし、仲良く食べましょう」



周子「ほっ」

アナスタシア「たくさん買いましたね!」



周子「やっぱり三人で来てよかったね。二人だと大変だったわー」



奏「なんだか結局私がほとんど決めたような気がするんだけど……」



アナスタシア「ダー、それでいいんです。シューコは、カナデが好きな鍋がいいんですよね?」



周子「ちょ、アーニャちゃんそれ内緒だって」



奏「え?」



アナスタシア「アー……ニェット、なんでもないです。シューコはカナデと一緒に鍋が食べたかったんだけど、それは内緒だって言われてました」



周子「アーニャちゃん言ってる! 全部言ってる!」



奏「周子」



周子「は、はい」



奏「言いたいことは?」



周子「いやこれは」



奏「周子」



周子「うー……堪忍して」



アナスタシア「シューコはカナデと寮のみんなでご飯食べたいんですよ」



奏「そうなの?」



周子「だって奏ちゃん寮にいるのに普段あまりみんなでご飯とかしないからさー」



奏「そんなことないと思うけど……LiPPSでも何回も行ったじゃない」



周子「うーん、そういうのじゃなくてさ」



アナスタシア「アーニャが説明しますか?」



周子「いや、ちゃんとあたしから言うよ。その、奏ちゃん普段歳上の人とばっかりユニット組んだりしてるじゃない。LiPPSだってそうだし、他にも美波ちゃんとか楓さんとかさ」



奏「まあ、そうかもしれないわね」



周子「でもこの前CAERULAやった時にさ、リーダがあたしになったのもあって、奏ちゃんは特にまとめ役とかせず年下のありすちゃんと飛鳥ちゃんを見守る立場になったでしょ」



奏「ええ」



周子「なんか、その、奏ちゃんそういう時のリラックスしてる方が」



奏「方が?」



周子「や、やっぱりなんでも」



アナスタシア「そういうカナデの方が、シューコは好きなんですよね」



周子「ひゃあ」

奏「……ふーん、そう」



周子「あーもう、穴があったら入りたい……」



アナスタシア「だから、今日はシューコが全部決めて、お客様としてカナデを呼びたいって言ってたんですよ」



周子「アーニャちゃん暴露ありがとう……」



アナスタシア「ごめんなさい。でも、シューコ思ってること、ちゃんと言ったほうがいいと思います。誤魔化してばかりだと嫌われちゃいますよ?」



奏「これはアーニャの言うとおりね」



周子「そうだね、ごめん奏ちゃん騙してるみたいになって。アーニャちゃんもつき合わせてごめんね?」



アーニャ「ニェット、内緒にしておけなかったのはアーニャです」



奏「はいはい、謝罪はそこまで。それよりも急いで帰りましょう、みんな待ってるんでしょ」



周子「……来てくれる?」



奏「もちろん、だって私の好きな具材ばかりになっちゃったし。誰かさんにのせられてね」



周子「よかったー」



アーニャ「これで成功、ですね!」



周子「ところで、奏ちゃん」



奏「何?」



周子「さっきからあたしの目を見てくれないけどなんで?」



奏「そんなことないわよ」



周子「怒ってる?」



奏「怒ってないわ」



周子「じゃあなんでそんな早足なの」



奏「一人より二人はともかく、二人より三人なんでしょ。わざわざアーニャまで呼んで」



周子「ごめんってば……」



奏「それに」



周子「?」



奏「……私を誘いたかったんなら回りくどいことしなくていいわ」



周子「え」



奏「はいはい、足が遅い人は置いていくわよ。じゃあね」



周子「あー、奏ちゃん荷物少ないじゃんずるい!」



奏「お互い様でしょう」



アナスタシア「アー……、これ知ってます。似た者同士、ですね」



奏「違うわ」



周子「違うよ」



アナスタシア「……やっぱり仲悪いですか?」





(It Was Always You)



22:30│塩見周子 
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