2016年09月27日

ジュリア「新曲?」


--事務所--





P「ああ」





P「【流星群】をリリースしてからもうすぐ1年だし、そろそろジュリアの2つ目のソロ曲を出したいと思う」



??「そろそろソロ...ふふっ」



P「だれだいまの」





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ジュリア「ついに...ついにきたか...!」



P「ジュリアは元々ロックシンガー志望だしな、最近はシアターの皆とのアイドルっぽい曲ばっかりで物足りなかったんじゃないか?」



ジュリア「そんなことないよ。仲間とレッスンするの楽しいし、いい刺激になるしな」



ジュリア「でも...ソロか......へへ、なんか一段とやる気が出てきたよ」



P「うむうむ。いい笑顔です」イケボ



P「じゃあ前と同じく、曲作りはジュリアに一任する。併設のスタジオは自由に使ってくれていいからな」



P「それと、新曲はCD発売の前に今度のアリーナライブで初披露してもらおうと思ってるんだが、いけるか?」



ジュリア「アリーナで!?」



P「ああ、1ヶ月後だな」



ジュリア「まじかよ...」



ジュリア「もし間に合わなかったらどうするんだ?」



P「間に合うように協力するさ」



ジュリア「間に合わなかったら」



P「間に合うゾ」



ジュリア「はぁ......わかったよ。やってやろうじゃんか!」



P「よし、決まりだ!期待してるぞ!」





2ndシングルの話をもらってすぐ、曲作りに取り掛かった。

アイドル活動の合間を縫ってギターは練習していたし、幾度となく良い譜が浮かんでいたからすぐ軌道に乗ると思っていたんだ。

だけど...





〜♪



ジュリア「〜、〜〜♪」



ジュリア「〜......うーん、なんかパッとしないな」



ジュリア「〜〜、〜〜♪」



ジュリア「...これも違うな」





リフ、曲の核になる部分。どうしても自分の納得できるメロディーが出てこない。

譜面に書きためていた、ついこの間は良いと思った音でもなんか腑に落ちない。

作業を始めてから1週間が経っても進展はないままだった。





ジュリア「スランプか...?」





いやいや、まだ2曲目だ。スランプになるほど数出しているわけじゃないだろ。

軽く自分にツッコミを入れる。





ジュリア「ふう...ちょっと休憩するか」





ソファーに身を投げ出したところでドアが開く音がした。





P「おーっす。やってるかー?」ガチャ



ジュリア「飲み屋じゃないんだからさ...。おっすプロデューサー、今から休憩しようと思ってたんだ」



P「調子はどうだ? ほれ、コーヒー」



ジュリア「ありがと。調子は...あー...まあまあかな」



ジュリア「...いや、まあまあじゃないな...リフの時点でつまずいてる」





コーヒーを飲むプロデューサーの目が少し丸くなる。





P「そうなのか。ジュリアのことだからもう大方、方向性は見出してるのかと」



ジュリア「なかなかうまくいかないんだ。自分のソロってなるとどうしても力が入るし、妥協はしたくないしな」





ふふっとプロデューサーは笑ってまた一口。





P「ふむ、じゃあ気分転換してきたらどうだ?」



ジュリア「気分転換?」



P「ああ。1回曲作りの事は忘れてパーッと遊んだり、あとはそうだな...どこかにライブ見に行くのもいいんじゃないか?」



P「俺はあんまり詳しくないけどさ、良いメロディーってひょんなタイミングで頭に浮かぶもんなんだろ?」



ジュリア「そりゃあ、そういうときもあるけど...」



P「なんにせよ、急がず焦らず、だな。楽しみにしてるぞ」





残りのコーヒーをぐいっと飲み干してプロデューサーは事務所に戻っていった。





ジュリア「誰のせいで焦ってると思ってるんだよバカP」





小さく悪態をついて再びソファーに横になる。





ジュリア「ライブか...」





数日後、あたしは地元のライブハウスに来ていた。

自分がアイドルになる前、バンドを組んで演奏をしていた場所だ。





ジュリア(まだそんなに昔のことじゃないのに、なんか懐かしいな)





ギュイーン...ジャカジャカ...





しばらくの間に演者の入れ替えは進んでいて、見たことのないバンドの演奏が続く。

一通りのプログラムが終わると聞き覚えのある声がした。





「あっ、ジュリアじゃん」



ジュリア「ん?」





視線を向けると昔のバンドメンバーの2人がいた。





「久しぶりだな」



ジュリア「おおっ、久しぶり。2年半ぶりくらいか?」



「そんなもんだな。まあこっちからしたら雑誌とかで見かけてはいたけどさ」



ジュリア「ははっ、そりゃ..なんか恥ずかしいな..」



ジュリア「で、2人は最近どうなんだ? 今日は演奏してなかったよな?」



「あー...」



「...」



「俺らな...バンド...やめたんだよ」



ジュリア「えっ...やめた...?」



「ああ」



ジュリア「な、なんで...」



「うーん...まあほら、あれだよ」



「才能ないってわかったしな。これじゃ食っていけないって分かっちまったし」



「周りのやつらは進学したり就職したり現実を見てどんどん前に進み始めてるもんな」



「まあだから、俺らも夢ばかり見てないで、目覚まさなきゃなって思ったんだよ」



ジュリア「...」



ジュリア「ほんとに...」



ジュリア「ほんとにいいのかよ...いつかこのライブハウス飛び出すんだって」



ジュリア「武道館いっぱいにしてやるんだって言ってたじゃんか」



「......」



ジュリア「まだ夢見てたって...諦めるなん「...アイドルやってるやつに言われたくねーよ...」ボソッ



「お、おいっ...」



ジュリア「...っ」



「...」



「あ、あー......悪い。俺らバイトあるしもう行くわ。じゃあな...」



ジュリア「あ、ああ...」





翌日、スタジオで曲作りを再開したが、相も変わらずメロディーは浮かんでこない。





ジュリア「...」





譜面も真っ白のまま。あいつに言われた言葉が頭から離れず、心ここにあらずの状態だ。



あたしはロックシンガーになりたかった。

今でもそう思っているし、あのライブハウスでギターを鳴らしていた時と気持ちは変わってない。

事務所に所属しようと思ったのは少しでもその夢に近づくためだ。

...まあなんでかアイドル事務所に入ることになっちまったけどな。



【アイドル】 ちょっと目指してたものと違うけど、歌うことで人の心を揺さぶれるって思ってた。

いや実際そうだろう。シアターのライブを見に来てくれるファンは私達のパフォーマンスで笑顔になって、時には泣いたりもしてくれる。



でも...





『...アイドルやってるやつに言われたくねーよ...』





アイドルではあるけど、全力で魂こめてやってきたつもりだった。

それでも、あたしの歌はまだあいつらに届いていないってことだ。

そう思うとどうしようもなく悔しかった。





ジュリア「くそ...っ」



P「泣いてるのか?」



ジュリア「えっ...?」





突然声を掛けられて顔を上げると入口にプロデューサーが立っていた。





ジュリア「い、いたんなら声くらいかけろよ! あと泣いてないからなっ」ズビッ



P「うそこけ目真っ赤だぞ」



ジュリア「なっ......くぅ」



P「...何かあったか?」



ジュリア「...」



P「まさか...」



ジュリア「...」



P「アリーナまで時間がなくてストレスが最高潮に...!!」



ジュリア「ちがうから。...いや、ストレスはあるけど」



P「じゃあどうしたんだ?」



ジュリア「...」



ジュリア「......あのな」





一通り話終えるとプロデューサーはニッと笑った





P「俺は嬉しいぞ」



ジュリア「...は?」



P「悔しくて泣くってことは、それだけジュリアがアイドルを頑張ってる証拠だろ?」



P「手違いでウチに来たのに、そこまで本気になってくれたんだ。だから俺は嬉しい」



P「ジュリアはアイドルになったこと後悔してるか?」





ここに来てからのことを振り返ってみる。

レッスン、ステージ、ふ、フリフリの衣装、シアターのみんな、ファンのみんな、そして...





ジュリア「...後悔なんてしてないさ。前も言ったろ? アイドルって楽しいよ」



ジュリア「それに...」





『あたしの料理がウマいって?...バカP、それ本気で言ってるのか?マジなら、その...あ、ありがと、な!』



『今度さ、あたしにダンス教えてくれよな』





ジュリア「苦手な料理だって克服できたし、最近は翼からダンス教えてもらってるんだ」



ジュリア「そういうの、ここに来てなかったらきっとできないまま、やらないままだったと思う」



ジュリア「だから、ここに来てよかったって思ってる」





P「そうか。はは、安心したよ」



P「まあ、もうどっちみち後戻りはさせないけどな」



ジュリア「...? どういうことだよ」



P「俺はジュリアを手放す気はないからな」



ジュリア「はっ!?///」



P「絶対、うちの事務所で最高にパンクでロックなアイドルシンガーにしてみせる」



ジュリア「なんだそういうことか...」ボソッ



P「ん? なんか言ったか?」



ジュリア「な、なんでもない!」



P「そうか...?」





P「...なあジュリア。夢ってどうやって見るか知ってるか?」



ジュリア「は? どうやってって...レム睡眠とかノンレム睡眠のあれか?」



P「ちっちっちっ」ユビフリ



ジュリア「」イラッ





P「夢っていうのはな、目を開いて...うんと見開いてみるもんなんだよ」



P「ファンの喜ぶ顔、掛け声やサイリウム...」



P「そういうのって、アイドルの夢そのものだろ?」



P「そしてその先に、もっと大きな夢があると思うんだ」



P「目開いてなきゃ、もったいないぞ?」



ジュリア「...」



ジュリア「...ふふ。そうだなっ」



P「きっと届くさ。その子たちにも」



ジュリア「......ああ!」





プロデューサーと話した後はとても気持ちがすっきりしていた。



ひとりになったスタジオで、使い慣れたギターを握って何となくコードを押さえ、何となく弾いてみる。





〜♪



ジュリア「...!!」



ジュリア「...」



ジュリア「......できた。ふふっ。」





--アリーナライブ当日--





ジュリア「じゃあ行ってくる!」



P「ああ、楽しんでこい!」





ステージの中央に置かれたスタンドマイク。その前に立ってひとつ息をはく。



あたしのこれからの夢の始まりだ。





【プラリネ】









P「おつかれ、ジュリア。演奏の後の歓声...すごかったな」



ジュリア「...っ...ああ。すごかった...へへっ」グスッ



P「...」ポンッ



P「感動したよ。泣いてるファンもたくさんいたぞ」



ジュリア「あんたもっ...泣い..ってるじゃねーか」



P「これはほら、さっきメロンアイスと間違えてワサビを頬張っちまっただけだよくそー亜美真美の仕業だなあとで説教だあんにゃろ」ズビッ



ジュリア「...ふふっ」





ジュリア「なあプロデューサー」



P「ん?」



ジュリア「この事務所に入るときさ、実は迷ってたんだ」



ジュリア「手違いのままアイドルやるのか、それともバンドを続けるのか」



ジュリア「でも、あたしの選択は間違ってなかったよ」



ジュリア「...あんたが育てたアイドルの姿、立派なモンだろ?」ニコッ



P「...っ...ああ。最高だよ」グスッ







P「はは、今回は期待を大きく超えられたな...」



P「今度また今の曲、聴かせてくれよな」



ジュリア「ふふっ。ああ、何度でも歌うさ。あんたのおかげで、今のあたしがいるんだから」









08:30│ジュリア 
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