2014年05月23日

千早「水瀬さんの誕生日」


千早「おはようございます、水瀬さん」



伊織「おはよう千早……どうしたのその隈?」





千早「昨日、考え事をしてたせいであまり眠れてなくて」



伊織「珍しいじゃない。あんたが生活バランス崩すなんて」



千早「はぁ……」



伊織「悩み事があるなら相談に乗ってあげるわよ?」



千早「実は、今日の水瀬さんの誕生日プレゼントをどうしようかって悩みなんだけど」



伊織「えー」







千早「水瀬さんが喜んでくれそうなものをずっと考えてたんだけど、なかなか良い案が浮かばなくて」



伊織「その悩みを私に相談するのはおかしくない?」



千早「そ、そうかしら?私、こういうプレゼントをする機会、あまりなかったから……」



伊織「何で私が自分用のプレゼントを考えないといけないのよ」



千早「他のみんなにも相談したんだけど、あまり良い答えがもらえなくて」



伊織「そうなの?」



千早「ええ。自分が貰って嬉しいものとかをプレゼントしたら良いって言われたんだけど、私が好きなものって音楽くらいしかなかったから」



伊織「別にそれでいいじゃない。千早からのプレゼントなら、それこそ歌だって嬉しいわよ」



千早「春香や高槻さんをプレゼントするわけにはいかないし」



伊織「春香はともかく、やよいはあんたものじゃないから」



千早「えっ」







伊織「『えっ』じゃないわよ。勝手にやよいを自分のものにしない!」



千早「そう……」



伊織「あからさまにがっかりしないでよ。がっかりしてもやよいは渡さないけど」



千早「じゃあ今日は春香をプレゼントってことでいいかしら?」



伊織「即返品するわ」



千早「こうなったら私を……」



伊織「千早、あんた寝不足で少し馬鹿になってるんじゃない?」







千早「はぁ……春香は手作りのケーキを作ってるって言ってたし」



伊織「あら、春香のケーキならそれはそれで楽しみね」



千早「萩原さんは紅茶に挑戦するって言ってたし」



伊織「へぇ、今日は初めて雪歩の紅茶が飲めるってわけね」



千早「我那覇さんは熊のぬいぐるみを作ってるって話をしてたし、高槻さんは……」



伊織「ちょ、ちょっと千早!!」



千早「どうしたの水瀬さん。そんなに声を荒げて」



伊織「私へのプレゼント、ここで全部言う気!?」



千早「えっ」



伊織「『えっ』じゃないわよ……」







千早「はぁ……本当、どうしようかしら」



伊織「本当にどうしたらいいのかしらね」



千早「水瀬さんの好きなものって何があるの?」



伊織「……そうね、今すごくオレンジジュースが飲みたい気分よ」



千早「オレンジジュース?」



伊織「何その疑問!?まさかオレンジジュースを知らないってことないでしょ?」



千早「いえ、どうしてオレンジジュースなのかと思って」



伊織「私がいつもプロデューサーに用意させてるでしょ。覚えときなさいよ」



千早「水瀬さん、あまりプロデューサーをこき使うのはよくないと思うわ」



伊織「そ、それはそうだけど……でも言えば買ってきてくれるんだし、少しくらい良いじゃない」



千早「もう水瀬さんも大人なんだから、これくらいは自分の力でするべきだと思うわ」



伊織「わ、わかったわよ」







千早「では行きましょう」



伊織「どこに?」



千早「水瀬さんのオレンジジュースを買いに」



伊織「ちょっと待って。話の流れからして、ここは千早が買ってきてくれるんじゃないの?」



千早「水瀬さんが好きなオレンジジュースを売っているところがどこか知らないから……」



伊織「その辺の自販機にいくらでも売ってるわよ……」



千早「できれば案内してほしいんだけど」



伊織「ああもう。行けばいいんでしょ、行けば」







千早「あ、この自販機にオレンジジュースが。これにしましょう」



伊織「それじゃないわ」



千早「これ、オレンジジュースじゃないの?」



伊織「それは果汁が3%しか入ってないわ」



千早「3%もあれば十分だと思うけど……」



伊織「馬鹿言わないでよね。私は100%のものしか認めないわ」



千早「この前、果汁40%のジュースを飲んでた気がするんだけど……」



伊織「え゛っ!?」







千早「一昨日くらいに飲んでた、蓋付のジュースなんだけど」



伊織「おとといおととい……」



千早「『つぶたっぷりで美味しい』ってすごく満足そうに話してたわ」



伊織「う、うそ……あれ40%だったの?」



千早「プロデューサーの分まで飲んでたから、てっきり果汁はあんまり気にしないのかと思ってたわ」



伊織「一生の不覚……あの馬鹿が美味しそうに飲んでるせいよ」



千早「でも、美味しかったんでしょ?」



伊織「ま、まあね……」



千早「そういえば、プロデューサーも果汁を気にしてるような気がするわ。でも飲んでたのが40%ってことは気にしすぎかしら」



伊織「……あ。そういえば、プロデューサーに果汁100%ジュースを解禁するの、すっかり忘れてたわ」



千早「?」







伊織「私がいつも使ってるのはここよ」



千早「オレンジジュース、全部売り切れみたいだけど」



伊織「おかしいわね。まだ補充に来てないのかしら」



千早「水瀬さん、ここで毎日買ってるの?」



伊織「ええ。毎日朝昼晩、欠かさずね」



千早「これ、もしかしたら水瀬さんが全部買い占めてるってことなのかしら……」



伊織「はぁ……とりあえず、近くのスーパーに行きましょ」







千早「……」



伊織「……」



千早「水瀬さん」



伊織「なに?」



千早「私は流行とかそんなに詳しくはないんだけど、最近はオレンジジュースが流行ってるのかしら?」



伊織「そうね。風邪の季節とかなら分からないでもないけど、ここまでオレンジジュースが買い占められてるのは異常ね」



千早「一体どうしたのかしら……」



伊織「はぁ……私の誕生日プレゼントにするのはいいけど、他の人の迷惑になるのはやめてほしいわ」



千早「それって、私たちの誰かが買い占めたってこと?」



伊織「ええ」







千早「でも、もしかしたらこれは水瀬さんの誕生日を祝ったファンが買い占めた可能性もあるんじゃないかしら?」



伊織「あら、千早にしては良い事言うじゃない。確かにスーパーアイドル水瀬伊織ちゃんの誕生日ならそうなってもおかしくないわね」



千早「美希のときも、コンビニからおにぎりが無くなったって話も聞いたし」



伊織「それは単に昼食時を過ぎただけよ」



千早「高槻さんの誕生日……」



伊織「もやしはどこもすぐに売り切れる食材らしいわ」



千早「高槻さんは毎日お祝いされてるってことね」







伊織「はぁ……売り切れだし一旦戻りましょ」



千早「えっ」



伊織「何よ?」



千早「いえ、まだ私の……」



伊織「いいわよ。そこまで私のプレゼントを悩んでくれたってだけで嬉しいんだから」



千早「水瀬さん……」



伊織「おめでとうって心から言ってくれるのが、一番のプレゼント。ね、シャルル」



千早「……」



伊織「もし千早がどうしてもって言うなら……わ、私のために、一曲くらい歌ってよね」



千早「……水瀬さん、可愛い」



伊織「!?」







伊織「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……千早のあの目、やよいを見るときと同じ目だったわね」



伊織「あれに捕まったら……やばいわね」



伊織「と、とりあえず中に入って、誰かが来るまで……」がちゃ



パーン!



伊織「きゃあっ!?」



『伊織(ちゃん)お誕生日、おめでとう!!』



伊織「え、えっ?」







やよい「うっうー!大成功です!」



亜美「いおりーん、びっくりした?」



真美「もう完璧にびっくりしてたっしょ」



伊織「さ、さっきまで誰もいなかったのに……」



やよい「だからみんなで準備、頑張りました!」



亜美「いおりん走って帰ってくるんだもん」



真美「あの顔、とてもアイドルには見えませんでしたなぁ」







千早「ただいま戻りました」



あずさ「千早ちゃん、お疲れ様」



千早「よかった、間に合ったみたいですね」



春香「うん。千早ちゃんのおかげで何とか間に合ったよ〜」



伊織「間に合ったって……まさか千早、これの準備するための時間稼ぎしてたの?」



千早「ごめんなさい。水瀬さんがこんなにも早く来るなんて思ってなかったから」



律子「いつも通りの時間に来ると思ってたのに、今日に限って二時間も早く来るんだから」



伊織「べ、別にいいでしょ。い、いつから見てたのよ!」



小鳥「千早ちゃんが話しかけたときからずっとね」







真「時間稼ぎとは言え、自販機のオレンジジュースを買い占めるのも一苦労だったよ」



美希「スーパーのも大変だったの……」



伊織「あんた達ねぇ……」



雪歩「えへへ。でもこれも伊織ちゃんのプレゼントが増えたってことでよかったですぅ」



伊織「何本買ったのよ……」



真「一年分くらいあるんじゃないかな」



美希「でこちゃんよかったね。これでプロデューサーに買いに行かせなくても、いつでも飲めるの」







響「でも、まさか千早が自分たちのプレゼントを喋るとは思ってなかったんだぞ……」



千早「どう話を繋げたら良いかわからなくて」



貴音「大丈夫ですよ、響。十三匹のくまさんを見れば、誰しも驚いてくれるに違いありません」



響「うぎゃー。千早は何体かまで言ってないのに!」



貴音「はて、そうでしたか?」



伊織「ちゃ、ちゃんと驚いてあげるから……」







伊織「はぁ……それにしても、まさか千早に騙されるだなんて」



千早「ふふっ。いつ水瀬さんに見抜かれるか、内心凄くドキドキしてたわ」



伊織「まったくもう。じゃあプレゼントの件は全然悩んでないってことでいいの?」



千早「この隈も春香にメイクしてもらっただけだから。これ、私からのプレゼント」



伊織「開けてもいい?」



千早「ええ」



伊織「あ……可愛い」



千早「春香に相談したの。そのうさぎのぬいぐるみに一番似合うのはどれかって」



伊織「シャルルの?」



千早「私のセンスで水瀬さんにぴったりなのは難しいけど、そのぬいぐるみになら探せそうだと思ったから……」







伊織「……」



千早「だ、ダメだったかしら?」



伊織「私の誕生日なんだから、シャルルだっておめかししたいわよね」



千早「ほっ」



伊織「ほら。折角だから、千早が着けてよ」



千早「じゃあ……この辺りでいいかしら」



伊織「シャルルにぴったりの色ね。この子、きっと毎日これを着けてくると思うわ」



千早「よかった」



伊織「心のこもったプレゼントだもの。ずっとずっと大切にさせてもらうわね」



千早「ありがとう。最後になったけど……水瀬さん、お誕生日おめでとう」



伊織「にひひっ。ありがと、千早」



おわり



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