2016年11月21日

楓「貴方とお酒が飲みたいんです」

博識楓さんのご登場



短いです。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1477664459





事務所 朝



カタカタ……



モバP「……はぁ」



ちひろ「あら、どうしたんですか? 朝から元気ないですね」



モバP「ああ、いや、昨日○○テレビのプロデューサーと飲みに行ったんですけど……」



〜回想〜



都内某所 個室居酒屋



テレビP『おう、お疲れさんだね! いやー今日の幸子ちゃんいいキャラしてたねぇ!』



モバP『そう言っていただけるなら、熱湯風呂に放り投げられた幸子も満足でしょう』



テレビP『幸子ちゃん可愛いしリアクションも豊富でいじりがいあるよなぁ。ああいう子がやっぱこの業界長く生きるよ』



モバP『いやいや、幸子を活かす番組を企画するテレビPさんのご尽力のおかげです』

テレビP『ま、堅苦しいこと抜きにして今日は飲もうや。ここのビールは美味いからさ。兄ちゃん! ハートランド二つ!!』



モバP『あ、申し訳ありませんが僕はソフトドリンクで……』



テレビP『え、なにモバPくん禁酒中?』



モバP『いえ、そうではないんですが……僕お酒苦手でして……』

テレビP『え〜? 飲めない訳じゃあないでしょ? まぁ乾杯の一杯だけでも付き合ってくれよ!』



モバP『はぁ、それでしたら……』



テレビP『そうこなくちゃな!!』



モバP『ははは……』



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事務所



モバP「……で、乾杯の一杯がいつの間にか二杯三杯となってしまって……」



ちひろ「あー……大変でしたね。下戸なんですか?」



モバP「それが違いまして、全く酔わないんですよ。なので二日酔いとか辛いとかはないんですが……」



ちひろ「?」



モバP「僕、お酒が嫌いなんですよ。味とか香りが」

ちひろ「嫌いなんですか? 初耳です。事務所の飲み会でもそんな素振り見られなかったので……」



モバP「いつも一杯だけビールを頼んであとは飲んだフリしてます。なんであんな苦いの皆さん飲めるんですか……」



ちひろ「私も最初は苦手でしたけど、慣れてくればむしろ好きになりましたね」



モバP「そういうものだと思ってましたけど、やっぱり慣れません。日本酒とかのアルコール独特の鼻にツンと来る感じもきついです」

ちひろ「そうですねぇ、嫌いな人が無理に飲む必要はないと思いますが……でも、担当のアイドル的には……」チラッ



モバP「そうなんですよねー。やっぱり大人組はお酒が好きだか――ん?」チラッ











楓「……」ジーッ



モバP「……」

ちひろ「……」



楓「……」ジーッ



モバP「……楓さん、ソファーの背もたれ越しにこちらを見てきてどうしましたか」



楓「Pさん、お酒嫌いなんですか」



モバP「き、嫌いというか、苦手なんです。苦いし香りは強いしで、あんまり得意ではないです……」



楓「……そうですか。苦いし香りが強すぎて苦手、と」ガタッ



ツカツカツカ



モバP「え、突然立ち上がってなんですか、あの、え、こっち来られても、その」



ガシッ



モバP「な、なんで手を掴んで、え?」



楓「Pさん」



モバP「はい?」

















楓「今夜、飲みに行きましょう」



モバP「人の話聞いてましたか?」

楓「約束は約束です。はい指切りげんまーん」



モバP「約束って、いや行っても僕は飲めませんけど」



楓「まぁまぁ」



モバP「それに仕事があるのでそんな余裕あるかどうか」



楓「まぁまぁ」



モバP「終わってからも明日の仕事の確認とかもしなきゃならなくて」



楓「まぁ、まぁ」



モバP「……では、今日の夜の撮影終わりにスタジオから直接向かいましょうか」



楓「はい♪」ニコニコ



トテトテトテ……



ちひろ「……なんだったんでしょうか」



モバP「わかりませんが、僕の仕事は今日中に終わらせないといけなくなりました」



ちひろ「それより、大丈夫ですか? また苦手なお酒飲むことになるんじゃ……」



モバP「まぁそこはなんとかします……」カタカタ



楓「……ふんふん♪」

都内スタジオ 夜





ディレクター「……はいオッケーです! お疲れさまでした!!」



ザワザワ……



モバP「お疲れ様です、楓さん」



楓「ありがとうございます。大丈夫でしたか?」



モバP「一発OK出てたので文句なしです」



楓「そうですか、嬉しいです」

モバP「……それで、この後は、やっぱり」



楓「もちろんです。お店も決めてあります」



モバP「わかりました。でもお酒は飲まないですからね!」



楓「ふふん」



モバP「えっ、ちょっとなんで笑ってるんですか」



楓「では、さっそく準備して行きましょう。さぁさぁ」グイグイ



モバP「わ、わかりましたから、待ってますね」

街中





楓「……初めてですね、2人で飲みに行くのは」



モバP「そうですね、もう担当して3年目になるのに」



楓「最近はあんまり私に構ってくれませんし」



モバP「構うって、時間あるときは現場出てるじゃないですか」



楓「むぅ」



楓「そうじゃなくて、こうやって2人で仲を深めるのもたまにはあっても良いじゃないですかってことです」

モバP「善処はしますけど……お酒ばっかりは、なんとも」



楓「では、そんなPさんの考えを変えちゃうお酒をご紹介しましょう」



モバP「いやー、難しいと思いますよ」



楓「かえでマジックお披露目です」



モバP「かえでマジック」



楓「……あ、着きましたね。そこの路地にあります」

路地裏 Bar「Nation Blue」





カランカラン



バーテンダー「いらっしゃいませ……おや、お久しぶりです高垣様」



楓「また来ちゃいました」



モバP「うわぁ……雰囲気が、お洒落が四方八方から襲いかかってくる」ガチガチ



楓「堅苦しくならないで大丈夫ですよ。ここはのんびりしても気苦しくないですから。さぁ、座りましょう」ポンポン



モバP「はぁ……失礼します」スッ

楓「じゃあPさんのも私が選んで良いですよね」



モバP「……できればノンアルコールがいいんですが」



楓「……」フンス



モバP「……おまかせします」



楓「喜んで」



楓「では、Pさんにモスコミュールと私にホワイトレディを」



バーテンダー「かしこまりました」

モバP「モスコミュール、ですか。居酒屋でも見たことがある気がしますけど、どんなお酒の種類なのかもさっぱり」



楓「カクテルですね。Pさんはお酒のクセが苦手だと思うので、軽いものにしてみました」



モバP「軽くてもお酒はお酒ですよね。どうなんでしょう……」



楓「楽しみにして待ちましょう。ほら、作ってる様子みるのも面白いですよ?」

カシャカシャカシャカシャ…



モバP「ちゃんとシェイカー振ってるところ見たのは初めてです。格好いいですね」



楓「背筋がピンとしてるとなおさらです」



スッ



バーテンダー「お待たせしました。ホワイトレディでございます」



モバP「透き通っていますね」



楓「少し白みがかかって幻想的ですよね。見てるだけで素敵です」

サッサッ



モバP「おー、氷たくさん入ってるのにかき混ぜる時音がしないですね」



楓「音を鳴らさず、何回もかき回さないのが美味しくなるコツらしいですよ」



モバP「物知りですね」



楓「全部バーテンダーさんの受け売りです。さ、できあがるみたいですよ」



バーテンダー「お待たせしました。モスコミュールでございます」スッ

モバP「……これがモスコミュールですか。グラスじゃなくてこれは、銅のマグカップですか?」



楓「はい、このお店は本格的なものですね。早速乾杯しましょう」



モバP「あ、はい。では乾杯」カツン



楓「乾杯」カツン



モバP「……」コクッ







モバP「……!」

モバP「楓さん、これ美味しいです!」



楓「ふふ、そうですか」



モバP「炭酸とライムの爽やかな香りと、ピリッとした生姜の味が抜群です。それにお酒の強い香りや癖が全然ないですね」



楓「ええ、ベースのウォッカがクセのないお酒なので、割ると飲みやすいんですよ」



モバP「それに甘すぎないのですいすい飲めますね」



楓「でも気を付けてくださいね。ぐいぐい飲んじゃうとラバに蹴られちゃいますから」

モバP「え? どういうことですか?



楓「ミュールというのは『ラバ』という意味なんです。ラバは強烈な後ろ蹴りをする習性があるそうで」



楓「このお酒はウォッカが強くキックする……効くお酒なので、『モスクワのラバ』という訳の名前が付けられたんですよ」



モバP「へー、そうなんですね。じゃあ、この銅のマグカップにも何か理由があるんですか?」



楓「いいところに気づきましたね。今はだいたいのお店でコリンズグラスというものに入れて出していますが、本格的なお店はこのカップを使っています」

楓「これはこのカクテルの生い立ちに由来します。昔々、とあるアメリカの会社がスミノフというウォッカの在庫を抱えて困っていました」



未央『うーむ、このままじゃあ売れないままだなぁ。どうしようかむむむ』



モバP「え、未央が社員役ですか」



楓「そして時同じくして、ハリウッドにあるバーのバーテンダーさんも、カクテル用に仕入れたジンジャービアという飲み物の在庫が残ってしまい悩んでいました」



凛『はぁ……こんなに余っちゃどうしようもないなぁ。捨てるのももったいないし……』



モバP「凛はバーテンダー似合いそうですね」

楓「そこで両者は一計を案じました」



未央『やっほー凛クン元気かね? うちのウォッカはいらんかね?』



凛『なにその呼び方……今私もジンジャービア余らせちゃって困ってるんだけど……』



未央『えー買ってよお願いしぶりん! このままじゃもったいないし!』



凛『……そうだ、いいこと思いついた』

凛『……そうだ、いいこと思いついた』



未央『二人で全部飲んじゃう?』



凛『なんでよ……このウォッカとジンジャービア使ってカクテル作ろうよ』



未央『おお、いいねナイスアイデア! 頑張って流行らせればもっと売れるかも!!』



楓「二人は試行錯誤の末、モスコミュールを作り出しました」

凛『どう……かな』



未央『コクコク……うん! これは美味しい!! しぶりんは完璧だね〜』



凛『そう、よかった』



未央『でもさ、私たちってお酒飲んでいいのかな? だってまだ未成ね――』



凛『しっ。昔話だからいいの』



パタパタパタ……

楓「そこへ二人の共通の女友達がやってきました」



卯月『凛ちゃん未央ちゃん助けてください!!』



未央『お、しまむーどったの?』



凛『そんなに慌てて……』



卯月『うう……私が頑張って作ったこの銅製のマグカップ、全然売れなくて……このままじゃ……』ウルッ



未央『だ、大丈夫大丈夫! とってもよくできてるし!! ね、しぶりん!!』



凛『うん、作りもしっかりしてるし長持ちしそうだね』

卯月『……じゃあなんで売れないんでしょう……?』











未央・凛『『……』』

卯月『……頑張りが足りないんですね。もっと頑張らなきゃいけないですよねそうですよね……』ズウウン…



未央『あーあーあー!! 違う違うしまむー頑張ってる今のままの君が好き!! きっと使った人は皆美味しく……』



凛『そ、そうだよ。ほら、冷たい飲み物を入れるにはぴった……』







未央・凛『『これだ!!』』



卯月『え? なんですか?』ポカーン

楓「こうして三人はその女友達のマグカップにカクテルを入れて提供することを思いつき、大々的に宣伝して提供したところ大反響を呼び、今日まで愛されるカクテルとなりました。ちゃんちゃん」



卯月『三人で作ったカクテルが皆に愛されて本当に嬉しいですね!』ニパー



未央・凛『『(かわいい)』』



モバP「……へー、そんな歴史があるんですね」



楓「お酒の歴史も知ると面白いものですよ」



モバP「いやぁ、本当ですね。こんなにお酒が楽しいものだとは思ってませんでした」



楓「ふふ、そう言っていただけると嬉しいですね」



楓「無理して嫌いなお酒を飲んだり、気取ったり堅苦しくなる必要もないんです。甘いのも苦いのも好みは人それぞれですから、いろんなお酒を気軽に飲んでみて好きなものを見つけていけばいいんです」



楓「そうしてお酒に興味を持ってくれたり、歴史や味を一緒に楽しめる仲間が増えるのがとても嬉しいです。それに楽しみが増えれば生活がちょっぴり華やかになる気がしませんか?」

楓「せっかくお互い大人なんですから、大人の特権のお酒をもっと好きになりましょう……ね?」ニコッ



モバP「……そうですね。楓さん、他にお勧めはありますか?」



楓「そうですね、モスコミュールが好きならカミカゼなんかも……」





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事務所 朝





ちひろ「あれ、Pさん今日はお元気ですね」



モバP「ええ、昨日は美味しいお酒が飲めましたから」



ちひろ「……お酒だけですか?」



モバP「え? そ、そうですけど……」



ちひろ「本当ですか……?」ジーッ



モバP「曇りなき眼で見つめられましても……プロデューサーとその担当アイドルとの飲みですからね、あくまで」

ちひろ「それならいいんですけど……。お酒への考え変わりました?」



モバP「そりゃあもう! 自分の知らない世界の入り口を開けたみたいで面白いです」



モバP「いろんなお酒を知りたくなりました。今日にでも本屋でお酒に関する本を買ってみようかと」



ちひろ「楽しそうですね。じゃあ、えっと、その……」モジモジ



モバP「? なんですか?」



ちひろ「よかったら、今度は私の、オススメのお酒を一緒にーー」

楓「おはようございます」



モバP「あ、おはようございます。昨日はありがとうございました」



ちひろ「あぅ……」



楓「いえ、こちらこそありがとうございました。昨日は熱い夜でしたね」ウットリ











モバP「え」

ちひろ「え」

楓「あれからたくさん(注文)してもらえて……私もつい深く(話)しちゃって。(良い感じに酔って)気持ちよかったですね」ニコ



モバP「い、いや、あの、楓さん?」



ちひろ「Pさん、ちょっと二人っきりでお話ししたいことができました」ニコニコ



モバP「ちがっ、違います全然そんなことなかったです!!」

楓「ひ、酷いです……昨日(お酒に興味が出たと)言ってくれた言葉は冗談だったんですね……」グスン



モバP「いや、それも違うんですけど。え、ちひろさん襟首掴んで、ひ、引っ張らないでください誤解なんです!!」ズルズル



ちひろ「会議室でじっくり言い分は聞きますから、ね?」ズルズル



楓「あ、Pさん。お話終わりましたらまたお酒飲みましょうね」



モバP「なんでですか昨日行ったでしょう!?」ズルズル



楓「今日はもっとPさんがお好きなお酒をオススメしたいんです」



モバP「今日じゃなくても良いですよね!? だって多分これ終わる頃にはお酒飲める体調じゃってうわぁああ!!」ズルズル



ガチャンバタン

ゴメンナサイチガウンデスゴカイナンデスゥゥ……

















楓「……ちょっと意地悪なことしましたね。反省します」



楓「でも、やっぱり今日も行きましょうね。昨日はやっと2人で素敵なお酒を飲めたんですから。ずっと行きたいと思ってたんですよ?」



楓「だから今日もーー」

楓「貴方とお酒が飲みたいんです」

おしまい







21:30│高垣楓 
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