2016年12月22日

渋谷凛「誰も知らない写真集」


私の家には一冊の写真集がある。



いつだったか、撮り溜めた写真を写真集として出してみようという話になって作ったものだ。





なんて言ったらいいか分かんないけど……そうだなぁ、オフショット、ってのに近いのかもしれない。



とにかく、うちにはそういう写真集があるんだ。





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1481723458





* * *







ん?



どうしてまた急にそんな写真集の話なんかし始めたのか、って?



んー。なんでだろ。



私もどうしてかよく分からないんだよね。



強いて言うなら、掃除してたら本棚で見つけたから。



それだけ。



表紙は、事務所のソファにでーんと座っている私。



プレッツェルをかじりながら携帯電話の画面を無愛想に眺めている私。



ほんと、いつ撮ったんだか。



ああ、うん。



こんなの恥ずかしいからやめてー、って抗議したのを覚えてる。



あえなく却下されちゃったから、今ここにその写真集があるんだけど。





別に、怒ってないからいいよ。



こういうの、今に始まったことじゃないし。



せっかくだし、ちょっと見ようか、って。



はぁ、もう。



一度言い出したらほんと聞かないよね。



ふふっ、どこの誰に似たんだろ。





あ、これ。私の初めての衣装。



そうそう、ブラックゴシックドレス。



懐かしいね。



……まだ着れる?



うーん、どうかな。



だって、私が高校生の時の衣装だよ?



はいはい。そういうお世辞はいいから。





次は、事務所のソファに座ってる私なんだけど……これ、いつの写真?



あー。



CDデビューのときか。



イヤホンして、歌詞カード読みながらにやにやしてるの、丸わかりだ。



ちょっと、照れる、かも。



今だから言えるけど、にやにやしちゃうくらい嬉しかったんだ。



初めてもらった私の、私だけの曲だし、ね。





こんな感じで、ぱらぱらめくるだけでも、記憶が蘇ってくるね。



え。いや、もうおしまいなのか、って言われても……。



自分の写真集見るのって、案外恥ずかしいんだからね?



だから、おしまい。





まぁ、まだ時間はあるけど……。



あ。



いいこと思いついた。



悪巧みじゃないよ。



ほんとだって。



一つだけ、気になってたことがあるんだ。



さっきの写真集が出版されなかったほんとの理由、教えてよ。



出版社との折り合いがつかなくて頓挫した、ってのはもう聞いたよ。



でも、それ嘘でしょ?





ふふっ、気が付かないとでも思ったの?



気付くよ。



私、そこまで鈍くないからね。



はい、そこ。



逃げようとしない。



ほら、観念してほんとの理由、言ってよ。



怒らないからさ。





出版社との都合とかじゃないのはもう知ってるって。



それで、ほんとの理由は?



……あー、うん。



そっか。



ぷっ……あはは、いや、真剣な表情でそんなこと言うから笑えてきちゃった。



ごめん、ってば。



でも、『他の人に見せるのがもったいなくなってきちゃったから』なんて理由が出てくるとは思わなかったよ。





わかってる。誰にも言わないから安心してよ。



というか言えないから。こんなこと。



ほら、そんなこんなでもういい時間だよ?



私、洗濯物やっちゃうからさ。



お店開けてきて。



“元”プロデューサー。













……ふふっ。



ほんとに、ばかみたい。







おわり



21:30│渋谷凛 
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