2016年12月26日

橘ありす「雪ですね」 佐城雪美「呼んだ……?」

ありす「いえ、雪美さんではなく。雪が降っているので、眺めていました」



雪美「……そう」



ありす「……一緒に見ますか?」





雪美「………」コクリ



ありす「今日は寒いですね。まだ11月なのに」



雪美「………」コクコクッ



ありす「さっきよりもうなずきが大きいですね」



雪美「雪……はやい……」



ありす「はい。東京で11月中に初雪が降るのは、54年ぶりだそうです」



雪美「………」



雪美「………1962」



ありす「正解です」



雪美「ぶい……」



ありす「ふふっ、よくできました。雪美さんは、算数が得意みたいですね。私と同じです」



雪美「ありすも……得意……?」



ありす「はい。まだ小学生ですけど、単純な暗算だけなら年上の人達にも負けないかも」



雪美「自信満々……」



ありす「勉強には自信がありますから」









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ガチャリ



泉「ただいま……あら、ふたりでお話し中?」



雪美「……レディー、ゴー」



ありす「待ってください。さすがに相手が悪いです。IQ150ですよ」



泉「?」



雪美「………」ジーー



ありす「わわ、そんなジト目で見つめられると、私……」



泉「どうかしたの」



ありす「こ、こうなったらやってやろうじゃないですかっ! 勝負です、泉さん!」



泉「は、はい?」







10分後





凛「なるほど。それでこてんぱんにされたありすが雪みたいに真っ白になってると」



ありす「」



雪美「……泉の勝ち……」



泉「さすがに負けられないわ」



凛「手加減なし?」



泉「そんなことしたら、ありすちゃんにも失礼ですよ」



凛「それもそうか」



ありす「うう……ノートに計算……100マス計算しないと……」プルプル



凛「……トラウマレベルになってない?」



泉「一応、たまに勉強教えてあげてますし。先生としての威厳は保たないと」



雪美「厳しい……」



凛「どういう勝負したのかすごく気になってきた」



泉「あと、ありすちゃんが震えているのは単純に寒いだけだと思います」



凛「今日、本当に寒いね。まだ雪降ってるし」



ありす「雪……というよりは、あられみたいな感じになってきましたね。夕方ごろにはやむと言っていたので、そろそろじゃないでしょうか」



泉「ありすちゃん。寒いなら、私の上着貸そうか? 結構保温性高いよ」



ありす「いえ、大丈夫です。このくらい……」ブルッ



凛「素直に借りておいたら? 風邪ひいたら大変でしょ」



泉「そうそう」



ありす「……ありがとうございます」



泉「雪美ちゃんも、寒かったら……あれ? いない?」



凛「そういえば、さっきから……」





雪美「……ただいま」



凛「おかえり。どこ行ってたの?」



雪美「これ……食べる……」



泉「これって」



ありす「雪見大福ですね」



雪美「雪美……」



泉「字は違うけれど、読み方は確かに同じね」



ありす「でも、こんな寒い日にアイスというのも……」



凛「寒い日にアイスって、贅沢してるみたいでなんかいいよね」



泉「わかります」



ありす「私以外乗り気でした……」







泉「でも、この部屋で食べると身体を冷やしちゃうかも……」



凛「暖房、効き悪くない?」



ありす「小さな事務所ですし、エアコンにかける費用は後回しにされているのかもしれないです」



雪美「……食べられない?」シュン



凛「んー……温かいものでも飲みながらなら、大丈夫じゃないかな」



凛「といっても、すぐに用意できるのはコーヒーくらいしかないけど」



ありす「コーヒー……」



凛「嫌?」



ありす「いえ、大丈夫です。ミルクと砂糖があれば、私は負けません」



泉「なにと勝負してるの?」







凛「はい、どうぞ」コト



泉「ありがとうございます」



雪美「……ありがとう」



ありす「ありがとうございます。……手際、いいんですね」



凛「そうかな。まあ、家でもお父さんに淹れてあげたりしてるし。それに」





ガチャリ





P「ただいまー。うう、寒い寒いっ」



凛「おかえり。コーヒーいる?」



P「おお、サンキュー。頼む! 外回りしてると身体が冷えて冷えて」



凛「手袋もつけてないんだから当たり前だよ。なんで防寒対策してないの」



P「いやあ、今朝探したんだけど、手袋見つからなくて」



凛「部屋、掃除してるの?」



P「それなりには」



凛「ふーん」



P「なんだその反応は。信じてくれよ」



凛「しょうがないから、信じてあげる」フフ







雪美「………」



泉「なるほど。お父さんだけじゃなくて、プロデューサーにも淹れてあげてるってことね」



ありす「……なんだか、Pさんに対する凛さんを見ていると。まるで――」







凛「ほら、上着貸して。掛けておくから」



P「ああ、ありがとう」



凛「風邪ひくといけないし、はやくコーヒー飲んで温まりなよ」



P「はーい」ハハ







雪美「お母さん……」



ありす「それです」



泉「右に同じ」



凛「お母さんって年ではないんだけど」



泉「あ、聞こえてました?」



凛「もう」



P「そうだ。コーヒー飲んだらこたつ出すか」



ありす「え。こたつあるんですか、この事務所」



P「ああ。暖房の効きは悪いがこたつはある。冷房の効きは悪いが扇風機はある」



雪美「……予算」



P「ひとりだとちょっと運びづらいし、誰か手伝ってくれるか」



凛「じゃあ私が」



泉「私が行きます。凛さんは、さっきコーヒー淹れてくれたので」



凛「そう? じゃあお願い」



泉「はい」







そして





凛「こたつに入って雪見大福……悪くないかな」ヌクヌク



ありす「確かに、これは贅沢でいいかもしれません」



雪美「………ふわぁ……」



泉「雪美ちゃん、眠い?」



雪美「………」ウトウト



泉「いいよ、お昼寝しても。暖かいと眠くなっちゃうよね」



雪美「うん………」ポフ



泉「………」



凛「泉のひざを枕にしたね」



泉「ちょっと計算外でした」



ありす「泉さんのひざ枕、寝心地がいいのかもしれません」



泉「そうなの? 自分じゃ、こういうことはわからないから」



凛「………」ツンツン



泉「ひゃっ」



凛「確かに、触り心地はいいかも……」



泉「さ、触るなら一言声をかけてからに」



ありす「失礼します」サワサワ



泉「ひゃんっ! ど、同時もできればやめてほしいんだけどっ」



P「俺も触っていいか?」



泉「ダメ。すけべ」



P「厳しい」



ありす「至極当然の反応だと思いますけど」



凛「うん」



P「最近、アイドルが俺に対して冷たい気がする……」



泉「愛されてる証拠だよ。たぶん」フフ



雪美「すぅ……すぅ……」







数時間後





P「そろそろみんな帰るか?」



凛「あ、私もうちょっと残るよ。学校の宿題だけ終わらせるから」



P「そうか。雪美もまだ寝てるし、俺も付き合うよ」



ありす「私は、宿題家に置いてきているので……」



泉「じゃあ、途中まで一緒に帰ろうか」



ありす「はい」



P「二人ともお疲れ。また明日」



ありす「お疲れ様です」



泉「また明日」







泉「雪、もうやんじゃってるね」



ありす「予報通りでしたね」



泉「積もって……は、ないか。ちょっと残念」



ありす「雪だるまでも作る気だったんですか」



泉「うん。さくらや亜子も乗ってくれるだろうし」



泉「あ、でもあの二人がいると雪合戦になりそう」フフッ



ありす「……確かに、そうですね。ふふ」



泉「あ、そうだ。せっかくこたつも出たんだし、明日はみかん持ってくるね」



ありす「みかん、ですか」



泉「この前実家から送られてきたの。ひとりじゃ食べきれないし、事務所のみんなにおすそわけ」



ありす「そういえば、静岡出身でしたっけ。みかん、有名ですよね」



泉「まあ、そうだね」



泉「やっぱり、こたつと言えばみかんだし。あとは猫がいればコンプリートだから、雪美ちゃんにペロを連れてきてくれるようにお願いしようかな」



泉「はーっ……明日もたぶん、今日みたいに息が白いくらいの気温だろうし」ニコニコ



ありす「………」



泉「どうかした?」



ありす「泉さんって……意外と、子供っぽいですよね」



泉「え、そう?」



ありす「なんとなく、そう思いました。雪や寒さで元気になっていたので」



泉「……まあ、確かにそうかも。そもそも、年齢的にもまだまだ子供だし」



ありす「そうですね」



ありす(でも、きっと。私は、そんな泉さんよりも子供なんですよね)



泉「ありすちゃん?」



ありす「いえ、なんでもありません」



ありす「……まずは、あなたに追いついてみせますから」



泉「?」



ありす「ふふっ。また、勉強教えてください」







おしまい





22:30│橘ありす 
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