2017年01月10日

P「おい佐藤、一発ヤラせろよ」佐藤心「ふざけんな☆」

次レスより開始



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●01 【衝撃の出会い】









???「はぁーい♪ アナタのはぁとをシュガシュガスウィート☆

    あはん♪ バッチリ決まっちゃった☆ どぉどぉ?」

監督「……カットカットカットー!」







P「時間があいたから様子を見に来てみたが、なんだアレ……」

みーちゃん「ちょっと! ありえないんだけどプロデューサー!」

P「ただのドラマ撮影なのに、妙にスタッフが騒々しいな。どうしたんだ」

みーちゃん「なんかね、妙ちきりんなカッコしたエキストラのせいで、

      撮影が止まっちゃってるのよ、ホラあっち……」







監督「そこの変な服の子!」

???「ん? はぁとのコト? やぁん、カントク直々に演技指導ー!?

    よろしくお願いしまぁす☆」

監督「そうじゃなくて! エキストラのくせに目立ちすぎ!」

???「え、目立ってるー!? 知ってたー☆ でもごめんなさーい、マジで許してー?

    ほんとここに居させてー☆ マジでマジでマージーでー☆」







みーちゃん「ナニもたついてるの、あのカントク! 主演の私を待たせるとか何なの!?」

P「……ふーん。ちょっと待ってろ」







P「お困りのようですね」

監督「あっ!? ぷ、プロデューサー殿、これは、あのっ、その、すぐつまみ出しますのでっ」

P「いいえ、おかまいなく――そこの、やたら目立つツインテの人? 今日はこれを土産に帰ってください」

???「……名刺?」







みーちゃん「プロデューサー、あのイタいヒトに名刺渡してきたの!? シュミ悪すぎない?」

P「お前だって『お手手ふりふり、ぴーぽーぱー☆』(※)じゃねぇか、適当すぎだろ」

みーちゃん「プロデューサーがやらせてるんでしょうが」

P「だってウケちゃったんだから、しょうがないだろ……」



※参考画像

http://i.imgur.com/b444Z9D.jpg







P(これが、のちに業界の一部を震撼させるアイドル――佐藤心と、俺の出会いだった)

P(ただ、あの時あの場にいた人間は全員、彼女が“そう”なるとは毛ほども予感もしなかっただろう)







???(……芸能プロダクション――ココ、はぁとでも知ってる名前、というか大手――しかも名字が――)







P(もしかすると、彼女だけは予感していたかも。まぁ、俺の知ったこっちゃないが)









●02 【ビール注ぎの技術が生きた瞬間】



P(数日後、あの“妙ちきりんなカッコしたエキストラ”と俺は、

  なぜか事務所近くの居酒屋でサシ飲みしていた)







心「なんでだよー! 普通あの場面で名刺を渡されたら採用だと思うだろー!?」

P「んなワケない。そもそも名刺持ってるからってアポなしで押しかける奴がいるか」







P(エキストラは佐藤心――しゅがーはぁと、と名乗って、うちの事務所の前で騒いで、

  通行人から奇異の目で見られていた。警備員がつまみ出そうとしたところ、

  俺の名刺を持っていたので、俺のところにお鉢が回ってきたのだ)







P「というか、よくうちの事務所前で騒ぐ勇気があったな。けっこうデカいビルだったろ。

  一応うちのプロダクションって、765、961や西園寺の向こうを張る大手なんだが。

  門前で騒いでるって聞いたから、最初はヤクザの回し者かと思った」

心「ヤクザ扱いとか殴るぞ☆ はぁとは後が無いからなりふり構ってられないんだよ☆」







P(最初は適当にあしらおうと思ったのだが、心の異様に高いテンションに丸め込まれて、

  俺は早めに上がった仕事のあと、心と近くの安居酒屋で卓を囲んでいた)



P「……まぁ、酒が飲める年でデビューもデキてないってのは、やばいな」

心「どきんっ☆ ぷ、プロデューサー、そんなコトは気にせず――ささ、まずはビールを一献……」

P「お、注ぎ方が手慣れて……もしかして、佐藤さんはそういうご職業ですか」

心「気にするな気にするな☆」







P(俺は心に酒を勧められ、うまうまと酔わされ、どうせ二度と会うことはないと思ってた油断もあって、

  心相手に愚痴の独演会を開いてしまった)







P「名刺渡しちまったから、お察しかも知れないが……俺の妹、“あの”アイドル兼プロデューサーでなぁ。

  俺もプロデューサーだが、あいつのほうが稼ぎいいから、同じ身内の事務所にいる俺は肩身が狭くて」

心「あー……出来のいい年下の兄弟って、プレッシャーだよねぇ……」



P「最初は、自分の実力を知らしめてやろうと思って、あえてコネを使わなかったんだが……まぁ、ダメだな」

心「やっぱり、芸能界はコネがなきゃダメなの?」



P「仕事を発注する側の立場になれば分かる。公募オーデとか面倒だろうが」

心「気心の知れた人がいて、そっちに頼んで済むなら、担当としては楽で無難だよねぇ……」







心「じゃあ、はぁとにもアイドルチャーンスあるよねっ☆ はぁと、裏工作でもなんでもするぞ☆」

P「なんでも――じゃあ、俺と寝てみるか? 一発ヤラせろよ」







P(翌日――)







みーちゃん「うわっプロデューサー、そのケガはヤクザにでも絡まれたの? さすがは御曹司だね」

モバP「うるせぇ、見るんじゃねぇよ」

みーちゃん「顔を包帯で隠しても不細工は不細工だよ」







●03 【純情しゅがーはぁと】



P(それから数日後、俺はドラマ監督からエキストラ派遣会社のツテを使い、心の電話番号を手に入れた)







心『はいもしもし――』

P『おい佐藤、聞こえてるか? お前のしゅがーはぁとあたっくを食らったプロデューサーだぞ』

心『げっ――も、もしかして治療費の請求……あわわ、今月はキツイけど、来月には耳を揃えて出すからっ』



P『いや……俺が直々にオーデの書類を送っておいたから、来い。来たら、通してやる』

心『しゅがーはぁとあたっくが効いた!? ……はっ、はぁとはダマされないぞ☆

  この間ぶん殴られたのを根に持って、はぁとを甘い言葉で騙して風呂に沈めるつもりだなっ』







P『そう思うんなら、あの名刺は捨てておけ。もったいないなら誰かに売り飛ばせ。お小遣いぐらいにはなる』

心『名刺が売れるとか、白洲次郎気取りか☆』

P『へぇ、意外と物知りだな』

心『はぁと、生まれは信州だから』







P(なんで俺は、自分をぶん殴った痛いイタい女を、わざわざ連絡先調べてまでスカウトしようと思ったんだろう)







P『心、お前が何年アイドル目指してくすぶってるか俺は知らんが、くすぶってる理由は分かったぞ』

心『人に向かってくすぶってるってなんだよっ、大手プロのボンボンは言うことが辛辣だな☆』



P『お前は融通が利かない。枕を断るにしても、カドの立たないやり方があったろ』

心『……だって、はぁとは……あんなコト、言われたら……』

P『まぁ、それはいい』







P(俺だってプロデューサーの端くれ。

  女のスタイルと立ち居振る舞いと話し方を見れば、アイドルの素質の程度はだいたい分かる。

  心は“アリ”だ。少なくとも、オーバーエイジ枠で一口博打うつコマと思えば十分だ)







P『来るのか、来ないのか。履歴書は持参でいい。当日までに決めろ』

心『プロデューサー……』







P(しかし、俺が心に執着したのは、それ以上の理由があった。

  アイドルとして、残り時間が少なくなっても自分の素質を信じて努力を続け、

  ギラギラするほどなりふり構わず……俺が諦めた正攻法で、芸能界に殴り込んで欲しかったんだ)







心『分かった……はぁと、プロデューサーの代わりに、芸能界で限界まで暴れてやるから☆』

P『当日を楽しみにしてるぞ』







P(たぶん、心は俺の願望を見抜いたから、ここで頷いたんだろう……酒飲んだ時、あれだけ愚痴ったし。

  ……さすがは年の功だ。小娘じゃ、こうはいかない)



心『なんか失礼なコト考えてないだろうな☆』

P『滅相もございませんよ、佐藤さん』





●04 【オーバーエイジ枠】



P(こうして自称“しゅがーはぁと”佐藤心は俺の担当アイドルとなった)



P(心のプロデュースを、俺は放任主義で通している。あいつが企画のネタを作って、

  俺はそれを企画書に仕立てて、後のことなんて考えず、もうかりそうなところへ順々に売り込む)







心『みんなお待たせぇ☆ スウィーティーなシュガシュガアイドル、しゅがーはぁとの登場だよ♪

  みんなに幸せのハートをプレゼントしちゃう☆ そぉーれっ☆ ってほらそこ避けんなぁ〜♪』

大御所『うわぁ、佐藤ちゃんキッツ! 年を考えろ年をー!』







P(案の定、心はイタいバラドル路線が定着してしまった。まぁ、仕事があるだけ御の字なのだが……)







P「あいつ、あんな売り方でいいのかなぁ。いくら後がないからって」

みーちゃん「プロデューサーにあるまじき台詞だねぇ。佐藤さんが聞いたら泣いちゃうよ?」



P「おう……って、お前“佐藤さん”って」

みーちゃん「いやぁ、同僚となったらね、年上の方として最低限の敬意は払わなきゃだしー」







心『はぁい♪ 最高にスウィーティーなしゅがーはぁとだよぉ☆ 

  みんなもドンドンマネしてくれていいからね〜♪ って、目を背けるんじゃないっ☆』

大御所『いやぁ、佐藤ちゃんがあまり眩しくて、直視するとみんな目が潰れちゃうんだよ……アイタタタ』

心『オラぁ! なんか可愛くない台詞が聞こえたぞ!』







みーちゃん「プロデューサーは、佐藤さんにホント好きにやらせてるよね」

P「俺、オーバーエイジ枠のアイドルは経験ないからさ。勝手がわからなくて」

みーちゃん「オーバーエイジ枠(笑)アイドルをサッカー代表と一緒にしないでよ」



P「ちょっと前までは、こういうイタい路線に需要あったが、

  今度、美城が正統派への回帰路線へ進むらしいから、

  それが売れたら業界の流れはそっちに行っちゃうかも。そしたら心は……」

みーちゃん「……そーかなぁ? アレはオバサンの懐古趣味だと思うけど」







心『わん・つー☆ わん・つー・ダンスのリズムでキック命中♪ 

  はぁとはエクササイズタイムを満喫ちゅう! 休憩?まだまだ! 

  ようやく体があったまってきたところぉ☆』

大御所『佐藤、若くないんだからムリするなよー』

心『健康的はぁとキック食らわすぞ♪』







みーちゃん「佐藤さんのバラドル路線は手堅いと思うよ。今、局が作りたいのはバラエティでしょ?

      あのヒト、ぶりっ子でボケていじられ役になって、反撃で毒吐けばツッコミになるから、バラエティでは強いよ。

      あと……見た目が何のかんのアイドルレベルなヒトが必死にやってるせいか、芸人じゃ出ない凄みが出てる」







P「じゃあお前も心路線に切り替えるか?」

みーちゃん「絶対にイヤ」







●05 【オーバーエイジ枠→愛人枠】



P(その後、心と共演した大御所の芸能事務所から電話が飛んできた。

  どうやら、心が大御所とトラブルを起こしたらしい)







P「うーん、謝りに行かなきゃなぁ」

心「……はぁと、行かない。死んでも行かないから」

P「そりゃまたどうして。先方は、詳しい話はしてくれなかったんだが」



心「だって……あのエロオヤジ、はぁとに寝ろって……ぷ、プロデューサーにもしたことがないのに!」

P「……ふーん」



P「まぁ、お前が行かなくても俺は行ってくるよ。瓜田に履を納れず、李下に冠を正さずって言うし」

心「なんでそこで、そんなことわざが……」







みーちゃん「ええええええっ! 私、佐藤さんはてっきりプロデューサーの愛人枠だと思ってたのにっ!」

心「はぁ!? みーちゃんソレどういうコトだよ!」



みーちゃん「だって、アイドルって普通は大なり小なりプロデューサーの意向に従って仕事するものだよ?

      なのに佐藤さんは、自分で考えた路線をプロデューサーが丸呑みで好き勝手やってるじゃない」

心「そ、そんな……しゅがーはぁと、そんな目で見られてて……」



P(考えるのが面倒くさかったからとか言えねぇ)

みーちゃん(どうせプロデューサーが考えるの面倒くさがってただけでしょうけど)







P「大御所がいきなり心に枕しろって言ってきたのは、たぶんアレも心が俺のお手つきだと思ってたからだろうな」

みーちゃん「というか、お手つきだと思ったから、プロデューサーへの嫌がらせするため声かけたんでしょ。

      “ボンボンのくせに調子乗ってるんじゃねぇ、てめぇの女よこせや”って感じで」

心「…………」







心「……行く。プロデューサーが行くなら、はぁとも行く」

P「そうか……でも、ただ謝りに行くのもシャクだからなぁ……どうせなら――」







●06 【心「元気ですかー!」】



P(そして俺と心は、大御所の事務所の門を叩いた)







大御所「……東豪寺の御曹司が、何のようかね?」

P(顔は……俺の時と違って無傷か)







P「大御所様――この度は弊社の佐藤が、大御所様の御顔に暴行を加えて、

  御怪我を負わせることとなり、まことに申し訳ございません」

大御所「えっ」

心「そ、そこまでしてねぇよバカ☆」







P「この佐藤は融通の効かない女で、私など『一発ヤラせろよ』と言った瞬間、

  グーでしゅがーはぁとあたっくを喰らい包帯で出社する羽目になったこともございます。

  そんな乱暴者だから、アラサーになるまで芽が出ませんでして」

大御所「いや、別に殴られては」



P「事を荒立てずに済ませようというご配慮に感謝いたします……

 しかし、私は佐藤のそういう粗忽なまでの潔癖さを買っているのです」

心(……ん?)







P「業界人どころか素人女までが金のために股を開く今の御時世に……

 枕営業に激昂して相手を殴り飛ばすほどの気概と純粋さがあればこそ、

 佐藤はこの年で必死になってアイドルができるのです」

大御所「やだ、このヒト話が通じない……」



P「むしろアイドルと一夜を共にするより、アイドルに本気で殴られる経験のほうが貴重ではないでしょうか。

 私などは、殴られたあとの熱さに……むしろ殴られたほうが活力を得られるのでは、とさえ感じております」



心「黙って聞いてりゃアナタ、はぁとをアント●オ猪●か何かと勘違いしてねぇか」

大御所「謝りに来たんだかノロケに来たんだかハッキリしろよ」







P「どうです大御所様、もう一度この佐藤に殴らせてみませんか。クセになりますよ。

 ほら、佐藤。拳の準備を」

心「しゅがーはぁとあたっく……味わってみる?」

大御所「も、もういい、殴らなくていいからサッサと帰れっ」









●07 【プロデューサーの反撃】



みーちゃん「……へぇ、それが土産話?」

P「惜しかったよなぁ。もうちょっとで、アイツを合法的に殴れたのに」

心「いやムチャだろ。アナタはぁとよりムチャしてたよ」



P「まぁ、心が枕営業してないってことは確かに主張してきたから、それで勘弁してくれ」

心「プロデューサー……」







P「ということで佐藤、一発ヤラせろよ」

心「え――ふっ、ふざけんなよっ☆」

P「お、何だ今の間は? 迷ったか? うわぁ、はぁとチョロいなー」



心「しゅがーはぁとあたっく!」

P「痛ぇ! お前、ガタイいいから本気のパンチは結構効く――」

心「――はぁとあたっくを食らうと活力が得られるんだろ? オラオラオラオラ!」

P「ギャアアーーーッ!」







みーちゃん(翌日、プロデューサーはヤクザに襲われたような風体で、

      再び大御所の事務所へ謝りに行った。プロデューサーは気味悪がられ追い返された)



みーちゃん(なお、その様子を嗅ぎつけた悪徳又一記者によって、

     『大御所が、佐藤心に枕営業を拒絶された腹いせに暴力団を動かして、

      佐藤心の担当プロデューサーを呼びつけ暴行を加えた』というゴシップが広まった。

      大御所のイメージはブチ壊しになり、プロデューサーと佐藤さんには同情が集まった)



みーちゃん(これはひどい自作自演)



みーちゃん(……まぁ、うちのプロデューサーは適当だけど、ボンボンでコネあるし。

      担当アイドルからボコボコにされてる……なんて、真実であっても誰も信じないよね)







みーちゃん(佐藤さんは相変わらず元気に活動中だ)







心『はぁい♪ 最高にスウィーティーなしゅがーはぁとだよぉ☆ 

  みんなもドンドンマネしてくれていいからね〜♪ って、目を背けるんじゃないっ☆』



みーちゃん(イタい空回り系アイドルに、コネだけが取り柄のプロデューサー。

      それでもうまくいくもんだ……破れ鍋に綴じ蓋ってやつかな、コレ)







(おしまい)









22:30│佐藤心 
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