2017年01月22日

歌鈴「開運の恋みくじ」

明けましておめでとう、そして誕生日おめでとう



私がお祝いされるときは、いつもこの言葉です。友達にも、家族にだって。

新たな年の始まりという大きな節目、最初の挨拶ですからね。新年のお祝いが先なのは当然です。

実家も忙しくて、ゆっくりお祝いされた記憶もあまりありません。



小さい頃は寂しさもありましたけど、これは仕方ないことなんだって。いつの間にかそう思えるようになりました。



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【大晦日の事務所】





モバP(以下P)「……ふぅ」カタカタカタ



ちひろ「まだかかりますか?」



P「えぇ、年越しまでにはまとまりそうですが」



ちひろ「元日もお仕事ですから、無理しないでくださいね」



P「この業界に正月休みはない、もう慣れっこですよ」



ちひろ「特番やニューイヤーイベントも多いですからね」



P「忙しいのはいいことです。ちひろさんは終わりました?」



ちひろ「はい、私の分は。なにかお手伝いできることありますか?」



P「いいですよ。いまからでもゆっくり年越ししてください」



ちひろ「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えますね」

P「外まで送りますよ」



ちひろ「あら、優しいですね」



P「座りっぱなしで体動かしたいので」



ちひろ「つまり私はついでですか」



P「あーそういうわけでは……」



ちひろ「正直な所もプロデューサーさんらしいですよ」



P「精一杯エスコートさせていただきます」



ちひろ「お願いします。さ、行きましょうか」

P「あれ、レッスンルームに明かりが……予定ないですよね?」



ちひろ「はい。トレーナーの皆さんも、もうお休みですから」



P「じゃあ誰が?」ガチャ







茄子「5,6,7,8……はい止まってください」



歌鈴「はぁはぁ……や、やっぱり最後のステップで遅れちゃいますね」



P「茄子に歌鈴じゃないか」

茄子「Pさん、それにちひろさんも」



歌鈴「おつかれ様です!」



ちひろ「自主レッスンですか? 大晦日くらいお休みしてもいいんじゃ」



歌鈴「実家にいたころはお手伝いだったので、ゆっくりしてるのが落ち着かなくて」



茄子「年明けすぐにニューイヤーライブもありますし、せっかくですから私も歌鈴ちゃんと練習しようかなって」



P「自主レッスンは良い事だが、あまり遅くなり過ぎないようにな」



歌鈴「ふぇ……え、もうこんな時間!」



茄子「もう日も落ちてる時間ですね。気が付きませんでした」



P「その様子じゃ結構長い事やってたのか」



ちひろ「私はもう帰るところなので、よければ送っていきますよ?」



茄子「Pさんはまだお帰りにならないのですか?」



P「俺はもう少し仕事してから帰るよ」

歌鈴「そうですか……なら私も、もう少しだけ残りますっ」



P「む、そうか。茄子はどうする?」



茄子「やるなら2人の方がいいですから。歌鈴ちゃんがそう言うのでしたら私も頑張っちゃいます♪」



ちひろ「わかりました。3人ともほどほどで切り上げて下さいね」



P「俺も含まれてるんですか」



ちひろ「当然です。なんだかんだで年越しまで残りそうですから」



P「今夜くらいは流石にそこまでするつもりはありません」



ちひろ「言質とりましたよ。茄子ちゃんと歌鈴ちゃんが証人です」



歌鈴「わ、わかりましゅた! ……あうぅ」



茄子「はい、確かに聞きましたよ♪」



P「いつもと立場が逆だなぁ」

ちひろ「ふふっ、それじゃあお先に失礼します。みなさん、よいお年を」



3人「おつかれ様でした、よいお年を」





P「さて、帰る時には送ってくから終わったらデスクまで声掛けてくれ」



茄子「了解です。歌鈴ちゃん、通してもう一回やってみましょう」



歌鈴「あ、はい! よろしくお願いします!」



P「あまり根つめすぎないようになー」

………

……









P「うっし、こんなもんか」カタカタカタターン



P「何とか年内にケリつけられたなぁ、あぁ腹減った」



P「あいつら来なかったが……まだやってるのか?」

【レッスンスタジオ】





茄子「5,6,7,8……うん、バッチリですね!」



歌鈴「や、やりましたぁ!」



茄子「はい、お水どうぞ」



歌鈴「ありがとうございます。茄子さんに協力してもらえたおかげですっ」



茄子「頑張ったのは歌鈴ちゃんですよ。ところで、ひとついいですか?」



歌鈴「な、なんでしょうか? まだ悪いところありました……?」



茄子「いえ、そうではなく……歌鈴ちゃんは、どうしてこんなに頑張れるんですか?」



茄子「この時期は実家のお手伝いをしていたから。それは本当なんでしょうけど、なんだかそれ以上の気迫のようなものを感じました」



歌鈴「気迫なんて、そんな大層なものじゃないですよ……私は他のみなさんのような個性もないし、歌も踊りも上手くないし、おまけにドジでおっちょこちょいで……だから、人一倍頑張らなきゃって」

茄子「ふふっ」



歌鈴「うぅ、こんなんじゃ笑われちゃいますよね……」



茄子「いえ違うんです。歌鈴ちゃんは人の良いところを見つけるのが上手なのに、自分のことになると下手になっちゃうんだなって」



歌鈴「そんなことないですよ……」



茄子「うーん、こんなときPさんだったら『歌鈴は歌鈴なりでいいんだぞ!』なんて言うんでしょうね」



歌鈴「プ、プロデューサーさんを出すのはズルいですよぉ!」



茄子「歌鈴ちゃんはPさんのこと大好きですもんね?」



歌鈴「えぇ! と、突然なにを言って……あの、その……」



茄子「ふふ、歌鈴ちゃん可愛い♪」

茄子「明日は歌鈴ちゃんのお誕生日ですし、初詣に誘ってみてはいかがですか?」



歌鈴「お誕生日なのは同じじゃないですかぁ……茄子さんは自分の誕生日、どう思います?」



茄子「どう、とは?」



歌鈴「1月1日が誕生日だと、特別なお祝いって全然してもらえないですよね」



茄子「あぁ、そういうこと」



歌鈴「おまけに私は実家のことで、忙しくてそんな暇もなくて」



茄子「私は自分の誕生日、好きですよ。特別な日に特別が重なるようで、より幸せな気持ちになれます♪」



歌鈴「茄子さんは強いなぁ……」



茄子「無理にわかろうとしなくていいんです。歌鈴ちゃんはいい子ですから、誕生日くらい我が儘言ってもバチは当りませんよ?」



歌鈴「そうでしょうか……うーん……」

P「おーい、まだやってるのか」ガチャ



歌鈴「ひゃあ! プ、プププロデューサーしゃん!」



P「あぁ、すまん突然入って驚かせたか」



茄子「Pさんはお仕事終わりました?」



P「あぁ、こっちはどう?」



茄子「ひと段落してお喋りしてたところです」



P「じゃあそろそろ切り上げて。2人とも腹減ってる?」



歌鈴「あ、そういえば晩御飯食べてないですね」



茄子「なんだか意識したら余計に空いてきますー」



P「俺も空腹だから、一緒に年越しそばでも食べよう」



茄子「わぁ、いいですね♪」



歌鈴「すぐに着替えてきま――ってあわわ!」



P「慌てないでいいからなー」

………

……





P「買い置きのカップそばで悪いな」



歌鈴「いえ、全然気にしませんよ」



茄子「事務所なら落ち着いて食べられますし、私も構いません」



P「そう言ってもらえて助かる。そろそろいいかな……じゃあ、いただきます」



歌鈴・茄子「いただきます」

歌鈴「おだしが美味しいです〜」



茄子「夜の事務所でインスタント食品を食べるなんて、なんだかいけないことしてるみたいですね」



P「本来は褒められたものじゃないが、今日くらいはいいだろう」



歌鈴「何だか合宿みたいで楽しいですっ」



P「非日常感あるよなぁ……大晦日自体、子供のころ夜更かしを許された特別な日だったのを思いだすよ」



茄子「特別な日ですか」



歌鈴「そうですねぇ」



P「あ、歌鈴にとっては年末年始は大忙しか」



歌鈴「はい、落ち着いておそば食べられるなんて夢にも思わなかったです」



P「年始もすぐに仕事だから、休めるときには休んでくれよ?」



歌鈴「わ、わかりま……」



茄子「ほら、歌鈴ちゃん頑張って♪」



歌鈴「茄子さん……は、はい!」



P「ん、どうした?」



茄子「ふふっ、何でもありませんよ」

P「そばを食べたら2人とも送っていくよ」



歌鈴「あの、プロデューサーさん!」



P「なんだ歌鈴?」



歌鈴「よ、よかったら、これから一緒に初詣に行きませんか?」



P「初詣?」



歌鈴「休めって言ってもらいましたけど、わ、私はプロデューサーさんと初詣に行けたらいいなって……どうでしょうか?」



P「歌鈴がそこまで言うなんて珍しいなぁ」



茄子「そうですよ、ですから行きましょう、Pさん?」



P「……ふむ、新年早々に祈願するのも悪くないか」



歌鈴「やったぁ! ありがとうございますっ!」

………

……





P「事務所閉めるぞー。歌鈴、忘れ物ないか?」



歌鈴「な、なんで私だけなんですかぁ!」



茄子「ぐるっと確認しましたが、大丈夫そうでした」



P「じゃあ行くとするか」



茄子「はい、行ってらっしゃい♪」



歌鈴「へ、茄子さん?」



P「茄子は来ないのか?」



茄子「行きたいところですが、自室の大掃除が終わってないんですよねー」



P「それくらいいいんじゃないか?」



茄子「今年の汚れ、今年のうちにですよ! あと歌鈴ちゃんにはこれをお願いします」

歌鈴「な、何でしょう? ……これはおみくじ、ですか?」



茄子「今年の年始に引いたものです。私の代わりに神社へ返納していただけますか?」



歌鈴「あ、はい。わかりました! 任せてください!」



茄子「私が1年間持ち歩いていた大吉です。頑張ってくださいね♪」ボソッ



歌鈴「え、ちょっ茄子さん!?」



P「夜遅いがひとりで大丈夫か?」



茄子「すぐにタクシー拾いますんで」



歌鈴「で、でもこの時期は利用する人多くて待つことになるんじゃ……」



茄子「大丈夫です。昔からタクシーに乗ろうと思ったら、すぐに空車が通りかかるので――あ、来ましたね」



P「凄いが妙に納得してしまう」





茄子「それでは、よいお年を」



P「あぁ、来年もよろしく」



歌鈴「茄子さん! あの、ありがとうございました!」

【神社境内】





P「ほぉ、結構にぎわってるなぁ」



歌鈴「そ、そうでしゅね!」



P「さっきから噛み噛みだな、おまけに顔も赤いぞ。まさか熱か?」



歌鈴「違います! 違わないけど違うんです!」



P「ならレッスン疲れ? 辛くなる前に早めに言ってくれな」



歌鈴「は、はい!」

ゴォォン…ゴォォン……





P「除夜の鐘が聞こえるな。もうすぐ新年だ」



歌鈴「プロデューサーさんにとって今年1年はどうでしたか?」



P「ん、そうだなぁ……ファンもメディアの露出も増えてきて、歌鈴の努力の成果が着実に出てきてる年だったな」



歌鈴「もう、それじゃあ私の1年じゃないですか」



P「プロデューサーの1年は、担当アイドルの1年だ。だからこれでいいんだよ」



歌鈴「私とプロデューサーさんが同じ、ですか……えへへ」

歌鈴「あ、周りの人がカウントし始めましたよ!」



P「一緒にカウントするか!」



歌鈴「はい! 4、3、2、1……」









歌鈴「プロデューサーさん、明けましておめで――」





P「誕生日おめでとう歌鈴、今年もよろしくな」









P「ここでプレゼントを渡せれば良かったんだが、こうなるとは思わなくて自宅に置きっぱなしでなぁ……かっこ悪いが次会う時に渡すから」



歌鈴「う、うぅ……ぐすっ」



P「え、歌鈴……そんなにショックだったか」



歌鈴「そうじゃないですっ……私が一番欲しかったもの、もうプロデューサーさんから頂きました!」



P「いや、俺はまだ何もあげちゃいないぞ?」



歌鈴「気にしないでください。さぁ、参拝しましょう!」



P「おう、人だかりだからゆっくり進もう。今のうちにお賽銭の準備しとけ」



歌鈴「はい。落とさないようにコートのポケットに入れておきます……あれ?」

ふと、ポケットに入れた指先に折りたたまれた紙が触れました。

その正体は、神様に負けないくらいにご利益がありそうな、そんなおみくじ。

お守り代わりに……ということでしょうか。だとしたら、効果覿面です。





明けましておめでとうよりも先に、誕生日おめでとう、と。



いつの間にか諦めていた、一番に欲しかった言葉を。一番に欲しい人から貰えましたから。

P「ん、どうかしたか?」



歌鈴「いえ、えっとその……手、つないでもいいですか?」



P「手を?」



歌鈴「人も多いですし、はぐれちゃうといけないので!」





P「ん、これでいいか?」





歌鈴「えへへ、ありがとうございます! プロデューサーさん、今年も歌鈴をよろしくお願いしますっ!」



12:30│道明寺歌鈴 
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