2017年02月28日

黒川千秋「ちがうわよ」

雪美「………」ペラ



P「雪美、本を読んでいるのか」



雪美「………」コクン





P「そうか」



雪美「………」



雪美「………」ウトウト



P「眠そうだな」



雪美「………ちょっと……ねむたい」



P「レッスンまで少し時間あるし、お昼寝するか?」



雪美「………」コクリ



雪美「………お邪魔……します」



P「え? おっと……膝枕か。いいぞ」



雪美「ありがとう………」



雪美「………すぅ」





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P「よっぽど眠かったんだな」



P「気持ちよさそうな顔して……」





千秋「………」ジーー



P「……どうした、千秋? じっとこっちを見て」



千秋「いえ……よく寝ているわね。佐城さん」



P「かわいらしい寝顔だよ。こうしてると、特等席で見られるからお得だ」



千秋「そう……」



千秋(私も間近で見たい……)←かわいいもの結構好き



千秋「………」ソワソワ



P「千秋?」



千秋「えっ? な、なにかしら」



P「ひょっとして、千秋もしたいのか?」



千秋「………ええ。興味は、あるわ」



P「じゃあするか?」



千秋「いいの?」



P「千秋がいいなら、俺はかまわないけど」



千秋「そう。なら、お願いしようかしら」



P「そうか。じゃあ左膝が空いてるからそこで寝ていいぞ」



千秋「ちがうわよ! どうして私があなたの膝枕で寝なくてはいけないの!」



P「え、違うのか? じゃあ俺が君の膝で?」



千秋「それもちがうわよ……私は、佐城さんに、膝枕がしたいと言ったのよ」



P「ああ、なるほど。それは思いつかなかった」



千秋「普通そうでしょう。どうして私が貴方に膝枕をしたりされたりしなければならないの」



P「確かに」



千秋「まったく……貴方のプロデュースの腕は信頼しているけれど、時々とんでもない発言をするのは困りものね」



P「悪い。じゃあ、雪美を起こさないように膝枕を交代――」



雪美「………」パチリ



千秋「あ、ごめんなさい佐城さん。起こしてしまったかしら」



雪美「……千秋……一緒に……寝る……?」ポヤヤン



千秋「え? いえ、私は寝るのではなくて、佐城さんの」



雪美「………だめ………?」



千秋「うっ………」









P「結局美少女と美女に膝枕をすることになった」



千秋「どうしてこんなことに……」



P「君が雪美の言葉にうなずいたからだろう」



千秋「だって、断れないでしょう。あんな目で見られたら」



雪美「すぅ………すぅ………」



P「千秋は無邪気な子どもに弱いよな」



千秋「悪かったわね」



P「いや、いいことだぞ。それだけ優しいってことだし」



千秋「そうかしら……けど、その優しさのせいでこんなことになったのよ」



P「俺は役得だけどな」



千秋「もう………」



千秋「………」



千秋「………膝枕って、案外体温が伝わってくるのね」



P「お。意外と満足?」



千秋「ちがうわよ………たぶん」





別の日





P「今日から北海道に遠征だ。千秋にとっては、地元で凱旋ライブの形になるな」



千秋「そうね。毎度言っていることだけれど、必ず成功させてみせるわ」



P「故郷に錦を飾れるようにしよう」



千秋「ええ。でも、それを意識しすぎるのは禁物」



千秋「私はいつだって全力でライブにあたってきた。なら、今回も同じようにすればいいだけ……そうでしょう?」ファサッ



P「ああ、そうだな。いつも通り、100パーセントを出せばいい」



千秋「貴方も、北海道の寒さに負けないようにね」



P「それは気をつけるが、戦々恐々としている」



千秋「ふふっ。まあ、何かあれば私を頼っていいわ。たまには、立場逆転も悪くないでしょう?」ファサッ



P「………」



千秋「どうしたの」



P「千秋ってさ。キメ台詞を言う時に髪をふぁさーってやる癖あるよな」



千秋「そんな癖、ないわ」



P「いや、あるって。ふぁさってやったらたいがい許されるみたいなところがあるって」



千秋「そんなこと思っていないわ。だいたい、ふぁさってそこまでの頻度でやってないし」



P「そうか?」



千秋「そうよ。それこそ、貴方の思い込みではないかしら」



P「そうか………」



千秋「そう」ファサッ



千秋「あっ」



P「………千秋」



千秋「ち、ちがうわよ? 今のは、その、えっと」



P「黒ふぁさ千秋」



千秋「うまくない!」



遠征先のホテルにて





P「ライブ、うまくいってよかったな」



千秋「ええ、そうね。……本当に」



P「いつもより疲れてる?」



千秋「……東京を出る前、『いつも通りにやるだけ』と言ったけれど……やっぱり、少なからず意識はあったみたい。でも、その緊張はいい方向で働いた。そう思うわ」



P「今日のライブは、俺から見ても過去最高の出来だった」



千秋「ありがとう。だからこそ、今は本当にうれしいし、ほっとしている。おかげで脱力感がかなりあるけれど」



P「そんな状態で、男を部屋に入れてよかったのか? しかも風呂上りの状態で」



千秋「いいのよ。貴方だけは、特別」



千秋「それに、脱力していても油断はしていないわ。きっちり一線は引いているのだから」



P「……さすがだな」



千秋「当然よ。私を誰だと思っているの」



P「はは、そうだな」





千秋「……さて。ライブも終わったことだし、少しだけお酒を飲まない?」



P「ああ。少しだけなら、いただくよ」



千秋「ふふ、そう言ってくれると思っていたわ。ワインを用意してあるから、今持ってきて」





ぐぅ〜〜〜〜〜





千秋「………」



P「………」



千秋「………」



P「……なあ」



千秋「ちがうわよ」



P「いや、油断していなくても腹の虫は抑えられないからしょうが」



千秋「ちがうわよ」



P「あ、はい。酒飲んで忘れます」



その後





P「zzz」



千秋「だからって、寝落ちするまで飲まなくてもいいのに……変なところで律儀なんだから」



千秋「……まあ。そういう硬いところが、私は好きなのかもしれないわね」



千秋「飲んだお酒の量自体はそこまで多くないし、単に疲れていただけなのかも」



千秋「………」



千秋「いつもお疲れ様。私の、プロデューサーさん」ナデナデ

P「ん………あれ、俺……」



千秋「目が覚めたかしら。大丈夫、貴方が寝てからまだ30分くらいしか経っていないわ」



P「千秋……って、この体勢」



千秋「試しにやってみたけど、膝枕する側も悪くないわ」クス



P「……すまん。俺が寝ちゃったから」



千秋「いいのよ。こうしているのは、私の意思。私がこうしたいと思ったから、そうしている。それだけ」



P「千秋……」



千秋「ねえ、Pさん。少し、私の話を聞いてくれるかしら?」



P「……ああ」



千秋「昔の私は、なんでもひとりでやるのが一番だと思っていた。ひとりでなんでもこなせれば、それが一番いいことだし、一番優れている。そう思っていた」



千秋「それは、ある意味では正しい考えなのかもしれない。けれど、それを実現するには、私は不器用すぎたの」



千秋「でも……今は、不器用でよかったと、そう思うのよ」



P「不器用で、よかった?」



千秋「ええ。不器用だったからこそ、私はみんなと……貴方と出会うことができたのだから」



千秋「共に語り合い、共に悩み、共に努力し、共に何かを成し遂げる。その喜びを、たくさん味わうことができた。だから、私は今の自分に誇りを持てる」



P「……そうか。俺も、そんな千秋を誇らしく思えるよ」



千秋「ありがとう」





千秋「でも、まだ足りないわ」



P「え?」



千秋「私達には、まだ先がある。もっともっと、味わいたいわ。トップアイドルになる、その日を目指して」



千秋「それに、いずれは仕事以外も……それこそ、すべてを。そんなビジョンも、私の胸の内にあるわ」



P「………」



P「酔ってる?」



千秋「ふふっ、そう見える?」



P「顔、赤いし」



千秋「………ちがうわよ」フフッ



………



……







千秋「なんて初々しいやり取りをしていたのが、今となっては懐かしいわ」



P「結局、プライベートでもパートナーになったからな」



千秋「花嫁修業、今思い出しても大変だったわ」



P「家事スキル、めちゃくちゃ上昇したもんなあ」



千秋「貴方には、これまでたくさんのものをもらってきたから。それをお返しするだけと思えば、いくらでも頑張れた」



P「ということは、料理の腕が向上したのも俺のためか」



千秋「ええ。ちがわないわ」



P「掃除洗濯も」



千秋「ちがわないわ」



P「夜のテクニックも」



千秋「ちがわないわ」



P「………」



千秋「ふふっ。自分で言ったくせに頬を赤らめるなんて」



P「間髪入れずに返してくるとは思わなかった」



千秋「私の勝ちね」ファサッ





P「勝負だったのか、これ」



千秋「ええ。だから、次やるときは、私が主導ね」



P「……前回の仕返しするつもりか」



千秋「ちがうわよ」



千秋「ただ、休憩する間も与えてくれなかったケダモノさんには、少しだけ教えてあげなければいけないことがあると思うのよ」



P「……負けず嫌いめ」



千秋「今さらね」



P「鞭とかロウソクとか用意する気か」



千秋「………」



P「おい。そこは『ちがうわよ』って言ってくれ」



千秋「さぁて、どうかしら?」



P「千秋〜〜」



千秋「ふふっ」





おしまい





22:30│黒川千秋 
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