2014年06月30日

杏「実は私は」


杏「ダラダラ星人なんだ!」



P「おう」





杏「ダラダラ星人ってのはね、人間と殆ど作りは一緒なんだけど一つだけ違うとこがあって」



P「うん」



杏「生きるのに栄養だけじゃ足りないんだよ、ダラダラすることが必要なんだ」



P「へえ」



杏「ダラダラしないとね、それはもうすんごいことになるよ、すんごいことに」



P「ふーむ」



杏「例えばほら……えっと……そうだ、爆発とかするよ、ドカーン」



P「なるほどなー」



杏「……」



P「そうだったのかー、それは凄いなー」



杏「……聞いてる?」



P「聞いてない」



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杏「なんで聞いてないのさ」



P「お前の戯言聞く価値あるのか」



杏「戯言じゃないよ、杏は本気で言ってるかもしんないじゃん」



P「じゃあ本当なの?」



杏「本当だよ、杏の目を見て」



P「……」ジー



杏「……」



P「……」ジー



杏「……」



P「……」ジー



杏「ちょ、ちょっと、いつまで……」



P「……」ジー



杏「……そろそろ、ね?」



P「……」ジー



杏「……」



杏「……!」べチン



P「ぐほあっ!」



P「なんで、なんで殴られたんだ俺!」



杏「いくらなんでも見過ぎだからだ!」



P「お前が見ろって言ったんだろ!?」



杏「い、言ったけど……あれは……」



P「つーか見てもわかんなかったぞ、いつも通り濁りきってる目だったし」



杏「……仮にも女の子に対してそれはどうなの」



P「濁りきってないとでも?」



杏「濁りきって……な、ない……ううん……」



P「自分で悩むくらいなのかよ……」



P「まぁとにかく、お前がダラダラ星人であろうが目が濁ってようが明日の朝は忙しいぞ」



杏「えー」



P「せっかく有名な番組に出れるんだからもうちょい喜べ」



P「あと、いつも通り遅刻してられると思うなよ? 俺は忙しいから迎えに行けないし、ちゃんと自分で来ること」



杏「杏はプロデューサーを信じてる」



P「俺はお前を信じてる」



杏「それ杏の目を見ても言えるの?」



P「言えるぞ、ほら」



P「……」ジー



杏「……」



P「……」ジー



杏「……だから見過ぎだってば……それにちょっと近いよ」



P「……俺はな」



杏「うん?」



P「お前がいっつも印税のため印税のため言ってるの気に食わないとこあるんだよ」



杏「うわ、正直に言うね……でもしょうがないじゃん、杏だよ?」



P「そうだな、それがお前の持ち味だとも思ってるのも事実だ」



P「けど、けどな……二年間一緒に俺らは頑張ってきたろ?」



杏「……まぁ」



P「だから明日も頑張ろうな、杏」



杏「頑張らない」



P「即答かよ」



杏「それが杏の持ち味だからねー」



P「開き直んなっつの……ったくお前は……」



P「……」



杏「……? 何?」



P「いや、なんでも」



P「さ、今日はもうあがりだから帰ってゆっくりしとけ、明日があるんだからな」





…………







杏「……ふぅ、やっと家に帰れたよ」



杏「あー、疲れたー……なんなのさ最近、忙しいことばっかだ」



杏「杏はダラダラしたいだけなのにこんな仕打ち……はぁ」



杏「……」



『お前がいっつも印税のため印税のため言ってるの気に食わないとこあるんだよ』



杏「……」



杏(……確か、結構前にどれくらい貯まってるか計算したやつが……)ゴソゴソ



杏「……」



杏(貯まってるなぁ)



杏(というか、引退宣言したライブの時一応既に目標額達してたし……今また計算し直せば多分凄い量に……)



杏「……これはもうアイドルやめても余裕で暮らせるかなー」



杏「……」



杏「いや……うん……」



杏「でもまぁ、プロデューサーが杏にやめて欲しくないって泣いて頼んできたし、仕方ないか……くふふ」



杏「……」



杏「……あれ?」



杏(何が、仕方ないんだろ)



杏「……」



杏「……んん?」



杏「……あーもう、なんかよくわかんないや……せっかく仕事早く終わったんだからさっさと寝よっと」





ーーーーーー







杏「……」



杏「……?」



杏(……ん、ここは?)



杏(あ、いつものライブするとこのステージか……なんでこんなとこに……)



P「杏」



杏「……え、プロデューサー……いたの?」



P「踊ろう、杏」



杏「へ?」



P「さぁ手を取って……ほら!」



杏「わ、わわっ……な、何、急になんなのさ!」



P「今このステージは俺たち二人だけなんだ」



P「観客なんて一人もいない……だから二人で踊ろう」



杏「全く意味がわかんないんだけど……」



P「杏は俺と踊りたくないのか?」



杏「踊る意味がわからないんだってば……というか辛い! 辛いこれ! 身長差考えてよ! 離して! 」



P「本当に離しても?」



杏「いいから離せーっ!」



P「二人っきりのステージで踊らないのなら」



P「……それじゃあ何のために杏はこのステージの上に立ってるんだ?」



杏「ど、どういうこと……質問の意味もわかんないよ」



P「杏は賢いから実はもう分かってるんだろ? 杏と俺がこのステージに立ってる理由を」



杏「あ、杏は……」



杏「……」



P「……杏」グイッ



杏「えっ、ちょ」



P「……」ギュー



杏「な、なに、なんなの……その、杏を抱きしめるのは料金が発生するよ……?」



P「……なぁ、杏は俺にどうして欲しい?」



P「トップアイドルに連れてって欲しい? 面倒を見て欲しい?」



P「それとも……俺にめちゃくちゃにして欲しいか?」



杏「めちゃくちゃって……ロリコンは犯罪だぞ!」



P「……どうして欲しい?」



杏「う……」



P「……」



杏「……」



杏「プロデューサーが……」



杏「プロデューサーが側にいてくれれば……杏は別にいい……」



P「……なんで?」



杏「……?」



P『なんでお前は、俺が側にいて欲しいんだ?』





ーーーーー







杏「……っ!」ガバッ



杏「……」



杏「えー」



杏「夢オチ……いや途中から夢だって分かってたけど……」



杏「……」



杏(……そんな、ことより)



杏「う、うう……うううー……なんて夢見るのさ……なんなのあれ、どういうことなの……」



杏「……」



杏「……変な時間に寝たから……まだ九時半かぁ」



杏(もっかい、もっかい寝よう……それで今度は飴に囲まれて埋もれ死ぬ夢でも見よう、うん)



杏「……」



『なんでお前は、俺が側にいて欲しいんだ?』



杏「……」



杏「寝れるわけ……ないじゃんか……」



杏「……」



杏「……」ゴソゴソ



杏「……」ピッ……ピ……



杏「……」



杏「……あ、きらり? 今大丈夫?」



杏「いや、別に用事があるわけじゃないんだけど……うん」



杏「……ん、何か話そうよ」



杏「うん……うん……」



杏「……え、夢の話って……きらりもプロデューサーの夢……い、いや、なんでもない」



杏「でも今ちょっと夢の話は…………杏も出たの?」



杏「……」



杏「……どんな夢だった?」





…………







杏「……うう、朝、辛いなぁ」テクテク



杏(結局ずっときらりと話してて夜更かししちゃった……)



杏(というかきらりの夢の話良く分かんなかったよ……なんできらりの夢の中で杏がプロデューサーと……)



杏(……)



杏(杏も、また変な夢見たし…………なんなのもう)



杏「……ま、もういいか、終わったことはどうでも」



杏(事務所にも着いたし、杏はいつもどーり、いつもどーり適当に……今日も頑張らないようにしよっと)



杏「……」



杏「よし」



杏「お、おはよー」ガチャ



P「おう、おはよう杏」



杏「!」ビクッ



P「偉いな、ちゃんと遅れずに来て」



杏「……」



P「やっぱお前はなんだかんだ真面目だよな、うんうん、いいことだ」



杏「……」



P「……」



P「……杏?」



杏「なっ、なに?」



P「なんでさっきからぬいぐるみで顔隠してんの?」



杏「そっ、それは……ほら……朝からプロデューサーの顔見たくなくて」



P「おま、ひでえな、こんなイケメンに向かって何を言うんだ」



杏「イケメンって……その……」



P「イケメンだろ?」



杏「……」



P「……」



P「……まぁ、まぁいい、おちゃらけた俺が悪かった、この話は広げない方向で行こう」



P「んじゃ、急に仕事の話にして悪いが……俺ちょっと今から今日の予定再確認しに行ってくるから、その間杏は次の収録の準備を済ましといてくれ」



杏「う、うん」



P「頼んだぞー」ガチャ



P「……」パタン



杏「……」



杏「……はぁっ……!」



杏(何、これ……)



杏(顔が熱い……すっごく熱い……)



杏(……プロデューサーのこと、まともに見れなかった)



杏(……)



杏(なんだこれ)





…………







杏「……」



杏(結局、よくわかんない感じのまま収録始まっちゃった)



杏「はぁ……」



?「杏さーん?」



杏(あれから車の中でも、打ち合わせ中も何も喋れなかったよ……)



杏(昨日妙な夢見たからかな……プロデューサーといるとなんか……もう、熱い、変な汗出る……)



?「おーい」



杏「……ん?」



司会「……聞いてる?」



杏「聞いてない」





司会「いや、流石マイペースなアイドルこと杏ちゃんだ」



司会「けど無視は酷いよー、収録中なんだから……無視してくるのは家で腹出して寝てる鬼のような嫁さんだけでいいかな」





< コノテレビミラレルトコロサレルゾー





司会「……」



司会「さ、さぁそんなことはさておき! 企画に移りましょう!」



司会「ゲスト、暴露話のコーナー!」





< パチパチパチパチ





司会「このコーナーでは名前のまんま、ゲストに暴露話をしてもらうコーナーです」



司会「今日のゲストの四人には人には言えない秘密を言ってもらうよ?」



司会「テーマは……ズバリ! これ!」



司会「好きな人はいますか?」





< オオオオオオ





司会「……」



司会「今日のゲストの皆さんはアイドルなんですが、この質問は大丈夫なんでしょうか」



司会「まぁいいや、関係なしに……一人目どうぞ! 我らが閣下!」





< カッカー!





H「か、閣下!? 普通に呼んで下さいよ普通に!」



司会「いやぁ愛されてるからしょうがないですね、それで閣下は好きな人いるんですか?」



H「わ、私はアイドルですから……そうだ、あれです! 私はファンの皆さんが好きな人ですよ!」



司会「……あざといなぁ」





< アザトイー!





H「え、ええっ!?」



司会「じゃあ次は……まな板ブルーバードさん!」



T「まない……何故名前で呼んでくれないのでしょうか」





< マナイター!





T「……」



T「まぁ、なんでも、いいですけれど……好きな人ですか」



T「私は……私にとっては歌が恋人みたいなものです」



司会「おー、歌に情熱を捧げているまな板さんらしい答えですね」



T「……でも」



T「私は今、自分でも分からないことが一つあるんです」



司会「はい?」



T「私が本当に辛い時、いつも助けてくれるあの人……時々、私は彼のことを強く想うことがあります」



T「これは、私にとっての『好きな人』、なんでしょうか……私には分からなくって……」



司会「……」





< ……





司会(ちょ、ちょっと待て今の放送できんのか、ヤバくないかこれ)



司会(これは話を広げちゃダメだ……さっさと流して……次の子に……)



司会「さ、さぁ続いて参りましょう!」



司会「暴露してもらうのは……我らが大天使!」





< ウオオオオオオオオオオオ!!





Y「ひいっ!?」



司会「歌にドラマに大活躍中の穴掘りアイドルさん、好きな人はいますか?」



Y「そ、その……」



Y「私の恋人はこのスコップ……なんて……」



司会「……スコップ、ねぇ」



Y「え……え……」



司会「そんなこと言って、本当は好きな人いるんじゃないのー?」



Y「わ、私は……」



司会「……なーんて、まぁアイドルだし、天使ちゃんは男が苦手ってのも有名だから当ぜ Y「ごめんなさい好きな人いますぅ!」



司会「ちょ Y「嘘は! ……嘘はダメ、ですよね」



Y「私は男の人が確かに苦手で、すぐに逃げちゃったり隠れちゃったりするけど……そんな私をいつも側で支えてくれてきた人がいて……」



Y「私は……私はいつの間にかその人のことが……」



司会「ストップ! そこでストップ!!」



Y「え……?」





< …………





司会「……」



司会(ヤバイなこの空気……お通夜みたいになってる……)



司会(もう手遅れな気がするが……と、とりあえず逃げよう、次に逃げよう……!)



司会「え、えー、まぁ色々とヤバ……面白い話が聞けたとこで最後の人に参りましょう!」



司会「年齢詐称のだらだら妖精さん! どうぞ!」



杏「……」



杏(嫌だなぁ、あの感じ……)



杏(いつも通り何も考えずにいたいのに……もやもやする)



司会「……あの」



杏「……ん?」



司会「杏ちゃん、質問いいかな?」



杏「あ……そういえば収録中だったっけ」



司会「本当に話を聞いてくれないね君……」



杏「ええと、質問ってその……どんなの?」



司会「好きな人はいる?」



杏「好きな人?」



司会「うんうん」



杏(そんな人……別に……)



杏(……)



杏(……っ!)



司会「杏ちゃん?」



杏「……あ、杏は」



杏「杏は……その、好きとかどうとか……そんなの面倒くさい!」



杏「杏は! 面倒くさいのは嫌いだっ!」



司会(……ほっ)



司会(今までの流れ的に怖かったけど、この子は大丈夫だったか)



司会「そうだよね、杏ちゃんに限ってねぇ」



杏「そ、そうだよ」



杏「好きとか……恋とか……そんなの考えるの、面倒くさい……面倒くさいもん」



司会「……」



司会「……あ、杏ちゃん?」



杏「……何?」



司会「顔、めちゃくちゃ赤いよ?」



杏「……」





< …………





司会(……もうこれ放送できねぇわ)





…………







《テレビであのアイドル達が大暴露!?》





『悲報、嫁浮気疑惑』



『↑お前浮気されたの? カワイソス、俺の杏ちゃんは浮気してないよ』



『いやぁごめんな、天使ちゃん実は俺のことが好きだったんだわ』



『嘘言うな、天使ちゃんを側で支え続けたのは俺』



『まぁまぁ、皆落ち着けよ、閣下の恋人は俺に決まってんだろ?』



『まな板は貰っていきますね』





P「……」



P(あの番組、まさかカット無しで放映しやがるとは思わなかったが)



P「ネット見てる限りじゃそんなに問題はなさそうでよかった……」



P「……」



『まぁマジな話、あれ演技だから、基本ヤラセだろあの番組』



『なー、俺らの杏ちゃんがあんなデレるわけがない』



『いいから現実見ろよ、俺の隣で今歌姫が寝てるんだから』



『料理の途中で寝落ちでもしたの?』





P「……」



P(なんだろう……アイドルのファンの人達って愛に溢れてるのか単純に馬鹿なのかよくわかんない……)



P(……というかなぁ、そんなことより)



杏「……」ジー



P「……」



P「……」チラッ



杏「……!」バッ



P「……」



P(……これは一体なんなんだろうな)



杏「……」ジー



P「……」



ちひろ「……あの、プロデューサーさん」



P「は、はい」



ちひろ「杏ちゃんに何かしましたか?」



P「いや……」



ちひろ「じゃあなんであんな風に……」



杏「……」ジー



P「……」



ちひろ「……」



ちひろ「ここ最近ずっと遠巻きにプロデューサーさん睨んでますよね、本当に何もしてないんですか?」



P「俺も心当たりは無いんですが……」



P「あの例の番組の収録後、杏が急に俺と距離を置きたいって言ってきて」



ちひろ「はぁ」



P「あまりにもうるさいもんだから、よくわかんないけど許可したんですよね」



ちひろ「許可したんですかっ!?」



P「まぁ当分はレッスンのみなので俺が付いてなくても多少は大丈夫じゃないかと思いまして」



P「ただ……」



杏「……」ジー



P「遠くからじっと見られるのは……わかんないです、いたたまれません……」



ちひろ「……」



P(……でも)



P(もう一週間たつし……そろそろ……)



P「……よし」





…………







杏「……」



杏(プロデューサーの側にいると変な感じになっちゃうから、距離をおいてみたけど……)



杏「……うん」



杏(こうやって遠くからプロデューサー見てもあの感じはしなくなったし、そろそろ大丈夫……のはず)



杏(……)



杏(……でも)



杏(なんだろう、出来るだけ会わないようにしてくれって言ったのは確かに杏だけどさ)



杏(本当に受け入れるし……それに、もう一週間たつのに何も言ってこないし……)



杏(……)



杏(ちょっと、イライラする)



杏(……というか、なんだったんだろあれ)



杏(プロデューサー見るとこう、もやもやして……落ち着かなかったっていうか……)



杏(どうして……)



杏(……)



杏(……!)



杏(い、いや、絶対、絶対それは違う! 絶対に絶…)



P「杏」



杏「うわあっ!」



P「おわっ!」



杏「な、何……え? プ、プロデューサー? い、いつのまに……」



P「わ、悪い悪い、驚かすつもりはなかったんだけど……考え事でもしてたのか?」



杏「な、なんでもない……それより……あ、杏になんの、用?」



P「いや、お前が俺に近付くなって言ってもう一週間だろ?」



P「そろそろ、それも終わりにしたいかなーって」



杏「あ、そ、そう……うん……」



杏「……うん」



P「……」



杏「……」



杏「……!」ダッ



P「え、ちょ、おま」



杏(無理……無理だあれ! 無理だよあれ!)



杏(大丈夫になったと思ったのに! なんで……!)



杏(……なんで……!)



P「お、おい! どこ行くんだ! おいってば!」





…………







ちひろ「それで……」



P「……」



ちひろ「今度は一週間杏ちゃんと追いかけっこですか」



P「はい……」



P「あいつ、本気出したら凄いんですね……街中で痴漢と叫ばれそうになって逃げられたり、家に侵入しようと思ったら夜逃げされてました」



P「今なんてもう、あいつが何処にいるのかもさっぱりです」



ちひろ「はぁ……」



P「……」



P「……深くは、深くは考えないようにしてたんですが」



P「あそこまで逃げられるとなると……もしかして俺、あいつに物凄く嫌われたりしたんですかね」



ちひろ(……杏ちゃんに限ってそれはないと思うけどなぁ)



P「あいつに嫌われたのなら……俺はとんでもねぇです、とんでもねぇでやんす……」



ちひろ「プ、プロデューサーさん、落ち着いて……」



P「せめて今あいつのいる場所が分かれば……」



ちひろ「……」



ちひろ「……あの」



P「……」



ちひろ「杏ちゃん、夜逃げってことは家にいないんですよね?」



P「はい……」



ちひろ「実家は北海道だから遠いし、親の人からも連絡来てないですよね」



ちひろ「短期間過ぎて引越しする間も無かっただろうし、きっと今杏ちゃんがいるとこって……」



P「……」



P「あ」





…………







杏「……」



杏(きらりにお世話になって一週間経ったのか)



杏(ちょっと申し訳ない気もするけど……よかった、こういう時に頼らせてもらえる相手がいて)



杏(……)



杏(……でも、いつまでもこのままじゃいられないよね)



杏(どうしよう……)





ガチャ





杏「……あ」



杏(玄関の音だ、帰ってきたかな)



杏(……うん、考えるのは後でいいや、なんとかなるよ多分)



杏(今はとにかく、きらりのお世話になっとこう)



杏(……)



杏(いつ終わるかは……分からないけど……)



?「……」ガチャ



杏「おかえりきらりー、お仕事お疲……れ……」



P「……」



杏「……」



P「にょわー☆」



杏「」



P「やっと追い詰めたぞ杏」



杏「プ、プロデューサー……なんで……!?」



P「お前がいくら逃げても、俺にはお前がどこにいるか丸分かりなんだよ」



P「まぁ、分かってたけどなんかこう、ほら、こう、うん……いや、本当に分かってたんだけど……そういうことだ!」



杏(なんで目をそらしてるの……!)



杏(と、というか……早く、早く逃げないと!)



P「ここにはもう逃げ場はないぞ、杏」



杏「!」



P「お前もよく分かってるんじゃないか? この家の……この凄まじくファンシーな部屋はきらりんルームだろ?」



P「何故かは考えたくもないが、ここは防音室になっていて、外から鍵をかけることもできる仕様だ」



杏「……」



P「そしてきらりに頼んで、俺がこの部屋に入ったらすぐ外から鍵をかけてもらうようにした、もうこの部屋から俺たちの力で出れることはない」



杏「きらり……!」



P「まぁそう言ってやるな……俺がな、杏と喧嘩しているからどうにか二人きりになって謝りたいって言って協力を頼んだんだ」



P「……あいつは本当にいい子だよ」



杏「……」



P「……」



P「いろいろ……」



P「いろいろ考えたんだ、お前がなんで俺から逃げるのか」



P「だから今日、その話をしよう」





…………







P「……」



杏「……」



杏(今すぐここから逃げたいけど……どうしようもない……)



杏(……また変な感じする……顔も熱い……)



杏(でも……プロデューサーから逃げられないなら……うう、もうしょうがないのか……)



杏「……」



杏「あ、あのさ」



P「……」



杏「……」



杏「……考えたって、何を?」



P「やっとこっち向いてくれたな」



杏「……さっきも向いてたじゃん」



P「いや、そうだな……でも、久しぶりにお前と向き合えた気がするんだ」



杏「……」



P「……しかし顔赤いなお前、少し前からずっとそんな感じに見えるが大丈夫か」



杏「余計なお世話だっ!」



P「……んと、まぁとにかく話を進めようか」



P「俺は今からお前にいくつか質問をする」



P「それについてお前が答えてくれるかはお前が決めてくれればいい……こんな空気は嫌いなんだ、さっさと終わらそう」



杏「……」



P「一つ目」



P「お前は、俺のことをどう思っている?」



杏「にぇっ……!?」



P「なんだその妙な声は」



杏「妙な質問するからじゃんか!」



杏「と、というかその質問って……え、そんな……もしかして……」



P「そうだ、俺はお前が俺のことを嫌ってるんじゃないかと思ってる」



杏「……」



杏「ん?」



P「俺から逃げるんだからそれが一番正しいんじゃないかと思ったんだが……」



杏「あ、そう」



P「……」



杏「……」



P「え、違うのか?」



杏「……」



杏「……多分違うと思う」



P「なんだその間」



杏「なんでもない」



P「少し不安になるな……しかしそうか、杏は俺のこと嫌ってるわけじゃなかったのか」



P「……」



P「本当に?」



杏「……本当だけど」



P「……ちょっとトイレ行ってくる」



杏「え、ここ、外出れないってさっき……」



P「……」



杏「ど、どうしたの急に後ろ向いて?」



P「うるさい! こっち見んな!」





…………







P「ふぅ、落ち着いたとこで二つ目の質問だ」



杏「なんで落ち着いてなかったの……目、赤いけど大丈夫?」



P「……いいから質問いくぞ」



P「二つ目の質問は、お前はアイドルやめたいか? だ」



杏「え……」



P「もし俺自身が嫌われてるわけじゃないのなら、逃げる理由はそういうことなのかもしれないと思ってな」



P「確かにアイドルは大変だし、普通にダラダラと暮らしていくのが理想のお前にとってデメリットが多いのかもしれない」



P「……お前はアイドル活動が嫌なのかと」



杏「……それは」



杏「……」



P「……答えられないか」



杏「そういうことじゃ……ないけど……」



P「俺はお前が引退宣言した時頼んだよな、アイドル続けて欲しいって」



P「もしそれが今も重荷になってるならもう気にするな、俺はお前の意思で決めて欲しい」



杏「……」



P「だから、三つ目の質問だ」



P「……なんで、お前はアイドルやってるんだ?」



杏「……っ!」



P「……」



P「もし、それが分からないんだったらいい、アイドルなんかやめてしまってもいいんだ」



杏「……」



杏「……ね」



P「ん?」



杏「分からないなら……アイドルやめないといけないの?」



P「……」



杏「……」



杏「そんなの……そんなのズルイよ、ズルイ……」



P「やめろなんてまでは言うつもりはないが……でもこれは考えないといけないことなんだ」



杏「……」



杏「……なんか嫌な予感はしてた」



杏「最近ずっと杏も変だったし……このままだと面倒くさいことになるんじゃないかって……」



P「……?」



杏「……杏は」



杏「杏がアイドルやってる理由なんて、もうとっくにわかってる……わかってるよ」



杏「プロデューサーはいつだってそうだった……いつだって杏と一緒に……だから

杏は……」



杏「……でも、でもそれって結局『そういうこと』だから……面倒くさくなるから、考えないようにしてたのに……! 気付いてない振りしてたのに!」



杏「……それ、なのに……!」



P「……杏?」



杏「……それなのに! 杏にアイドルやってる理由聞いてくんなー! なんでそんなことするんだ! 印税でいいじゃん、いいじゃんか!」



P「お、おい……?」



杏「もうバカプロデューサー! 知るもんか! 責任とれバカァ! 」



P「せ、責任って何のことだ? 急にどうしたんだ!?」



杏「うう……本当にバカ……」



杏「やだよこんなの……面倒くさいだけって分かってるのに」



P「あ、杏……?」



杏「……」



杏「……杏とプロデューサーは……アイドルとプロデューサー、だよね?」



P「お、おう」



杏「杏がここにいるのは、プロデューサーが杏のプロデューサーだから……」



杏「理由なんてそれだけで良かった……杏はそれが良かったよ」



P「……違うのか?」



杏「……もう、変わっちゃった」



杏「プロデューサーが嫌な質問したせいだ」



P「変わったって………お、俺、そんなダメなこと言ったか?」



杏「ダメ、本当に……ダメ……」



杏「理由が無いなら杏はアイドル続ける意味なんて無いんだし……印税も貯まったからそれが言い訳には出来ないし……」



杏「プロデューサーに頼まれたから……それも理由に出来ないなら……どうしようもないじゃんか……」



P「どうしようもないって、何が……」



杏「どうしようもないの! プロデューサーにそんな質問されたら……認めるしかなくなった!」



杏「もう知らない……すっごく、すっごく面倒くさいことになるけど、杏は知らないから……」



P「……」



杏「杏がここにいるのは……アイドルを続けてる理由は……!」



杏「―――――実は杏は!」







……

…………











きらり「……にょわー?」











…………

……









…………







P「さ、仕事行くぞー杏」



杏「……」



P「どうした?」



杏「仕事に行きたいのはやまやまなんだけど……実はプロデューサーに言わなくちゃいけないことがあって」



P「なんだ?」



杏「実は杏は……」



杏「ダラダラ星人なんだ!」



P「おう、そうか、仕事いくぞ」



杏「やっ、やめろ! 引きずるんじゃない!」



P「全く、アイドル続けるって言っても何も変わらず仕舞いかお前は」



杏「えー、変わったよ、ほら、ちゃんと杏の目を見て」



P「……」ジー



杏「……」



P「……」ジー



杏「……」



P「……ま、そうだな」



P「俺から逃げてる時は目を合わしたらなんか顔真っ赤になってたけど、なってないのは成長……なのか?」



杏「……」



杏「ま、もう開きなおっちゃったらどうでもよくなったしね」



P「……? なんのことだ?」



杏「なんでもない」



P「というかあれは何で赤くなってたの、照れ屋なの?」



杏「うるさいよ」



P「ま、いっか、じゃあ今日も楽しい楽しいアイドル活動だ、頑張るぞ」



杏「えー……頑張りたくない……」



P「成長しろよ……ったくお前は……」



P「……」



杏「……? どうしたの?」



P「いや、お前あの時最後に何か言いかけてたろ?」



杏「……あの時って、あれ?」



P「おう」



P「あのタイミングできらりが乱入してきちゃったからさ、結局お前からはアイドルを続けたいっていう意思表示しか聞かせてもらえなかったけど……」



P「あの時、一体なんて言おうとしたんだ?」



杏「……」



杏「……!」べチン



P「ぐほあっ!」



P「なんで、なんで殴られたんだ俺!」



杏「……プロデューサー」



P「な、なんだよ……」



杏「杏はもう逃げないよ、なんかね、逃げる方が面倒くさい気がしてきたし」



杏「けど、その続きは……あれだ、将来二人分くらい印税で生活が出来るようになるまで待っててよ」



P「二人分?」



杏「うん、やっぱり杏はダラダラするのは一緒の方がいいから……」



P「……?」



杏「とにかく! これからも杏はたっぷりダラダラするし、怠けたりするよ!」



杏「だからプロデューサーには、杏をずっと……いつまでもずーっと甘えさせてもらうから!」



杏「だから、いつかその時まで……いや、その時からもだけど……」



杏「……よろしくね、プロデューサー」



P「お、おう……?」











おわり





おまけ









きらり「あ、杏ちゃん、ごめんにぃ……」



杏「……? どうしたのきらり?」



きらり「だって……だってきらり、杏ちゃんとPちゃんがちゃんと仲直りしてるかな、ハピハピしてるかなって思って……つい……」



杏「あぁ、あれね、いいよ別に」



杏「……むしろ、タイミング的には助かったかもしんないし」



きらり「でも! でもでも!」



きらり「せっかく杏ちゃんがPちゃんに好き好きーってするの邪魔しちゃった!」



杏「」



きらり「杏ちゃんがやっと素直にPちゃんに……そ、その……うきゃー!しようとしてたのにきらり……!」



杏「え、待って、待ってきらり、なんで杏がプロデューサーのこと……なんで、知って……」



きらり「……?」



きらり「杏ちゃん、Pちゃんといるといつもすっごく、すっごーく幸せしてるからてっきり……」



杏「……」



きらり「……にょわ?」



杏(杏って……杏って……)



23:30│双葉杏 
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