2014年06月27日

律子「夢見る脇役」

美希「ねぇ、りつこー?」



律子「さんをつけなさいよ」



美希「いいじゃん、2人っきりなんだから」





律子「……。で、何よ?」



美希「お刺身によくついてくる、この、大根?これなんて言うの?」





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律子「『つま』ね」



美希「妻?大根がお魚の奥さんなの?」



律子「あら正解よ、美希」



美希「えー!そうなの!」



律子「『つま』はね、漢字で書くとあんたの言った通り『妻』って書くのよ」



美希「えへ、スゴイでしょ?……スゴイでしょ?」



律子「……どうしたのよ」



美希「むー頭くらい撫でてくれたっていいの」

律子「はいはい。で、語源としては『端(つま)に置かれたもの』、『添え物』として夫婦の関係に見立てて当てはめたんですって」



美希「へー、最初はダジャレだったんだね」



律子「ええ。主役である「刺身(夫)」の「傍に添えられ(寄り添う)端に置かれるもの(妻)ってことでね。……美希にしては冴えてたわね」



美希「むー、ミキ『にして』は余計なの」

律子「まぁ例えるなら、あんたが刺身で、私がつまってことね」



美希「ふぇ!」



律子「何よ、大きい声出して」



美希「律子はミキのお嫁さんになりたいってこと?ミキ、そういうのはまだ早いって思う、」



律子「ていっ!」



美希「ッ痛〜いの!」



律子「10年早いのよ、あんたには」



美希「律子と4つしか変わらないもん」



律子「そのうちまた5つ離れるわよ」



美希「またすぐ追いつくの!……律子はさ、お刺身さんになりたいってことなかったの?」



律子「何言ってんのよ、あんた?」



美希「ミキ的にはさ、律子がアイドルするの良いかもって思うんだ」



律子「……褒めたって夜におにぎりはダメよ」



美希「そんなんじゃないもん!だって律子スタイル良いし、歌だって上手いし、それに」



律子「ストップ。ありがとうね、美希」



美希「……」

律子「でもね、私は最初からマネージャーとか、プロデューサーとかの裏方希望だったのよ」



美希「うん」



律子「それに、そういうキラキラした役は私なんかより美希の方がお似合いよ。社長だってあんたには期待してるんだから」



美希「そうなの?」



律子「セルフプロデュース多めなこの事務所であんただけプロデューサーの私がついてるでしょ」



美希「ミキ、ちょっと怖くなってきたの」



律子「何弱気になってんのよ、あんたらしくもない。……あんたは大丈夫よ、私と違って才能あるもの」



美希「律子もアイドルなの?」



律子「ぜーんぜん売れないFランクアイドルだったけどね。まぁその経験が今のあんたのプロデュースに役立ってるんだから、無駄にならなかったのは良かったけどね」



美希「今ならもっと上までいけるの!ミキだって律子のおかげでCランクまで来れたんだもん。……律子だってお刺身が良いでしょ?」



律子「つまがないとお刺身は美味しくならないわよ」



美希「えっ?」



律子「あんたの嫌いな魚の生臭い匂いを消したり、見た目とかを美しくしたりすんのよ。串カツのキャベツと同じよ」



美希「……うん」



律子「脇役には、脇役の大事な仕事がある。輝くのはあんた、支えるのは私。あんたが戦うのが舞台の上なら、私が戦うのはこの裏方なのよ」



美希「……」



律子「美希、あなたに私の夢知ってる?」



美希「……ううん」



律子「あんたが立派なトップアイドルになることよ」



美希「……!」



律子「あんたと一緒に頂点の景色見てみたい。……夢見過ぎだと思う?」



美希「ううん!全然!それならミキなるよ、律子の夢に!律子の夢は、ミキの夢だから!」



律子「ありがとう。……なら、そのために早く帰りなさいよ、明日も早いんだから」



美希「律子はまだ帰らないの?」



律子「私はもうちょっと書類作業がね。駅まで送ろうか?」



美希「そこまで子どもじゃないもん!じゃあお疲れさまー」



律子「はーい、お疲れ」



お刺身さんになりたくない、か。

憧れたりしてないって言ったら正直嘘になる。

けれど、私はもう選んだのだ。

自分から輝く道じゃなくて、誰かを輝かせるそんな道を。





でも、もし私を輝かせてくれる、導いてくれる、そんな人がいたならば。

……私もあの輝いたステージに立てたのかしら?

その日、私は夢を見た。

そこには魔法をかけられたように、一面にいっぱいいっぱいと広がる緑の光を浴びてlivEしている輝く笑顔の私の姿があった。

ふと横を見てみると、スーツを着た男の人が私に向かってガッツポーズを取っていた。

あぁ、私はこの人に『アイドル』にしてもらったんだ。この人が私をみんなの『アイドル』へと導いてくれたんだ。





夢は夢だった。

私は脇役だと思ってたのに。

でも今日は何だか無性にその夢に『アイドル』になってみたかった。



おわり



17:30│秋月律子 
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