2013年11月05日

佐久間まゆ「紫色のリボン」

―とある温泉街にて―

まゆ(うふ、うふふふふふ……)



まゆ(今日は温泉旅館で撮影のお仕事です。3日連続の撮影スケジュールで、1日目は
   ニュージェネの皆さんと楓さんと瑞樹さん、2日目はまゆ、3日目は礼子さんと
   洋子さんとフレデリカさんと裕子ちゃんと清美さんが交代で撮影をします)





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まゆ(……うふ、気が付きましたか?)



まゆ(そうです。スケジュールの都合で、2日目はまゆ1人なんです。1日目の皆さんは
   東京でのお仕事があるので既に帰っていて、3日目の皆さんは明日旅館に到着する
   予定なので今日旅館にいるのはまゆとプロデューサーさんだけなんです)



まゆ(まゆとプロデューサーさんのふたりっきりなんです)






まゆ「うふふふふふふ。綿密にスケジュールを調整していた甲斐がありましたぁ。ちひろ
   さんにも買収…… いえ、協力して戴いて準備も万全です」ウフフフフ…

まゆ「待っててくださいプロデューサーさぁん、まゆがすぐに参りますよぉ♪」イソイソ

まゆ「いけないいけない、そ・の・ま・え・に。 プロデューサーさんに連絡しなくちゃ。
   たしか駅まで迎えに来てくれるって言ってましたねぇ。ふたりっきりで、旅館まで
   楽しいドライブ……うふふ」ピポパ



 プルルルル…プルルルル…









P『はい。Pです』

まゆ「うふ、プロデューサーさぁん。まゆですぅ。駅に到着しましたよぉ♪」ニコニコ

P『おう、まゆか。無事に着いて良かったよ。悪いがちょっとこっちでトラブルがあって、
  お前を駅まで迎えに行けそうにないんだ。こっちでタクシーを手配するから、それに
  乗って旅館まで来てくれないか?領収書も貰っておいてくれ』テキパキ

まゆ「え、あ、はい、わかりましたぁ……」ポカン






P『すまん。それじゃあ10分くらいで到着すると思うから。体を冷やすといけないから
  待合室の中で待ってろよ。じゃあな』プッ



まゆ「……なにやら嫌な予感がしますねえ」ピッ







***



―旅館・Pの部屋―



凛「けほっ、けほっ…… う〜ん……う〜ん……」



まゆ「なるほどぉ、こういうことでしたかぁ……」ムッスー

P「すまん。昨日の撮影クルーの中に風邪気味のスタッフがいたらしくて、凛がもらって
  しまったんだ。とりあえず瑞樹さん達には東京に戻ってもらったけど、凛は熱も高い
  から大事をとってもう一泊する事に…… って、何を怒ってるんだ?」キョトン

まゆ「べつになんでもありませんよぉ。ところでまゆの撮影はどうなるんですかぁ?
   予定だとそろそろ準備をしないといけないはずですけど……」チラッ






P「ああ、その件だが撮影クルーが全員風邪ひいたみたいで、代わりのクルーが来るのが
  明日になるから今日は中止だ。まゆの撮影は3日目のメンバーと一緒にやるよ。来て
  くれたのに悪いが、今日は温泉にでも浸かってゆっくりしてくれ」ポリポリ

まゆ「今日は凛さん、明日は礼子さん達と一緒…… ふたりっきりになれるチャンスは
   なさそうですね。まゆの計画が全て水の泡です……」ガックシ

P「計画?ああ、仕事の事か。安心しろ、スケジュールの調整はしてあるから問題ない。
  まゆはもうすぐCDデビューも控えているし、東京に戻ったら忙しくなるからな。
  真面目なのはお前の良い所だが、たまにはのんびりする事も大事だぞ」ナデナデ

まゆ「わかりましたぁ。プロデューサーさんが言うならそうします……」ハア





P「すまんなまゆ。俺は今日一日ここで凛の看病をしてるから、何か用があればいつでも
  来てくれ。しかし町医者に来てもらう予定だったのに遅いな。ちょっと女将さんに
  確認して来るから、その間だけ凛を看ててもらっていいか?」スクッ

凛「 !? 」ビクッ

まゆ「かまいませんよぉ。まゆがしっかり看てますから安心してくださぁい」ニッコリ

P「ありがとう。じゃあちょっと行ってくる」ガラッ



 タッタッタッ…







まゆ「……さて、凛さぁん」ジロリ



凛「……なに?」ギロリ



まゆ「やはりあなたはまゆとプロデューサーさんのお邪魔虫さんみたいですねぇ。風邪を
   ひいてまでまゆの計画を潰すなんて、まゆもびっくりですよぉ……」ゴゴゴゴゴ…

凛「そんなの知らないよ。私だって好きで風邪を引いたんじゃ……けほっ、けほっ」

まゆ「…………?」

凛「けほっ、けほっ、こほっ、ごほっ!げほっ!げほっ!」







まゆ「…………」スッ…



 ピタ ペタペタ ナデナデ ジロジロ



凛「……何の真似?私の顔をベタベタ触って、何するつもりなの?」コホッ

まゆ「……どうやら本当に重症みたいですねぇ。おでこも結構熱いし、これは放って
   おくとあまりよくないかもしれません」ペタペタ

凛「けほっ、まゆにとっては好都合なんじゃないの?今なら体の小さいまゆでも、けほっ、
  私に勝てるかも、しれないよ。私もやり、返すけど、けほっ」ギロリ







まゆ「うふ、あいにくまゆには病人いじめをする趣味はありません。それに風邪をひいて
   なければまゆに勝てるというのは、凛さんの勝手な思い込みですよぉ?ほんとうに
   躾のなってない犬みたいですねぇ」ウフフ…



凛「くっ……」ギリリ






P「すまんまゆ、診察を頼んだ医者だが、町医者のくせに道に迷ったらしい。とりあえず
  駅の場所は分かるみたいだから、そこまで迎えに行ってくるよ。30分くらいで戻る
  からもう少しだけ凛の事を看ててもらってもいいか?」ガラッ

まゆ「いいですよぉ。気を付けて行ってきてくださいね」ニッコリ

P「重ね重ね悪いな。まゆが来てくれて助かったよ。それじゃあ凛の事を頼む!」バタバタ

まゆ「いってらっしゃ〜い♪」ヒラヒラ

凛「ごめんプロデューサー……」ショボン






***



凛「私のそばにいたら風邪がうつるよ?けほっ、温泉にでも入ってきたら……?」ケホッ ケホッ

まゆ「ご心配なく。まゆは体調管理は完璧にしていますからぁ。仙台は東京よりも寒いし、
   モデルは仕事で薄着をしなければいけない事も多かったので」ニッコリ

凛「……あっそ。けほっ、それじゃあ好きにしたら?風邪ひいても知らないからね」ゴロン

まゆ「病人になっても可愛げのない人ですねぇ。それよりちょっと頭をあげてください。
   氷枕を取り換えて来ますから」ハア






凛「頭痛がするから動かせないんだけど。それに熱はあるけど悪寒がするし、このままで
  いいよ。ぷにぷにしてて気持ちいいし」フニフニ

まゆ「じゃあ勝手に持っていきますね」シュバッ

凛「いっ!? 」ギョッ!!

まゆ「文句は後で聞きますから、少しの間だけ普通の枕で我慢していてくださいね」スタスタ



 ガラッ ピシャッ



凛「何なの一体……?いつものまゆじゃない…… 」ポカーン







―――



まゆ「お待たせしましたぁ。お加減はどうですかぁ?」ガラッ

凛「枕が変わって悪化したんだけど…… 頭痛い…… けほっ、けほっ」ジト

まゆ「それは気のせいですねぇ。はい、氷枕です。少し頭をあげてください」ヒョイ



凛(あ、冷たくて気持ちいい。それにタオルがさっきより多めに巻いてあって、新しい氷
  なのに冷た過ぎなくて丁度良い温度になってる……)ポスン






まゆ「ついでにお布団も新しいのに替えましょうかぁ。朝からずっと同じ布団だと汗を
   吸って風邪の菌も付いてるでしょう。少し待ってて下さいね」スクッ

凛「え、いいよそこまでしてくれなくても…… 」コホッ

まゆ「遠慮はいりませんよぉ。ここは旅館ですからお布団もいっぱいありますし、贅沢に
   使っちゃいましょう。家では大きめのタオルを3枚用意して、枕の上と体の下側と
   掛け布団の間に挟んでくださいね。それを定期的にこまめに取り換えると同じ効果
   がありますから」ヨイショット

凛「そうなんだ。けほっ、詳しいんだね……」





まゆ「まゆも昔はよく風邪をひいてましたからねぇ。さっきも言いましたけど、仙台は
   寒い所ですから油断するとすぐに風邪をひいてしまいますので、予防法と対策は
   小さい頃から教えられたんですよ。浴衣も新しいのに着替えてくださぁい」サッ

凛「わかった……」ノソノソ

まゆ「うふふ、ずいぶん素直になりましたねぇ。まるで大きな子供みたいです」ニコニコ

凛「ううぅ、よりにもよってまゆにこんな姿を見られるなんて……」カアア

まゆ「卯月さんや未央さんがいたら面白かったかもしれませんねぇ。加蓮さんと奈緒さん
   でも良かったかもしれません。うふふ……」クスクス






―――



 ショリショリ…



凛「けほっ、何やってるの……?」ジロ

まゆ「見てわかりませんかぁ?りんごをむいてるんですけど」ショリショリ

凛「それは分かるけど…… もしかして私の為に?」

まゆ「すりおろしたりんごと生姜の汁と、はちみつをお湯で割ったものを作っています。
   その調子だとお粥は食べられないでしょうから。生姜はお嫌いですかぁ?」サクサク

凛「大丈夫だけど…… 」ケホッ







まゆ「もう少しで出来ますから待っててくださいね。うふふ、これを作るのも久しぶり
   ですねぇ。風邪を引いた時はこれが一番ですから♪」シャコシャコ



凛「……ねぇ、聞いていいかな」



まゆ「なんですかぁ?」カチャカチャ



凛「どうしてここまでしてくれるの?まゆは私の事が嫌いなんじゃないの……?」ジロ






まゆ「うふ、凛さんはストレートですねぇ。そういう事を恐れずに聞ける勇気があるのは
   素直に尊敬します。まゆが看病をしているのがそんなに不思議ですかぁ?」ニヤリ

凛「うん。絶対変。こうしてよくしてくれるのはすごく感謝してるけど、違和感の方が
  大きくて素直にありがとうって思えない。プロデューサーに頼まれたから?」ケホッ

まゆ「確かにそれもありますけど、看病する事が習慣になっているんですよ。凛さんは
   ピンと来ないかもしれませんが、風邪は長引くと命を落とす危険もあるんですよ。
   だからまゆの地元では昔からどこの家庭でも風邪の予防はしっかりやってますし、
   お医者さんと同じくらい治療法もよく知ってるんですよ」マゼマゼ

凛「そうなんだ。だから手際も良いし看病も慣れてるんだ……」コホッ






まゆ「それにちゃんと治ってもらわないと、プロデューサーさんや明日来る他の皆さんに
   うつされても困ります。裕子ちゃんだけは大丈夫そうですけど、他の方はそうでも
   なさそうですしねぇ。感染源は根元から絶たないと」フー フー



凛「何かバイキン扱いされてるみたいで複雑な気分。その通りだけどさ……」コホッ







まゆ「はい。だから好き嫌いという感情はひとまず置いといて、まずは早く風邪を治して
   下さい。ケンカがしたいなら元気になってからいくらでも相手をしてあげますから。
   さぁ、温かいうちにどうぞ」ホカホカ



凛(もしかして私が変な薬とか入れてないか疑わないように、まゆはわざわざ部屋の中に
  材料を持って来て目の前で作ってくれたのかな……?)



凛「わかった。色々疑ってごめんね。今日はありがと」コクリ、コクリ…



まゆ「うふふ、どういたしまして……」ニヤリ







***



凛「すぅ…… すぅ……」Zzzz…



まゆ「うふふ、凛さんもまだまだ甘いですねぇ。調理器具に睡眠薬を塗り込んでおいたら、
   効果は薄くなりますけど病人を寝かせるくらいは出来るんですよぉ?ゆっくり寝て
   体を休めてくださいね」ナデナデ



まゆ「本当はプロデューサーさんに使うつもりでしたけど、今回は仕方ありませんねぇ。
   凛さんがいた時点で計画は破たんしていましたし、風邪の凛さんの事が気になって
   まゆがどんなにプロデューサーさんの気を引いても無意味でしょうし……」ハア







凛「むにゃむにゃ……」



まゆ「あ、そうそう。忘れてましたぁ。まさかこれが役に立つ日が来るとは思いません
   でしたねぇ。東京に行く前におばあちゃんに持たされましたけど、ついでだから
   凛さんに使ってみましょう」ゴソゴソ







 シュルシュルシュル… キュッ



凛「ううん……」ゴロン



まゆ「これでよし、と。さてと、それじゃそろそろプロデューサーさんも帰って来ますし、
   まゆも部屋に戻りましょう―――――」スタスタ







***



P「早く来てください!凛が今も高熱で苦しんでいるんです!」バタバタ

医者「そんなに焦らんでくれ。ワシも冬の寒さで関節にきてるんじゃ」ヨボヨボ

P「ん?部屋の戸に貼り紙?『凛さんが寝ているので静かにしてください まゆ』だと?
  まゆはいないのかな……」カラカラカラ…







凛「すぅ…… 」Zzz…



P「気のせいか、凛の顔色が良くなっているような…… 熱も下がってるし、それに何だ
  この紫色のリボンは?何かのおまじないか?」キョトン

医者「ほっほっ!これは『病鉢巻』のつもりかのう。ワシも長い間医者をやっているが、
   実物を見たのは初めてじゃ」ケラケラ

P「病鉢巻?何ですかそれは?」キョトン









医者「時代劇で見た事がないか?解毒と解熱作用のある薬草で染めた鉢巻を頭に巻く事で、
   病状を和らげる効果があると言われているんじゃ。こんな治療を行うとは、看病を
   した子はかなり風邪の治療に詳しいみたいじゃのう」



P「ああ、そういえば病気の殿様がこんなのを頭に巻いていたような…… 仁美が見たら
  喜びそうだな。しかしまゆのやつ、いつも赤いリボンを持ち歩いているのは知って
  いたが、こんなリボンも持っていたのか……」マジマジ







医者「ほほう、どういう看病をしたのかも紙に書いてまとめてくれているのう。民間療法
   ではほぼ完璧な治療じゃな。この子の病状もかなり安定して熱も下がっているし、
   明日には回復しておるじゃろう。一応じゃが薬を出しておくよ」ゴソゴソ



P「よろしくお願いします。すごいなまゆ、家事スキルは高いと思っていたがここまで
  とは。響子と同じくらい、あいつも将来良い嫁さんになりそうだな……」フムフム



***



―その頃露天風呂では―



まゆ「ふんふんふ〜ん…… はぁ〜、いいお湯ですねぇ〜♪」ザパーン



おわり





以上です。日本シリーズ見ながら投下してたので誤字脱字があるかもしれませんが、
チェックした所ひとまず大丈夫でしたw皆さんも風邪をひかないように注意して
下さい。では。



>>32
画像先輩代行ありがとうございますwちなみに年配の老人は黒い病鉢巻を
巻くそうです。

>>33
すみません。物足りないかもしれませんがこれで終わりですwでは作者は
日本シリーズの観戦に戻ります。頑張れ楽天!

13:02│佐久間まゆ 
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