2013年11月05日
モバP「新人研修が終わった」
みなさんバリツアーお疲れでした。そして投下します
P(智香ちゃんはチアリーダーとして、非凡な何かを持っているのだと思う)
P(彼女自身、ストイックにその道を追求する気でいる)
P(智香ちゃんはチアリーダーとして、非凡な何かを持っているのだと思う)
P(彼女自身、ストイックにその道を追求する気でいる)
P(だから俺のすることは、おそらく完全にただのお節介でしかない)
P(でも彼女の根底にあるものは、間違いなくアイドルの道にもつながるはずだ)
P(故郷で恩師が示した道が「アイドル」だったら)
P(彼女はきっと今、アイドルの道をストイックに追求してたんじゃないか。そんな風に思う)
P(だから俺は道を見せたい。こういう方法もあるんだって)
P(それでも彼女がチアを選ぶなら、その時こそきっぱりと諦めよう)
――金曜
-事務所-
P「ちひろさん、今回はありがとうございます。無理を聞いてもらって」
ちひろ「お礼なら社長に言ってください。最終的に決めたのは社長ですからね」
P「最近全然社長に会わないんですよね……」
ちひろ「いつ寝てるのかわからないくらい忙しい人ですから。それより……」
ちひろ「行くからには、社長の代役、ちゃんと果たしてきてくださいね」
P「ですよね」
ちひろ「あの子は愛梨ちゃんや美波ちゃんと違って、まだそこまで経験ありませんから」
ガチャ
??「おはよーございますー!」
ちひろ「おや来ましたね」
??「あっちひろさん! おはよーございます!」
ちひろ「おはようございます加奈ちゃん。今日もいい感じでげっ歯類ですね」
加奈「えぇー? もぉちひろさんっ! いきなり何言ってるんですかぁ!」プンスカ
ちひろ「かわいいですねえ」キュン
P「かわいいけどそりゃ怒るでしょ挨拶からげっ歯類扱いされちゃ」
加奈「げっしるいってなんですかぁ!」プンスカ
P「あ、そこからか」
ちひろ「加奈ちゃん。LIVEバトル、がんばってくださいね」
加奈「あ、そうでした! 社長の代わりに別のプロデューサーさんがついて来てくれるって……」
ちひろ「はい。この男です」クイックイッ
P「Pです。よろしくお願いします」
加奈「わ! はじめましての人かなっ。今井加奈です! よろしくです!」
P「まだ新米でして。今井さんとは何度かすれ違ってはいたんですが、挨拶できてなかったですね」
加奈「そうだったんですか? こちらこそ挨拶できてなくてごめんなさいです」ショボ
P(十時さんや新田さんとはまた全然違うタイプだ……ストレートにかわいい)
P「僕なんかが100%社長の代わりとはいかないけど、できる限りのフォローはします」
P「よろしくね、今井さん」
加奈「はいっ!」パアア
P(ま、眩しいっ)
加奈「あ、加奈でいいですよっ。みんなそう呼ぶから」
P「じゃあ、加奈ちゃん」
加奈「はいっ!」パアアア
ちひろ「危うくキュン死しかけるPなのであった」
P「やめて!」
ちひろ「それじゃ、一応明日の仕事の説明をしますね」
加奈「よろしくお願いします!」
P「します!」
ちひろ「……」
ちひろ「明日加奈ちゃんが行く現場は、エネーチケーで放送されるTV番組の収録で」
ちひろ「『爆熱! LIVEバトル』ってタイトルです」
P「熱いな!」
加奈「わたしこの名前好きです! 「ぶゎくねつ!」って発音するんですよ!」
ちひろ「まあ、加奈ちゃんはもちろん、Pさんももう内容知ってると思うんですが」
P「ええまあ。勉強してますから。でも一応説明してください」
加奈「くださーい!」
ちひろ「タイトルのとおり、アイドルたちがLIVEで声援ptを稼いで勝敗を競う番組で」
ちひろ「15分の短い構成なんですが、昨今のアイドルブームと相まって、毎回なかなかの高視聴率を得てます」
加奈「なるほどっ」
ちひろ「加奈ちゃん絶対知ってるでしょう」
加奈「えへ。盛り上がるかと思って♪」
P「加奈ちゃんいい子だなあ」シミジミ
加奈「えへへ」
ちひろ「最近では、たまに枠を拡大してのトーナメント戦やリーグ戦をやったりもしてますが」
ちひろ「今回はいつも通り、1対1のタイマンガチバトルです」
加奈「前回はわたし、負けちゃったんですよ……」ショボン
P「そ、そうなんだ」
ちひろ「加奈ちゃん、前回初出場だったんですけど、ちょっと相手が悪かったんですよ……」
P「ほう」
加奈「本田未央ちゃん……」
P「本田未央……って」
ちひろ「ええ。現代日本のアイドルプロダクション3強の1社、プロダクションOrangeの」
ちひろ「さてPさん、所属アイドルを片っ端から挙げなさい」
P「いいきなり? えーと本田未央、日野茜、城ヶ崎美嘉・莉嘉、諸星きらり、高森藍子、向井拓海、赤城みりあ……など」
ちひろ「まずまずです。本田未央ちゃんはそのエース。さすがにデビュー戦の相手としては最悪でした」
加奈「失敗しちゃって……散々だった……」グス
ちひろ「社長も「あれは仕方ないね♪」って言ってたわ」
ちひろ「まあ、未央ちゃんとのバトルをセッティングしたのもあの人なんですけど」
加奈「社長、期待してくれてたんだ……でも、応えられなくて……」
ちひろ「結構いろんな人に無茶ぶりするから社長。気にしちゃダメです」
P「明日の相手は誰なんですか? あれのルール上、また本田未央じゃないでしょ?」
ちひろ「ええ。明日の相手は」
ちひろ「同じOrangeの、城ヶ崎美嘉ちゃんです」
加奈「えぇっ!?」
P「……きっつ」
ちひろ「そうですか?」
P「人気実力ともに、あまり差がついてないと思うんですけど」
加奈「美嘉ちゃん、かわいいけどちょっと怖い……」
P「見るからに今時のギャルだからな……小動物を怯えさせる何かを持ってるよな」
ちひろ「ファンにひねり潰されますよ」
ちひろ「というか、ぶっちゃけますけど」
ちひろ「別に勝敗はどっちでもいいんですよ」
加奈「ちひろさん……?」
ちひろ「ね、Pさん?」
P「え、俺? ここで?」
加奈「Pさん……」ジッ
P「あーその……確かに、勝負するなら勝ちたいって思うのが普通だけど」
P「別に加奈ちゃんは、この番組で勝つためだけにアイドルになったんじゃないよね」
加奈「あ……」
P「負けて悔しいのは当たり前。勝って嬉しいのも当たり前だ。でもそれは結局それだけのものだから」
P「社長があえて厳しいバトルを連続で組んだのも、そういう意味があるのかもしれないよ」
加奈「……」
P「難しく考えなくていいんだと思うよ」
加奈「……はいっ」
P(まだ煮え切らない感じだ……まあ当然だよな。俺の言葉は咄嗟の思いつきだ。そこそこ上出来だと思うけど)
P「ところで加奈ちゃん」
加奈「はいっ!?」
P「明日の現場、俺の知り合いを一人連れて行こうと思ってるんだ。いいかな?」
加奈「Pさんのお知り合い?」
P「うん。アイドル候補なんだ。その子にアイドルの仕事ってやつを見せてあげてほしい」
加奈「わ、わたしがですかっ?」
P「そう。アイドルってこんなにすごいんだぞってところ、見せてあげてよ」
加奈「わ、わかりましたっ! がんばりますっ」
――土曜
-エネーチケースタジオ・CGプロ楽屋-
智香「加奈ちゃん☆ がんばって!」
加奈「智香ちゃんありがとうっ! わたしがんばるよ!」
P「……すっかり仲良しだね」
P(一緒に連れてきたのは、もちろん智香ちゃん)
P(行きの車中から、すでに2人のテンションはMAXだった)
P(年が近いこともあってすぐに仲良くなったみたいだ)
P(加奈ちゃんはなかなか緊張しいらしいけど、智香ちゃんのおかげで緊張も適度にほぐれたようだ)
智香「ふれっふれっ加奈ちゃん☆ がんばれがんばれ加奈ちゃん☆」シュバッシュバッ
加奈「智香ちゃんダンス上手っ。かっこいい!」
智・加「キャッキャッ」
P(俺いらん気がしてきた。いや冗談抜きで)
P「しばらく空き時間になるから、俺はちょっとOrangeの人に挨拶に行ってくるね」
智・加「はーい☆」
-エネーチケースタジオ・Orange楽屋-
P「ここかな」
??「あっれ? 誰さん?」
P「?」
P「!? うおお!」
??「は?」
P(俺またやってる! めっちゃ動揺しちゃってる!)
P「うおっほん!」
??「……?」
P「はじめまして! 今回対戦させていただく今井加奈のプロデューサー「代理」のPと申します」
??「あ、ああCGのね。そっか、今日はいつもの渋いオジさんじゃないんだね……」
P「社長は別の仕事が外せなくて。私のような平が参りました」
??「ふーん、挨拶に来てくれたってわけ? 謙虚だねー。あ、アタシは城ヶ崎美嘉ね。よろしくー★」
P「今回はひとつお手柔らかにお願いしますね」
美嘉「えー、どうかなー。マジでやるつもりだけど?」
P「はは、ですよねえ」
美嘉「当然っしょ。ま、入んなよ。中にうちのプロデューサーもいるからさ★」
ガチャ
美嘉「戻ったよー」
??「おう、おせーよ。どこほっつき歩いて……あ?」
P「……(なんだこの……チンピラみたいな男は)」
??「おう美嘉。待ち時間で男ひっかけてくるとか、オマエも少しはヤるようになったな」
美嘉「な、何言ってんの!? 違うし! ちょ、あんた! つっ立ってないでなんか言いなよ!」
P「あ、ああ失礼。今回対戦させていただく今井加奈のプロデューサー「代理」のPと申します」
P「対戦前に一目挨拶をと思いまして」
??「へえー。そお。今日はオヤジさん来ないんだ。まあ前回負けちゃったし? 顔合わせたくないのかねえ」フン
美嘉「ちょっと! そんな言い方ないっしょ!」
P「私は名乗りましたので、失礼ですがお名前を聞かせていただけませんか」
美嘉(え、アタシのフォローは無視!?)
??「ああこりゃ失礼。プロダクションOrangeのプロデューサー、PaPだ。よろしくな。名刺交換いっとくか?」
P「ええ是非に」スッ
PaP「あいよ」スッ
PaP「まあ座りな。ほら美嘉も」
P「では失礼して」
美嘉「う、うん」
PaP「あんた新人か? 初めて見る顔だけど」
P「ええ。ちょっと前に研修が終わったばかりです」
PaP「あそう。にしちゃ落ち着いてるね」
P「そうでもないですよ。今も敏腕プロデューサーと売れっ子アイドルの城ヶ崎さんを前にしてプルプルしてます」
美嘉「初対面の人はまずうちのプロデューサーの見た目でヒくからね……」
P(金髪ボウズに軟骨ピアス。凄まじいチンピラ臭。でもいかにも業界人って感じもする)
P「まあもちろん私もヒいてます。どこかのヤンキーが潜り込んだのかと思いました」
美嘉「ははーだよねー★」
PaP「はっきり言うねえ。いいよそういうの」
PaP「でも見た目ほど悪い奴じゃないって自負してるぜ? たまーにさっきみたいな失礼発言するけどさ」
美嘉「あそうだ! あれ! ちゃんと謝んなよ! Pさんはスルーしてるけどさ」
P「社長は社長自身が悪く言われることは何とも思わない人ですから」
P「なので、その代理である私も気にしません」
PaP「……」
P「負けたアイドル本人をディスるようなことがあれば、話は別ですけど」
PaP「……へへっ。平のくせになかなかかっこいいじゃん。オヤジさんの精神はちゃんと受け継がれてんだね」
美嘉「……」ポー
PaP「ん? おいこら美嘉。ポーッとなってんじゃねえよ。ったくオマエはほんとにおとm」
美嘉「んなっ!? なってないし! なるわけないし! バッカじゃないの!?」カアア
PaP「何赤くなってんだオマエ。ったくオマエはそんなだからしょj」
美嘉「だからなってないし! こういうメイクだし!」カアアア
P(チンピラ風プロデューサーとカリスマギャルアイドルか……なんつーかお似合いだな)
P「なんかお二人、プロデューサーとアイドルっていうより、カップルみたいですよね」
PaP「あ! おいこらあんた! トドメさすようなことを!」
P「え」
美嘉「か、かっぷる……?」カアアアア
美嘉「…………」ボフン
P「ボフン?」
PaP「おい。美嘉? 美嘉さーん? 城ヶ崎さん家のお姉さーん?」
美嘉「キュウ」
P「キュウ?」
PaP「……Pさんよ」タメイキ
P「あ、はい?」
PaP「今日のLIVEバトルは、おたくの勝ちだな。たぶん」ヤレヤレ
-エネーチケースタジオ・CGプロ楽屋-
P「いよいよだね、加奈ちゃん」
加奈「……よく考えたら」
P「うん?」
加奈「お仕事に社長が一緒じゃないのって、今日が初めてでした……」
P「そうだったの……」
加奈「智香ちゃんのおかげで、忘れられてたんですけど……うう」
P「……」
P「俺は、普段の加奈ちゃんのレッスンとか、他の仕事とか見てないから」
P「いつも頑張ってるんだから大丈夫! なんて無責任に言えない。それは社長じゃないとね」
加奈「……」
P「だから俺は、すごく楽しみにしてる。加奈ちゃんのLIVE」
加奈「楽しみに?」
P「ここにいる人たちみんなそうだ。ここに敵はいない。みんな加奈ちゃんの味方だよ」
智香「アタシもとっても楽しみ☆ ここで応援してるよっ」
加奈「智香ちゃん!」
P「失敗してもいい。それも含めて今日の今井加奈のパフォーマンスだってことにしちゃえばいい」
智香「アタシも振り付けよく忘れるけど、アドリブでカバーしてたり☆」
イマイカナサーン!ジュンビオネガイシマース!
P「時間だね」
加奈「……行ってきます!」キリッ
智香「加奈ちゃんいい顔!」
P「うん。勝つ奴の顔になってたね」
智香「うーん。応援したいっ」
P「待って智香ちゃん。今回はしっかり見ていてあげてくれるかな」
智香「あ、加奈ちゃんをですね! もちろんです☆」
P「いや加奈ちゃんだけじゃない。相手の城ヶ崎さんも、観客たちも、スタッフも……みんなをね」
智香「……? わかりましたっ」
ソレデハコウコウ! ファンシーガール! イノセントスマイルッ! イマイカナチャンイッテミマショウ!
P(先攻の城ヶ崎美嘉は、本来の売りであるセクシーさを前面に出したパフォーマンスを展開し)
P(世辞抜きでパーフェクトな出来に見えた。番組常連の貫録さえ感じる)
P(……今度城ヶ崎さんの写真集を探しに行こう)
ブワクネツライブバトル! レディィィィゴォォォォッ!
P(対して加奈ちゃんは、ちひろさんが言っていたように子リスのような愛くるしさが武器)
P(か弱い小動物のように庇護欲をかきたてる。色気はかけらも見当たらない)
P(訴求する層はまるで違う。それでも観客たちは)
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!
P(どちらのパフォーマンスにも同じ盛り上がりを見せる)
カーナ!カーナ!カーナ!カーナ!カーナ!カーナ!カーナ!
P(俺も同じだ。城ヶ崎さんと加奈ちゃん。どちらの演技にもキュンとくるものがある)
P(ここにいる誰もが同じ気持ち。アイドルの演技に心躍って、楽しくなって、夢中になる)
P(君もそうだといいな)
智香「……」ポー
P(智香ちゃん)
P(その日のLIVEバトルは、見事に加奈ちゃんの勝利で終わった)
P(城ヶ崎さんのパーフェクトの演技に、加奈ちゃんもパーフェクトで返し)
P(PaPさんも「完敗だわ」と認めていたくらいだ)
P(獲得ptは大差なかったし、接戦だったと思うけど)
P(……一緒に来たのが俺ってのがな)
P(社長だったら、加奈ちゃんを思いっきり褒めてあげるんだろう)
P(加奈ちゃんも思いっきり喜べるだろう)
P(帰りの車中、疲れ切ったのか、加奈ちゃんはすぅすぅと気持ちよさそうに寝てた)
P(もう一人、智香ちゃんは……)
P(いつもの元気はどこへやら。ずっと窓の外を眺めて、一言もしゃべらなかった)
今回分終わり。そして次で智香ちゃん編終わり
P(でも彼女の根底にあるものは、間違いなくアイドルの道にもつながるはずだ)
P(故郷で恩師が示した道が「アイドル」だったら)
P(彼女はきっと今、アイドルの道をストイックに追求してたんじゃないか。そんな風に思う)
P(だから俺は道を見せたい。こういう方法もあるんだって)
P(それでも彼女がチアを選ぶなら、その時こそきっぱりと諦めよう)
――金曜
-事務所-
P「ちひろさん、今回はありがとうございます。無理を聞いてもらって」
ちひろ「お礼なら社長に言ってください。最終的に決めたのは社長ですからね」
P「最近全然社長に会わないんですよね……」
ちひろ「いつ寝てるのかわからないくらい忙しい人ですから。それより……」
ちひろ「行くからには、社長の代役、ちゃんと果たしてきてくださいね」
P「ですよね」
ちひろ「あの子は愛梨ちゃんや美波ちゃんと違って、まだそこまで経験ありませんから」
ガチャ
??「おはよーございますー!」
ちひろ「おや来ましたね」
??「あっちひろさん! おはよーございます!」
ちひろ「おはようございます加奈ちゃん。今日もいい感じでげっ歯類ですね」
加奈「えぇー? もぉちひろさんっ! いきなり何言ってるんですかぁ!」プンスカ
ちひろ「かわいいですねえ」キュン
P「かわいいけどそりゃ怒るでしょ挨拶からげっ歯類扱いされちゃ」
加奈「げっしるいってなんですかぁ!」プンスカ
P「あ、そこからか」
ちひろ「加奈ちゃん。LIVEバトル、がんばってくださいね」
加奈「あ、そうでした! 社長の代わりに別のプロデューサーさんがついて来てくれるって……」
ちひろ「はい。この男です」クイックイッ
P「Pです。よろしくお願いします」
加奈「わ! はじめましての人かなっ。今井加奈です! よろしくです!」
P「まだ新米でして。今井さんとは何度かすれ違ってはいたんですが、挨拶できてなかったですね」
加奈「そうだったんですか? こちらこそ挨拶できてなくてごめんなさいです」ショボ
P(十時さんや新田さんとはまた全然違うタイプだ……ストレートにかわいい)
P「僕なんかが100%社長の代わりとはいかないけど、できる限りのフォローはします」
P「よろしくね、今井さん」
加奈「はいっ!」パアア
P(ま、眩しいっ)
加奈「あ、加奈でいいですよっ。みんなそう呼ぶから」
P「じゃあ、加奈ちゃん」
加奈「はいっ!」パアアア
ちひろ「危うくキュン死しかけるPなのであった」
P「やめて!」
ちひろ「それじゃ、一応明日の仕事の説明をしますね」
加奈「よろしくお願いします!」
P「します!」
ちひろ「……」
ちひろ「明日加奈ちゃんが行く現場は、エネーチケーで放送されるTV番組の収録で」
ちひろ「『爆熱! LIVEバトル』ってタイトルです」
P「熱いな!」
加奈「わたしこの名前好きです! 「ぶゎくねつ!」って発音するんですよ!」
ちひろ「まあ、加奈ちゃんはもちろん、Pさんももう内容知ってると思うんですが」
P「ええまあ。勉強してますから。でも一応説明してください」
加奈「くださーい!」
ちひろ「タイトルのとおり、アイドルたちがLIVEで声援ptを稼いで勝敗を競う番組で」
ちひろ「15分の短い構成なんですが、昨今のアイドルブームと相まって、毎回なかなかの高視聴率を得てます」
加奈「なるほどっ」
ちひろ「加奈ちゃん絶対知ってるでしょう」
加奈「えへ。盛り上がるかと思って♪」
P「加奈ちゃんいい子だなあ」シミジミ
加奈「えへへ」
ちひろ「最近では、たまに枠を拡大してのトーナメント戦やリーグ戦をやったりもしてますが」
ちひろ「今回はいつも通り、1対1のタイマンガチバトルです」
加奈「前回はわたし、負けちゃったんですよ……」ショボン
P「そ、そうなんだ」
ちひろ「加奈ちゃん、前回初出場だったんですけど、ちょっと相手が悪かったんですよ……」
P「ほう」
加奈「本田未央ちゃん……」
P「本田未央……って」
ちひろ「ええ。現代日本のアイドルプロダクション3強の1社、プロダクションOrangeの」
ちひろ「さてPさん、所属アイドルを片っ端から挙げなさい」
P「いいきなり? えーと本田未央、日野茜、城ヶ崎美嘉・莉嘉、諸星きらり、高森藍子、向井拓海、赤城みりあ……など」
ちひろ「まずまずです。本田未央ちゃんはそのエース。さすがにデビュー戦の相手としては最悪でした」
加奈「失敗しちゃって……散々だった……」グス
ちひろ「社長も「あれは仕方ないね♪」って言ってたわ」
ちひろ「まあ、未央ちゃんとのバトルをセッティングしたのもあの人なんですけど」
加奈「社長、期待してくれてたんだ……でも、応えられなくて……」
ちひろ「結構いろんな人に無茶ぶりするから社長。気にしちゃダメです」
P「明日の相手は誰なんですか? あれのルール上、また本田未央じゃないでしょ?」
ちひろ「ええ。明日の相手は」
ちひろ「同じOrangeの、城ヶ崎美嘉ちゃんです」
加奈「えぇっ!?」
P「……きっつ」
ちひろ「そうですか?」
P「人気実力ともに、あまり差がついてないと思うんですけど」
加奈「美嘉ちゃん、かわいいけどちょっと怖い……」
P「見るからに今時のギャルだからな……小動物を怯えさせる何かを持ってるよな」
ちひろ「ファンにひねり潰されますよ」
ちひろ「というか、ぶっちゃけますけど」
ちひろ「別に勝敗はどっちでもいいんですよ」
加奈「ちひろさん……?」
ちひろ「ね、Pさん?」
P「え、俺? ここで?」
加奈「Pさん……」ジッ
P「あーその……確かに、勝負するなら勝ちたいって思うのが普通だけど」
P「別に加奈ちゃんは、この番組で勝つためだけにアイドルになったんじゃないよね」
加奈「あ……」
P「負けて悔しいのは当たり前。勝って嬉しいのも当たり前だ。でもそれは結局それだけのものだから」
P「社長があえて厳しいバトルを連続で組んだのも、そういう意味があるのかもしれないよ」
加奈「……」
P「難しく考えなくていいんだと思うよ」
加奈「……はいっ」
P(まだ煮え切らない感じだ……まあ当然だよな。俺の言葉は咄嗟の思いつきだ。そこそこ上出来だと思うけど)
P「ところで加奈ちゃん」
加奈「はいっ!?」
P「明日の現場、俺の知り合いを一人連れて行こうと思ってるんだ。いいかな?」
加奈「Pさんのお知り合い?」
P「うん。アイドル候補なんだ。その子にアイドルの仕事ってやつを見せてあげてほしい」
加奈「わ、わたしがですかっ?」
P「そう。アイドルってこんなにすごいんだぞってところ、見せてあげてよ」
加奈「わ、わかりましたっ! がんばりますっ」
――土曜
-エネーチケースタジオ・CGプロ楽屋-
智香「加奈ちゃん☆ がんばって!」
加奈「智香ちゃんありがとうっ! わたしがんばるよ!」
P「……すっかり仲良しだね」
P(一緒に連れてきたのは、もちろん智香ちゃん)
P(行きの車中から、すでに2人のテンションはMAXだった)
P(年が近いこともあってすぐに仲良くなったみたいだ)
P(加奈ちゃんはなかなか緊張しいらしいけど、智香ちゃんのおかげで緊張も適度にほぐれたようだ)
智香「ふれっふれっ加奈ちゃん☆ がんばれがんばれ加奈ちゃん☆」シュバッシュバッ
加奈「智香ちゃんダンス上手っ。かっこいい!」
智・加「キャッキャッ」
P(俺いらん気がしてきた。いや冗談抜きで)
P「しばらく空き時間になるから、俺はちょっとOrangeの人に挨拶に行ってくるね」
智・加「はーい☆」
-エネーチケースタジオ・Orange楽屋-
P「ここかな」
??「あっれ? 誰さん?」
P「?」
P「!? うおお!」
??「は?」
P(俺またやってる! めっちゃ動揺しちゃってる!)
P「うおっほん!」
??「……?」
P「はじめまして! 今回対戦させていただく今井加奈のプロデューサー「代理」のPと申します」
??「あ、ああCGのね。そっか、今日はいつもの渋いオジさんじゃないんだね……」
P「社長は別の仕事が外せなくて。私のような平が参りました」
??「ふーん、挨拶に来てくれたってわけ? 謙虚だねー。あ、アタシは城ヶ崎美嘉ね。よろしくー★」
P「今回はひとつお手柔らかにお願いしますね」
美嘉「えー、どうかなー。マジでやるつもりだけど?」
P「はは、ですよねえ」
美嘉「当然っしょ。ま、入んなよ。中にうちのプロデューサーもいるからさ★」
ガチャ
美嘉「戻ったよー」
??「おう、おせーよ。どこほっつき歩いて……あ?」
P「……(なんだこの……チンピラみたいな男は)」
??「おう美嘉。待ち時間で男ひっかけてくるとか、オマエも少しはヤるようになったな」
美嘉「な、何言ってんの!? 違うし! ちょ、あんた! つっ立ってないでなんか言いなよ!」
P「あ、ああ失礼。今回対戦させていただく今井加奈のプロデューサー「代理」のPと申します」
P「対戦前に一目挨拶をと思いまして」
??「へえー。そお。今日はオヤジさん来ないんだ。まあ前回負けちゃったし? 顔合わせたくないのかねえ」フン
美嘉「ちょっと! そんな言い方ないっしょ!」
P「私は名乗りましたので、失礼ですがお名前を聞かせていただけませんか」
美嘉(え、アタシのフォローは無視!?)
??「ああこりゃ失礼。プロダクションOrangeのプロデューサー、PaPだ。よろしくな。名刺交換いっとくか?」
P「ええ是非に」スッ
PaP「あいよ」スッ
PaP「まあ座りな。ほら美嘉も」
P「では失礼して」
美嘉「う、うん」
PaP「あんた新人か? 初めて見る顔だけど」
P「ええ。ちょっと前に研修が終わったばかりです」
PaP「あそう。にしちゃ落ち着いてるね」
P「そうでもないですよ。今も敏腕プロデューサーと売れっ子アイドルの城ヶ崎さんを前にしてプルプルしてます」
美嘉「初対面の人はまずうちのプロデューサーの見た目でヒくからね……」
P(金髪ボウズに軟骨ピアス。凄まじいチンピラ臭。でもいかにも業界人って感じもする)
P「まあもちろん私もヒいてます。どこかのヤンキーが潜り込んだのかと思いました」
美嘉「ははーだよねー★」
PaP「はっきり言うねえ。いいよそういうの」
PaP「でも見た目ほど悪い奴じゃないって自負してるぜ? たまーにさっきみたいな失礼発言するけどさ」
美嘉「あそうだ! あれ! ちゃんと謝んなよ! Pさんはスルーしてるけどさ」
P「社長は社長自身が悪く言われることは何とも思わない人ですから」
P「なので、その代理である私も気にしません」
PaP「……」
P「負けたアイドル本人をディスるようなことがあれば、話は別ですけど」
PaP「……へへっ。平のくせになかなかかっこいいじゃん。オヤジさんの精神はちゃんと受け継がれてんだね」
美嘉「……」ポー
PaP「ん? おいこら美嘉。ポーッとなってんじゃねえよ。ったくオマエはほんとにおとm」
美嘉「んなっ!? なってないし! なるわけないし! バッカじゃないの!?」カアア
PaP「何赤くなってんだオマエ。ったくオマエはそんなだからしょj」
美嘉「だからなってないし! こういうメイクだし!」カアアア
P(チンピラ風プロデューサーとカリスマギャルアイドルか……なんつーかお似合いだな)
P「なんかお二人、プロデューサーとアイドルっていうより、カップルみたいですよね」
PaP「あ! おいこらあんた! トドメさすようなことを!」
P「え」
美嘉「か、かっぷる……?」カアアアア
美嘉「…………」ボフン
P「ボフン?」
PaP「おい。美嘉? 美嘉さーん? 城ヶ崎さん家のお姉さーん?」
美嘉「キュウ」
P「キュウ?」
PaP「……Pさんよ」タメイキ
P「あ、はい?」
PaP「今日のLIVEバトルは、おたくの勝ちだな。たぶん」ヤレヤレ
-エネーチケースタジオ・CGプロ楽屋-
P「いよいよだね、加奈ちゃん」
加奈「……よく考えたら」
P「うん?」
加奈「お仕事に社長が一緒じゃないのって、今日が初めてでした……」
P「そうだったの……」
加奈「智香ちゃんのおかげで、忘れられてたんですけど……うう」
P「……」
P「俺は、普段の加奈ちゃんのレッスンとか、他の仕事とか見てないから」
P「いつも頑張ってるんだから大丈夫! なんて無責任に言えない。それは社長じゃないとね」
加奈「……」
P「だから俺は、すごく楽しみにしてる。加奈ちゃんのLIVE」
加奈「楽しみに?」
P「ここにいる人たちみんなそうだ。ここに敵はいない。みんな加奈ちゃんの味方だよ」
智香「アタシもとっても楽しみ☆ ここで応援してるよっ」
加奈「智香ちゃん!」
P「失敗してもいい。それも含めて今日の今井加奈のパフォーマンスだってことにしちゃえばいい」
智香「アタシも振り付けよく忘れるけど、アドリブでカバーしてたり☆」
イマイカナサーン!ジュンビオネガイシマース!
P「時間だね」
加奈「……行ってきます!」キリッ
智香「加奈ちゃんいい顔!」
P「うん。勝つ奴の顔になってたね」
智香「うーん。応援したいっ」
P「待って智香ちゃん。今回はしっかり見ていてあげてくれるかな」
智香「あ、加奈ちゃんをですね! もちろんです☆」
P「いや加奈ちゃんだけじゃない。相手の城ヶ崎さんも、観客たちも、スタッフも……みんなをね」
智香「……? わかりましたっ」
ソレデハコウコウ! ファンシーガール! イノセントスマイルッ! イマイカナチャンイッテミマショウ!
P(先攻の城ヶ崎美嘉は、本来の売りであるセクシーさを前面に出したパフォーマンスを展開し)
P(世辞抜きでパーフェクトな出来に見えた。番組常連の貫録さえ感じる)
P(……今度城ヶ崎さんの写真集を探しに行こう)
ブワクネツライブバトル! レディィィィゴォォォォッ!
P(対して加奈ちゃんは、ちひろさんが言っていたように子リスのような愛くるしさが武器)
P(か弱い小動物のように庇護欲をかきたてる。色気はかけらも見当たらない)
P(訴求する層はまるで違う。それでも観客たちは)
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!
P(どちらのパフォーマンスにも同じ盛り上がりを見せる)
カーナ!カーナ!カーナ!カーナ!カーナ!カーナ!カーナ!
P(俺も同じだ。城ヶ崎さんと加奈ちゃん。どちらの演技にもキュンとくるものがある)
P(ここにいる誰もが同じ気持ち。アイドルの演技に心躍って、楽しくなって、夢中になる)
P(君もそうだといいな)
智香「……」ポー
P(智香ちゃん)
P(その日のLIVEバトルは、見事に加奈ちゃんの勝利で終わった)
P(城ヶ崎さんのパーフェクトの演技に、加奈ちゃんもパーフェクトで返し)
P(PaPさんも「完敗だわ」と認めていたくらいだ)
P(獲得ptは大差なかったし、接戦だったと思うけど)
P(……一緒に来たのが俺ってのがな)
P(社長だったら、加奈ちゃんを思いっきり褒めてあげるんだろう)
P(加奈ちゃんも思いっきり喜べるだろう)
P(帰りの車中、疲れ切ったのか、加奈ちゃんはすぅすぅと気持ちよさそうに寝てた)
P(もう一人、智香ちゃんは……)
P(いつもの元気はどこへやら。ずっと窓の外を眺めて、一言もしゃべらなかった)
今回分終わり。そして次で智香ちゃん編終わり
13:07│モバマス