2013年11月05日

P「俺が…タイムスリップ?」

・地の文多め
・未来物

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ある日起こった奇跡。

日が暮れ始めたある日の夕方。
いつも通りに訪ねた見舞いで、
あいつは私と初めて会った、
あの日とおんなじ顔をして、
一人ポツリと呟いた。

P「えっと…貴方は…?」
あいつの声を聞いたのは、多分…六年ぶりぐらいだったと思う。

P「え…えーっと…本当にどなた?」

春香「プロデューサーさん!忘れたんですか!?私ですよ!天海春香ですよ!」

春香が必死に自己紹介をしている。
あいつはただ、呆然として春香の自己紹介を聞いていた。
そして春香の自己紹介が終わって、そっと口を開く

P「…えーっと…本当に、春香…なのか?」

春香「そうですよ!貴方の天海春香です!」

P「春香…じゃあ、そっちのデコは…」

誰がデコだ。そう文句を言ってやろうとしたのに、喉は音を出そうとしなくて、

P「…伊織…か?」

私は頬に、涙を流した。
とりあえずさわりだけ
続きは夕方に投下します
思ったより早く用事終わったので御飯食べたら投下します

あと結構長くなる予定なので、一週間おきぐらいに少しずつ小出しする形になっていくと思います
第一章 伊織「突然の告白」


彼が口を閉ざして六年

彼が体を潰して六年

私があいつを、潰して六年。
あいつに記憶があると分かると、春香は事務所のみんなにメールをし始めた。

春香にしては珍しく落ち着いていたように見えたが、少しして春香からプロデューサーが生き返ったと書かれたメールが届いた。
落ち着いた風に振舞っているだけだったようだ。

春香がメールを送ってから少しすると、メールを読んだらしい律子と小鳥が病室に訪ねてきた。
プロデューサーのお見舞いばっかりしてたら私、肌が荒れちゃって困ったんですよ! とか
プロデューサーが入院するから、仕事が溜まっちゃって困っちゃいましたよ とか
皆、口々にプロデューサーへ言いたいことを言う。 涙を流しながら。

その間、あいつはずっと相槌を打つだけだった。
何が起こったのかわからないのはあいつのはずなのに、前と変わらず優しく笑って、自分へ涙を流しながら文句を言ってくる皆を一人ずつ、撫でていた。

全員の文句が終わった後、あいつは少し小さめの声で

「…ごめん。」

そう、つぶやいた。


その後は誰も喋らない時間が続いた。
まるで音が完全に消え去ったかのような、そんな時間。

しばらくの静寂を破ったのは、ここには来ていなかった、一人がドアをあける音。
「貴方様!」

勢いよくドアを開けて飛び込んできたのは、

P「えっと…貴音…か?」

貴音は、いつものイメージに似合わず髪をボサボサにして、
息を切らして病室に飛び込んできた。

貴音「…よかった…ちゃんと、入れたのですね。」

そう呟いて、貴音は崩れ落ちた。
何か緊張が解けたのか、支えが無くなったかのようにだらりと崩れ落ちて、地面に座り込んだ


しばらく座り込んで息を整えていた貴音は、立ち上がり、プロデューサーの顔を見た。

貴音「…よいですか皆様。これからわたくしが述べることは、嘘でも狂言でもなく、真実です。」

貴音が皆の顔を順に見つめる。
最後にプロデューサーの顔を見て、何かを決意したように目を閉じる。

貴音「…まず、貴方様。今、西暦何年ですか?」

P「は?…えっと…2014年…じゃあ、ないのか?」
自信なさげなプロデューサーの発言に、皆が顔を見合わせた。

P「…えっと、状況が飲み込めないんだけど…」

貴音「次に…水瀬伊織。今、西暦何年の何月ですか?」

「…2024年の5月1日よ。」

久しぶりに話したあいつに聞かれる言葉は上ずっていて、心の中で笑ってしまった。

プロデューサーは分かりやすく戸惑った顔をして、
しばらくキョロキョロした後、助けを求めるように貴音を見つめる。
貴音は少し寂しげな顔をした後、

貴音「残念ですが…プロデューサーは、10年、タイムスリップしてしまったのです。」

あまりの非現実に皆、言葉が出なかった。


P「…俺が…タイムスリップ…?」

初めに口を開いたのは、タイムスリップしているらしい本人。

春香「タイムスリップって…そんなの…」

春香は少し泣きそうな目で貴音を見つめる。

貴音「…ええ。非常に非現実です。無理に信じろとは申しません。が、これは嘘偽りのない、真実ですよ。」

「…仮に、タイムスリップしてるとして、なんでそれをあんたが知ってるのよ」

貴音「…これです。」

貴音はポケットから一枚の小さな紙切れを差し出す。

春香「…これは?」

貴音「先程、私の家に届きました物です。」

そこには、何か暗号のような物が数行書いてあっただけだった。
しばらく春香と律子が文字の解読に取り組んでいたが、少しの間微笑ましそうな笑顔で二人を眺めていた貴音が、暗号の内容を喋りだす。
貴音「そこにはプロデューサーの筆跡で、「本日、タイムスリップして自分に入れ替わる者がいるから、ちゃんと入れ替われたか、確認してくれ」
といった旨の事が書かれています。」

P「…俺が…?」

貴音「ええ。しかし、発送日時は先週。つまりこの手紙を出したのは、昨日までそのベッドで寝ていた貴方様。」

「…じゃあここにいるこいつは、私達のプロデューサーじゃない…ってこと?」

貴音「…そうであって、そうではないです。」

貴音が少し、含みのある言い方をする。
彼女の余裕に、なぜか無意味に腹が立って、貴音の胸ぐらを掴む

「含みのある言い方をしてる場合じゃないのは、分かってるんでしょ」

小鳥「い、伊織ちゃん!」

貴音「大丈夫です…ふふ。やはり恨まれ役はこうでなくては」

貴音の冷静な態度にさらに腹が立つが、このままでは話が進まない。
小さく謝って、貴音を放す

貴音「さて…ここにタイムスリップしてきたのは、間違いなく私の知っているプロデューサーです。
ですが、貴方が毎日見舞いに来ていたプロデューサーとは、別人です。」

「…?」

もしこいつが十年前から来たのなら。
難しく考えようとすればするほど、事態は難しくなっていく。
貴音は簡単にそう述べた。
難しく考えている自分が非常に馬鹿馬鹿しくなって、頭を冷してこようと病室のドアを開ける。

P「…伊織…?」

「…ごめん。ちょっと…散歩してくるわ」

春香「伊織!」

春香が私についてこようとする。
私は、頭の整理をしたいのだ。それが何故わからないんだ。
頭のなかの苛立ちが大きくなり、病室のドアを力いっぱい閉める。

貴音「良いのです…それより、春香はよいのですか?納得、したのですか?」

春香「…納得は、してない。けど、私は…お姉さんだから…」

春香「…えへへ。全員二十を過ぎてるのにお姉さんってのも、変な話だけどね…」

貴音「…いえ、とても立派ですよ…しかし、泣きたいときは泣いたほうがよろしいかと」

私は、病院の廊下を後にした。
少しだけ頬に、涙がこぼれた
とりあえず今はここまで
次は今日の夜か、明日になると思います
少しだけですが投下します
「…はぁ。」

頭を冷やすついでに考えをまとめようと出てきたのはいいが、今日はやたら肌寒くて考え事どころではない。
仕方なく、近くにあった喫茶店へ入る。オレンジジュースだけを注文し、物思いに耽る

あいつは10年前からやってきたプロデューサーで、昨日までベッドで寝ていたプロデューサーは、今はいなくて…

「…わっかんないわよ…」

少し、気分を変えようと持ってこられたオレンジジュースを飲みながら、外の景色を眺める。
しばらく窓から外を眺めていると、喫茶店のドアが開いたらしい、鈴の音が聞こえた。

無意識にドアに視線を向けると、くわえタバコをした女性が入ってきていた。
どこかで見た事あるが、病院であったとかそんな所だろう。
一人で自己完結して、
その女性から視線を外す。

しかし、もう一度ふと見ると、その女性はこちらへ歩いてきていた。
上を見上げると喫煙席。失敗したなと思いながら、絡まれないうちに伝票を取る。
「伊織ちゃん!」

しかし、その女性は私に声を掛けてきた。
そしてその女性の顔を改めてよく見る。
改めて見ると大分美人に育っていたが、昔の特徴的なおっとりしたような、弱そうな目はそのままだった。

「…雪歩…?」
雪歩は私が座っていた向かいの席に座り、コーヒーを頼む。

雪歩に座るよう促され、渋々雪歩の向かいに座る。

「…雪歩、どうしたのよあんた」

雪歩「あはは…私、見た目がひ弱だから、男の人に絡まれることが多くって…」

雪歩は恥ずかしそうに笑いながら、タバコの煙を吐き出す。

「…それで、威厳を出そうとタバコ?ファッションタバコってやつかしら。体を大事にしないわね」

雪歩「へ…?ああ、違うよ伊織ちゃん。これ、水蒸気が出てるだけだよ」

…水蒸気が出てるだけだとわかると、すごくダサい物に見えてきた

雪歩「電子タバコって言ってね…正確には水蒸気じゃあないんだけど、まあ味がついてる煙を吸ってるだけだよ。
見た目はタバコだから吸ってるだけ。」

…見かけだけ、ね。
うちにも一匹そんなのいたっけ…
またこういうのが増えるのね

「…まぁいいんだけどさ…」

そういう事務所も、ありかもしれない。なんて、つまらないことを考えながらオレンジジュースを飲む。

「…っていうか、私口紅付けた女って嫌いなんだけど」

コーヒーカップについた口紅を見て、一言
雪歩はわかり易く苦笑して、コーヒーカップの口紅を撫でながら答える

雪歩「私は伊織ちゃんが口紅も何も付けてない事に驚いたよ」

「私はいいのよ。付けなくても綺麗だから」

そう言うと雪歩は少し考えていたが、
突然ハッとした顔になって、

雪歩「泣くために落として来たでしょ」

「…ぶっ[ピーーー]わよあんた」

思っても黙ってればいいのに…

「随分と態度でかくなったわね」

雪歩「…まあ、いろいろあったから…」

雪歩は苦笑いを浮かべて、わかり易く目をそらされた。
あんまり聞かれたくないらしい

「はぁ…で、どうしたのよあんた。こんなトコロで」

雪歩「…?多分、伊織ちゃんと同じ理由だと思うけど」

雪歩は少し不思議そうな顔をしながら、コーヒーを啜る。
コーヒーを啜るだけでもどこか様になっているのは、成長なのだろうか。

「…あいつの見舞い?」

雪歩「うん。喋れるようになった〜って言ってたから、とりあえずと思ってさ。」

「とりあえずって……で、貴音の話は聞いたの?」

春香のメールを読んだのだろうか
…春香が雪歩の新しいアドレスを知っているとは思えないんだけど
雪歩「まあ…それなりに。四条さんが打ったメールだったみたいだし、誤字脱字ばっかりだったから分かりづらかったけどね」

あの貴音が一生懸命ケータイを見つめてメールを打っている様を想像して、少し笑みが零れそうになる。

「…そう。」

なんとなく、空気で笑うことはできなかったけど。

雪歩「…」

雪歩はゆっくり煙を吐き出すと、そのタバコの電源を切って、ポケットへ入れた。
煙の匂いが完全にチョコレートだったのだが、それは本当に威厳になるのだろうか

雪歩「…で、伊織ちゃんはどうしたのかな?こんな所でさ」

雪歩はコーヒーを啜り、店員にお代わりを注文する。

「…現実逃避よ」

若干の自嘲を含めながら答える。
雪歩は少しコーヒーを啜りながら私の顔を見ていたが、しばらくして視線を離すと、

雪歩「…伊織ちゃんはさ、多分、難しく考え過ぎだよ」

「…!私は…!」
つい手に力が入ってしまい、机を叩く。
衝撃でオレンジジュースが零れてしまい、雪歩は苦笑いしながら、店員に雑巾を頼んだ。

雪歩「…伊織ちゃんが何をしたのか、何が起きたのか、私は詳しくは知らない。」

雪歩は雑巾で机のオレンジジュースを拭きながら答える。

雪歩「…それでも、伊織ちゃんは難しく考え過ぎ。」

雪歩「皆が大好きなプロデューサーが帰ってきた。今はそれだけじゃ、ダメかな?」

コーヒーを啜ると、オレンジジュースが入っていたのか少し顔を歪めて、雪歩は交換を頼んだ

「…そんな、簡単なことじゃ…ないのよ。」

雪歩「…そっか。」

雪歩は深くは追求して来なかった。
>>24 6行目
「…ぶっ[ピーーー]わよあんた」 ?
「…ぶっ殺すわよあんた」   ○
とりあえず今日はここまで
次の投下は明日か、次の土曜日になります

13:11│アイマス 
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