2013年11月05日

蘭子「深智の書、記せしアルハズラッドの運命を」小梅「呪い……?」

百合はない
書き溜めもない

では始めます


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「左様。咎打てし小鳥の羽、地中より目覚めを待つものの骸、我が聖廟に欺瞞の風は吹き荒れる!」

「……そう……」

小梅が、ふいっと視線をよそに向けた。

「……うん、うん……わかった」

え、今の何。

「ナイショ……えへへ」

じゃ、行こう。と、俺に言う。

「……俺も行くのかよ」

「行くよ」

「エル・ドラドの新緑よ」

わかんねえ。

「左様か……」

しょぼん、と蘭子が凹む。ぐ……罪悪感。

「お、おい、悪かったよ、頑張るから」

「で、あるか。大義。深淵は常に汝を見守ろうぞ!」

小梅、小梅……。

「無理しなくていいです、ありがとうって」

罪悪感。


道中、小梅は何事かをずっと話し続けていた。

「呪いっていうのは、呪いをかけられていること、それを相手に伝えるのが、えと、最初のこと……。
 自分が、呪われている、恨まれている、嫌われている、嫉まれている、疎まれている、それを強く、強く、知らしめること……」

「呪いの儀式が恐ろしい手順を取るのは、そのため……。呪うことが、容易ならざるように。呪われることが、尋常ならざるように。
 特別であればあるだけ、恐ろしい。おぞましい。恐怖は、手筋を媒介に、伝播する」

よくわからん。

「呪われると思うようにするのが、呪いってことか?」

「そ、そう、そう……。呪われている、と、思えば、家鳴りも、風の唸りも、全部、呪いの、効果……」

「そんなもんなのか」

「そ、そんな、もん。そう」
「開けごま」

そんなんアリか。

蘭子の母親に挨拶して、二階の自室に通される。

蘭子曰く……通訳小梅曰く、写真を撮ったはいいものの、持ち歩きたくなくてPCに保存してあるという。

「…………」

「供物。あるいは咎打ち、心の臓を捧げ、血に浸し」

激しく手ブレした何枚かの写真。

セミ、トカゲ、土に塗れた何か、そして……首のない小鳥。

それが、毎日のように玄関先に置かれていると。

「なあ、これヤバくないか」

「鋭角より、湧き出でよと……?」

あっ。

「いや悪い、ビビらせるつもりじゃないけど……小梅?」

「……うん、えっと、あ、明日……でも、いい?」

「彼そ誰れ、か。良い、払暁を待つも一興……宛ら牡丹の舞うにも似て」

「し、死亡、フラグ……」
そのまま蘭子を残して、帰ってきてしまった。

「なあ、大丈夫なのか?」

「大丈夫、って、言った……大丈夫、って、思った、なら……大丈夫。成就は……しない」

さっぱりだ。

「大丈夫じゃ、ないって、思う……思う、と、呪いの、完成」

「蘭子が大丈夫だと思ってる間は?」

「そう、大丈夫」

難しいな。

「お、ちょうどいいところに。ありすー、ありすー」

「橘です。なんですか、騒々しい」

「なあ、それでさ、呪いについて調べてくれよ」

「いやです」
「お前、この前俺に負けたろ。あれの罰ゲーム」

「そんな約束してません。不合理です」

「じゃあこれからもう一戦するから、そしたらありすがまた負けるだろ、その罰ゲーム」

「わけがわかりません、理不尽です! あと橘です!」

「こんなに頼んでもだめか?」

「いつ頼んだんですか、あなたが!」

小梅は、器用に袖に隠れた手でケータイをいじって、どこかに連絡していた。

「あ、川島……さん、その……この間の瓶……うん、そう、お願い……します」

「木場さん、えっと……について……はい、うん、で、……わ、わかった、ありがとう……」

そして、こっちに向かって、

「ちょ、ちょっと、女子寮……行ってくる……えっと……『ちょっと女子寮の様子見てくる』……フフ」

「おう、わかった」
「で、だ。ありす」

「橘です」

「……まあいいけど。呪いはいいや、もう」

「そうなんですか?」

「そうなんです。小梅がなんかやってるし……俺が余計ひっかきまわすこともないだろ」

「ああ、そうですね。いつもひっかきまわしてます」

「お前な」

「事実です」

あーあ……なんだかなー。

「……凹んでますか?」

「いや」

「あの、私は別に……その、私は」

「ありす、時間じゃねーの」

「……橘です。行ってきます」

「おー」
解散。

翌日。

小梅はクリスタルの小瓶に液体をちゃぷちゃぷさせて持ってきた。

「じゃ、い、行こう。うん、行こう……」

「それで呪いが解けるのか?」

「呪いは、えっと、収まるよ。解くのは……」

「解くのは?」

「……あとで、教えてあげる」

「そうか」

「そう、です」
行く道すがら、電信柱の影やら、ブロック塀の隅やらに、ぽいと指先サイズの何かを放っていく。

「なにそれ……儀式か何か?」

「え、えっと……似たような、もの」

言う間にも、ぽいぽい、と。気軽に。

「じゃ、……えと、インターホン、押して?」

「おう」

とたたた……と軽い音を立てて、駆け下りてきた蘭子がドアを開け、その瞬間、ぴぃ、と鳴いた。

「あっ」

足元……門扉で入ってくるときには死角になる位置に、ネズミの死体が置かれていた。

「保健所……だな」

「うん、それが、現実的……」

電話をすると、すぐにやってきて、死体を回収していった。有難いことだ。
「で、呪いを収めるんだろ。どうやるんだ?」

「えっと、……まず、ら、蘭子さん。ね。えっと……猫に餌付け……してるでしょ」

「是、是也……さながら幽鬼のごとし迷える子羊に、ブバスティスの王の名の下」

「うん……えっと、えっと……時々、自治体とか、何か、問題とか、なるから、控えた方が……いいです」

「……心得た」

「あんまり増えても……猫に、良くない。良くない環境は……よくないものを、呼びます」

「それが、呪いを?」

「そう、そう。良くないものは、そこに在ることを嫌がるから……原因を、蘭子さんだと思ってる」

てて、と突然玄関の外に出て、小瓶――よく見たら、香水の霧吹きの奴だ――を取り出した。

「いい?」

と、おもむろに二、三回吹きかける。

「行きにも……仕掛けをしたから、これで……収まるよ」
「大体わかったぞ」

「うん。蘭子さんも、すぐ……気づくと思う」

またケータイを取り出して、電話をかけている。

「あ、雪美……ちゃん。そう、そのこと……お願い……うん、あとは、それだけ」

すぐに、ペロをつれてやって来た雪美と、出かけて行ってしまった。
「どういうことなんですか」

「何が?」

「私だけ蚊帳の外です。不愉快です。きちんと教えてください」

「多分、雪美が、話を付けにいったんだよ」

「晴さん!」

「結城です」

あ、むくれた。

「冗談だよ、泣くなよ」

「泣いてません!」

「要はあれだ、呪われてると思ったから呪われたっていう、それだけなんだな」

「あ、それなら知ってます。プラセボですね」

「それは知らないけど。猫が餌を貰ってて、蘭子のところに……礼なのか、示威行為なのかは知らないけど、いろいろ獲物をおすそ分けして」

「……それを蘭子さんが、呪いだと勘違いした?」

「そう」
「ってことは多分、道に撒いてたのはペレットか、キャットフードか、そんなところか。蘭子のことだから、家の近くで餌をやってただろうし」

「呪いを解くとか言って、猫を散らしてたわけですね」

「事実呪いは解けるんだろ……もう玄関先に何か置かれることもないし」

あとで木場サンに聞いたところによれば、あの香水の瓶に入ってたのは唐辛子エキスと酢を薄めたやつだったらしい。

こっちもただの猫除け。

「で、突然追い払われた猫たちに、雪美と詫びいれに行った、と……」

「……非合理的です」

「どこが?」

「猫と会話ができるなんて。羨ましい」

「にゃーん」

「おちょくらないでください」

「まずありすは、リフティングが出来る俺を羨ましがれ」

「いいんです。サッカー選手になるわけでもないのに。大体ゲームでは私が連勝じゃないですか」

「プロゲーマーになるわけじゃなし」

「……あっ、橘です!」
終わり。
ロリ組はロリ組でわいわいやってるとよい。それを大人組が見守ってるとよい。そういう話。

思うところがあって一日一つのペースで即興をいくつかしてみたけれど、どんどんクオリティが下がるのがわかる。もうやるまい。
依頼出しておきます

20:43│モバマス 
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