2013年11月06日

雪歩「見ちゃったんだから……仕方がないよね?」

「汚いのに……ごめんね」

汚いわけがない。


春香ちゃんのものなら、

吐瀉物だって、

たとえ排泄物だって、

綺麗で美しくて、清らかで、神聖的なものだって思うし

「ううん、気にしないで」

「ごめんね、雪歩……」

「大丈夫だよ。私が春香ちゃんの傍にいるから」

春香ちゃんの髪はサラサラだった

なでてあげるとふわっと匂いが弾けて鼻腔いっぱいに満たしてくれる

悲しそうな春香ちゃんの声

ほんの少し虚ろな瞳

焦燥した春香ちゃんの表情は、少しだけ私の心を痛める

やっぱり吐き出させるのは止めておいた方が良いかな

「雪歩……私、怖いよ」

「え?」

膝を抱えて頭をそこに埋めた春香ちゃんは、ガタガタと震え、

消え入りそうな声で呟いた後に続く、

「電話が着信履歴いっぱいになるのが怖くて、電話番号を何度も変えた。なのに、止まらないの!」

力いっぱいの叫び声のような言葉

「春香ちゃん?」

「手紙をね! お母さん達がチェックして止めてくれるのに……気づいたら机の中に入ってるの!」

「落ち着いて……?」

頭を抱えて目を見開いて激しく震える春香ちゃんは、

痛々しいとか、嘆かわしいとか、

可愛そうだとか、おかしい奴だとか、

そういった同情や中傷を受け付けないような。

もっと形容し難く、異様なものだった

「何度も何度も! お母さんやお父さんと喧嘩しちゃった!」

「春香ちゃん」

春香ちゃんがオーバーヒート寸前の採掘機の唸りのような声を上げて遮ってしまう。

周りのスタッフさん達が奇異の表情で春香ちゃんを見つめてる

蔑んだ目で見てる

そんな汚らわしい目で見ないで

春香ちゃんを馬鹿にしないで……

「なんでそういう悪戯するのって嫌だって言ってたのにって!」

「春香ちゃん」

私の声が届かない。

春香ちゃんの精神的なものがダメになってきてるのかもしれない

かくなる上は……

「家の中なら安全だって思ったのにッ!」

「春香ちゃん!」

「っ!?」

優しく、でも、強く

私は春香ちゃんの体を抱きしめた

「ゅ、き……ほ……」

「大丈夫だよ、私が守ってあげる。私がそばにいてあげるから」

「っ……だめ、あんなの……」

「春香ちゃん……私と一緒にいようよ。ね?」

電話や手紙が怖いなら、

私がそれらもすべて管理してあげればいい

お父さんやお母さんじゃ無理でも、

私なら完全そして完璧に守れるから――でも

「春香ちゃんが嫌なら、私は引くよ。でも、もしも壊れそうで、助けて欲しいなら」

私は春香ちゃんから離れ、目の前に手を差し出す

「この手を取って、助けてって言って」

「でも……本当に怖いの。危ないの……もしかしたら雪歩が危険にさらされるかもしれないッ!」

「春香ちゃん」

私が首を横に振ると、

春香ちゃんは驚いて私を見つめた

「大丈夫だよ、私はこう見えても……強いから。だから、守らせて。春香ちゃんのこと」

「っ……約束してくれる? 危ないこととか、絶対にしないって。私のために無理したりしないって」

「うん、春香ちゃんを不安にさせたりしないために一緒になるのに、そんなことするはずないよ」

「わかっ……た。雪歩と一緒にいる。もう、家に帰るのも嫌だから」

「春香ちゃん……」

再び震えだした春香ちゃんを抱きしめる

震えは止まらなかったものの、少しだけ弱くなって、

負の感情しか表せなかった春香ちゃんの表情は、

少しだけ明るさを取り戻していた

「雪歩、春香。車回してきた。帰るぞ」

「……はい」

「プロデューサー、私の家に向かってください」

「え?」

「春香ちゃんも一緒に暮らすことに決めました」

私たちの突然の同棲宣言に驚きつつも、

プロデューサーは少し考えてから頷いた

「みんなから遠く離れるより、雪歩や伊織のような強さのあるところにいた方が安全か……」

なんでそこで伊織ちゃんを出すんだろう?

あんなお金だけの家じゃ何も守れないよ……

守れるのは私だけ。守っていいのは……私だけ

車の運転中、

赤信号で止まると、プロデューサーが振り向いた

「春香、具合の方は?」

「………………ちょ……っとは」

「プロデューサー、春香ちゃんは今はそうっとしておいてあげてください」

「すまん……気になって……」

隙あらば春香ちゃんと話そうとするプロデューサー

後ろから刺殺しちゃいそう

でも、春香ちゃんが傍にいるからそんなことはしない

加えて、ようやく春香ちゃん自身を手に入れられたから、

今の私は機嫌がとっても良いんですぅ

今までのお話カウンターを全部なかったことにしてあげちゃうくらい優しい

だから、怒ったりはしません

「雪歩……」

「大丈夫だよ、もうすぐ私の家に着くからね」

「うん、ごめんね」

「私こそごめんなさい……こうなるまで手を伸ばさなくて」

「ううん……助けるって守るって、言ってくれただけで……私、幸せだよ」

春香ちゃんの明るい笑顔

私だけに向けられる、私のための笑顔

車内では家に着くまでずっと、

春香ちゃんは私の腕にしがみついていた

親離れ出来ていない子供のようなその愛らしさ

そうでなくても可愛い春香ちゃんがそうなると、

可愛いじゃ足りなくなって、

とたんに言葉が失くなってしまう

黙り込んだら黙り込んだで、

春香ちゃんは私の顔を見上げてくる

一方で、私も春香ちゃんの方を見つめているわけだから、

目と目が合う……瞬間好きだと気づいたのは、

もう随分と前のこと。

私にはない前向きな心と姿勢

私にはないその明るさが、私は羨ましくて、憧れていて、

春香ちゃんの屈託のない満面の笑みに私は心奪われ、一目惚れしちゃったんだよね

私だけに向けてほしいって思った

いつでも向けてもらえるファンが妬ましくて、

時間があるときは春香ちゃんのファンとして正面から春香ちゃんを見たりもしていた

それでも満たされなかった

ライブが終わると春香ちゃんが見えなくなって、

関係者だからって控え室に行けば春香ちゃんに会えて

『ライブ、大成功だったよ!』

なんて笑顔で言うけれど、満たされない。

その理由に気づくのに時間がかかったのは私の汚点

どんなに可愛い笑顔でも、

どんなに綺麗な笑顔でも、

どんなに明るい笑顔でも、

私のための笑顔ではなかったんだって。

天海春香による萩原雪歩のための笑顔ではなくて

天海春香によるファンへの笑顔だったり、

ライブが成功したことによる笑顔だったり、

面白いことがあったからの笑顔だったり、

私だけのものにしたいって思った

誰かに向けられた笑顔なんていらないって思った

私のためだけに笑って欲しい。そう思った

初めてみた私への春香ちゃんの笑顔が、

私をそんな萩原雪歩にした

春香ちゃんの為ならなんでもできる

春香ちゃんの為なら何を犠牲にしたっていい

春香ちゃんの為なら春香ちゃんを苦しめることさえ厭わない

そうやって……ずっと頑張ってきて、

ようやく春香ちゃんが私のモノになろうとしてる

「春香ちゃん」

「なに?」

「春香ちゃんのこと、大事にするからね?」

「ありがとう」

春香ちゃんの笑顔は私のもの

春香ちゃんの全ては私のもの

私だけが触れていい

もしもそこに割り込もうっていうなら

私はたとえ事務所の仲間だって殺す

「すまないが、雪歩。春香を頼む」

「はい、任せてください」

「あの、プロデューサーさん。私……」

春香ちゃんの深刻そうな表情

それだけでプロデューサーは何かを察してくれるらしく、

ちょっと嫉妬してしまった

「春香が辞めたいって言うなら俺は止めない……止められるようなものでもないからな」

「………………」

「守ってやるって言ったのに……済まない、春香」

「……ごめんなさい」

2人して謝って、悲しそうな表情をする

春香ちゃんはアイドルをやめちゃうのかな?

それでもいい、ううん、むしろ大歓迎だよ……でも。

「一応、しばらくは仕事から抜いておく。ゆっくり休め。ご両親には俺から連絡するからな」

「お願いします……」

そしてようやくプロデューサーは消えて、

私と春香ちゃんだけ。

2人の時間になってくれた

早速私の部屋へと案内してベッドへと座らせる

私の生活が春香ちゃんと密着し、そして混ざり合っていく

私しかいなかった空間には、

春香ちゃんが入り込んできている

この部屋はもう……私と春香ちゃんの部屋

息を吸えば春香ちゃんと私の匂い

ずっと夢だった、オゾン層なんかよりもずっと貴重な空気

それを私はこれからずっと堪能できるんだよね?

そう思っただけで体が疼いてしまう

「雪歩の部屋……初めてだね」

「うん、思えば呼んだ事なかったよね……もっと、普通なときに呼びたかった」

「ごめん……」

「ううん、謝らないでっ春香ちゃんは何も悪くないから」

これからはずっと一緒だよ。春香ちゃん

未来永劫、永遠不滅の同棲生活だよ、春香ちゃん

えへへ、春香ちゃん。

ふふふ、春香ちゃん。

どんな時でも春香ちゃんが見える

画像とか動画じゃなくて、本物の春香ちゃんが見える

そんな最高の同棲生活が、始まった

中断

「春香ちゃん、それでどうかな?」

「でも無言電話が……」

「大丈夫。非通知に出なければいいだけだよ。ううん、着信拒否にしても良い」

でも、

たまにみんなが携帯忘れたとか充電が切れたとかで、

公衆電話を使ったりしてるから……特に四条さん

携帯電話を持ってるのに、なぜか公衆電話を使うことが多いんだよね

固定電話と携帯電話はそのフォルムが全く違うから、

ああいう【受話器】の方がいいって四条さんは言ってた。けど。

「四条さんにはちゃんと携帯電話使ってくれるようにお願いしよう?」

「う、うん……」

春香ちゃんがここまで追い詰められてると知ったら、

四条さんだって使いにくいからって理由で断ったりはしないと思う

「一応、携帯の交換は私達だけの秘密にしとこう?」

「みんなには教えておいたほうが……」

「ううん、どこから情報が漏れるかわからないからダメ。油断した結果が電話番号だよ」

「っ……」

そもそも、漏れるとかどうとかいうより

部外者に犯人がいる可能性は極めて低いんだけれど……

それはさすがに言えないよ

せっかく少し元気になってくれたのに

また……暗い表情ばかりになっちゃった

「………………」

「………………」

許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない

ぜったいに許さない

死ねって言った

絶対に殺すって言われたけれど……ううん、ごめんなさい

私があなたを殺しちゃいます

「さて」

「ひっ」

パンッと手を叩くと、春香ちゃんはビクッと震え、

体を抱きしめて縮こまってしまった

「あ……ごめんね。春香ちゃん」

「う、ううん、ごめんなさい、ごめんなさい……ひっく……うぅっごめんなさい……」

春香ちゃんは泣き出してしまった

しかも、謝りながら。なんの罪もない春香ちゃんが。

何も悪くない春香ちゃんが、

怖くて、怖くて、でもそれ以上に、

私にでさえ怯えてしまう

どんな些細なことにでさえ怯えてしまうことが申し訳なくて……泣いてる

「春香ちゃん」

「ごめんなさいっごめんっごめんねっ……」

「春香ちゃん……っ」

「怖い、怖いの……何もかもっもうやだよぉ……」

「…………………」

今日は春香ちゃんを抱きしめてばかり。

春香ちゃんと同棲できること。

最初は嬉しいと思った。夢が叶ったとか思ってたけれど、違うよ……

ここにいるのは春香ちゃん

私が好きな春香ちゃん。大好きな春香ちゃん

でも、本当に大好きなのは、憧れているのは、明るくて元気な春香ちゃん

こんな弱々しい春香ちゃんを見たかったわけじゃないよ

「春香ちゃん」

「雪歩……」

春香ちゃんの体を優しく揺さぶり、

名前を呼んで顔を上げさせる

「私が守る。絶対に守る。だから――」

いつものように優しく、自然な声で

そして、いつも春香ちゃんが見せてくれるような温かい笑顔で、いう

「――春香ちゃんの笑顔、私は見たいな」

「……雪歩」

「それさえあれば、私凄く頑張れる。男の人と1対1で会話しちゃったり、大型犬とじゃれあったりできちゃう!」

春香ちゃんが口を挟むの遮って、話を続ける

「男の人と会話するだけじゃなくて、握手会とか記念撮影とか、寄り添ってやっちゃってもいいよっ」

それくらいに、私にとっては特別なものなんだから……

「ほかにはね、犬に囲まれながら男の人と暮らしたりだって――」

「……あは。あははっ」

春香ちゃんが小さく笑う。

元気さが少し足りないけれど、笑ってくれる

「それはスキャンダルだよ、やっちゃダメ」

「わ、解ってるよぉ……でもっ春香ちゃんの笑顔は――」

「ありがとう」

「へ……」

「すごく嬉しい。雪歩がそれで頑張れるなら。私は雪歩のために頑張る。いつだって、笑ってるから」

そう言った春香ちゃんは、

悲しみの名残、その涙を一筋の流れに変えて消し去っていく

残ったのは、明るく元気で優しく温かい

いつもの春香ちゃんの笑顔だった

「そうと決まれば、雪歩。お夕飯どうしよっか!」

「う〜ん。有り合わせでも色々なもの作れますけど……」

いざという時のために、

様々な物を用意しているから、

ありあわせと言えるかどうかは怪しいけど

「あ、それもそうなんだけど、お世話になるのは私だし、もしよければ一緒に料理しない?」

「は、春香ちゃんが作ってくれるの!?」

「う、うん……嫌、かな?」

「そんなことないよ。嬉しい、すごく嬉しい!」

春香ちゃんと一緒にご飯食べたり出来るだけですごく嬉しいのに、

その食べる料理が春香ちゃんの手料理なんてことになったら

食べることがもったいなくて食べられないくらいに嬉しい

「あはは、喜んでくれて嬉しい」

「あ……ごめんね。燥いじゃって」

「ううん、静かでいるより、私はその方が気が楽になるから良いよ」

「そうだよね……この家にいるときは、楽しくさせてあげるよ」

「おーっ期待しちゃおうかなー」

すごく楽しい半日だった

生きてきた中で

これほど幸せな気分になれたことは一度もない

そう断言できる程に幸せな時間だった

春香ちゃんと一緒にご飯作って、

一緒にご飯を食べて、

一緒にお風呂に入って……

ずっとずっと、笑っていた気がする

春香ちゃん自身も、

辛いこと、悲しいこと。

全部忘れて笑顔でいてくれた。

しかも、それらは全部私のための私に向けられたもの。

私が望んだものが手に入った、最高の日だった

「ねぇ……雪歩」

「どうかしたの?」

「ありがとう」

「……お礼なんて良いよ。したいことしただけだから」

私は元々、

支配したいとかいろいろ考えていたとは言え、

結局は表に出られず、

影の静観者として春香ちゃんを見ていることしかできず、

出来たのは喋らないでっていう忠告くらい

でも、ほんとうはこうやって寄り添い会いたかった

笑い合いたかった

これだって、誰か……ううん、別に誰かって言うほど、

不特定ではないよね

その人のおかげで動機が出来たからやれただけで、

だからこそ、追い詰められるまで私は何もできなかった

「それでもだよ」

「え?」

そんな自己嫌悪に陥る私の頭を

春香ちゃんは優しく撫でてくれた

「雪歩のしたいことで私は元気になれた」

「……………」

「ありがとう、雪歩」

笑顔。

また笑顔

私を暖かくしてくれる笑顔

「春香ちゃん……私ね、春香ちゃんのこと、好き」

「え?」

「友達として、仲間として……女の子として」

「それって」

「うん、異性を好きになるような気持ちを。私は春香ちゃんに抱いてる」

それは普通の人から見たら、

気持ちの悪いことなのかもしれない。

でも、気持ち悪いって言われたり、思われたりしても、

私が春香ちゃんを好きな気持ちが揺らいだりすることはない

かといって、伝えるべきかどうかって聞かれたら、

今までの私は、

断られたりするのが怖いからって逃げていたけれど、

でも。今の私は。

幸せすぎて、嬉しすぎて、

温かくなってる今の私は我慢できなかった

だまり続けて溜め込んだこの気持ちを、

伝えないでおくことなんて無理だった

「……気持ち、悪いよね。女の子が女の子に。なんて」

「…………………」

「でも、安心して。黙ってるのが嫌だっただけだから。答え求めたりとかしないから」

私は春香ちゃんに背を向けた

同じベッドの中

私の体温と春香ちゃんの体温が布団の中を暑くして、

パジャマなんて脱ぎたくなるほどに暑かった

でも、それは外的要因だけではなくて、

私自身が春香ちゃんといることで

ほんの少し高揚していて、加えて勢いで告白してしまったからというものもある

汗で下着が張り付いて少し気持ちが悪い

呼吸が少しだけ荒くなっていく

「気持ち悪く、ないよ」

そんな私の耳が捉えた声

「私は全然、気持ち悪いとか、おかしいだなんて思わない」

嘘だと思った頭に響く、春香ちゃんの言葉

「だって……私も雪歩のこと。好きだから」

信じられないと、振り向こうとした体を押さえ込む、春香ちゃんの体

それらはすべて――リアルだった

「春香ちゃ……」

「正直ね、雪歩を初めて見たとき。守ってあげたいなー支えてあげたいなーって思った」

前の私は、

臆病で、弱くて、犬も男の人も苦手で、

何事にもネガティブで、自信が持てない

そんなダメダメな人

「でも、話していくうちに、仕事していくうちに、そんな雪歩はどんどん変わっていった」

いまでも犬や男の人は苦手。

でも、

少しは前向きに考えられるようになった

少しは自信が持てるようになった

「凄いなぁって思った。私は全然変わることできないのにって、ちょっと嫉妬してた」

それは春香ちゃんの笑顔が、

私を助けてくれていたから。支えてくれていたから。

それに、私だって凄いって、憧れてたんだよ? 春香ちゃん

「そのせいかな、雪歩を見る時間が多くなった。探す時間が多くなった」

見る時間が多いのは多分……

私が春香ちゃんのことを見守るようになったから。

でも、探してくれたのは春香ちゃんの意思……?

「最初は雪歩のように変わりたかったのかも……ううん、そんなのも建前だね」

春香ちゃんは小さく笑うと、話を続けた

「私はきっと、最初から雪歩が好きだった。守りたい、支えたいっていうのも多分その波状でしかなくて」

「………………」

「今みたいに……そばにいたかったんだと思う。気持ちを伝えられなくていいから、傍にいたいって」

春香ちゃんの抱きしめる力が強くなっていく。

暑苦しくて、

汗がポタッと滴り落ちていった

「……雪歩さ、私のライブ、舞台袖じゃなくて観客席で見ててくれたよね」

「え……?」

「ずっと見てた。ずっと解ってた。私……あれすごく嬉しかったんだよ?」

私が見てたこと知ってた? 分かってた?

じゃぁ、あのライブとかでの笑顔は……

「それだけじゃなくて、楽屋にまで来てくれたしね」

「うっ……」

「すごい励みになった。あんな脅迫にだって負けてやるもんか! って、私頑張れるって」

脅迫……

春香ちゃんにとって、

私の電話も、手紙も、無言電話も、机の中の手紙も、水筒も

全部脅迫だったんだよね……

「でも、ごめんね。負けちゃった。雪歩にだけは……こんな私見せたくなかったのに」

「春香ちゃん……」

「こんな私でも。好き? 明るくない、元気じゃない私でも。雪歩は――」

最後まで言わせず、強引に体を反転させて春香ちゃんの唇を奪った

「んっゅ、雪歩……」

「好き。大好き、どんな春香ちゃんでも、私は好きだよ」

どんな春香ちゃんだって私は大好き。

元気がなかったり、

弱々しい春香ちゃんは確かにいつもの春香ちゃんには劣るかもしれない

でも、だからって嫌いになるわけじゃない

一部でも嫌いな部分があるなら、

それは愛してるなんて言えない

どんな部分でも嫌いにはならず、

相手を好きでいる、心から受け入れてこそ愛なんだから

「春香ちゃん……好きだよ」

「私も……好きだよ。雪歩」

ゆっくりと、唇を重ね合わせ、

両手はいつの間にか春香ちゃんの両手と恋人繋ぎになっていた

世間からは間違ってると言われるかもしれないし、

気持ち悪いって言われるかもしれない、

親からは蔑まれ、離縁されるかもしれない

だとしても……私は春香ちゃんを好きでいたい。愛していたい

互いに好きだと言い合った昨日

ちょっと頑張っちゃった翌朝は、ちょっとどころじゃなく辛かった

「雪歩、おはよう」

「おはよう……春香ちゃん」

いつもの朝に春香ちゃんがいる

そんな最高の日がいつまでも続くといいな。なんて

だから、私は今日。やらなきゃいけないことがある

「雪歩は今日仕事入ってるの?」

「うん、ごめんね」

「ううん、仕事なら良いよ……私は、付いていかない方が良いよね」

邪魔になるって思ってるのかな

でも……そんなことは――

ヴーッヴーッ

「っ!」

「大丈夫、千早ちゃんだよ」

非通知は着信拒否にしちゃったもんね

『もしもし、春香?』

「う、うん」

千早ちゃん達からなら、

一応春香ちゃんに出てもらうしかない。

ここで私が出たりしたら、

やっぱり不自然だと思うし。

『春香の家はさすがに遠いから平気かしら……』

「えっと、どうしたの?」

『実は、昨日の夜変な人が家にきたのよ』

「変な人? だ、大丈夫なの!?」

『だ、大丈夫よ。ただカーテン越しにベランダに入る人影が見えただけだから』

……それはあんまり大丈夫だって言えないような気もする

でも、なんで千早ちゃんのところに?

「そ、それで……どうしたの?」

『流石に見る勇気はなかったし、不安で眠れなかったわ。それよりも、その様子なら行かなかったのね』

「う、うん」

『よかった……一応事務所でみんなに話す予定だから。来れたら来てくれるかしら』

「解った」

スピーカーモードにしておいたおかげで、

話は全部聞くことができた

……不審者

多分、私が電話に出て、私が守るって言った上に、

同居してるなんて言ったから……

「雪歩、どうしよう……みんなにまで……」

「大丈夫だよ、大丈夫」

怯える春香ちゃんをなだめながら、必死に考えを巡らせていく

正直なところ、

春香ちゃんを独り占めしたいとか思うのは千早ちゃんだって思っていた

弟さんを失ったことを押さえ込み、悪い記者によって暴かれたあの事件

救い出してくれたのは他でもない春香ちゃんだったし、

弟さんを失った経験から、

春香ちゃんを絶対に失いたくない、自分のそばに置いておきたい

そうやって支配欲に駆られて……と。

だけど……違う?

もしかしたら765プロにいる身内のだれでもない……?

だとしたら、どうやって春香ちゃんの電話番号とかを?

もちろん、

私の伺い知れないところで、ほかの子が春香ちゃんに好意を抱いてる可能性はある

やよいちゃんだって、いつも「春香さんのこと好きですよー」って言うもんね

でも、やよいちゃんが無言電話したりはしないと思う。というか、性格的に絶対無理

だからつまりその他の誰かになるけど……そんな素振り見せてくる人はいない

となると、

ファンのだれかとか、一般人が犯人になるけれど、

それはそれで電話番号とかをどうやって……?

「あ……そっか」

「雪歩?」

【机の中に手紙が入れられていた】

「そっか……そうなんだ……」

「ど、どうしたの?」

犯人は……春香ちゃんの家の中に入れちゃうんだ

お父さんやお母さんは手紙や電話で協力する以上、

友達と言われたところで上げてあげるような油断はしないはず

つまり、【不法侵入】が容易にできてしまうようなモノを作り、

それを使って自由に出入りして色々調べたり……あれ? じゃぁ……

まって。

不法侵入出来てしまうからって、

電話番号を知るなんて普通は無理

だって、携帯電話なんて肌身離さず持ってるものだから

「雪歩、どうしたの?」

「春香ちゃん……事務所まで一緒に行こう?」

「うん、お願い」

肌身離さず持っている携帯電話

その電話番号とかを知る方法はいくつかある

春香ちゃんの友達、知り合いで連絡先を知っている人

それが、一番優しい答え……

あとは――

春香ちゃんが寝ている横で携帯電話を操作する

もしくは。

部屋を盗撮、盗聴して春香ちゃんが操作しているのを直接見る

「じゃぁ、行こう?」

これは教えられない。

ごめんね、春香ちゃん……何も言えなくて、ごめんなさい

事務所についた私たち、

春香ちゃんを事務所に任せ、私は仕事へと行くことにした

もちろん、仕事なんて行ってられない。

今すぐ春香ちゃんの家に行って調べる

「雪歩、仕事頑張ってね」

「うん、頑張るよ」

「そうだ、お夕飯何食べたい? 今日はちょっと手間かけて煮物とかにする?」

春香ちゃんは笑顔でそう話しかけてくる。

まだ何も知らない、幸せな春香ちゃんの笑顔

「良いけど、材料はどうするの?」

「一緒に買いに行こうよ。ダメ?」

「うん、良いよ」

全部終わらせて、

それで、全部終わったよって

もう安心していいよって……お祝いしたいな

「行ってきます」

「うん、いってらっしゃい」

春香ちゃんの明るい笑顔と声を背中に受けて、私は駅へと向かった

中断

そろそろ終わらせる

「そ、そんな……どうしてわかったの?」

「手紙の内容、変えても知られる電話番号などからの推測です」

手紙の内容でもはや確信していたのは、

言うまでもなかったけど……

「場所は?」

「私一応建築業の経営者を父に持つので、隠すならこのあたりかなって予測で」

というのは本音であり建前で、

本音の本音は

私だったらどの角度から春香ちゃんを撮りたいかなって考えつつ、

春香ちゃんの着替えなどが死角で行われないように、

全体を撮したりするならこの位置かなっていう考えで導き出したもの

なんてことは言えるわけないよね

「とりあえず、これを警察に持っていきましょう」

……クローゼットの中に明らかに春香ちゃんのじゃない髪の毛が落ちていたのは言うべきじゃないかな

部屋は2階だし……侵入経路は屋根裏ってことだよね? 犯人さん

「――承りました。至急手配します」

どうやら、警察は迅速に動いてくれるらしく

これから春香ちゃんの家の中をくまなく調べるらしい

専門の道具があるなら完璧に見つけられるだろうし

髪の毛とかもDNA鑑定で捕まえることが――

ヴーッヴーッ

「あ」

「萩原さん?」

プロデューサーからの電話だった

『雪歩何してるんだ!』

「ご、ごめんなさいっ」

受信早々怒鳴り声

相当怒っているみたいです……

『無事なんだな!? 今どこにいるんだ?』

「え、えっと……春香ちゃんの家」

『春香の……? そうか、誰かにそのこと教えたか?』

「い、いえ」

あ、あれ……?

おかしい

もっと怒られると思っていたのに。

『良いか、雪歩。雪歩を狙ってる男がいる』

「え?」

『雪歩が本来行くべきだったスタジオに不審者が来たんだよ』

……え?

私が本来行くべきだったスタジオに?

ということは……え?

ちょっと待っておかしいよ

春香ちゃんの家でそんなことわかるわけ……

『そこから絶対に動いちゃダメだぞ。良いな? 春香のお母さんにも説明して家には誰にも入れないようにして貰うんだぞ!』

「は、はいっ」

返事を返すと、プロデューサーさんは電話を切ってしまった

「どうしたの?」

「私を殺そうとしている人がいるみたいなんです」

あの電話でも、

あっきの手紙でも、

邪魔とか殺すとか言われてたよね……凄い恨み

私も解っちゃうのがちょっとあれだけど……ここには警察が来るよ。これるかな? 犯人さんは

「殺そうとって……」

「大丈夫です、今から警察が来るんですよね?」

「ええ、そうね。じゃぁここにいたほうがいいわ」

「ありがとうございます」

お願いしようと思っていたことを、

向こうから申し出てくれるなんて凄く嬉しい

「……春香ちゃん」

もうすぐ終わるよ

もうすぐ、犯人の正体とかが全部わかる

もう、苦しまなくていいよ

もう、泣かなくていいよ

もう、終わるんだよ。春香ちゃんの辛い生活が

       ピンポーン

「はーい」

「お母様、警察じゃない場合は……」

「うん、出ないで帰ってもらうわ」

お母さんはそう言って頷いた

思ったけれど、

犯人さんはどうやって私のスケジュールを?

それだけじゃない。

警察の見回りがある中で侵入が出来たの?

……そもそも。

私も見られてたんだよね?

じゃぁ、あの場にもいたってことだよね?

カメラマン、大道具さん、小道具さん、

衣装係に照明さん、監督さんとか……いっぱいいるし、

正直わからないけど……あれ?

そういう場所に居つつ不自然じゃなくて、

尚且つ警察の見回りを――

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

悲鳴が空気を裂く

それを追うような速さで向かってくる足音

「あ――」



                  「 ど う も 、 警 察 の 者 で す 」



               「 貴 女 が 萩 原 雪 歩 さ ん で す ね 」




                          「 で は 」




                       「 さ よ う な ら 」




最初は何の痛みもなかった

目の前でニヤっと笑う警察の服を着た中年くらいの男性の顔を見て、

あぁ、そっか

警察とか警備員なら彷徨いていても不審者ではないよね

なんて思って

私がいないことで焦ってスタジオでバレたのかな。なんて笑っちゃって

全身の血の気が引いていき、

その全てが包丁の刺さったお腹のあたりに集まって言ってるのがなんとなく解って

次第にちょっとピリッとするなぁ

なんて指をちょっと切っちゃったような感覚で構えて……

「邪魔だったんだ」

「ぁ、あっ……」

引き抜かれた包丁が視界に映る

銀色の包丁が赤く染まって血を滴らせて。

プシュッとまるで他人事のように思えるような安い音が聞こえた

せき止められていた血の流れが一気に開放され、

お腹の裂け目から血が溢れ出し、流れ出していく

痛いというよりすごく熱かった

血が抜けていって朦朧とする頭、揺らぐ視界では、

男性が笑っているっていう認識くらいしかできない

「やった、やった! これで、これで僕は!」

「……っ」

男の人が歓喜の雄叫びを上げる中、

私の体は膝から落ちて、

その上半身ですら視界に収められなくなってしまった

血が流れていく

熱い、痛い、苦しい、暑い、暑い、暑い……

あの布団の中の無した暑さなんて比較にならない厚さ

呼吸さえ、止まってしまいそうなほどのもの。

もしも春香ちゃんと携帯を交換してなかったら。

すぐにでも連絡が来たたのかな

そうしたら……こんなことにならなくて、済んだのかな……

ごめん、ごめんね春香ちゃん

お願い、許してくれるかな

「アッハハハハハハッ」

「警察だ!」

「アハハハッアハハハハッ」

気の狂った笑い声が思考の邪魔をする

警察のズボンの人が何人も増えて、

高笑いする男の人かな?

床へと押し倒されていた

「――歩!」

そんな中見える

ううん、もう見えてすらいない

色がぼんやりと分かる程度の視界に映る

どこかで見た服装の女の子

春香ちゃんの作る煮物……食べたかったなぁ

そこで私の意識は――途切れてしまった

再び目を覚ました私が見れたのは、

お花畑でも、広い川でも、

亡くなったおばあちゃんでもなく

白い天井だった

「……っ」

「すぅ……すぅ……」

刺されたお腹は熱くはないけど痛くはあって、思わず呻く

そんな私へのあてつけのように、

可愛い寝顔を見せてくれるのは春香ちゃんだった

泣き続けたのか、目から顎の方まで、

涙の跡がくっきり残っているし

服は私が最後に見た日のままだし、ちょっと窶れてるし

かなり心配させちゃったんだろうってすぐに解った

「春香ちゃん、ごめんね……」

囁くようにもらし、

春香ちゃんの頭を優しくなでる

「んぅ」

「あっ」

起こしちゃったらしい

頭を触っていた手を払い除け、

寝ぼけ眼で私を見つめてくる

「ゆきほぉ?」

「うん、そうだよ」

寝ぼけた声の春香ちゃんは本当に可愛いなぁ

抱きしめたいなぁ

でも……お腹が痛くてちょっと無理

「…………………」

「…………………」

黙り込む私達

見つめ合う私達

「………雪歩!?」

覚醒した春香ちゃんの大声

「うん」

それに応える私の小さな声

「雪歩、雪歩……馬鹿!」

「うぅ……ごめんなさい」

言い返す余地もない

「なんで無茶したの!? なんで黙ってあんなことしたの!?」

「心配かけたく――」

「すっごく心配したんだよ!? 不安だったんだよ!? 怖かったんだよ!?」

「うぅっ」

確かに、

心配かけないようにとやった結果がこれだもんね

死んだりする覚悟があったとは言え

死なずに済んだ時の言い訳を全く考えてなかったのは失敗ですぅ……

「馬鹿っ馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿雪歩! 大馬鹿雪歩のあんぽんたん!」

「そ、そこまで言わなくても……」

「ダメ足りない! 全然足りない!」

春香ちゃんはすごく怒っていた

それもそうだよね……

だって死にかけてたんだもんね……

「ばか雪歩……ばぁかゆきほぉ」

「……ごめん」

「雪歩のばぁか……ばぁか……」

だんだんと勢いがなくなって、崩れていって

俯いていく春香ちゃん

私は静かにごめんと返して

春香ちゃんの手を握った

「春香ちゃん、笑ってほしいな」

「……無理」

「頑張った私にご褒美欲しいよ」

「無茶した子にはご褒美なんてあげません」

俯いたままの春香ちゃんは

私に対してそんな嫌味を言ってくる

「……春香ちゃん」

「なに?」

「……ただいま。遅くなってごめんね?」

「………………」

家に帰ってきたわけじゃないけれど、

それでも、あの日私は出かけていって

今、ようやく目を覚まして春香ちゃんに会えたわけだから

やっぱり、ただいま。だよね

「……なにが、ただいま」

「…………………」

春香ちゃんはそういうだけでまた黙り込んで

体を震わせていた

怒っているのか、それとも……

私のその考えがまとまる前に、春香ちゃんは顔を上げた

「遅いよ! 2日も待ってたんだよ! ずっと、ずっと……もう、帰ってこないんじゃないかって!」

春香ちゃんはそう言って私の体を抱きしめてくる

そのせいか、ちょっとだけ痛みが走ったけど……我慢しよう

「ごめんね……」

「馬鹿……グスッ、馬鹿……心配してたんだから……」

春香ちゃんは泣きながら、抱きしめながら

少し間を置いて、耳元で囁く


           「お帰り、雪歩」



犯人はあの日に捕まって

だからもう、同棲する必要はなかった。だけど、

私達の同棲は終わらなかった

春香ちゃんの心の傷はそう簡単に癒える事はなく、

春香ちゃん自身が私と一緒にいることを望み、

加えて、私が無茶をしないように監視するという、

もっともな理由までついたあげく、

2時間もかかる通勤

朝早く出て夜遅い帰宅

その危険性を考えた結果、

社長やプロデューサー、私達の両親が承諾してくれた

公認の同棲

学校も、春香ちゃんは私と同じところに通うことにしたらしく、

今度転校してくるみたい

「雪歩ー、お風呂入ろうよ」

「うん、すぐ行くよ」

「一緒に――って、雪歩。何書いてるの?」

「え? あ、なんでもないよ!」

お気に入りの手帳

その中に書かれた私の秘密

その中に隠れた私の想い

「見せてよー」

「だ、だめっ見せられないよ!」

「良いじゃん、裸だって見てるんだから」

「それはそれ、これはこれ!」

いつもの明るい春香ちゃん。

元気で、明るい私の憧れの春香ちゃん

「む〜っ解った。とりあえずお風呂行こ?」

「春香ちゃん」

私たちは相思相愛で、

もう気持ちも伝え合った仲

「なに?」

「これからも、ずっと一緒にいようね」

「うん、そのために、私はここにいるんだから」

嬉しそうにそう言った春香ちゃんの笑顔は

すごく、幸せそうだった

【いつまでも、いつまでも】


いつまでも、永遠に、

変わらないものなんてないんだなぁ

あの空だって、雲だって

色を変え、形を変え、

見えたり見えなくなったりしてしまう

私とキミの関係も。

いつまでも、永遠に、

変わらないことなんて無理だと思う

だけど、空だって、雲だって

いつだって、どこでだって

そばにいてくれる。

だからね、私はキミのそばにいるよ

いつだって、どこでだって。

いつも、いつまでも……永遠に

                                    ―雪歩の詩集より―

これで終わり

色々言われてましたが、春香「私がアイドルだから」さんとは無縁

手紙の内容ほど歪愛ではなく、

むしろ春香さんで勃ってしまったことに罪悪感を感じるほどにピュアです

13:01│萩原雪歩 
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