2013年11月06日

やよい「春香さん春香さん春香さん春香さん…………」

「だって、春香さんがリボンを……」

「ごめん、ごめんね、外すから!」


慌ててリボンを引き解いて、カバンへと――

「 待 っ て く だ さ い 」

やよいとは思えないほど強い力で、腕が掴まれ痛みが走る

けれど、そんなことを気にする余裕もなく、リボンを取られてしまった

「こんなの要らないですよね?」

「でもそれ……」

「千早さんからのプレゼントですよね?」

な、なんで知ってるの……?

千早ちゃんが誰にも秘密にして、

私にだって最後の最後まで秘密にして、躊躇ってたプレゼントなのに……

千早ちゃんが教えたの?

ドッキリのために?

千早ちゃんがそんなことするの……?

「春香さんにはもっと似合うリボンがあるかなーって」

やよいはそう言うと、

自分のポケットからオレンジ色のリボンを取り出した

「それ……」

「えへへっ私の色かなーって」

「それはわかるよ、解るけど……そっちじゃない」

私が気になったのは、

やよいが取り出したリボンではなく、

やよいが髪をツインにするために使っているモノ

いつもはゴムとかシュシュとか、

そういうもののはずなのに、

今日は見覚えのある赤いリボンだった

「あっこれですかー? 春香さんの部屋に残った時にこっそりお借りしちゃいましたー!」

「ね、ねぇ……もう、いいよ」

「え?」

「ドッキリの看板、看板! 私気づいてるんだよ?」

「何を言ってるのかさっぱり解らないかなーって」

看板は出てこない

カメラマンさえも見えない

隠しカメラも見えない

『まもなく――駅、――駅』

「あ、ついたみたいですね」

いつの間にか経っていた時間。

そんなことにも気づけないほどに私は追い詰められ、

そして焦燥しきっていた

「春香さん」

「………………」

「春香さん」

「……………っ」

ギュッと掴まれた腕

爪が食い込み、僅かな痛みが現実へと引っ張っていく

「……何」

「春香さん、元気ないかなーって」

強引に付けさせられたオレンジ色のリボンが風に揺られて髪を引く

そのまま飛んでいってくれればいいのに。

「やよいが普通じゃないからだよ」

「私は普通ですよ?」

「違う。狂ってるよ……さっきさ、このリボンをつけるときの言葉忘れたの?」


『「オレンジリボンをつけてる春香さんは私のものかなーって」』

『「だから、この赤いリボンをつけてる私は春香さんのものですよっ」』

そんなことを平然と。

いつものような明るく元気な声で言ってきた

その普段と変わりない様がまた不気味だった

「春香さんはやっぱり私が嫌いなんですね……?」

「そういうわけじゃないよ……だけど」

「千早さんですか? 美希さんですか? それとも――プロデューサー?」

「そうじゃなくて!」

「っ」

思わず怒鳴った私に、

やよいは少し驚いた様子で、

その隙をついて、私は一気に走り出す

「――って、春――、――い!」

やよいが何かを叫びながらおってくる

でも、私はそれがあまりにも怖くて、

やよいが転んでしまった姿を見ても……助けることすらせずに事務所へと向かった

「はぁっはぁっはぁっ……」

こんなに走ったのはいつぶりだろう

ダンスとかで疲労することはあっても

走った結果肩で息をするなんていうのは久しぶりだった

「……っ、はっ」

溜まったつばを飲み込み、大きく息を吐く

「ドッキリ……じゃないのかな……」

やよいは解らないとか言ってたけど

そんなはずはない

だって、あそこまで私の情報を知りつつ、ヤンデレ見たいな態度だったんだから……

「とりあえ――」

「春香ちゃん……遅いよ。ねぇ、何してたの?」

「雪……歩?」

ハイライトの消えた雪歩が、目の前にいた

「今日は春香ちゃんとの仕事だからって張り切ってたのに……」

「べ、別に遅れたわけじゃな――」

「遅れたとかどうとかはどうでもいいの!」

「きゃぁっ!」

机を叩いたりする音でさえ怖いのに、

雪歩が行ったのはスコップを床に打ち付けるというもので、

ヤンデレ云々の問題じゃない怖さだった

「ねぇ、誰かと一緒にいたよね? ねぇ、誰と? ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ......」

ジリジリと迫る雪歩

後ずさる私の背中に感じた、鉄の扉の冷たい感触

「春香ちゃん!」

バンッと、頭のすぐ横を雪歩の手がついた

「っ……」

「 匂 い で 全 部 わ か っ ち ゃ う ん だ よ ぉ ? 」

怖かった

光のない雪歩の瞳

三日月型に釣り上がる雪歩の唇

ヤンデレ特有の狂気に満ちた言葉

私はそのまま扉に沿って、床へと座り込むしかなかった

座り込んだ私は、

耐え切れず涙をこぼす

「も、もう……もうやだよぉ……」

「………………」

「ドッキリなんかって甘く見ないから! もう、やめてよ……」

ドッキリとは言えない。

むしろただのいじめにしか思えなかった

仲間から好きとか、愛してるとか、

それはすごく嬉しいことだと思う。

でも、それがこんな形になってるなんて……嫌

与えられるのは不安と恐怖

私に覆いかぶさる雪歩の影が、僅かに動いた

「春香ちゃん」

打って変わった優しい声

見上げた先にある、待ち望んでいた言葉



           『 ド ッ キ リ 大 成 功 ! 』




「あ……」

「ごめんね? まさこんな怖がるなんて思わなくて……」

雪歩は持ち上げていたパネルを下ろすと、

私の頭を撫でてくれた

「事務所に来たアイドルをヤンデレ雪歩がお出迎えっていうやつなの」

「うぅ……雪歩やりすぎ」

「だ、だって本気でやれって言われたから……」

だからってスコップで壁を叩いたりだとか、

目のハイライト消したりだとか、

ジリジリと追い詰めたりだとか、

匂いでわかるよ。だとか、

「正直本物じゃないかって……」

「ひ、酷いよ……私はこんなんじゃないですぅ!」

「あははっ、ごめん、ごめんってば」

雪歩の軽い攻撃を躱しながら、笑う

よかった、ただのドッキリだったんだ……

「おーい、2人。次が来る前に控え室に、戻ってこーい」

「は、はいっ」

「はーい」

やっぱり、プロデューサーがとってきた仕事らしい

これはもう、

差し入れと称して激辛クッキーとかにするしかないかな

何でもかんでもどっきりですまないってことを教えてあげなくちゃ

控え室に行くと、

既に引っかかったらしい、真と響ちゃんが雪歩を怯えた目で見つめていた

「……えーっと?」

「な、ななななんくくるるる……」

「なんかくる、きっと来る、きっと来る」

「……雪歩、やりすぎ」

「うぅっ……そこまで怯えなくてもいいのにぃ」

いや、あれは怯えるとかどうとかいう問題じゃないって

人によってはアレしちゃうよ……

「……って、あ!」

「どうした、春香」

「やよいの事置いてきちゃった……」

途中で転んでたのに、

私……怖がってそのまま……

「やよいが来てるのか……」

「どうしますか、プロデューサー」

「まぁ、来た順でいいだろ。同時に来るのもそれはそれで面白い」

あっ……酷い

プロデューサーさんはもうひとりの仕掛け人のやよいまでヤンデレ雪歩に引っ掛けるつもりなんだ

っていうことは、

やよいはあくまでここに来るまでの引き立て役ってところかな

あれはオファー大量にくるよ。絶対にね。

春香さんが言うんだから間違いない

「おっ、次が来たみたいだぞ」

事務所1階の扉前に隠しカメラが設置されているらしく、

そこに映し出されたのは、千早ちゃんだった

「千早かー……ちょっと難しいか?」

「千早ちゃんは冷静だから、あくまで宥めようとしそう」

「……千早ちゃん、千早ちゃん、千早ちゃん」

雪歩は目をつぶり、

念仏のように千早ちゃんの名前を呼び続ける

足音が私達のいる階へと向かってくる

「雪歩――」

「ふふふっ……千早ちゃん」

唖然とするしかない。

顔を紅潮させ、

うっとりとした表情をしつつも、

その瞳からは綺麗さっぱりハイライトが消えていた

「千早ちゃん、今……行きますぅ」

やよいも大概だけど、雪歩も凄かった

名前をなんでもつぶやいて集中するだけで、

あんな状態になれるんだから、

素質があるのかもしれない

私でもできるのかな?

……うん、無理

『おはようござ――』

あ、千早ちゃんが事務所に……って、

雪歩はもう完全にスタンバイ状態なんだ

『千早ちゃん、おはよう』

『ええ、おはよう萩原さん』

『………………』

『………どうかしたの?』

『ふふふっ、千早ちゃん今日も良い匂いですぅ』

これあれだ

ちょっと危ない感じのヤンデレだ

雪歩と千早ちゃんの会話が進んでいく中、

事務所の扉に近づいてくる影が映った

「プロデューサーさん、ここ」

「ん? あ、誰か来てるな」

その誰かの影はだんだんと大きくなって

見覚えのあるシルエットとなり、

やがて影ではなく本物……やよいが現れた

『……ちょ、ちょっと萩原さぁぇ……ぁーっ』

『……歌しか歌わない舌なんて切り取っちゃえばいいんですぅ!』

一方で、

画面の中の雪歩は千早ちゃんの舌をつかみ、ハサミをちらつかせていた

『ぁーっ!』

千早ちゃんの悲鳴

しかし、舌は切られることなく、

雪歩の手にはハサミではなくドッキリ大成功のプラカードが握られていて。

当然、千早ちゃんはすごく怒っていたけど、

やよいちゃんがすぐに来ちゃったこともあって、千早ちゃんだけが控え室に連れてこられた

「酷い目にあったわ……」

「ご愁傷様」

真と響ちゃんもだいぶ調子を取り戻したらしく、

今はヤンデレ雪歩を楽しみにしているようだった

「うわっ次やよいだぞ」

「雪歩……やれるのかな?」

ヤンデレ対ヤンデレなのか、

それとも、ただのやよいとヤンデレなのかでだいぶ変わりそうだけど……

「なんか、やよいの元気がないみたいだな」

「何かあったのかしら」

少し乱れた服は汚れていて。

それは私を追いかけてきた時に転んだから。

元気がないのもきっと……

『…………………』

そして、やよいが事務所の2階へと入ってきた

『やよいちゃん、おはよう』

『………………』

『……え、えっと、血。血が出てるよ! あぁ、もったいない、貴重なやよいちゃんの――』

『あのーちょっと黙って貰いたいかなーって』

カメラの位置上やよいの表情は見えない。

でも、雪歩の言葉が途切れて、

ハイライトが消えていた瞳が動揺を隠せていないことから、

それがどんなものかはだいたい想像がついてしまった

「……雪歩、頑張れ」

「自分はやよいを応援するぞ」

「高槻さん、気づいてるのかしら」

三者三様の感想を述べているのに対し、

プロデューサーさんは見入っているのか無言のままだった

『黙って欲しいって……なんでそんなこと言うの!? ねぇ! 伊織ちゃん達にはそんなこと――』

『 雪 歩 さ ん 』

『ひっ……ご、ごめんなさい……』

『えへへ、解ってくれてありがとうございますーっ』

やよいはお辞儀。

通称ガルウイングをすると、

震えて座り込んだ雪歩の隣を通ると、

何かを探すように歩き回り始めた

「……あの、プロデューサーさん」

「雪歩が押し負けた……? くっ仕方がないが……」

やよいがあそこまで演技派なのは予想外だったらしい

プロデューサーさんは予備のプラカードを手に取ると、

部屋を飛び出していき、私達もあとを追った

「はっはー! ドッキリ大成功!」

「はわっ!?」

「ひぇっ!?」

2人ともやっぱり知らされていなかったようで、

驚いた表情で私達を見つめた

「ど、どういうことですかぁ?」

「いやぁ、仕掛け人が仕掛けられるっていうのもいいもんだろ?」

「よ、良くないですぅーっ!」

雪歩はそう言うやいなや、プロデューサーさんをポカポカと殴り、

やよいは私の方に来たそうな顔をしつつも、

しょんぼりと距離をとったまま立ち尽くしていた

「……やよい」

「あの――」

「ごめんね、足とか大丈夫?」

私はそんなやよいへと近寄り、

擦りむいた膝へと白いハンカチをあてがった

「あ、あぁっ春香さんのハンカチが!」

「いいよ、ハンカチくらい……それよりごめんね?」

私が謝ると、

やよいも首を横に振り、申し訳なさそうに返してきた

「私もやりすぎました……ごめんなさい」

やよいもあれはやりすぎだと分かっていたようで

思えばあの時も必死に呼び止めようとしていただけだったと、

今更気付く

「もうちょっと手加減が欲しかった」

「ごめんなさい……」

泣き出しそうなやよいを抱きしめ、私は

今までのがただのドッキリでよかった。と、

今一度感謝を込めて、声には出さない笑みを浮かべた

どうやら仕事があるという件もドッキリのためであり、

今日一日は完全にフリーだったみたい。

いや、ドッキリに引っかかるというのも仕事かもしれないけどね

ともかく、ドッキリ大賞の撮影が終わった私たちは、

仕事もなく、帰宅することにした

「あ、春香さん」

「やよい、帰らないの?」

「えっと……春香さんの家に忘れ物しちゃったみたいで」

困ったようにやよいは言うと、

家に行ってもいいですか? と、付け足した

「良いけど、帰り遅くなっちゃうよ?」

「えへへ、もしあれならお泊りしたいかなーって」

なんという……可愛い笑顔

断れる訳もなく、私は快く承諾した

お母さんにはメールでもしておけば良いかな

「いやぁ、今日はすごかったね」

「えへへ、頑張りましたーっ」

やよいの荷物を揃えてから、電車に揺られること2時間。

ようやく帰ってきた私の地元は、もう薄暗くなっていた

「やよいがあそこまでするなんて思わなかったよ……」

「春香さんのこと、大好きですからっ」

やよいは笑顔でそう答えてくれる

それだけ、

私を驚かせたかったって事なんだろうなぁ

良い子すぎて涙が……

ヴーッ、ヴーッ

「あれ、電話?」

「あ、出ていいですよ?」

「ごめんね、プロデューサーからみたい」

「もしもし?」

『春香、今やよいといるのか?』

「そうですけど……」

『……あのさ、春香はいつやよいと会ったんだ?』

……ん?

なに?

実はやよいは死んでるんだ! なんていうホラードッキリ?

「どういうことですか?」

『いや……その、なんだ』

「はっきりしてくださいよ……、切っちゃいますよ?」

あんな酷いドッキリ仕掛けたプロデューサーさんに対して、

私の怒りは収まってないんですからね

『……ヤンデレ役は雪歩だけなんだ』

「え?」

『お前、雪歩とやよいの時にさ――』


     『 ま る で や よ い に も や ら れ た っ て 口 ぶ り だ っ た が 』


言葉が耳を通って流れ込んでくる

頭の中をかき乱して、

思考をめちゃくちゃにして、

視界に映り込む一人の女の子を歪ませていく


       『 ヤ ン デ レ 役 は 雪 歩 の み だ っ た ん だ よ 』


繰り返された、

繰り返して欲しくない衝撃の真実

じゃぁ……え?

どういうこと?

つまり……それって……

『雪歩があまりのも怖がってるから気になったんだ』

「……ね、ねぇ、やよい」

「はい?」

声が震える、体が震える

また、まただ。

またあの症状が出ちゃった

怖くて怖くて仕方がない

不安と恐怖に押しつぶされてしまいそうな感覚

『今回の件でもしかしたら――』

「やよいの忘れ物って……嘘じゃないよね?」

「はいっ、うそじゃありませんよー?」

その明るい口調から感じる、

嫌な空気と感覚

「じゃぁ、なにを忘れたの?」

「それはですね――」



            「 春 香 さ ん の 心 と 体 で す よ ー っ 」




その後、春香とやよいを見た者はいなかった……


                          ―THE BAD END―



ζ*'ヮ')ζ<やよはる! やよはる!



ζ*'ヮ')ζ<つーびーあこんてにゅー?

暴走しかけたやよいを抱きしめ、

頭をなでなで

「うっそー冗談だよーハル助はやよいが大好きなりよ〜」

夢でヤンデレに慣れたわけではなく、

夢なら別に良いやの姿勢で行くことにしただけ

「は、春香さ……そんなので、騙され……」

「騙してないよ? 千早ちゃんのことは確かに――」

「他の人の話しないでください!」

「おっと……ごめん。でも、否定するために言わせてくれないかな」

やよいの小さな体を抱きしめて、

大きすぎる思いを受け取りながら、

私は小さく囁く

「千早ちゃんも、美希ちゃんも、響ちゃんや真ちゃん。それに、プロデューサーさんだって」

ギリギリと歯を噛み合わせる音が聞こえてくる

別にここまで言わなくていいような気がするなぁ。と、

今さらになって思うけど、止められなかった

「みんなのことは、好きじゃないよ」

「…………………」

「私はやよいが好きで、大好きで、やよいこそ私の一番なんだよ」

ヤンデレな女の子に対するものとしては減点じゃないのかなーって

正直に言えば思うけど、

でも、私ヤンデレな女の子に好かれた記憶ないし

ヤンデレの知識といえば、

空鍋カラカラとか、ウソだッ! とかくらいしかないし。

いや、でも。私……

「えへへ、ほんとうですかー?」

「うん、本当だよ」

やよいの垂れていた両腕が私の背中へと回っていく

ぎゅっと強く、強く抱きしめられても、

全く痛みはなかった

「……春香さん、私のこと受け入れてくれますか?」

「何言ってるの? じゃなきゃ、私は好きだなんて……好き……だ、なんて……」

何かがおかしいと思った

理由の解らない違和感

ポロポロと落ちていく涙

なんで……だろう?

理由の解らないまま、

近づくやよいの唇を、私は受け入れていた

「春香さん……」

「っ……」

流れていく涙を、

やよいは下からなぞるように舐め取っていく

眼球まで舐められてしまうのではないかという恐怖が、

瞳を閉じさせた

「春香さん、笑ってくれませんか?」

「え?」

暗闇の中、響くやよいの声と、ジャラッという金属音

右腕が、左腕が、

右足が、左足が、

四肢全てがまるで押さえ込まれているかのように重い

「春香さんの、笑顔。見たいかなーって」

いつからが夢で、

いつからが現実だったんだろう

ううん、何が夢で、何が現実だったんだろう

今、私はどこにいるんだろう。

今、世界はどうなっているんだろう

今、外は明るいのかな、暗いのかな

何もわからない。

ねぇ、私が夢の中で見た夢は本当に夢だったのかな……?

「……ごまかさなくていいよ」

私は知ってる。

それが現実だったか、夢だったのか

「それは……」

それは間違いなく――現実で起きたことだった

あの日、私はやよいにどこかへと連れ去られた。

その先で、私は……私は。

「春香さん、笑顔を見せて欲しいかなーって」

「………………」

救いなんてない。

誰かが救いに来ることもない。

「無理」

「そうですか……もう、全然笑ってくれなくて寂しいです」

「……………」

笑えるわけがなかった。

だって、もうボロボロなんだもん。

笑うための心が限界にきてるからこそ、

私はあの全てを夢として受け入れようとしたんだから。

みんなのことが好きだった。

それを、夢の中の私。心が否定した

そして、心の私は【夢なら良いや】と、受け入れさせようとした

酷い話だよね……

自分で自分を壊そうとしたんだから

もっとも、

信じていた人に裏切られる以上にひどい話なんてない。

私はその被害者であり、傍観者であり。そして……私は加害者でもあった

響ちゃんと雪歩は一番最初に殺された

私に呼び出され、やよいによって殺された

響ちゃんは何もできずに殺されて、でも。

雪歩は少し抵抗して……でも。無駄だった

スコップを奪われて形勢逆転

壁を叩きながら近づくやよいに怯えながら後ずさって、

事務所のドアにぶつかって……座り込んじゃって。

『「雪歩さん、スコップは下に刺してすくう道具なんですよー?」』

そんなことを笑顔で言うやよいに、首を……っ

千早ちゃんもまた、殺された

舌を切り取られて、痛みに絶句していたところを……またスコップで……

私はみんなが殺されるのを傍観していただけ。

していただけ……だけ?

あははははははははッ、あはははははははははッ!

本当にそう思っテるなら、大馬鹿だヨね

私は殺したんだ。

みんなを、そして、プロデューサーさんをッ

殺したんだ……プロデューサーさんを……

ダッテ、じゃなきゃ……だって……

「あああぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁッ!」

不意に漏れた叫び声

それが自分ノものだと気ヅくノニ

時間はかからなかった

「春香さん、どうかしたんですか?」

ワタシニハナシカケルナッ

「春香さ――」

「私に話しかけるな!」

やめろッ

やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ


やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ


           「 イ イ カ ゲ ン ニ ミ ト メ ナ ヨ 」


やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ
やめろやめろやめろやめやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろろやめろ

「春香さんは私が連れ去ったんじゃないかなーって」

目の前の彼女は言う。

困ったように、悲しそうに

「やめろっ、ヤメテッ! イヤっ!」

思い出したくない、

思い出したくない!

あれが現実だった!

あれがすべての現実だった!

やよいがヤンデレで!

やよいが私を誘拐して!

やよいがみんなを殺した!

「それは違うかなーって」

「ちがくないっ! それが正しい!」

夢での私が現実の雪歩

夢での雪歩が現実のやよい

じゃぁ……夢でのやよいは……?

「私は私だったかなーって」

「やよい……」

「思い出して欲しいです……忘れないで、欲しいです」

やよいの体が壊れていく。

服はだんだんとボロボロになっていき、

いたるところから血を流して……

「春香さん、全部思い出してくれませんか?」

「やだ……いやっ」

お願い……お願いっ

「夢の中の私が言ってた言葉を」

「やよいがっ言ってた……言葉はっ……」

「言葉は、『私は窓から入ってきました』だよ」

やよいの声が、私の声になる。

ううん、元々……やよいなんていなかった



        「 や よ い は 、 私  が 窓 か ら 突 き 落 と し た ん だ か ら 」




そうだ。

あの日……確かにドッキリの撮影があった

寝起きドッキリ、ヤンデレ雪歩の襲来ドッキリの2本じかけで

その最初のドッキリで、

私はやよいを……やよいを突き落としちゃったんだ

やよいの驚かし方があまりにも怖くて、

突き飛ばして、それが運悪く窓際だったんだ

だから……やよいは

「あっあぁあああぁっ……」

思い出した。

全部、全部私が。

全部私がやったんだ……

やよいを殺して、夢だ。これは夢だって

確かめようとして、雪歩たちまで……

目を覚ませ、目を覚ませって、千早ちゃんがうるさいから……千早ちゃんも殺して。

雪歩のことで真もうるさかったから殺して

みんなのことで、プロデューサーさんが煩かったから殺して……

じゃぁ、私は

私は今……どこにいるの?

私は今……何をしてるの?

重い体

まとわりつくように流れていく風……風?

あぁ、そっか

私、私は今――

「春香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

美希の声が響く

重かったまぶたを開けると、

見えてくる空と、ビルの屋上

そこに輝く金髪の女の子

「私ね……みんなのこと――」

言い終える前に、

体は強い衝撃によってその形を失い、

東京の街の地面に散らばるただのゴミへと……姿を変えた

アイマスクールデイズ


                 ―完―



ζ*'ヮ')ζ<ハーピーエンドはこないと言ったはずだ


ζ*'ヮ')ζ<……ごめんよ

13:12│アイマス 
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