2013年11月06日

春香「春と夏の日の出来事」

都内某所にある芸能事務所765プロダクション。
通称765プロ。
四階建ての雑居ビルの三階を間借りしているこのプロダクション。
ガムテープで“765”と貼ってある窓から外を覗くと桜の花びらが舞っていた。
季節は春。


始まりの季節
私の季節。

自己紹介が遅れました。
私は765プロに所属していますアイドル…の卵、天海春香です。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382364846

社長「おはよう諸君!今日はうれしいお知らせがあるぞ!」

今は朝礼の時間で社長が挨拶をしています。
お知らせってなんだろう?

社長「オホン…。喜びたまえ諸君遂に新しいプロデューサーがやってくるぞ!」

新しい、プロデューサーさん…?

社長「今までは律子君が竜宮小町のプロデュースの傍ら諸君らを面倒見ていてくれたが
   今日からは新しいプロデューサーが諸君らをプロデュースしてくれる
   もうしばらくしたら来るはずだからそれまでは自由にしていてくれたまえ」

音無「それじゃあ今日のスケジュールを確認するわね。今日は〜…」

社長の挨拶の後小鳥さんが今日現場の入ってるメンバーを一人ひとり確認していきます。
私はというと…。
今日はお仕事ありません…。



音無「春香ちゃんは午後からレッスンよね?新しいプロデューサーさんに挨拶してから行ってね?」

春香「はい、そうします!」

朝礼が終わって現場に行くメンバーが事務所を元気よく飛び出していきました。

私は特にする事もないので、ソファーに座って近くに置いてあった少女マンガに手をのばし
読みながら新しいプロデューサーさんがどんな人なのか考えます。

遠くではやよいが事務所の掃除をする姿が見えます。

???「春香ちゃん、お茶どうぞ」

頭上から声がしたので顔を上げるとそこにはお茶を載せたお盆を持つ雪歩の姿がありました。

春香「ありがとう雪歩。ズズ…ん、やっぱり雪歩のお茶はおいしいね」

雪歩「ふふ、ありがとう春香ちゃん。音無さんもお茶どうぞ」

音無「いつもありがとう、雪歩ちゃん。今日も1日頑張れるわぁ」

ガチャ

いつも通りの朝の風景を見ていると事務所の入り口の扉が開く音がした。
振り返るとスーツを着た見慣れない男の人が恐る恐る入って来る姿が見える。

音無「あら、お客様かしら?ようこそ765プロヘ、お仕事のご依頼ですか?」

???「あ、いえ俺は」

社長「おお、キミィ!よく来てくれたね!待っていたんだよ!」

音無「あ、社長。待っていたってそれじゃあ…。」

社長「そう!彼が我が765プロの新しいプロデューサーだよ!」

雪歩「お、男の人…!うぅ…」

P「きょ、今日からこちらでお世話になりますPです、よろしくお願いします!」

緊張してるのか少し声が上ずっているプロデューサーさん。
ちょっと可愛いかも、ふふふ

社長「では諸君、彼とともにこれから頑張って活動してくれたまえ
   あーキミ、少し話があるので社長室まで来てもらえるかな?」

P「分かりました」

社長とプロデューサーさんは社長室に入って行きました。
小鳥さんが社長×P…アリね!と目を輝かせて呟いてましたが何のことだろう?よくわかりません。

雪歩「プロデューサーが男の人だなんて…うう…」

やよい「でもとーっても優しそうな人でしたよ!」

雪歩「う、うん…。うぅ、大丈夫かなぁ…?」

春香「大丈夫だよ、雪歩」

やよい「そうですよ、雪歩さん!きっと大丈夫です!」

雪歩「やよいちゃん、春香ちゃん…。ありがとう…」

三人で話をしてると社長室の扉が開き社長とプロデューサーさんが出てきました。

社長「さて諸君、午後のレッスンに彼も帯同してもらうからしっかり励んでくれたまえ
   まずは彼から話があるのでよ〜く聞くように
   私は用事があるのでこれで失礼するよ」

そういうと社長は事務所を出て行きました。
私たちの視線がプロデューサーさんに集中します。


P「えっと、さっき社長と話して俺がこれからプロデュースして行く子を決めました」

え?じゃあプロデューサーさんにプロデュースしてもらえるのは一人だけなのか…。
うーん、9分の1か〜。倍率高いな…。

P「勿論その一人以外の子も見て行くつもりだけど最初はその子だけになっちゃうと思う…。ゴメン
 なるべく早くみんなをプロデュース出来るようになるからそれまで待っていてほしい」

な、なるほど。流石にいきなり9人をプロデュースするのは無理だよね…。うん。

P「それじゃ、早速発表します!
 今日から俺がプロデュースして行くのは…天海春香さん!」

春香「わ、私ですか!?は、はい!よろしくお願いします!」

何と言う事でしょう!まさか私が9分の1を引けるだなんて!
プロデューサーさんが着くって事は今よりもお仕事とか入るのかな?
何だか楽しみな一方少し不安にもなります。

P「それじゃ天海さん、今日からよろしく
 まぁ、この後のレッスンは全員見させてもらうからちゃんとした活動は明日からになるけど」


午後は現場組と合流してみんなでレッスン。
その日のレッスンは全員いつも以上に気合が入ってました。
レッスン前にみんなでプロデューサーさんに自己紹介をして一通り見てもらいました。
一人ひとり見ながらプロデューサーさんは一所懸命メモを取っていました。

P「みんなレッスンお疲れ様!今日は疲れたろ?ゆっくり休んでくれ!
 あ、天海さんはこの後少しいいかな?」

私だけ?何だろう?

春香「分かりました」

皆が帰った後のレッスン場でプロデューサーさんと向かい合います。

P「ごめんね、天海さんも疲れてるのに」

春香「い、いえ大丈夫でしゅ…です」

噛んじゃった…。

う〜ん何か問題でもあったのかな?
もしかしてダンスレッスンの時に転んじゃったのが!
いや、ボーカルで音程外しちゃったのとか!

う〜、落ち着かない。

P「ぷっ…ははは」

春香「な、何で笑うんですか!?」

P「いや、ごめんごめん緊張して凄い顔してたからさ」

顔が赤くなるのが分かった、顔から火が出そうってこういう状態の事を言うのかなぁ///

P「大丈夫だよ、緊張してるのは俺も同じだからさ
 もう心臓バックバクなんだぞ!?」

何だか変なテンションになって二人してそのまま大笑いしちゃいました。

ちなみに残された理由は問題があったとかでは無くプロデュースするにあたって私とコミュニケーションを取りたかったみたい。
いい人、なんだろうなぁ。
私の、プロデューサーさん、かぁ。
次の日から私とプロデューサーさんの活動が始まりました。
最初は挨拶回りから地方営業、そして合間を縫ってレッスンをする日々。

プロデューサーさんのお陰で私は、いえ765プロには本当に沢山のお仕事が入って来るようになりました。
始めの内はいっぱい失敗しちゃったんですけど、お仕事が上手くいくと必ず優しい笑顔で頭を撫でながら褒めてくれます。
お仕事の前、合間、後、二人で色んな話をします。
他愛のない話、友達の事、授業の事、昔の事。

私はプロデューサーさんと話すたびに、プロデューサーさんの事を知るたびに心が温かくなるんです。
撫でてもらうたび、春風がそよぐように私の心に芽生えてく想い。

日が経つにつれ、あなたを知るほどに強くなっていく想い。
ずっとこんな日々が続けばいいのにな…。



次の日から私とプロデューサーさんの活動が始まりました。
最初は挨拶回りから地方営業、そして合間を縫ってレッスンをする日々。

プロデューサーさんのお陰で私は、いえ765プロには本当に沢山のお仕事が入って来るようになりました。
始めの内はいっぱい失敗しちゃったんですけど、お仕事が上手くいくと必ず優しい笑顔で頭を撫でながら褒めてくれます。
お仕事の前、合間、後、二人で色んな話をします。
他愛のない話、友達の事、授業の事、昔の事。

私はプロデューサーさんと話すたびに、プロデューサーさんの事を知るたびに心が温かくなるんです。
撫でてもらうたび、春風がそよぐように私の心に芽生えてく想い。

日が経つにつれ、あなたを知るほどに強くなっていく想い。
ずっとこんな日々が続けばいいのにな…。



桜もすっかり散って季節はもう初夏です。

春香「最近、お仕事増えてきましたね。いつもお疲れ様です。
   そんなプロデューサーさんに差し入れですよ!差し入れ!」

P「お、いいのか!?ありがとう!」

子供みたいに喜んでくれるプロデューサーさん。
良かった、ちょっと、ううん結構不安だった。

P「うん、おいしい!春香はお菓子作りが得意なのか?」

春香「はい!クッキーにケーキ、ドーナッツ。大体なんでも作れますよ」

P「ふむ、なるほど。そういう方面で売り出すのもアリか…」ブツブツ

桜もすっかり散って季節はもう初夏です。

春香「最近、お仕事増えてきましたね。いつもお疲れ様です。
   そんなプロデューサーさんに差し入れですよ!差し入れ!」

P「お、いいのか!?ありがとう!」

子供みたいに喜んでくれるプロデューサーさん。
良かった、ちょっと、ううん結構不安だった。

P「うん、おいしい!春香はお菓子作りが得意なのか?」

春香「はい!クッキーにケーキ、ドーナッツ。大体なんでも作れますよ」

P「ふむ、なるほど。そういう方面で売り出すのもアリか…」ブツブツ

私の売り出し方を真剣に考え始めるプロデューサーさん。
お仕事熱心なのはいいんだけど、頑張りすぎて体を壊さないか心配です。

最近は私だけじゃなく他の子達の事も見始めたから。
真っ白だった事務所のホワイトボードはだんだん黒で埋まって行くようになりました。

最初にプロデュースされた私も今では現場の無い日を数える方が簡単になったくらいです。
まだまだ地方での仕事が多いですけど。

あ、CDも出したんですよ!
どっとっぷTVのランキングにも入ったんです!順位は83位でしたけど…。
同時期に出した如月千早ちゃんのCDなんか72位だったんです!
負けちゃって悔しかったけど千早ちゃんも何でか悔しそうでした。

竜宮小町に勝てなかったからかな?
P「おーい、春香。来週頭に料理番組のゲストの仕事取って来たぞ!
 何と全国放送だ!」

春香「ぜ、全国放送!本当ですか!?」

P「あぁ、深夜なんだけどな。お菓子を作る回が月末に放送されるからその回にねじ込んできた!」

どうやら本当にお料理路線のお仕事も盛り込んでいくみたいです。
趣味とかをお仕事に反映してくれるなんてやっぱりプロデューサーさんは優しいなぁ。

真「春香!全国放送の番組に出るんだって!?」

耳聡く聞きつけた真がやって来た。

真「くぅ〜、また春香に差をつけられちゃうなぁ。ボクも頑張らなくちゃ!」

P「真は今でも充分頑張ってるよ、あとはタイミングとか色々な…」

真「そ、そんなプロデューサー気にしないでください!」

春香「うんうん、真だってモデルとかのお仕事結構来てるし。え〜っと真おうj」

真「うわ〜!止めてよ春香!は、恥ずかしいってば!
  大体ボクはもっと可愛いフリフリの服とかが…」

P「まぁまぁ、そう言うな。今はとにかく売り込みの時期だから」

真「う〜、そう言われちゃうとなぁ」

P「もっと真の知名度が上がった時にそういうのも一つの方向性として売り込んでくからさ」

真「本当ですか!?へへ、や〜りぃ!約束ですよ、プゥロデューサー!」

P「あぁ、約束だ
 おっと、こんな時間か。春香」

春香「あ、はいそろそろ出発ですね
   ごめん真。行ってくるね」

真「いってらっしゃい春香、プロデューサーも!」

真に手を振り事務所を後にする。
プロデューサーさんの車で現場まで移動。
その間二人で色んな事を話します。
事務所の仲間の事、お仕事の事、自分の事、プロデューサーさんの事。

しゃべっているとあっという間に現場に着いてしまう。
ちょっぴり名残惜しいけれどお仕事は大事です。

今日はローカル局のバラエティ番組に出演するんですよ。
初めての生放送で生歌も披露しなきゃなので普段より緊張しちゃいます。

ディレクターさんや番組の司会の方との入念な打ち合わせの後番組が始まりました。

司会「今日のゲストは、最近人気上昇中のアイドル天海春香ちゃんでーす!」

司会の方の呼び込みの後Co2が吹き出るセットから元気よく登場します。

春香「こんばんわ!765プロ所属の天海春香です!よろしくお願いしm…わっ」

どんがらがっしゃ〜ん

やってしまった…。
セットの段差に引っかかって転んでしまいました。
うぅ、せっかくの生放送なのに…ってあれ、何か凄いウケてる?

どうやらアドリブだと思われたらしい。
なにはともあれ、結果オーライってやつなのかな?

その後の番組はつつがなく進行していき生歌もいつも通りに歌えました!
番組のスタッフさんも褒めてくれたのでとってもいい気分でプロデューサーさんの所に行くと

わっ凄い険しい顔してる!
うぅ、怒られちゃうのかな…?

プロデューサーさんと二人でスタッフさん達に挨拶をしてテレビ局を出て車へ。


P「春香」

いつもの優しいプロデューサーさんとは違う感じのプロデューサーさんはなんだかとっても怖くて
今にも泣きだしそうになっちゃいました。

春香「は、はい。」

P「あー、その、なんだ。怪我とかしてないか?」
「結構凄い音たてて転んでたから膝とか腕とか打ってないか?」

春香「あ、はい。怪我とかは特に大丈夫です」

P「本当か!?どっか痛いのに我慢してるとかじゃないよな!?」

春香「ほ、本当に大丈夫ですよ!どこも打ってません!」あせあせ

P「そ、そうか…。良かった…!」

春香「プロデューサーさん?」

P「いや、どこも怪我してないなら良いんだ
 でも気を付けてくれよ?ホントに気が気じゃなかったんだぞ?
 生放送だから止める訳にもいかないしさ」

春香「心配掛けてごめんなさい…。ぐすっ」

P「は、春香!?」

春香「ふっ…うぅ…ぐすっご、ごめ、なさい…」

P「ど、どうした春香!?やっぱりどこか痛むのか!?びょ、病院!いや、救急車!?」あわあわ

春香「ち、違うんです!あ、あの…ぐすっそうじゃなくて…プ、プロデューサーさんが…」

P「お、俺!?」

春香「その、いつもと違って…こ、怖くって…
   心配してくれてるのは、分るんですけど凄く険しい表情で…。怖くなっちゃって…」

P「そ、そうか。…ごめんな、春香、怖がらせちゃって」

春香「そんな!プロデューサーさんは私の心配をしてくれてただけで!
   わ、私が勝手に…うぅ…」

P「な、泣くなよぉ…。ど、どうしたら…」

春香「あ、あたま…」

P「頭?」

春香「いつもみたいに、頭を、撫でてください…」

P「お、おう。そんな事で良ければいくらでも!」



そう言うとプロデューサーさんの大きくてあったかい手が私の頭を撫でてくれました。
プロデューサーさんに撫でてもらうと、その手の温もりがじんわりと頭から胸へ広がっていく。
その胸の温かさがとても心地よくて、怖がらせないように無理に作ってくれた笑顔が愛おしくて。

春香「ふふっ」

P「春香?」

春香「プロデューサーさん、もう、大丈夫です
   心配掛けてごめんなさい。それと、ありがとうございます」

P「いや、俺の方こそ怖がらせちゃってごめんな。
 …そんなに怖かった?」

どうやら結構ショックだったみたいです。
ちょっと意地悪しちゃおうかな?



春香「えぇ、す〜っごく怖かったですよ!そりゃもう鬼のような表情をしてました!」

P「ご、ごめん…。でも、それだけ春香の事が心配だったんだってのは分かって欲しい」

そ、そんな事真顔で言われたら…///
もぅ、何にも言い返せないじゃないですか…。

春香「は、はい///」

P「それじゃあ、事務所に帰ろうか。」

そう言って車のエンジンをかけるプロデューサーさん。
心配してくれるのは私がアイドルで、あなたがプロデューサーだから?


そんな事を考えてしまう自分が少し嫌になる。


事務所に戻り業務報告書を二人で書く。
出来あがったものを小鳥さんに提出して帰り支度をします。

P「春香、今日はお疲れ様。」

春香「お疲れ様です、プロデューサーさん。
   今日はすいませんでした…」

一瞬険しい表情のプロデューサーさんが脳裏をよぎる。

P「いや、俺の方こそ泣かせちゃってごめんな。」

そう言ってまた頭を撫でてくれました。

春香「あ…///」

P「そのお詫びと言ってはなんだけど、よかったらこれから飯でも行かないか?
 春香の好きなもの奢ってやるぞ」

春香「そ、そんな、悪いですよ!」

P「いいんだよ、番組自体は上手くいったしスタッフさん達も喜んでくれたんだからご褒美だよ」

春香「ありがとうございます、プロデューサーさん!」

P「じゃあ少しだけ待っててくれな」


そういうとプロデューサーさんはデスクに戻って行った。
プロデューサーさんを待つ間にお母さんに晩御飯はいらない旨をメールしたら小鳥さんに声をかけられた。

音無「春香ちゃん、生放送見たわよ。
   結構派手に転んでたけど、大丈夫?怪我とかしなかった?」

春香「小鳥さん、見ちゃったんですか!うぅ、恥ずかしいな…///」

音無「春香ちゃんの晴れ舞台だもの!見逃すものですか!」

春香「でも、地方ローカルの番組なんてよく見れましたね?」

音無「あの局はギリッギリ入るのよ。時々見れなかったりするんだけどね〜」

小鳥さんと他愛のない話をしているとプロデューサーさんがやってきた。



P「お待たせ春香、それじゃ行こうか」

音無「あら、これから二人でデートですか?」ニヤニヤ

春香「デっ…ち、違いますよ!ご飯食べに行くだけです!///」

音無「あら、それをデートというと思うのだけれど」ニヤニヤ

春香「はぅ…///」

P「音無さん、独り身が寂しいからって春香をおちょくらないでください」

音無「ピヨォ…」

プロデューサーさんって意外と毒舌?

P「さ、寂しい大人は放っておいて遅くなる前に行こう、春香」

春香「は、はぁ」

小鳥さんには悪いけど、ややこしい事になる前に事務所を出よう。

春香「お疲れ様でしたぁ〜!」

がちゃ、バタン。



音無「ドSなプロデューサーさん…アリね!!」

貴音「小鳥嬢…。面妖な…」


事務所を出た私たちは近くのファミレスに来ました。
みんなとはよく来る場所なんです。

P「好きなもん食っていいからな〜」

春香「ふふ、ありがとうございます!」

注文を済ませ今日の反省をした後お料理が運ばれて来ました。

P、春香「いただきま〜す」

いつもは事務所の仲間と来る場所にプロデューサーさんと二人で来るのが何だかくすぐったくてついつい顔がほころんじゃいます。

P「もうすぐ夏だなぁ」

春香「そうですね、桜も散っちゃって少し寂しいですけど夏も好きですよ!」

P「やっぱり春香は春が好きなのか?」

春香「はい、なんてったって“春”香ですからね!生まれも春ですし」

P「ははは」

こんななんてことない会話を出来る今この瞬間が私は一番大好きです。
春だろうと夏だろうとどんな季節でもこうやって二人でずっとお話しできたらな…。


P「そうだ春香。春香の地元から仕事の依頼が来てるんだけど」

春香「えぇ!?わ、私の地元ですか?」

P「あぁ、何でも夏祭りののど自慢に出て欲しいらしい。クライアントも春香を指名してきてる」

春香「のど自慢大会か〜。子供の頃出たなぁ」

P「今回は特別ゲストだぞ。良かったじゃないか」

町内会長さんとかがオファーしてくれたのかな?
何だか嬉しいなぁ。

P「それじゃ受ける方向で進めちゃっていいか?」

春香「はい!よろしくお願いします!」

P「うん。っと、もういい時間だな。そろそろ行こうか」

春香「あ、そうですね。おしゃべりしてると時間って結構すぐ経っちゃいますね」

プロデューサーさんは伝票を持ってレジへと向かいます。
私はその後ろについてお会計をしてるプロデューサーさんを待ちます。

お店を出ると外はもう真っ暗でした。
夏前とはいえこんな時間では当然ですね。

P「それじゃ春香、気を付けて帰るんだぞ。」

春香「はい、今日はごちそうさまでした!プロデューサーさんも気を付けてくださいね?」

事務所方面と駅方面への分かれ道でお別れの挨拶をします。

P「あぁ、それじゃあ春香、お疲れ様」

春香「はい。お疲れ様でした」

歩きだして数秒、後ろをちらりと見るとその場で私を見送るプロデューサーさん。
本当に優しいな。
心がまた温かくなって私は振り返り

春香「プロデューサーさん、おやすみなさい!」

元気よくそう言ってまた振り返り走り出す。
なんだか心がふわふわして、胸が熱くなって。
プロデューサーさんの事を想うと嬉しくて、でも切なくて。
この気持ちを伝えたら、どうなっちゃうんだろうか?
言いたくても言えない。
だって私はアイドルで、プロデューサーさんはプロデューサーだから。
でも、いつか…。


時は流れて季節は夏真っ盛り。
今日は私の地元の夏祭りです!

毎年トモコ達と来るお祭りに今日はお仕事で来ています!

春香「プロデューサーさん、お祭りですよお祭り!」

お祭りの熱気と雰囲気が気温以上に私を熱くします。

P「春香〜、浮かれすぎて転ぶなよ」

春香「大丈夫ですよ、今日は浴衣だからいつもより気を付け…わわっ」

P「危ない!」

がしっ

言われた傍からこけそうになった私をプロデューサーさんが抱えてくれました。
ち、近い…///


春香「す、すいません!」

あわててプロデューサーさんから離れます。
私、汗臭かったりしないかな?重かったりしないかな?
うう、恥ずかしい…。

P「いや、せっかくの可愛い浴衣姿が汚れたら嫌だろう?
 転ぶ前に防げて良かったよ」

春香「かわっ…!?///」

P「ん?」

プロデューサーさんにかわいいって言われてしまった。
そんな事言われたら…。
もぅ、プロデューサーさんのばか…。

コンコン

???「春香ちゃん、いるかい?」

控室に誰かやってきたみたいです。
プロデューサーさんが対応に向かいます。

がちゃ

ドアを開けるとそこには町内会長さんがいました。

会長「春香ちゃん、今日はありがとうね。」

会長さんは優しくて、私が子供の頃から私の歌を聞いてくれてるある意味昔馴染みのファンなんです。
久しぶりに会ってお話しした会長さんは優しい会長さんのままでした。

会長「さて、それじゃあそろそろスタンバイお願いね
   私も客席で楽しみに待っているからね」

そう言うと会長さんは笑顔で控室を後にしていきました。
昼過ぎからののど自慢大会が始まって小さな子供からお年寄りまでいろんな人がステージに上がって歌っています。
私も小さなころ会長さんに誘われて出た事があるんですが
小さな公民館の小さなステージがその時はいつもよりも何倍も大きく感じたのを覚えています。

今はもっと大きな会場でもっと沢山のお客さんの前でライブとかするようになりましたが
その時の気持ちは私の宝物の一つです。

P 「そろそろ春香の出番だな。先日の全国放送の影響で知名度はかなり上がったし客席も満員だ。緊張してるか?」

春香「はい、でも心地いい緊張感です」

P 「よし!今日は春香のホームグラウンドだから思いっきり暴れてこい!」

春香「はい!」

参加者の歌が終わり司会を務める会長さんに呼ばれて元気よくステージに飛び出していきます。

春香「みなさ〜ん!こんにちわ〜!」

小さな公民館が歓声に包まれました。
あ、お父さんとお母さん見ぃつけた。
手振っちゃおう、あ、振り返してくれた。
ふふふ、地元ならではですよね、こういうのって。

春香「それじゃあ早速歌っちゃいます。聞いてください、太陽のジェラシー!」

今の季節にピッタリの曲。
私のデビュー曲。

小さいけれどお客さんとの距離が近くって、一人ひとりの表情が良く分かって。
この会場にいる皆が笑顔になってくれました。
アイドルをやっていて本当に良かったなぁ。
袖の方を見るとプロデューサーさんが笑顔で見守ってくれていました




P「お疲れ様、春香。大盛り上がりだったな」

春香「お疲れ様です、プロデューサーさん!もうすーっっっっごく楽しかったです!」

P「そうか、そりゃ良かった」

そう言ってやっぱりプロデューサーさんは頭を撫でてくれます。

胸の鼓動が速いのはステージ終わりで興奮してるからかな?
ううん、きっと違う…。

春香「プロデューサーさん、私、このステージに立てて良かったです
   お客さんとの距離が近くて、皆の笑顔がステージの上からわかって
   それが私にまたエネルギーを与えてくれて…」

P「春香…」

春香「私、皆を笑顔に出来るような、そんなアイドルになりたいです。
   いいえ、なります!」

今日のステージで感じた事、それが私の目標になりました。
アイドルとしての私の目標。

P 「…うん。なれるよ、春香なら絶対!」

とっても嬉しそうな顔のプロデューサーさんを見てると、こっちまで嬉しくなっちゃいます。
と同時にやっぱり胸が苦しくなります。

お祭りが終わっていつもならお家に帰るのですが、明日朝早くから収録があるので
今日は千早ちゃんのお家に泊めてもらう事になっています。
早朝ロケの時とか結構千早ちゃんのお家に前乗りさせてもらってるんです。

P 「それじゃあ俺は町内会長さんに挨拶してくるから、車で休んでてくれ」

春香「はい、分かりました」

そう言ってプロデューサーさんは会長さんがいる所へ歩き出しました。
それを見送る私。
なんだかそれが、私から離れて行くプロデューサーさんを見るのが嫌で目を閉じました。
きっと、思った以上に疲れていたんだと思います、私はそのまま眠ってしまいました。
夢の中で、私から離れて行くプロデューサーさんの姿が何度も繰り返され
闇の中に消えていくプロデューサーさんを、私は声も出せずただ見送る事しかできませんでした。


目が覚めると、そこはもう事務所のすぐ近く。
時間はまだ19時です。
今見た夢のせいでいつもみたいにプロデューサーさんとお話しする事も出来ず
とっても悲しい気分のまま事務所に着きました。

報告書を書いている間もその気持ちは私を包んでいました。
きっと顔に出ていたんだと思います。
駅前まで送ってくれてる時プロデューサーさんは心配そうな顔をして

P 「どうしたんだ、春香?」

優しさが、胸を締め付けます。
一緒に帰るのが嬉しいはずなのに、どうして?
どうしてこんなに泣きそうなんだろう…。
いっそのことこの胸の内を吐き出せたらどんなに良いか。
でも、きっと困らせてしまうだけだ。
私は、首を横に振る事しかできませんでした。


駅前に着けば、プロデューサーさんの見送りは終わりです。

P 「それじゃあ春香、明日の収録もよろしく頼むな」

そう言って手を振るプロデューサーさん。
車の中で見た夢がフラッシュバックして闇の中に消えていくプロデューサーさんに、もう会えないような気がして
体が勝手に動いていました。

春香「プロデューサーさん!」

私は、プロデューサーさんの胸に飛び込んでいました。

P 「お、おう!どうした、春香!?」

突然の事で驚いているプロデューサーさん。
その時の私は必死で、ただプロデューサーさんに離れて行って欲しくなくて。

春香「好きです。プロデューサーさんの事が…うぅ…ぐすっ」

気付いた時には後の祭り。
こんな形で告白してしまうなんて…。

こんな事言っても困らせてしまうだけだ。

それでも、もう気持ちを抑えておけなかった。


瞬間、街灯よりも強い光源が私たちを包んだ。
遠くから聞こえる花火の音。
顔を上げると優しい笑顔のプロデューサーさんがいました。

P 「ありがとう、春香」

そう言うと、プロデューサーさんは私の手を優しく握ってくれました。
握ったまま、駅前で二人で花火を眺めます。

空を見たまま、プロデューサーさんが

P 「春香の気持ちはすごく嬉しい、でも俺はプロデューサーで春香は…」

春香「私が、アイドルだから…」

P 「付き合うとか、そういう事は出来ない。すまない…」

春香「…いいんです。ホントはずっと言わないつもりでしたし」

P 「春香…」

せっかく繋いでくれた手を離して、背を向けて強がります。
だって、泣き顔なんか見せたくなかったんです。
きっと声でバレバレなハズなのに。


沈黙する二人。
花火の音だけが私たちを包みます。

P 「…」

春香「…」

ぎゅっ

突然プロデューサーさんの手が、私の手を握ってきました。

春香「プロデューサーさん…?」

P 「プロデューサーとしての俺の気持ちはさっき言ったとおりだ」

プロデューサーとしての…?

P 「でも、プロデューサーという立場じゃない一個人のPとして
  俺は春香の事…大好きだ。」

プロデューサーさんが、私の事を…好き…?
でもさっきは付き合うとかは出来ないって…。
でもそれはプロデューサーっていう立場だからであってプロデューサーじゃないプロデューサーさんは
私の事が…好き!?


春香「…うぇえええええ!?」

P 「んな!?なんだよ!」

春香「だ、だって!いきなりすぎて…」

P 「先に告白してきたのは春香だろう」

春香「そ、そうですけど…」


頭が混乱してどうしていいのか分からなくなってる私を見て

P 「ぷっ…あははは!」

春香「な、何で笑うんですか!」

P 「いや、せっかく両想いだったのに締まらないなぁって思って」

春香「両想…はふ///」ボフン

P 「は、春香!?」


ずるいなぁこの人は。
そうやっていつも私の心を締め付けます。
でも今は、その締め付けられてるのが心地よく感じてる自分がいます。


春香「プロデューサーさん」

P 「ん?」

だから、私はこれからも

春香「大好きです」




おわり
おわりです。


短いですが楽しんでいただけたなら幸いです。
3部作でもう書き上がっているので続きは明日投稿します。

13:28│天海春香 
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