2013年11月07日

美希「ハニーにさしいれするの!」

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美希「え? ハニー今日ザンギョー?」


P「あぁ……ちょっと忙しくて、仕事が終わりそうに無くてな」

美希「忙しいとザンギョーするの?」

P「そうだよ」

美希「でも、一人でお仕事って寂しくないの?」

P「寂しくないさ。 それに集中して出来るから、良い面もある」

P「もちろん本当は、仕事を残さないのが一番なんだけどね」

美希「そっか……でもザンギョーってなにするの?」

P「何って、仕事だよ仕事」

美希「それは分かってるの! 何をする仕事?」

P「何をするっていうか……夜にする仕事が残業だよ」

美希「夜……? ハニー、えっちな仕事してるの!?」

P「…………は?」
P「何を言ってるのか分かんないけど、残業ってのは夜するもんだ」

P「本当は小鳥さんが一緒に残ってくれたら助かるんだけど……」チラッ

美希「……えっ」

小鳥「きょ、今日は見たい番組があるので……お先に失礼しますぅ」

P「薄情者ーッ!」

小鳥「んなっ! いつも手伝ってあげてるじゃないですかぁ!」

P「いつもは俺が手伝うほうでしょ!」

小鳥「まぁその方が圧倒的に多いですけど……」

美希「…………」

美希(ザンギョーは夜の仕事……夜の仕事はえっちな仕事……)

美希(ハニーと小鳥……二人で…………はっ!?)

美希「ダ、ダメなのーッ!」ポカッ

小鳥「あいだっ! 美希ちゃんどうしたの!?」

美希「小鳥の馬鹿! 抜け駆けは許さないのっ!」
小鳥「えっと……何の話かしら?」

美希「とぼけたって無駄なの! ハニーと一緒にザンギョーしようとしてるんでしょ!」

小鳥「いや、私は残業したくないから……こうして帰ろうと……」

P「そうそう、恩を仇で返そうとしてる大人を、よーっく見ておくんだぞ美希」

小鳥「私を悪者にしないでくださいよぉ!」

美希「そうなの! ハニーも悪いの!」ポカッ

P「うわっ! なんだよ美希」

美希「小鳥とザンギョーしようとしてるの! ミキが居るのに!」

P「何言ってるんだ? 美希に残業を頼むわけにいかないだろ?」

美希「どうして? ミキだって出来るよ?」

美希「それに、ザンニョーの小鳥より……若いミキの方が絶対イイと思うなー」

小鳥「誰がハルンケアですってぇ! ちょっと聞き捨てならないわよ美希ちゃん!」

P「っていうか何の話をしてるんだ!」

美希「ザンギョーなの!」

小鳥「ザンニョーです!」
美希「なぁんだ……ザンギョーってえっちなことじゃないんだ」

P「美希が残業をそういうものだと勘違いしてたことを踏まえると……」

P「先の発言は色々と問題があるように思えるんだけど?」

小鳥「踏まえなくても、私への発言は問題があると思います!」

美希「ゴメンなさい……ミキ、気が動転してたの」

P「ダメじゃないか美希、小鳥さんだって若いし綺麗だろう?」

小鳥「うぅ……こういう場合は慰めが逆効果だということを知っておいてください……」

P「そういうんじゃないですって! 割と本気で言ってるんですから」

美希「ミ、ミキもそう思うなー!」

小鳥「いいのよ……私のことなんて放っておいてちょうだい」

美希「ハニーは美希のものだからしかたないけど……」

美希「ハニーと小鳥の年の差なら、ぜんぜんフツーだって思うなー」

小鳥「もうやめて……これ以上傷を抉らないでぇ!」
小鳥「とにかく今日はゴメンなさい」

P「わかってます……冗談で言ってみただけですから」

美希「じゃあ今日はミキがザンギョーしてあげるの!」

P「ダメダメ! 美希はお家でゆっくり休みなさい」

美希「ちぇっ」

P「代わりに明日また元気な顔を見せてくれ。 小鳥さんも」

美希「……うんわかった! ハニー、ザンギョー頑張ってね!」

小鳥「それじゃーお疲れ様です、ハニー」

美希「あっ! ミキの取っちゃダメなの!」

小鳥「うふふっ、ゴメンね」


バタン


P「…………」

P「一気に静かになったな……」


P「さーて、やるかー!」
P「…………」カタカタ

P「…………」カタ


P「…………ふぅ」

P(こう一人で残業をしていると、受験勉強を思いだすなぁ)

P(深夜ラジオを聴きながら、一心不乱に勉強してたっけ)

P(途中母親が『夜食よー』つって、ラーメン作ってくれたり……)


グゥー


P「…………」

P「腹減ったな……」

P(チコの実でもなんでも良いから、とにかく長靴一杯食べたいよ)

P(とはいえ、今から買いに行くのも面倒だし……我慢するかな)


グゥー


P「腹が減っても戦はできる……はず」
P「…………」カタカタ

P(それにしても静かだ……)

P(いつも賑やかな事務所がこうも静かだと、まるで別の場所みたいだな)

P(まぁ残業だし、静かなのは当たり前か……)

P(一人なのに騒がしかったら、そっちの方がオカシイからな)

P「…………」

P「べ、別に……寂しくなんかないんだからねっ」ボソッ


シーーーーーン


P「はぁ〜あ、小鳥さんが差し入れ持って会いに来てくれないかなぁ……」

P「『お、お腹空いてるだろうと思って……』とかなんとか言ってさ」

P「そしたら戦力にもなるし、一石二鳥だよ……小鳥だけに………フフッ」


シーーーーーン


P「…………」

P「…………」カタカタ
美希「…………はぁ」


美希(今頃ハニーはザンギョーかぁ……)

美希(ザンギョーって何するかわかんないけど、きっと大変なのっ!)

美希「だからミキが手伝うって言ったのに……」

美希(大丈夫かな? ハニー、疲れてるんじゃ……)


美希「あっ! そうだ!」


美希「ハニーにこっそり会いに行けばいいんだ!」

美希(ヘトヘトに疲れたところにミキが登場したら、ハニーはきっと大喜び!)

美希(『会いたかったよ美希……』って言って、イイコイイコしてくれるはずなの!)

美希「…………」

美希「そうと決まれば早いほうがいいの!」

美希「待っててねーハニー」
美希「ふぅ……お外は真っ暗……少し寒いの」


グゥー


美希「…………お腹すいた」

美希「あっ!」

美希「もしかしたら、ハニーもお腹空いてる……?」

美希「うん……きっとそうなの!」

美希「…………」

美希(男は胃袋を掴んだらハチクロだって、前に小鳥が言ってた……)

美希「よーっし、ハニーの胃袋を掴むのー!」

美希「とりあえず、コンビニ行こ」

美希「…………」

美希「ミキお金持ってたっけ?」

美希「う〜ん………」


美希「よし! これだけあればなんとかなる!」

カチッ     カチッ     カチッ     カチッ


小鳥「時計の音って……こんなに大きかったかしら?」

小鳥「…………」

小鳥「あぁ落ち着かない……落ち着かないわ!」

小鳥「プロデューサーさんのことが気になって、とても落ち着けやしないわ!」

小鳥「あぁ〜ん、一緒に残っとけばよかったなぁ」


小鳥「…………よし!」

小鳥「こうなったら……差し入れ持って、押しかけてやろうじゃないの!」

小鳥「男は胃袋を掴めばハチノス……イチコロって言うじゃない!」

小鳥「……ちょっとメールしてみようかしら」

小鳥「…………」ポチポチ

小鳥「『お疲れ様です。 今からお夜食持って伺ってもいいですか?』」

小鳥「うんうん、これでいいわね……」

小鳥「そーしん! っと」
P「…………」カチカチ


ワタシノココロガ ソラナラバー♪


P「わっ! ビックリしたー」

P「小鳥さんから……メールか?」

P「えーっと? 今からお夜食持って……」

P「………………えっマジ?」

P「ぃやったぁ! 流石は小鳥さん!」

P「これで混戦模様の正妻グランプリ、暫定一位に躍り出たな!」

P「しかもライバルとは三馬身ほど大きく引き離しての一位!」

P「いやぁ……実にスバラシ………」

P「…………」

P「…………コホン」

P(この独り言の途中で虚しくなる現象には名前があるのだろうか……)


P「あっ、メール返しとかないと……」ポチポチ

ンーーーー ンーーーー ンーーーー ンーーーー

小鳥「返信キター!」

小鳥「えぇっと……なになに……?」

小鳥「『大歓迎です! 箸を長くして待ってますね』……か」

小鳥「うんうん! こういう遠慮しないところが好きですよ、プロデューサーさん」

小鳥「…………////」

小鳥「私ったら、なに一人で照れてるんだろ」


小鳥「それはそうと……やっぱり手作りがいいわよね」

小鳥「ちょっと時間掛かるかもしれないけど、ここで女を見せておかないと!」

小鳥「幸い料理には自信があるし……イケるはずよ!」

小鳥「…………」

小鳥「古本屋で買った、時短料理の本が役立つ時が来たわ……」

小鳥「よーし! 頑張るぞー!」


小鳥「……の前に、一応今から作るってメールしとこう」ポチポチ
P「……俺は今、猛烈に感動している!」

P「小鳥さんの差し入れが……手作りだって?」

P「あぁ小鳥さん……貴方はやよいの次に天使だ、そうに違いない」

P「薄情者なんて言ってサーセンしたー!」


P「よーし……俄然ヤル気が出てきたぞー」

P「それはもう、こんな風に独りでベラベラと喋るほどにな!」

P「…………コホン」

P(今のうちに小鳥さんの仕事を作っておこう……)

P(まさか飯だけ持ってきてハイサヨナラはないだろうからな)

P「…………」

P「ははっ、どっちが薄情者なんだか……」

P「…………」カタカタ


P「早く来ないかなぁ……小鳥さん」

アリガトウゴザイマシター

美希「おにぎりもいーっぱい買ったし、飲み物も買ったし……」

美希「これで万事オッケー! ハニーの胃袋に抱きついちゃう!」

美希「ミキが行ったら……喜んでくれるかな?」

美希「あーでも、ハニーのことだから――」


P『こんな時間に一人で出歩くなー』


美希「――って言いそうなの」

美希「……でもそんなこと言ったら、おにぎりぜーんぶ食べちゃうもん!」

美希「あっ、それじゃ自分の胃袋掴んじゃうんだ……」

美希「うーん難しい問題なの〜」

美希「…………」

美希「頭イタくなってきた……」
美希「…………」

美希「ミキの記憶が正しければ……もう着くはずなのに……」

美希「ぜーんぜん着かないなぁ」


キィ               キィ


美希「道は間違えてないって思うんだけど……」

美希「……もうちょっと行ってみよっと」


        キィ               キィ


美希「…………?」

美希「変な音……」


キィ        キィ        キィ        キィ


キィ         キィ          キィ          キィ


美希「…………アッチから聞こえる!」
キィ        キィ        キィ        キィ


美希「ここは……公園?」

美希「こんなところに公園なんてあったかなぁ」


キィ         キィ         キィ         キィ


美希「それよりこの音が気になるのっ!」

美希「あっ」


キィ          キィ          キィ          キィ


美希「なぁんだ、ブランコが揺れてるだけか……」

美希「あはっ! 風もないのにブランコが揺れるなんて、不思議なの!」


キィ           キィ           キィ           キィ


美希「それに、全然収まらないし……まるで…………」


美希「まるで人が乗ってるみたい」
美希「あっ! こうしちゃいられないの! 早くハニーのところへ」クルッ


キィ        キィ        キ……


美希(あれ? ブランコが……止まっ――)

ザッ       ザッ       ザッ       ザッ


美希(あ、足音?)

美希「…………ッ!」ダッ


ザッ       ザッ    ザッ  ザッ ザッ ザッザッ…………


美希(やっぱり、ミキのと違う足音が……さっきより早くなってる!)

美希(に、逃げなきゃ……!!)

美希「はぁ………はぁ………はぁ……あっ!」


ズサァッ


美希「あぅ……イタタタタ……………ぁ」
『…………』

美希「ぁぁ………あ……ぁ……」

『クケックケッ………クケケケケ…………ケタケタケタ…………』

美希「く、首が……………」


『……ショニ………タシトイッ……ニ…………』


『ワタシト…………イッショニ………………』




『ア……ソ……ビ……マ……ショ……?』

美希「…………ヒッ」



キィ       キィ       キィ       キィ


キィ        キィ         キィ         キィ


キィ         キィ           キィ           キィ
P「小鳥さん、まだかなぁ……」

P「…………」


コツ      コツ      コツ      コツ


P「ん? 足音か?」

P「そうだ……小鳥さんが階段を上がる音だ!」


コツ      コツ      コツ


ガチャ


P「…………え?」

美希「…………」

P「み、美希? 一体……どうしたんだ!?」

美希「プロデューサー、これ……」

P「これは……おにぎり?」

美希「そうだよ……プロデューサーお腹空いたでしょう?」
P「もしかして……差し入れか?」

美希「うん」

P(何か様子が違うな………気のせいか?)

P(それにこの袋……砂が付いてるし、穴だって……)

美希「どうしたの?」

P「い、いや……ありがとな、じゃあ一緒に食べようか」

美希「うぅん、いらない……私おにぎり嫌いだから」

P「え………美希……だよな?」

美希「そうだよ? 変なプロデューサー」

P「…………本当に美希か?」

美希「私のこと忘れたの?」

P「……スマン」

P「じゃあもう一つ聞いてもいいか?」

美希「うん」

P「どうして美希の膝から血が出てるんだ?」
美希「さっき公園で転んだの……そしたらオトモダチがいて……」

P「公園? お友達?」

美希「だから、オトモダチと遊んでるの」

P「えーっと……」

美希「プロデューサーも一緒に遊ぼ?」

P「…………」

美希「ねぇハニーも遊ぼう?」

P「わ、わかった……何をして遊ぶんだ?」

美希「オモチャ!」

P「オモチャ? そんなのどこに……」

美希「これだよ」

P「…………は?」






ドスッ
P「ぅぐっ……ぁあ…………」

美希「キャハハハハハハハハハハハハ」

P「お、お前は………ぐっ……ダ、ダレ……だ…………」

美希「オマエハダレダー オマエハダレダー キャハハハッ」

P「美希に……な、何を…………っ………く…………」

美希「遊んでるだけだよ?」

prrrrrr!   prrrrrr!   prrrrrr!

P「あ……こ、こと……小鳥……さん?」

P「ぐぅっ…………う…ぁ………こ……とり…………」

美希「もう……ウルサイなぁ」

prrrrrr!   prrrr バキッ!

美希「アハハハハハハハハハハハ!」

P「こと……りさん………く、来る………な……」

美希「ウキャキャキャキャキャキャキャキャキャ…………」


グサッ        グサッ               グサッ
――――
――

小鳥「ふぅ……ちょっと遅くなったわね」

小鳥「プロデューサーさん、待ちくたびれちゃったかな?」

小鳥「さっき電話したとき出なかったし……」

小鳥「……もう帰ったのかなぁ」

小鳥「…………」

小鳥「うぅん! きっと仮眠を取ってるんだわ!」

小鳥「だって、何も連絡しないで帰るはずないもの……」


小鳥「やっぱり……電気がついてる」

小鳥「よし! 早く行ってあげ―――」

小鳥「あら? これって…………ち、血?」

小鳥「階段のところに……ポタポタって………」


キィ       キィ       キィ       キィ


小鳥「えっ?」
小鳥「い、今……変な音が…………」

小鳥「…………」

小鳥「き、気のせい……?」

小鳥「…………とりあえずプロデューサーさんのところへ行かないと!」

小鳥「階段のヨゴレだって、わかるかもしれないし……」


キィ         キィ         キィ         キィ


小鳥「!?」

小鳥(気のせいよ……気のせい………絶対気のせい)

小鳥「そ、そうよ! プロデューサーさんのイスの音よ……」


キィ         キィ         キィ         キィ


ガチャ


小鳥「プ、プロデューサーさん……おまたせ――」

P「ぅ…………ぁ…………」
小鳥「プ……プロ…………」

P「あ………ぁぁ…………こと…………り…………」

小鳥「プロデューサーさん! どうしたんですかッ!?」

P「……ハッ…………ハッ……………」

小鳥「救急車! すぐ呼びますから!」カタッ

『……………………』

小鳥「あ、あれ? 電話……電話が!」

小鳥(電話線が切られてる……?)

P「はぁ…………はぁ…………」

小鳥(プロデューサーさんの携帯も……壊されて…………)

小鳥「あっ、私の携帯で!」

P「うぅ…………くっ………ぁ………」

小鳥「て、手が震えて……もう!」

小鳥「…………よし!」


『はい、119番消防です。 火事ですか? 救急ですか?』
小鳥「あの……は、早く来てください!!」

『落ち着いて。 火事ですか? 救急ですか?』

小鳥「救急です!」

『場所はどこですか?』

小鳥「場所は……大田区矢口2丁目1番――」


小鳥「プロデューサーさん! 今救急車呼びましたからね!」

P「………………」

小鳥「あぁプロデューサーさん!」ギュッ

小鳥「手が……こんなに冷たくなって…………うぅ」

P「……はぁ…………はぁぁぁ…………」

小鳥「だ、だめですよ……死んじゃダメですよ?」ギューッ

P「……こと……り……さん?」

小鳥「なんですか?」

P「だ……抱きつくと………俺の………血で……」

P「俺の血で……よ、汚れ……ちゃ…い……ます…………よ?」
小鳥「そんなの平気です! だから……だから死なないで!」

P「ふぅぅ………はぁ………ふぅぅ…………」ガチガチ

小鳥「ダ、ダメ! 意識をしっかり持って! プロデューサーさん!」

小鳥(どうにかして……繋ぎ止めないと…………)

小鳥「誰に……誰にやられたんですか!?」

P「み…………」

小鳥「み?」

P「…………」

P(あれは……あれは美希じゃ…………)

小鳥「プロデューサーさん?」

P「はぁ……わ、わからない…………はぁ……」

小鳥「そんな……」

小鳥「し、知らない人ですか!?」

P(もし……美希がまだ………とり憑かれて……)

P「…………」
P「ことり……さん」

小鳥「はい! なんですか?」

P「み……み………き…………」

小鳥「え?」

P「きを……つ……け…………て」

小鳥「何に気を付けるんですか?」

P「………………」

小鳥「プロデューサーさん、しっかりして!」

P「……うぅ…………ふぅぅ…………」

小鳥「そう……頑張って………生きてください!」

小鳥「もうすぐ助かりますから……ね?」

P「………………」

小鳥「プロデューサーさん!」


ピーポー ピーポー


小鳥「あっ!」
小鳥「私、誘導してきますから! 待っててくださいね」

P「………………」

小鳥「まだ……死なないでください!」


バタン


P「み……みき…………」

P「………………………」

P「はぁ……はぁ…………」

P「…………さむい」


P「…………」



P「……」





P「」
『こっちです! 出血が酷くて…………』

『…………意識がありません!』

『そんな……プロデューサーさん!』

『よし……とりあえず救急車まで運ぶぞ!』

『はい!』

『貴女も同乗して、彼に声をかけてあげてください』

『わ、わかりました!』



『プロデューサーさん! 頑張って!』

『絶対死んじゃダメですからね!』

『うぅ…………ぐすっ…………』

『あの子達にはまだプロデューサーさんが必要なんです!』

『私……私にだって、貴方が必要なんですよ?』

『まだ伝えてないことが……たくさんあるんですからっ!』

『だから………死なないで……』
――――
――

小鳥「……もしもし?」

小鳥「そうですか……社長から連絡が………」

小鳥「えぇ、私が社長に電話したの」

小鳥「うん…………そう………」

小鳥「うん……うん………そうです」

小鳥「…………わからないわ」

小鳥「うぅん……それは違うみたいだけど…………」

小鳥「でも、電話線が切られてたの」

小鳥「えぇ、それだけ…………そう」

小鳥「………えぇ……ぐすっ…………そうよ…………」

小鳥「ひぐっ…………うぅ………」

小鳥「……えぇ……大丈夫よ…………ゴメンなさい」
小鳥「え? みんなに……?」

小鳥「いえ……私は社長にだけ………」

小鳥「あぁ……そうですか…………」

小鳥「でも、大丈夫ですか?」

小鳥「うぅん違うの……みんなショック受けるかなぁって」

小鳥「そうですね……伝えないわけには…………」

小鳥「えぇ……わかりました」

小鳥「はい……お願いしますね…………律子さん」


ピッ


小鳥「…………はぁ」




小鳥「プロデューサーさん…………」
――――――
――――
――

『――――“東京都内にある会社オフィス”で、
 「同僚が腹から血を流して倒れている」と女性社員から通報がありました。

 警視庁池上警察署によりますと、この部屋で作業をしていた男性が
 何者かに腹部など数箇所を刃物のようなもので刺され重傷、命に別状はないとのことです。

 なお凶器は現場から見つかっておらず、犯人が持ち去ったものと思われます。

 被害にあった男性は犯人の様子を「覚えていない」と話しており、
 同署は殺人未遂事件として捜査を進めています。
 
 その後の捜査関係者への取材で、室内には物色された形跡はなく、
 保管してあった金庫が手つかずであったことなどが明らかになっており
 男性に強い恨みを持つ者の犯行の可能性が高いとみて、
 男性周辺にトラブルがなかったかなど――――ブツッ』


P(自分の事件をニュースで見るってのは……変な感じだ)

P(変といえば……都内にある会社オフィスってのもオカシナ言い方だよなぁ)

P「…………」

P「恨みを持つ者の犯行…………か」

P(美希は……みんなは、大丈夫なのか?)

コンコン  スーッ


小鳥「……プロデューサーさん?」

P「あっ、小鳥さん」

小鳥「傷の具合はどうですか?」

P「えぇ、おかげさまで…………まだアチコチ痛いです。 ははは……」

小鳥「そうですか……でも、助かってよかったぁ」

P「まだやることがたくさんありますから、こんなところで死ねませんよ」

小鳥「ふふっ……頼もしいです」

P「…………」

P(この様子だと……小鳥さん含め、他のみんなには被害がないようだな)

P「…………」

P(違うな……美希は被害者だ…………アイツの)

小鳥「どうしました?」

P「あっいえ……」
P「そうそう小鳥さん……今ニュース見たんですけどね……」

小鳥「プロデューサーさんの?」

P「えぇ……そしたら『都内にある会社オフィス』って言ってたんですよ」

小鳥「それがどうかしたんですか?」

P「いや、オカシクないですか? 普通は住所とか名前とか…………」

小鳥「あぁそれは伊織ちゃん……っていうより、水瀬家のお陰です」

P「伊織の?」

小鳥「マスコミに報道規制をかけてくれたんです」

P「あっそうなんですか?」

小鳥「ですから取材陣の張り込みとか、アイドル達へのインタビューも一切なし!」

P「へぇ」

小鳥「それと、警察の許可が下りた後なんですけど……」

小鳥「事務所の清掃も『水瀬ビルシステム』ってとこがやってくれたんです」

小鳥「ですから、プロデューサーさん不在を除けば……特にいつもと変わりないかと」

P「いつもと……変わらない………?」

小鳥「いや、もちろんみんな心配してますよ?」
P「…………美希」

小鳥「え?」

P「美希も、いつもと変わりませんか?」

小鳥「それは……正直わかりません……」

小鳥「実は美希ちゃんだけは、まだこの事件を知らないんです」

小鳥「今頃、事務所で律子さんから話を聞いてるんじゃないかと」

P「……そうですか」

小鳥「でも……他の子よりショックを受けるかも」

P「どうして?」

小鳥「ほら、事件の前にプロデューサーさんに会ったのは……」

小鳥「私と美希ちゃんだけじゃないですか」

P「………そう……ですね」

小鳥「だから変に責任感じちゃうんじゃないかって……」

P「まぁでも……美希だったら、大丈夫でしょう」

P(美希だったら……ね)
小鳥「あ、あの……やっぱり……」

P「はい?」

小鳥「やっぱり……思い出せないですか? 犯人のこと」

P「そ、それは……」

P(忘れるわけないし、むしろ思い出したくないんだけどな……)

小鳥「私……警察の方が話してるのを聞いちゃったんです……」

P「え?」

小鳥「もしかしたら、自分でやったんじゃないかって……」

P「……俺が?」

小鳥「も、もちろん私はそんなこと思ってませんよ?」

小鳥「凶器だって見つかってないんですし…………」

P「…………」

小鳥「ゴメンなさい、こんなこと………失礼でしたね」

P「いえ……」

小鳥「とにかく、今は身体を治すのが先です!」
P「あっそうだ。 小鳥さん……ありがとうございました」

小鳥「え?」

P「あの時、小鳥さんが来てくれなかったら……俺は今ごろ棺おけの中ですよ」

小鳥「そんなこと……言わないでください」

P「本当のことですから」

小鳥「…………」

P「小鳥さんが俺の手を握って……冷えた身体を抱きしめてくれたから……」

P「俺は今こうして、生きていられるんです」

小鳥「私は……別に…………」

P「あの時……俺の手を冷たいと言いましたよね?」

小鳥「えぇ」

P「逆に俺は……小鳥さんの手がとても温かかった」

P「抱きしめてくれたその身体が……とても温かかったんです」

小鳥「…………」
P「その温もりを感じたとき……思ったんです」

P「絶対に生きてやるって」

P「生きて、この命の温もりを……自分の冷えた身体に取り戻してやるって」

小鳥「無事に取り戻せて……よかったです」

P「いえ……あと一つ、どうにかして取り戻さないと……」

小鳥「え?」

P(今の美希は……本当の美希なのか?)

P(それともまだ…………)

小鳥「…………」

小鳥「プロデューサーさん?」

P「はい?」

小鳥「早く元気になって、それも取り戻してくださいね……必ず!」

P「…………えぇ」

小鳥「それから、私のお料理……今度は食べてくださいよ?」

P「はい……楽しみにしてます」
小鳥「さてと、それじゃ……私、もう行きますね」

P「しばらくご迷惑お掛けします…………」

小鳥「いいんですよ、そんなこと気にしなくて」

P「でも…………」

小鳥「長い休みだと思って、ゆっくりなさってください」

P「あはは……そうします」

小鳥「じゃあ……また、夕方来ますから」

P「はい」

小鳥「あっ、そうそう!」

小鳥「プロデューサーさん、合鍵ください」

P「…………は?」

小鳥「いや……ほら、入院するのに必要なものとかを……ね?」

P「あぁ……そういうことですか」

P「いいですよそんなことしなくて……っていうか、しちゃダメです」

小鳥「えーいいじゃないですかぁ」
小「別にえっちな本を探したりとか、洗濯物漁ったりとか……」

小鳥「そんなこと…………しかしませんよ?」

P「するんかいっ! あいたたた……」

小鳥「あっ、大丈夫ですか!?」

P「えぇ……」

小鳥「お体に障るから……もう行きますね」

小鳥「本当に必要なものがあったら言ってくださいよ」

P「えぇ、最終手段として考えておきます」

小鳥「いつでも連絡してください。 飛んでいきますから」

P「わかりました」

小鳥「それじゃ、また……」

P「はい、ありがとうございました」


ピシッ


P「…………ふぅ」
P(今は美希のことだけが心配だ)

P「正気に戻っててくれたらいいが……」

P「…………」

P(しかし、小鳥さんやみんなに被害がないことを考えると……)

P(美希はもう大丈夫なのか?)

P(それとも……すでに誰か………)



美希『ハニーーー!!』



P「!?」

小鳥『み、美希ちゃん?』

P「…………美希……だって?」
美希『小鳥! ハニーはどこなの!?』

小鳥『美希ちゃん落ち着いて、ここは病院だから静かにしなきゃ』

美希『ハニーは!?』

小鳥『お部屋の中よ……その前に、聞いてちょうだい美希ちゃん』

美希『早くハニーに会いたいのっ! 小鳥の話は後で……』

小鳥『ダメよ……いい? プロデューサーさんの怪我はまだ治ってないの』

小鳥『だから美希ちゃんが抱きついたりしたら、どうなるかわかる?』

美希『えと……痛い?』

小鳥『そうよ』

美希『分かった! ミキ、抱きつくのは我慢するの!』


P(美希……戻ったのか)


スーッ


美希「あっ、ハニー!」

P「や、やぁ美希……元気そうだな」
美希「ハニー、大丈夫……?」

P「あぁ、傷は深いけど……命に別状はないよ」

美希「そーなんだ…………ふふふっ」

P「………??」


P「えっと……美希だよな?」

美希「当たり前でしょ? 変なハニー」

P「あ、あの時は……何してたんだ?」

美希「ミキねー、オトモダチと遊んでたの!」

美希「今日は一緒にかくれんぼしてるんだー」

P「……かくれんぼ?」


美希「も〜い〜かい?」

美希「……まぁ〜だ〜だよ!」


美希「も〜い〜かい?」

美希「……まぁ〜だ〜だよ!」
P「美希……?」

美希「も〜い〜かい?」

美希「……もぉ〜い〜よ!」


美希「ふふっ! みーっけた!」

ビクッ!

美希「ウキャキャキャキャキャキャ!」

美希「ハニーダイジョウブー? キャハハッ!」


P「そ、そんな…………」

美希「ケラケラケラ………」


P「あぁそうか……わかったよ」

P「……俺の命はどうしたっていい」

P「だから……美希………この子だけは助けてくれ」

美希「この子はトモダチだよ? 私のオ・ト・モ・ダ・チ」

P「違う! トモダチなんかじゃない!」
美希「ごめんねハニィ……あの時、痛かったでしょ?」

P「たのむ……頼むから………助けてくれ」

美希「もっとたくさん刺しとけばよかったねー」

美希「ミキ、今度は首を斬ったらいいと思うなー」

P「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……ナムアミダブツ…………」

美希「ハニー? それってミキの耳に念仏っていうだよ?」

美希「私わかんなーい………キャハハ!」

P「美希を……美希を返せ! 返して……くれ………」

美希「もぉハニーったら……男の子が泣いちゃダメなの」

美希「恐がらなくてもいいよ、プロデューサー」

美希「ハニー? 大丈夫だよ……ミキ、今度は上手くやるから」



P「…………ミキ?」




ザシュッ!        ブシューーー!









P「………………」ビクッ ビクッ



美希「パーフェクトコミュニケーション! あはっ♪」








小鳥「…………」

小鳥(美希ちゃん……やっぱりすごく心配してた)


ダイスキハニー♪ イチゴミタイニー♪


小鳥「あら? 美希ちゃんから電話だわ……」

小鳥「もうお見舞い済んだのかしら?」


ピッ


小鳥「もしもし……美希ちゃん?」

美希『……うん』

小鳥「お見舞い済んだの? ……だったら、事務所まで一緒に行きましょう?」

美希『小鳥……ハニーがね? 見せたいものがあるんだって』

小鳥「見せたいもの?」

美希『うん!』
小鳥「そっか……じゃあそれが済んだら、一緒に行きましょうか」

美希『平気だよ? ミキ……ひとりで行けるから』

小鳥「あ……そう…………」

小鳥「すぐ戻るから、プロデューサーさんに待ってもらうように伝えて?」

美希『あはっ♪ それ無理だと思うなっ!』

小鳥「え?」

小鳥「無理って……どういうこと?」

『――――ブツッ』

小鳥「美希ちゃん? みき………」

小鳥「切れちゃった」

小鳥「…………」

小鳥(ちょっと……様子がおかしかったような………)



小鳥「と、とにかく急いで戻らなくちゃ」


タッ タッ タッ タッ………
事務所

律子「美希は話を聞くなり、飛び出して行っちゃうし……」

律子「小鳥さんとは連絡がつかなくなるし……」

律子「ったく……どうなってるっていうのよ」

律子「…………」


キィ        キィ        キィ        キィ


キィ         キィ          キィ          キィ


律子「ん? なにかしら……この音」

律子「なんかブランコみたいな……」


『……ショニ………タシトイッ……ニ…………』


律子「…………えっ?」


『ワタシト…………イッショニ………………』








          ア……ソ……ビ……マ……ショ……?









終わりです
お粗末さまでした

20:47│星井美希 
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