2013年11月08日

加蓮「Pさんに嫌われた……」凛「ないない」

P「加蓮、入るぞー」コンコン

加蓮「どうぞー」


P「どうだ、感想……は……」

加蓮「うん、思ったより重くない。やっぱり女の子の憧れだからね、嬉しいよ」

P「……」

加蓮「ねぇPさん、似合ってるかな?」

P「……」

加蓮「……どうしたの?」

P「あ……あぁそうだな。ほら早く撮影に行くぞ」

加蓮「う、うん」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1371042238

――


加蓮「お疲れ様でしたー」

P「お疲れ、加蓮」

加蓮「Pさんもお疲れ様。ちゃんと出来てた?」

P「あぁ……それより早く着替えた方がいいんじゃないか。疲れるだろ」

加蓮「そ、そうだね。結構暑いもんね……」

P「俺はちょっとスタッフさんらと話があるから、また後でな」

加蓮「あ……」


加蓮(着替える前に写真撮ってもらいたかったのに……)
「それじゃ、外しますねー」

加蓮「すいません、その前に携帯で写真撮ってもらってもいいですか? 記念に取っておきたくて」

加蓮「そこのテーブルの上に置いてあります」

「はい、お借りします」

カシャ

「これでいいですか?」

加蓮「ありがとうございました」

加蓮(Pさん……どうしちゃったんだろ)

加蓮(もっとよく、私の事を見て欲しかったのにな)
――


加蓮「Pさんお待たせ」

P「……じゃ、帰るぞ。直帰で送っていくから」

加蓮「う、うん……」


加蓮「……」

P「……」

加蓮「……あの、Pさん」

P「何だ?」

加蓮「その、私何かミスしちゃったかな……」

P「いや、別に」

P「今日は疲れたろ、着いたら起こすから寝ていいぞ」

加蓮「……うん」
――


加蓮「Pさんに嫌われた」

凛「ないない」

加蓮「……真面目に聞いてよ……」

加蓮「この間のジューンブライドの仕事から、目を合わせてくれなくなったんだよ?」

加蓮「なんか返事も素っ気ないし、あんまり会話してくれないし……」

凛「仕事でなにかやらかした?」

加蓮「してない、と思うけど……」

凛「まぁ大丈夫でしょ。あの加蓮溺愛プロデューサーだし」

凛「大ポカやらかさない限りは怒ったりはしないよ」
加蓮「でも、だって……」

凛「気のせい。あるいは風邪気味とかでテンション低いだけじゃないかな」

加蓮「うぅ……そんな感じには見えなかったのに……」

凛「プロデューサーは結構意地っ張りだからね。風邪の事を加蓮に教えたところで治る訳でもなし」

凛「心配かけないように、言わないでいるとか」

加蓮「それはそうだけど……」

凛「じゃ、私仕事だから。プロデューサーも一緒だし話を聞いてみるからさ」

加蓮「ごめん、お願い……」

凛「……加蓮」

凛「断言するよ。Pさんは加蓮を嫌いになったりしない」

凛「だから変な気を起こさないで、ね」

加蓮「あ、凛!」

加蓮「その、今日のことはPさんには絶対言わないで、ね!」

凛「……うん、分かった。それじゃ」
――

P「そうか……加蓮がそんなことを」

凛「ユニット活動に支障をきたしたら、プロデューサーのせいだからね」

P「俺だって、頑張ってるんだよ……」

凛「まぁ不器用なりに頑張ってるのは分かるよ」

P「凛……」

凛「……とでも言うと思った? しっかりしてよ」

凛「加蓮が可愛過ぎて直視出来ない、だなんて……小学生じゃあるまいし」
P「はい……すみません」

凛「すみませんじゃない。結果を出して」

P「どうやって結果を出すんだよこれ……」

凛「ちゃんと話す。以上」

P「無理です」

凛「今までそれなりに出来てたでしょ」

P「あのウェディングドレス姿を見たらそんなこと言えなくなる。あれはちょっと威力があり過ぎた」

凛「見たよ。写メが送られてきたから。ほらこれ」スッ

P「ぐぁ……これは眩し過ぎる……」

凛「ちゃんと見てよ……」

P「い、いやだ、私は見ないぞっ」

凛「首から上だけでいいから、見て」

P「……はい」
凛「どう?」

P「や、やっぱり花嫁衣装を思い出して……」

凛「違う。顔を見てよ」

P「…………あれ」

凛「大好きな加蓮の事だから当然分かるよね?」

P「加蓮……全然嬉しそうじゃない」

凛「笑みを顔に貼り付けただけだよね、コレ。全然心が込められてない」

凛「何でこうなるのか分かる?」

P「……も、もしかして婚期が遅れるから、本当はこの仕事が嫌だったとか……!」

P「衣装が不満だったとか……まさか、体調が悪かった……!?」

凛「……馬鹿」

P「な、なんで……?」

凛「自分で考えなよ、馬鹿プロデューサー」
――

加蓮「……ってことがあって」

奈緒「ふーん……Pさんに嫌われた、ねぇ」

奈緒「ないない」

加蓮「奈緒も、凛と同じリアクションするんだ……」

奈緒「さらに言うなら、ちひろさんに聞いても同じリアクションだろうな」

加蓮「……そ」

奈緒「アタシはさ……」

加蓮「何」

奈緒「……うん、やっぱないない。Pさんに限ってそれはないと思う」

加蓮「……そうだね。Pさんと私は、ただのビジネスパートナーだもんね」

加蓮「好きでも嫌いでもない。お金の関係なんだから」
奈緒「オイコラ、その言い方は最悪だぞ」

加蓮「本当のことじゃん……この距離感がアイドルとしての正しいあり方なんだよ……」

奈緒(ちくしょう、言ってしまいたい……)

加蓮「……私一人で舞い上がっちゃってさ……馬鹿だなぁ」

加蓮「あんな素敵なドレスを着られて……」

奈緒「あぁ、写メ見た。良い『衣装』だったな」

加蓮「……? なんでそこを強調……」

奈緒「良いのは衣装だけだったからだよ。凛もすぐ気付いた」

加蓮「そっか……そうだったんだね」

加蓮「奈緒、その画像消して。メールも削除して」
奈緒「い、いきなり何言い出すんだよ」

加蓮「似合って、ないんでしょ……? 凛もそう思ってるんだよね……?」

奈緒「はぁ!? な、何でそうなるんだよ」

加蓮「私にドレスが似合ってなくて、仕事の評判が良くなかったからだ……きっとそう」

奈緒「あ、あのな……加蓮、ちょっと休もうか」

加蓮「いいよ……私これからレッスンだし」

奈緒「……」

加蓮「……ごめんね、奈緒」

奈緒「なんで謝るんだよ、加蓮のどこに悪いトコがあるってんだ」
加蓮「私ね、本当は凄くショックだったんだ」

加蓮「家に帰ってから思い出しちゃって泣いたよ。久しぶりに」

加蓮「一番見てもらいたかった人に見てもらえなくて……」

加蓮「しかもその原因が自分にしかないから、人に当たることも出来ないし、さ」

奈緒「それは違うっての。何で自分を責めるんだよ」

奈緒「どうしちゃったんだ。何か凄く変だぞ、今の加蓮」

奈緒「加蓮はそんな後ろ向きな人間じゃないだろ……」

奈緒「ほ、ほら、Pさんに直接聞いてみなよ。きっと答えてくれるはずだ」

加蓮「……仕事はしっかりする。奈緒と凛には、迷惑掛けないから」

加蓮「話、聞いてくれてありがとね。レッスンに行ってくるよ」

奈緒「あ…………くそっ、あの馬鹿2人は……!」

加蓮「奈緒っ」

奈緒「な、なんだ?」

加蓮「今の話、Pさんには内緒ね?」

加蓮「……約束、だよ?」
本日ここまで
お付き合い頂けると嬉しいです
――

加蓮「……」

P「……」

加蓮「あの、Pさん……話があるんだけど」

P「なんだ?」

加蓮「……私、何かしちゃったのかな」

P「いや、何も……」

加蓮「前からこんなだったかな……私達って」

P「距離が、近過ぎたんだよ」

加蓮「Pさん……」

P「……アイドルとプロデューサーだろ」

P「再認識だ」
P「加蓮のここ最近の人気はすごい。いつ週刊誌に撮られてもおかしくないんだ」

P「今まで運が良かっただけなんだよ」

P「……仕事仲間、なんだから仲が良いに越したことはないけどな」

P「必要以上は、無しにしよう。加蓮」

加蓮「……うん」

P「…………ありがとう」

加蓮「っ……この後、レッスンだからさ、直接送っていってくれる?」

P「あぁ、把握してるよ」

P「仕事終わりだからな。寝てていいぞ」

加蓮「……そう、するよ」

加蓮「……ごめんね」
――
[レッスン場]


凛「……ふーん、加蓮が、ね」

奈緒「ごめん。アタシ、何を言えばいいか分からなくなって」

凛「いいよ、多分私もそうなってたかも」

奈緒「加蓮、今日はどうだった?」

凛「大分参ってそう。プロデューサーと話をしろ、とは言っておいたんだけど」

奈緒「無理してんな……アイツ」

凛「どう、しようか」

奈緒「……浮かんでこない……」

奈緒「だってさ、加蓮の夢、加蓮の約束、だぞ」

奈緒「Pさんの言ってることも、分かるっていうか……」
凛「私は、二人をくっ付けるかどうかはともかく、ちゃんと元には戻ってほしいな」

凛「だって……」

奈緒「だって?」

凛「……なんていうか、楽しくないから、かな」

凛「今のテンション最悪な私達3人がライブをやるのは、ファンに失礼だよね」

奈緒「……そうだな。そんなんじゃトップアイドルにはなれないから、加蓮の夢を壊すことになる」

凛「プロデューサーの『夢を守る』って言い分が通って、私達のが通らないのはちょっとね」

奈緒「納得、いかないよな」

奈緒「それにPさんもさ、無理してるんだよ。多分だけど」

奈緒「Pさんはさ……普段は結構ふざけてるっていうか、さ」

奈緒「アタシをよくイジったりしてたのにな。最近それが無くて」
凛「私もそれは思った。仕事の話ばっかりしてるよ」

奈緒「……よし。Pさんも今の状況を良く思っていない」

奈緒「つかPさんはまだ気づいてないのか? 加蓮の写真のこと」

凛「みたいだね。もう言っちゃおうか。出来れば自分で気付いてほしかったけど」


加蓮「何を?」


奈緒「か、加蓮!? いつから……!」

加蓮「いや、今仕事から戻ったばっかりだけど……」

凛「そうなんだ。ちょっと休憩してからにする?」

加蓮「ううん、プロデューサーに車で送ってもらったんだ。その間寝てたから大丈夫だよ」

凛「……加蓮」

奈緒「今……『プロデューサー』って……」

加蓮「……うん。改めて、線引きし直そうって思って」

加蓮「呼び方から、変えてみる」
奈緒「待てよ加蓮……そんなの、駄目に決まってる!」

加蓮「ちょ、いきなりどうしたの奈緒?」

凛「……事務所出てから、プロデューサーと何があったの?」

加蓮「何か、ってなに?」

奈緒「なんでもいいんだよ! 何かあっただろ!?」

加蓮「……別に。だってただの仕事仲間なんだからさ」

奈緒「加蓮……」

加蓮「ふふっ、2人共変なの」

加蓮「ま、そんな訳だから体調は万全。レッスンはばっちり頑張れるよ」
凛「……待って」

加蓮「なに?」

凛「私の言った事を覚えてないの?」

加蓮「……話はしたよ。ちゃんと」

凛「何の話を? 答えて」

加蓮「あは、仕事の話だよ」

凛「……改めて線引きって言ったよね? じゃあ前はどんな状況にあったの?」

加蓮「プロデューサーとの距離が大分近いようだった」

加蓮「アイドルとプロデューサーなのにこんなのおかしいよね。だから『改めて線引き』」

加蓮「さて、トレーナーさんが来る前に先にストレッチ、やっとこ?」

凛「ちょ、加蓮……!」

加蓮「よーし。今日もレッスン頑張っちゃうよ」

加蓮「2人とも、私より先にへばったりしないでよねっ。ふふっ♪」
凛「……待って」

加蓮「なに?」

凛「私の言った事を覚えてないの?」

加蓮「……話はしたよ。ちゃんと」

凛「何の話を? 答えて」

加蓮「あは、仕事の話だよ」

凛「……改めて線引きって言ったよね? じゃあ前はどんな状況にあったの?」

加蓮「プロデューサーとの距離が大分近いようだった」

加蓮「アイドルとプロデューサーなのにこんなのおかしいよね。だから『改めて線引き』」

加蓮「さて、トレーナーさんが来る前に先にストレッチ、やっとこ?」

凛「ちょ、加蓮……!」

加蓮「よーし。今日もレッスン頑張っちゃうよ」

加蓮「2人とも、私より先にへばったりしないでよねっ。ふふっ♪」
――

トレーナー「それじゃ、お疲れ様でした」

「お疲れ様でした!」


奈緒(加蓮の事が気になって全然集中出来なかった……!)

奈緒(その点凛はさすがだな……)

加蓮「ん〜……終わったか〜……!」ノビー

凛「さっきの話の続きがしたいんだけど」

加蓮「さすがに私疲れてるんだけどなー……」

凛「……」

加蓮「……分かったよ」
加蓮「それで?」

凛「それで、じゃない。このまま諦めるの?」

加蓮「だからさ、諦めるも何もこれが普通なの。凛と奈緒も気を付けなよ」

奈緒「何でそんな平然としてるんだよ……」

奈緒「あんなにPさんの事、好きだって言ってたじゃないか……」

加蓮「……やめて」

奈緒「……お前」

加蓮「お願い……それは、言わないで……」

凛「…………で、どこが改めて線引きなの? 結局何が前と変わったの?」

加蓮「……私だって、急過ぎて分かんないよ……」
凛「急って、何が」

加蓮「……」

凛「加蓮は今でもプロデューサーが好きなの。そこは何も変わってない」

加蓮「……」

凛「変に意地張ってさ、何も諦められてないクセにすっぱり諦めたようなフリして」

凛「迷惑。何なのコレ。ふざけないでよ加蓮」

奈緒「ちょ、ちょっと凛言い過ぎ……!」

加蓮「……わたし、は……」

凛「……」

加蓮「……」

凛「私戻る。奈緒、後は好きにしといて」スッ

奈緒「お、お前まさか……!」

凛「ちょっとあの馬鹿の所に行ってくる。じゃ」バタン

奈緒「あっ……」

加蓮「……」

奈緒(あーもうクソッ、どいつもこいつも……)
――

奈緒「……加蓮」

加蓮「……もう、やだ……」

奈緒「んー……」

奈緒「アタシも嫌だよ。こんな加蓮見たくない」

奈緒「でも加蓮とPさんがそう望んでいるなら、我慢しようと思うんだ」

加蓮「……」

奈緒「なぁ加蓮」

奈緒「好きって気持ち、忘れたい?」

奈緒「Pさんと一緒に歩いてきたアイドルの仕事、無かったことにしたいって願うか?」

加蓮「……そんなの、やだよ……!」

奈緒(やだ、って……)
加蓮「ぐすっ、P、さんがね? 距離を置こうって、言ったの」

加蓮「アイドル、とっ、プロデューサーだからって……」

加蓮「でも、言ってることわかる、から、うんって」

奈緒「……そっか」

加蓮「そしたらPさん、ありがとうって……言ったんだ」

奈緒「辛いな、それは」

加蓮「嫌……嫌なの……! そんなの、要らない……!」

奈緒「……あのな」

奈緒「Pさんはな、加蓮を傷付けたくてこんな事をしたんじゃないんだよ」
奈緒「ただ、こうやって改めて加蓮と話をしなきゃって思うくらいに、加蓮と過ごす時間が大切な物になってるんだ」

奈緒「Pさんが、仕事に対してどれだけ馬鹿正直か知ってるだろ?」

加蓮「……」

奈緒「加蓮と、プロデュース業。どっちもあの人の中で一杯一杯なんだ」

奈緒「Pさんも悩んでた」

奈緒「……ごめん、もう言っちゃうな」

奈緒「ウェディングドレス、Pさんが『似合ってた』ってさ」

奈緒「あの日からPさんは、加蓮の事を意識し始めちゃったんだよ」

加蓮「……!」

奈緒「加蓮も落ち着いたら、な。もう一回Pさんと話をしよう」

奈緒「Pさんに先にその話をされて、自分からは何も伝えてないんだろ?」

加蓮「……ん」コクン

奈緒「ほら、顔拭け。涙と鼻水で汚いんだよ」

加蓮「そ、そんなになってないし」ゴシゴシ

奈緒「はいはい」

奈緒(加蓮はまだ何とかなりそうか……コイツらどうしてここまで拗れちゃったんだか……)
本日ここまで

>>51ミス
――

凛「……」


奈緒「ただいま戻りましたー」ガチャ


凛「!?」バッ

凛「なんだ、奈緒か……」

奈緒「なんだとはなんだ。Pさんは……あぁ、外なんだな」

凛「そうだよ……まったく間が悪いんだから」

加蓮「……凛」

凛「何」

加蓮「色々ありがとね、それにごめん」

凛「…………こっちこそ、ごめん。言い過ぎた」

奈緒「どーよ。すっきりした顔してるだろ、加蓮」
加蓮「奈緒のお陰でね」

奈緒「つってもまだこれからだけどな」

凛「そうだね、あの馬鹿をどうするか」

加蓮「りーん。馬鹿馬鹿言わないで貰えるかな?」

凛「……はいはい」

加蓮「……ごめん、巻き込んどいて」

加蓮「私にPさんと話をさせてくれる?」

凛「今度は大丈夫なんだよね? 正直言って私はその場に立ち合いたいくらいなんだけど」

加蓮「うん、大丈夫だよ」

凛「……分かった」
――

P「……戻りました」ガチャ

加蓮「……あの、Pさん」

P「何だ」

加蓮「っ……は、話があるの」

P「今ここで済ませられないか」

加蓮「無理、だよ……」ジワッ

P「……分かったよ。ちょっと待ってろ」

加蓮「う、うんっ」


奈緒「あー……あれはキツいな」

凛「プロデューサーもかなり変だね」

奈緒「つーか無理してる気あり過ぎなんだよ……何であそこまで意地を張るかな」
P「で、話ってのは」

加蓮「……」

P「加蓮、言うことが無いなら俺は戻るぞ」

加蓮「あ……朝の話、無かったことにして欲しいなって……」

P「朝の話?」

加蓮「その、Pさんとの距離が近いって……」

P「じゃあ何かスキャンダルでもあったらどうするつもりだ?」

加蓮「ぅ……」

P「当然引退だろ。埋まったスケジュールが真っ白だ。関係者全員が大損害」

P「俺は……」

加蓮「……」

P「それだけは、したくない」
加蓮「……」

P「……分かってくれ、加蓮」

加蓮「私、何でPさんがそんな顔するのか分かんないよ……」

加蓮「何で、そんなに辛そうなの……?」

P「別にそんなこと、ないけど」

加蓮「……私は、すごく辛い……」

加蓮「泣きそうだよ……? 今すぐPさんに泣きついて、駄々をこねちゃいそう……」

加蓮「そんなのいやだ、って。もっとPさんに近付きたい、って」

P「加蓮、それは……」

加蓮「ごめん……私、全然大人じゃないから」

加蓮「貴方が、好きなの。担当プロデューサーのPさんの事が」
P「加、蓮……」

加蓮「アイドルの仕事、楽しいよ? もちろん続けたい」

加蓮「Pさんが『仕事取ってきたぞ』って言ってくれる度に、今度はどんなことがあるんだろう、ってわくわくしてる」

加蓮「Pさんが私を色んな世界に連れて行ってくれるの、楽しかったんだ」

加蓮「仕事の度、1つずつ残していける物があったからさ」

P「あぁ……出逢った時に見たお前の濁った目、どうやって輝かせてやろうか色々考えた」

加蓮「うん。結果として大成功だね。お陰で私の人生変わっちゃったよ」

加蓮「残りの一生、示してくれて、一緒に歩いてくれて、ついてきてくれる人に逢えたの」

加蓮「私……『北条加蓮』の人生も、アイドルの仕事も、どっちも捨てたくない」

加蓮「どっちも欲しいの」
P「……」

加蓮「ごめんね、子供で……」

P「っ……」

加蓮「え、うそっ、ちょ、何で泣いてるの……!?」

P「……うるさい……」

加蓮「ごめ…………いや、やっぱ黙らない」

加蓮「何で泣いてるのさ……?」

P「俺も、全然大人じゃないから……」

P「お前が好きなんだよ……担当アイドルの、北条加蓮が」
加蓮「……はっ」

加蓮「ちょっと、この場面でふざけないでよ」

P「ふざけてない……誰がこの場面でふざけるんだ」

加蓮(マジで泣いてる……? この人……)

加蓮「ほ、本気なの?」

P「……お前こそ。ただ年上の男性に……」

加蓮「本気に決まってるでしょ! 好きだよPさ……ん、が……」

P「俺だって好きだよ……」

加蓮「……あは」

加蓮「何それ訳分かんないよ……私達、両想いだったの?」
P「らしい、ぞ。加蓮、俺が何も言わなかったらどこまで俺に迫ってたんだ?」

加蓮「……別に何も。だって今回の事が無かったら……私Pさんの事をもっと好きにならなかったし」

P「俺も、アイドルに手を出す気は最初っからなかったよ。お前には一目惚れしてたんだけどな」

P「こんなトコでも両想いなんだな。俺達は」

加蓮「やっぱり好きだよ、Pさんの事。付き合えたら思いっきり迫りたいな」

P「気持ちは嬉しい。けど付き合えない……お前の事は好きだけどさ」

加蓮「うん……私も、Pさんの気持ちは嬉しいけど付き合えないよ」

P「くくっ」

加蓮「あははっ」


凛「ねぇ奈緒。怖いんだけど」

奈緒「何笑ってんだアイツら……」
加蓮「そっかー私フラれちゃったかー」

P「トップアイドル、なるんだろ。俺なんかと付き合ってる場合か」

加蓮「そっちこそ毎日激務に追われてるクセに、女に手出してる暇無いよ」

加蓮「フラれたからって仕事に身が入らないー、とかは止めてよ?」

P「仕事といえばもう6月も半分過ぎたな」

加蓮「どうしたの突然。話題の変更が早過ぎるよ」

P「加蓮に1つ、やって貰いたい仕事があってな」

加蓮「仕事? もちろん良いよ、何の仕事?」

P「モデル。ウェディングドレス着て、な」

加蓮「へ、また? 大丈夫なの?」

P「同じトコのだよ。お前をえらく気に入ってくれたみたいでな」

P「俺にも、もう一回チャンスをくれ」

加蓮「Pさん……」

P「あの時言えなかったこと、言うチャンスを」

加蓮「……うんっ、受けるよ。その仕事」
――

P「よし、じゃあ早速打ち合わせに行ってくる」

加蓮「うん、行ってらっしゃい。あそこまで言っといて仕事取れませんでしたーってのは無しだよ」

P「任せろ!」


加蓮「……ふふっ」

凛「加蓮、おめでと」

奈緒「良かった……良かったよホント……」

奈緒「どうしてさっさとくっ付かないかなって思ってた……」

加蓮「いや、くっ付いてないけどさ」

奈緒「は?」

加蓮「え、くっ付く流れなの?」

凛「いやあの……両想いなんだよね? ちょっと盗み聞きさせて貰ったんだけど」
奈緒「うふふあははって笑ってたじゃん。付き合う事になったんだろ?」

加蓮「まっさか。ないない」

凛「……」

奈緒「……」

加蓮「あ、あははー……トップアイドル、目指すんだから。まだそっちには力入れられないっていうかさ」

加蓮「手を繋ぐ相手は、もうちょっと凛と奈緒だなーって」

凛「それは、仕方なく私達で我慢って事?」ジリジリ

奈緒「ちょっと黙ってられないよ、加蓮」ジリジリ

加蓮「へ、あの、2人とも……? 目が据わってますよ……?」

凛「加蓮に、今回の事でどれだけ迷惑掛けられたと思ってるの!?」

奈緒「そうだそうだ! なんだよ意味分かんないすれ違いしてんじゃねぇ! とっととくっ付いとけよ!」

加蓮「……ち、っひ」

ちひろ「助けませんよ。今回の件で迷惑を被ったのは私も同じです」

加蓮「……!」
――

P「加蓮、入るぞー」コンコン

加蓮「どうぞー」


奈緒「おっすPさん」

凛「遅いよ」

P「……なんでお前らが居る」

凛「居ちゃ悪い?」

奈緒「ほらほら凛、あんま邪魔しちゃ悪いから……」

凛「……そだね」

凛「それじゃ加蓮、また後でね」

加蓮「うん、ありがと」

奈緒「しくじんなよー」

加蓮「あんまりプレッシャー掛けないで……」
P「ったくアイツらは……」

加蓮「……ふふっ。ねぇPさん、似合ってるかな?」

P「似合ってる。綺麗だよ、加蓮」

加蓮「あれ、照れなくなったね。結局2回目の仕事の時もあんまり喋ってくれなかったのにさ」

P「さすがに慣れた。あれからもう5年だぞ」

加蓮「短かったね、5年……」

P「俺にとっては長過ぎたけどな」

P「アイドルはもう満足か?」

加蓮「まぁまだやってたいけどね。夫持ちのアイドルはさすがに需要0だよ」

加蓮「……後悔はしてないよ。アイドル生活楽しかった。大満足」

P「そうか……じゃ、そろそろ行くか」

加蓮「取材も来てるんだよね」

P「あぁ。これで、最後だ」

加蓮「……Pさん、私の事好き? ドレス、似合ってる?」

P「好きだよ。加蓮は、綺麗だ」

加蓮「ふふっ、やる気出たっ」

加蓮「じゃあ、最後に最高の笑顔をお茶の間に流してもらおっかな」

加蓮「……貴方の育てたアイドルの、一番綺麗な笑顔を、ねっ」



おわり
HTML化依頼出してきます

09:10│北条加蓮 
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