2013年11月08日

千早「暇ね…」真「そうでもないんだけど…」

千早「ねえ、真」

真「なんだい千早」


千早「これは、とても並々ならぬ事態よ」

真「そうなんだ」

千早「えぇ、私は今…とても暇だわ」

真「そっかぁ」

千早「……」

真「……」

千早「どのくらい暇かと言うとね」

真「聞いてもいないのに語り始めちゃったよ、どうしよう」

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千早「…ゴメンなさい、いいボケが思い浮かばなかったわ、ボキャブラリーが少なくてごめんなさい」

真「うん、気にしなくていいよ、別にそういうの求めてたわけじゃないから」

千早「でもね、やっぱり掴みっていうのは大事だと思うのよ」

真「そうだね、掴みは大事だと思うよ」

千早「私がしっかりボケれていれば、きっと真も今頃大爆笑間違いなしだったはずなのよ」

真「うん、別に笑いを欲していたわけじゃないからいいんだけど」

千早「ゴメンなさい…私が力不足だった…ばかりにッ!」

真「そんな深刻そうな顔して言うようなことでもないと思うんだけど」

千早「私にもっと力があれば…こんなことには…くっ!」

真「とりあえず落ち着こうか」

千早「とにかくね、私は今とても暇なのよ」

真「そっか、そうなんだ…でも千早、とても申し訳ないんだけれど」

千早「どうしたの?」

真「ボクはそうでもないんだよね」

千早「そう、真は暇じゃないのね」

真「うん」

千早「でも、私は暇だわ…」

真「うん、千早が暇だっていうことは分かったよ、ところで一つ質問をしてもいいかな?」

千早「何かしら?」

真「千早はどうして、ボクの楽屋にいるんだい?」

千早「あら、真はそんな些細なことが気になるのかしら?」

真「些細なことでもないと思うんだけど、千早って別に今日ボクが出る番組に出演する予定無いよね?」

千早「ふふっ、何を言っているの真、そんなわけないじゃない」

真「あれ、何で今ボク鼻で笑われたのかな?、ちょっとカチンときたんだけど」

千早「カッチカチやぞ!」

真「えっ」

千早「ご、ごめんなさい…ちょっとボケてみたくなっちゃって」

真「急すぎて反応に困るよ」

千早「カ、カッチカチ…やぞ」

真「照れるくらいならやらなきゃいいのに」

千早「ボケるのも中々楽じゃないわね」

真「そりゃまぁ、あんな何の前触れもなしに急にボケるのは大変だと思うよ」

千早「いつも何の淀みも無く綺麗にボケ倒す春香、本当にすごいって思うわ」

真「勝手に春香をボケキャラにするのはやめてあげようよ」

千早「あれだけ上手くボケが出来ると、水瀬さんのツッコミも活きてくるというものよね」

真「勝手に伊織をツッコミキャラにするのもやめてあげようか」

千早「それに比べて私たちの不甲斐なさときたら…」

真「…ん、私『たち』?」

千早「ごめんなさい、私がもっとちゃんとボケられてたなら、真も上手くツッコミ出来たはずなのに」

真「あとボクをツッコミ扱いするのもやめてくれるかな」

千早「話は戻って、何故私が真の楽屋にいるのか、という事だったわね」

真「よかった、ボクの質問はスルーされたわけじゃなかったんだね」

千早「答えは簡単、単なる暇つぶしよ」

真「……」

千早「……」

真「帰ってもらっていいかな?」

千早「ひどい言い草ね、傷つくわ」

真「ボクは暇じゃないって言ったはずだよね?」

千早「そんなこと知ったこっちゃないわ」

真「えぇぇー…千早ってこんなに面倒くさい子だったっけ」

千早「私ね、実は今日歌番組の収録があったのよ」

真「そういえば事務所のホワイトボードに書いてあったね」

千早「それでまぁ、収録が終わっていざ帰ろうと局の廊下を歩いていたらね」

真「うん」

千早「偶然楽屋前を通りがかったら、ふと『菊地真』の名前が目に入ったのよ」

真「そうなんだ」

千早「これはもう、名前を見た途端にピンときたのよ…いえ、ティンときたのよ」

真「わざわざ言い直す必要、あったのかな?」

千早「これはもう、突撃するしかないって」

真「うん、おかしいよね」
千早「同じ事務所の仲間の楽屋を偶然見つけたのよ?普通はテンション上がるじゃない?」

真「まあ、その気持ちは分からなくもないけど」

千早「あれ、あれれ?うっひょー、真の楽屋じゃん!テンション上がってきたぁぁっ!…みたいな感じで」

真「それはちょっとテンション上がりすぎなんじゃないかなぁ」

千早「それでついつい、お邪魔してみようかしらって思うのも、当然だと思うのよ」

真「確かにそう言われてみればそんな気がしないこともないけど」

千早「それとも私ごときに仲間扱いされるのは真にとって迷惑なのかしら?」

真「一切そんな風に思ってないから、思考回路がネガティブすぎるんじゃないかな?」

千早「こんなひんそーでちんちくりんな私に仲間扱いされも迷惑ですよね…って誰がちんちくりんよっ!」

真「どうしよう、すっごく面倒くさいよコレ」

千早「そんなわけで、つい真の楽屋にお邪魔しちゃったわけだけれど」

真「無理やりまとめたね」

千早「早速だけど真、私の暇つぶしに付き合ってくれないかしら?」

真「やっぱりおかしいね、うん、絶対おかしいよ」

千早「何がおかしいというのかしら?私にも、分かるように説明してくれるかしら?」

真「ボクさ、このあと一応番組の収録が控えてるんだよね」

千早「えぇ、知ってるわ」

真「収録までに台本のチェックとかさ、色々準備しておきたいんだよね」

千早「大丈夫よ、真だったらそんなことしなくても、立派に仕事を成し遂げられるわ」

真「そ、そうかな?へへっ、ありがとう……いやいや、そんなんじゃ流されないよ!」

真「とにかくさ、ボクはまだ色々とやらなきゃいけないことがあるんだよね」

千早「……」

真「……」

千早「私ね、今日はもうお仕事入ってないのよ」

真「あれ、ボクの話スルーされちゃった?」

千早「このまま事務所に戻っても何もやる事が無いのよ、後はもう帰るだけ」

真「だったら帰ればいいじゃないか」

千早「あんな誰もいない殺風景な部屋に?よくもまあ、そんなひどい台詞が平然と言えるわね!」

真「何でボク怒られたの?何だかすごく理不尽なんだけど」

千早「とにかくこのまま家に帰るだけっていう選択肢は私としてはちょっと無しなのよ」

真「だったら春香とでもお喋りしてればいいんじゃないかな?」

千早「春香と?」

真「うん、春香も今の時間帯だったら確か事務所に戻ってきているはずだったと思うんだけど」

千早「そうね、それも考えたんだけれども…でもね」

真「あれ、どうしちゃったの?ひょっとして春香とケンカでもしているの?」

千早「そういうわけじゃないんだけど」

真「だったら何?」

千早「私と春香、でしょ?」

真「うん、一番よく見る組み合わせだと思うけど」

千早「そう、それなのよ、そこが問題なのよ」

千早「私と春香が一番よく見るありがちな組み合わせ…そこに問題があるのよ」

真「何が問題なのさ、ボクには何か問題があるようには思えないんだけど」

千早「私と春香…とどのつまり『はるちは』よね」

真「その略し方はどうかと思うけど、そういうことだね」

千早「この組み合わせ…いい加減、飽きがきていると思うのよ」

真「えっ?」

千早「事ある毎に『はるちは』だ何だのって…ワンパターンじゃないかしら?」

真「えっ、えっ?」

千早「さすがに、ちょっとマンネリだと思うのよ」

真「何だか千早の口からすごい爆弾発言が飛び出た気がするよ」

千早「というのはまぁ、冗談なんだけど」

真「よかった、冗談でよかったよ」

千早「真面目な話をさせてもらうと、私っていっつも春香とばっかり一緒にいるイメージじゃない?」

真「どうだろうね、まあ一番一緒にいるパターンが多いのはやっぱり春香だと思うけど」

千早「きっと皆こう思ってるわ…『あいつは天海春香以外喋る相手がいないんだ』って」

真「どんだけネガティブ思考なのさ…あと皆って誰のことだよ」


千早「でも私が他の子たちと今ひとつコミュニケーションを取れていないのも事実だと思うのよ」

真「そうかなぁ、考えすぎだと思うんだけど」

千早「私としては高槻さんとはもっとコミュニケー…いえ、濃厚な触れ合いがしたいと思っているわ」

真「出来ればその本音は隠したままでいて欲しかったなぁ」

千早「高槻さんかわいい!」

真「千早、ボクの楽屋で騒ぐのはやめてもらえないかな」

千早「高槻さん!あぁ高槻さん!かわいいわ!」

真「ホントにやめて、ボクが騒いでるって思われかねないから」

千早「まあ、話は戻って」

真「うん、そうしてくれると助かるよ」

千早「それでね、楽屋に貼られてあった真の名前を見てピンと…いえ、ティンときたのよ」

真「だからそれはわざわざ言い直す必要はあるのかな?」

千早「ティウンティウンティウンティウン……」

真「千早がさっきからちょいちょい絡み辛いよ、困ったなぁ」

千早「ちょっとフランクさを演出してみようと頑張ってみたのだけれど」

真「ボクとしては普段通りの千早でいいと思うよ」

千早「そ、そんな…普段通りの私が一番だなんて…」

真「ん?」

千早「そんな…急にそんな風に言われたりしたら、恥ずかしいわ」

真「あれ、ボク何かおかしなこと言ったかな?」

千早「そんなの、まるで口説き文句じゃない」

真「断じて違うよ」

千早「まさか、真にそんな事言われるだなんて、照れるわ…でも、ありがとう」

真「なんでちょっと頬染めてるんだよ」
千早「まあそれでね、ふとこう思ったのよ」

真「うん」

千早「私、最近真と二人っきりでゆっくりお話した機会ってあったかしら、って」

真「うーん、そういえば無かった気がするね」

千早「最近皆忙しいじゃない?なかなか事務所に集まる機会も無いし」

真「確かにそうだね」

千早「だからね、迷惑だとは思ったんだけれど…」

真「うん」

千早「押しかけちゃったの」

真「えぇぇー…」

千早「いいじゃない、私だってたまには真とゆっくりお話がしたいのよ」

真「これが収録前でなければボクも何の問題もなく首を縦に振れたんだけどなぁ」

千早「収録なんて適当なノリでやっていればいいのよ」

真「千早の口から、とても千早のモノとは思えない台詞が飛び出たよ」

千早「所詮アイドルに求められていることなんて、大したことはないんだから」

真「えっ、千早…?千早だよね?ねえ、一体どうしちゃったの?」

千早「なんだかね、最近アイドル活動が疲れてきちゃって…」

真「ものすごいカミングアウトされちゃったよ、話が重いよ、どうしよう」

千早「まぁ、勿論冗談なんだけれど」

真「何だかボク、今日の千早とどんな風に絡んでいいか分からないよ」

千早「ところで真」

真「何かな?」

千早「ここでは客人にお茶の一つも出ないのかしら?」

真「客人も何も、勝手に押しかけてきておいて何を言っているんだい」

千早「……」

真「……」

千早「ところで真」

真「…なんだい?」

千早「ここでは客人にお茶の一つも」

真「分かったよ!出すよ、お茶出すよ!出せばいいんだろう!」

千早「…」ズズズッ

真「…」ズズズッ

千早「…やっぱり楽屋に置いてあるようなティーパックのお茶なんて大して美味しくもないわね」

真「確かに正論ではあるけれど、淹れたのがボクな手前、何だかとても複雑な気分だよ」

千早「悪かったわ、訂正するわね」

真「いや、別にそんな嫌味を言ったつもりはなかったんだけど」

千早「真が淹れてくれたと思えば、まぁ飲めなくはないわね」

真「そんな取ってつけたようなフォロー…いやいや、フォローにすらなってないね」

千早「ところで真、お茶と言えばお茶請けなんだけれど、ここにはお菓子とか無いの?」

真「千早ってこんなにフリーダムな子だったっけ」

千早「まあ、無いわよね…私も別に期待をしていたわけじゃないんだけど」

真「随分言いたい放題だけど、ここボクの楽屋だってこと忘れないでね?」

千早「そういえば忘れていたわ」

真「よかったよ、思い出してくれたみたいで」

千早「天下の菊地真さんの楽屋にしては、随分な待遇よね」

真「いや、ボクの立ち位置から考えれば全然妥当だと思うけど」

千早「不味いお茶、お菓子の一つも無し、挙句の果てにはせっまい楽屋」

真「やめてよ、すっごい嫌な感じに聞こえる!ボクそんなこと微塵も思っちゃいないから!」

千早「私、ちょっとプロデューサーに抗議してくるわ、一体どうなってるんですか!?って」

真「お願いだからやめて」

千早「でもさすがにお茶だけじゃ口寂しいわ」

真「そんなこと言ったって、ボク何にも食べ物持ってきてないよ?」

千早「あら、確かいつも茎ワカメを持ち歩いていなかったかしら?」

真「そんなの持ち歩いたこともないよ」

千早「かーらーのー?」

真「無いよ」

千早「おかしいわね、私の中では真イコール茎ワカメなイメージだったのだけれど」

真「ありえないレベルの捏造だね」

千早「そう…持っていないのね、残念だわ」

真「どうしてそんなに心底残念そうな顔しているのさ」

千早「こんな事もあろうかと、お菓子を持ってきておいたのよ」

真「珍しいね、千早がお菓子を持ち歩くなんて」

千早「事務所に置いてあった音無さんのお煎餅を拝借してきたわ」

真「小鳥さんがお煎餅が減ってるって騒いでたけど、犯人は千早だったのかぁ」

千早「音無さんってば、真っ先に亜美と真美を疑ってたわね、全くひどい話だわ」

真「どちらかというと、ヒドイのは千早の方だと思うよ」

千早「そんなわけで一緒にお煎餅を食べましょう」

真「今日の千早は全然人の話を聞かないんだなぁ」

千早「自分に都合の悪いことは聞こえないフリをしているのよ」

真「聞こえた上でスルーしてたんだね」

千早「ちょっと待ってね、今お煎餅を出すから…あら」

真「どうしたの千早」

千早「お煎餅…粉々に砕けてるわね」

真「えぇぇー…」

千早「おかしいわね、今朝事務所を出た時には無事だったのに」

真「どこかにカバンでもぶつけちゃったのかな?」

千早「…なら、きっとあの時ね」

真「心当たりがあるんだね」

千早「多分、さっきカバンをプロデューサーの背中にぶつけてしまったせいね」

真「ぶつける対象おかしくない?」

千早「だってプロデューサーってばひどいのよ?」

真「何が?」

千早「プロデューサーってば、今日は1日中高槻さんに付きっ切りだそうじゃない」

真「そうなんだ」

千早「うらやましいわ、私だって高槻さんと一緒にお仕事したいのに」

真「……」

千早「それで、あんまり羨ましいものだから、ついムッときちゃって…カバンで思いっきり背中を」

真「これは理不尽極まりないね」

千早「ついカッとなってやった、反省はしていない」

真「反省しようよ」

千早「でも私だっておかげでお煎餅が粉々になったのよ、それでお相子だって思うわ」

真「いや、その理屈はおかしいよね」

千早「それにプロデューサーだっていけないのよ、これ見よがしに私に自慢してくるんだもの」

真「えっ、あのプロデューサーがそんなことするかな?」

千早「『いやー、今日はやよいと1日一緒かぁ、千早の様子見に行けないけど頑張るんだぞ』って」

真「……」

千早「……」

真「その台詞のどこが自慢なんだろう、ボクには激励の言葉に聞こえるんだけど」

千早「高槻さんと一緒にいるから私ごときの収録なんて見に来る暇も無いって事なのよ、全く失礼だわ」

真「これはひどい曲解だ」

千早「あぁ、私も高槻さんと一緒の現場で仕事がしたいわ」

真「だったらプロデューサーに頼んでみればいいんじゃないかな?」

千早「あの人に頼むっていうのも、何だか癪な話だわ」

真「むしろあの人に頼む以外に方法は無いと思うんだけれど」

千早「私も、高槻さんのグラビア撮影を舐め回すような視線でじっくり観察したいわ」

真「すっごい欲望丸出しの台詞だね、さすがに引くよ」

千早「今もあのプロデューサーの下劣な視線に高槻さんが汚されているかと思うと、我慢がならないわ」

真「千早の中でのプロデューサーの評価ってどんだけヒドイのさ」

千早「そんなことないわよ?私の中では聖人君子の如き存在よ、あの人は」

真「どの口が言うか」

千早「それにしても…高槻さんってば本当にかわいいわ」

真「そうだね、やよいは確かにかわいいね」

千早「はっ・・・!ま、まさか真も高槻さんを狙っているというの?」

真「狙うって何だよ狙うって、別にそんなつもりはないから」

千早「そう、なら良かったわ…危うく出る杭を打っておかなければいけない所だったわ」

真「えっ、何その発言…なんだかちょっと恐いんだけど」

千早「あぁ、高槻さん…!高槻さんかわいいわ!」

真「だから人の楽屋で騒がないでくれるかな」

千早「高槻さぁーん!たっかつきさぁーんっ!」

真「お願いだから静かにして、叫んでもやよいはここには来てくれないから」

千早「気持ちを込めて叫べば来てくれるような気がしたのよ」

真「やよいは召喚獣か何かなの?」

千早「もしそうだったら是非とも専属で契約を結びたい限りだわ」

真「現実を見ようよ」

千早「ところで契約の『契』って『契り』って読むのよね」

真「そうだね」

千早「た、高槻さんと契りを結ぶだなんて…そ、そんな私」

真「お願いだから現実に戻ってきて」

千早「あぁ、もう我慢できないわ…高槻さぁーん!」

真「さすがにボクもそろそろ怒るよ?」

千早「ところで真、お煎餅、食べる?」

真「粉々に砕けたお煎餅勧めるって、おかしくないかな?食べるわけないよね」

千早「そう?残念ね、このお煎餅とても美味しいのだけれど」

真「そういう問題じゃないよね」

千早「まあ、私はこっちの無事な方のお煎餅を食べようかと思うんだけれど」

真「人に砕けた方を勧めておいて自分は無事な方を選ぶって、どういう了見だよ」

千早「それもそうね…悪かったわ、ごめんなさい」

真「うん、分かってくれたならいいんだ」

千早「だったらいっその事、この無事なお煎餅も粉々に砕いてしまいましょう」

真「一体どう解釈したらそういう結論に行き着くのか、ボクにはさっぱり分からないよ」
千早「とりあえず、このお煎餅は後ほど音無さんに返却しておくとして」

真「可哀想だからやめてあげようよ」

千早「私はここに暇つぶしに来たのよ、危うく忘れるところだったわ」

真「そうだね、そう言えばそんなことを言ってたね」

千早「というわけで真」

真「何だい」

千早「何か面白い話をしてくれないかしら?」

真「えぇぇー」

千早「暇つぶしに、何か面白い話でもしてくれないかしら?」

真「無茶振りにも程があると思うんだよね」

千早「あら、菊地さんともあろう方が、面白い話の一つも出来ないのかしら?」

真「煽られたところで出来ないものは出来ないよ」

千早「そう……」

真「えらくガッカリしてるところ悪いんだけど、収録までの時間が迫ってきてるんだよね」

千早「それは大変ね」

真「絶対そんな風に思ってないだろ…それでさ、出来れば一度台本に目を通しておきたいんだよ」

千早「そういうことなら分かったわ、しょうがないわね」

真「分かってくれたんだね」

千早「私も、真の台本チェックに付き合ってあげるわ」

真「全然分かってくれてなかった」

千早「まぁまぁ、そう遠慮なさらずに」

真「出来れば全力でお断り申しあげたいところなんだけど」

千早「こんな事もあろうかと、実は台本を用意してきたのよ」

真「どうして番組出演者でもない千早が台本なんて持っているんだろう?」

千早「ちょいとプロデューサーのカバンから拝借してきました」

真「千早はアレかな?プロデューサーのことが嫌いなのかな?」

千早「そんなわけないじゃない!」

真「うわっ、ビックリしたぁ…急に叫ばないでよ」

千早「私、プロデューサーのこと大好きよ、何なら愛していると言っても過言では無いわ」

真「今日の千早は随分と爆弾発言が多いなぁ」

千早「でも、どうせ台本のチェックをするなら二人でやった方が効率的だと思うのよ」

真「確かに一理あるよ、相手が千早でさえなければね」

千早「私が相手では、不服というのかしら?」

真「今日の千早に関して言えば不服だよね、正直」

千早「……」

真「……」

千早「それでは早速やりましょう!さぁ、さぁっ!」

真「本当に都合の悪い事はスルーしちゃうんだね…あと、どうしてそんなにノリ気なんだよ」

千早「それじゃあ、ゲストの真を紹介するシーンから始めましょう」

真「人の話をスルーした挙句勝手に進めないでくれるかな?」

千早「ええと、真の紹介シーンは台本の3ページ目からね」

真「抗議してもムダみたいだね…あれ、ボクの登場シーンって3ページ目だったっけ」

千早「それじゃあ読み進めていくわよ?私が司会進行の役をやってあげるわ」

真「はぁ、分かったよ…それじゃあお願いするよ」

千早「それではゲストの方に登場していただきましょう、どうぞっ!」

真「菊地真ですっ!今日はヨロシクお願いします!」

千早「えんがちょー」

真「えっ?」

千早「…あっ、ゴメンなさい、間違えちゃったわ」

真「ちょっと待って、間違えたとかのレベルじゃないと思うんだけど」

千早「えんがちょーの前に、がちょーんって台詞が入っていたわ」

真「より一層おかしくなった」

千早「あれ、でもおかしいわね…確かに台本にはそう書いてあったのだけれど」

真「本当に?ボクの台本にはそんな台詞一切書かれてないんだけど」

千早「本当よ、確かにここに書いてあるもの」

真「えぇぇー、プロデューサーの落書きとかなんじゃないの?」

千早「……」

真「……」

千早「あっ…よく見たらこれ、真の番組の台本じゃないわ」

真「だと思ったよ」
千早「これ、四条さんの出演する番組の台本だったわ」

真「よりにもよって貴音とは」

千早「私としたことが、ついウッカリしていたわ、違う台本を持ってくるだなんて」

真「ちょっと待って、貴音って一体どんな番組に出るの?」

千早「歴史考察番組だそうよ」

真「もう何か色々ツッコむ点が多すぎて、どこからツッコんでいいか分からないよ」

千早「まあ、この台本も後ほどお煎餅と一緒に音無さんに返却しておくとして」

真「そこは直接プロデューサーに返してあげようよ」

千早「イヤよ、そんなことしたら怒られるじゃない」

真「むしろ一度こっぴどく叱られておくべきだと思うよ、千早は」

千早「困ったわ、これでは台本のチェックが出来ないわね」

真「やっぱり最初から一人でやっておくべきだったよ…あっ」

千早「どうしたの?」

真「参ったなぁ、もうすぐ収録時間だよ」

千早「あら、もうそんな時間なのね」

真「あぁー、結局台本のチェックも全然出来なかったじゃないか」

千早「大丈夫よ、真だったらそんな事しなくてもバッチリよ」

真「そ、そうかな?」

千早「えぇ、真だったら大丈夫、自信を持っていいと思うわ」

真「ありがとう…いやいや、だからそんなんじゃ流されないからね!」

千早「それじゃあそろそろスタジオに行きましょうか」

真「言われなくてもそうするよ…んっ?」

千早「ん?」

真「何で千早も付いて来ようとしているの?」

千早「ダメかしら?」

真「ダメに決まってるよね、出演者でも何でもないよね?」

千早「だって暇なのよ」

真「いやいや、暇だからって許されるレベルの話じゃないからね?」

千早「そう…ダメなのね」

真「そんな子犬みたいな目で見つめられたってダメなものはダメだから」

千早「なら、私はそろそろ失礼させてもらおうかしら」

真「帰るときは随分とあっさりなんだね」

千早「当たり前じゃない、収録間際の人間相手にそんな迷惑は掛けられないわ」

真「今更過ぎるよね」

千早「それとも、真は私がこのまま帰っちゃったら寂しいのかしら?」

真「ぜんぜん」

千早「ひょっとしたら引き止めてくれたりするのかしら?」

真「しないよ」

千早「何なら引き止めてくれてもいいのよ?」

真「お願いだから早く帰って」

千早「それじゃあそろそろ帰るわね、収録頑張って」

真「…ちょっと待って千早」

千早「何かしら?引き止めてくれるのは嬉しいけれどあまり時間も無いのでしょう?」

真「机の上に放置してある砕けた煎餅と貴音の台本、持って帰ってくれないかな?」

千早「あら、意外と目ざといのね」

真「何ちゃっかり置いて帰ろうとしているんだよ、最後まで責任持ってよ」

千早「……」

真「……」

千早「ねえ真、責任転嫁って言葉、知ってる?」

真「知ってるけどこの場で適用しちゃダメだから」
千早「今度こそ帰るわね」

真「うん」

千早「…本当に帰るわよ?」

真「分かったから」

千早「引き止めれくれないの?」

真「しないって」

千早「ちらっ、ちらっ」

真「帰れぇっ!」

千早「とか何とか言いつつ内心帰って欲しくないと願う菊地真なのであった」

真「もうヤダ、疲れた」

――――
―――

春香「ただいま戻りましたー!」

千早「お帰りなさい、春香」

春香「あっ、千早ちゃーん!千早ちゃんも事務所に戻ってたんだね!」

千早「えぇ、つい今しがたね」

春香「そうなんだ、ねぇねぇ千早ちゃん、今日はもう確か予定無かったよね?」

千早「そうね、今日はもうお仕事終わりよ」

春香「だったらさ、事務所でちょっとお話してから帰らない?私もお仕事終わって暇なんだー」

千早「構わないわよ」

春香「えへへ、千早ちゃんと二人っきりでお喋りするのって何だか久しぶりだね」

千早「そういえばそうね」

春香「ところで千早ちゃん、向こうで小鳥さんが随分低いテンションで仕事してたけど何かあったのかなぁ?」

千早「何でも粉々になったお煎餅が机の上に放置されてたらしいわ」

春香「えぇぇー…ひどいイタズラだなぁ、また亜美か真美の仕業かな?」

千早「さぁどうかしら、そうとも限らないわよ?」

春香「まぁ、どっちにしても私たちには関係のない話だよね」

千早「だといいわね」

春香「……?変な千早ちゃん」

千早「そんなわけで結局こういう形に落ち着いてしまったけれど、真とのお喋りもアレはアレで中々楽しかったわ」

春香「ねえ千早ちゃん、誰に向かって話しかけてるの?おーい千早ちゃーん?」

千早「さて、今度は誰の所に暇つぶしに行こうかしら……ふふっ、楽しみね」


おわり
なんとなく暇つぶしで書いてきました

ありがとうございました

12:15│如月千早 
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