2014年07月13日

片桐早苗「いや、別にあたしはいいけどさちひろちゃん」


ちひろ「……」



早苗「そうやってイベントあるごとにアイドルの衣装くすねてP君とイチャつくのはどうかと思うのよ。

   お姉さん的に」





ちひろ「はいぃ……」



早苗「そりゃねぇ? 社内恋愛は……否定はしてないんだけどさぁ。

   むしろ若い二人で元気だなぁって思えて歓迎よ?」



ちひろ「あ、ありがとうございます」



早苗「だからって茄子ちゃんの衣装を本人より先に着てみようってのはどうかと思うのよ」



ちひろ「はい……」



早苗「今度やる七夕ライブの衣装でしょそれ。茄子ちゃんが織姫役やる為の」



ちひろ「あ、はい。ついさっき届いて……」



早苗「ついさっき届いたのを何意気揚々と着てるのよ……」



ちひろ「あっ、すいません……」





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早苗「……はぁ。ていうか、それちひろちゃんじゃちょっとサイズ大きいんじゃない?」



ちひろ「え? そ、そうですね、身長の分少し大きいですかね。あ、でも、ちょっとキツイ部分も……」グニッ



早苗「お腹摘んで……ちひろちゃんもしかして太った?」



ちひろ「あっ、いえ、その……家ではプロデューサーさんがご飯作ってくれて……。

    中華とか、凄いおいしいんですよ! 天津飯とかパパッと作ってくれたり、だからその、食べ過ぎちゃって……」



早苗「あぁそう……(しれっと惚気るのやめて欲しいわね……)」



ちひろ「だからお腹が……うぅ……い、いえ、プロデューサーさんはお肉ちょっとついてる方が好きって言ってましたし……」



早苗「いや惚気とか聞いてないわ。というか話逸れたけど、駄目でしょ勝手に衣装とか着ちゃ。

   事務所のなんだから。貴女もP君のアシスタントだったらそういう自覚してかないと」



ちひろ「はい……仰る通りです」



早苗「……何でこんな事やるようになったのよ」



ちひろ「え?」



早苗「だから、コスプレ。ここの衣装で」





ちひろ「あ、いえ、その……元々、こういう趣味があって……」



早苗「成程ねー。それで?」



ちひろ「海で、その、皆さんの撮影会があった時少し自由時間があって、そこで水着を来たら、プロデューサーさんが喜んでくれて」



早苗(いちいちP君の話する時ににへっとするのやめて欲しいわね)



ちひろ「ちょっとそれで、家から衣装とか持ってきて残業してる時とかに着てあげたら元気になるかなって思ったんですけど、

    さすがに会社にそういうのを持ってくるのはどうかと思いまして……」



早苗「(妙な所で常識働くのね……)あぁ……それから?」



ちひろ「そこでっ、気付いたんですよ」パンッ



早苗(大発見みたいに手叩かないで欲しいわ)



ちひろ「ここは事務所なんだから衣装とかも保管してあるって!」



早苗「……あぁそう。で、犯行に及んじゃったの」



ちひろ「……はい」





早苗「……いつ頃から?」



ちひろ「え? あっ、えっと、入社して一年くらいにプロデューサーさんから……」



早苗「貴女とP君が出来た頃じゃなくて、いつ頃からそういうのをやるようになったのか聞いてんの」



ちひろ「あっ、うっ、えぇと……付き合い始めてすぐのクリスマスに……」



早苗「(時間の基点そこなのね……)そう……結構前ね。二年前じゃない」



ちひろ「はい。それで凄く喜んでくれてっ」



早苗「あっそう……(昔のノリでつい聴取しちゃったけどやるんじゃなかったわ……ただの惚気話にシフトしてる)」



ちひろ「それから、ちょっと恥ずかしかったですけど制服なんかにもチャレンジしたりですね」



早苗(三年目でしょ付き合って……少しは倦怠期に入んなさいよ……)





ちひろ「晴れ着とかも似合ってるって……あ、これはコスプレじゃないし私のですから問題無いですね。

    ……あれ、何の話でしたっけ」



早苗「いや、も、もういいわ。もういい……お腹いっぱいだから」



ちひろ「え、そうですか?」



早苗「うん。もう胸やけするからやめて」



ちひろ「あ、はぁ……」



早苗「……まぁ何はともあれ、衣装は綺麗に脱いで戻しておいてね。お姉さん含め皆の衣装だから」



ちひろ「は、はい」



早苗「それでこれからはコスプレするんだったら、自分のものだけでお願いね。わかった?」



ちひろ「はい、わかりました」



早苗(ふぅ……疲れたわ。帰ってビール飲みましょ)





ちひろ「あっ」



早苗「なに? どうしたの」



ちひろ「早苗さんもどうですか」



早苗「……は?」



ちひろ「ご一緒に、ね? どうですか、コスプレ」



早苗「……いや、ご一緒って言われても」



ちひろ「ね、きっと楽しいですよ。ほら衣装ここに沢山ありますし」



早苗「……あぁー、成程。共犯にしようってのね」



ちひろ「うっ」





早苗「浅いわねぇ。まぁ、ねぇ……確かに衣装着て撮影とかしてると楽しいっちゃ楽しいけどさぁ……」



ちひろ「で、ですよねっ」



早苗「でもあたしがここで着るとちひろちゃんの行為を容認する事になるから着ないわよ」



ちひろ「……ボディコンなんて化石レベルのコスプレ衣装を花見で着てた癖に」ボソッ



早苗「な゛んか言った?」



ちひろ「あっ、い、いえ何も言ってないです」



早苗「あれは別に良いじゃないの! あたしに似合ってたでしょ」



ちひろ「さぁどうだか……」



早苗「おっ、何。何その挑発的な口調は。やるの? やんの?」



ちひろ「やってやりますよ。私だってスタイル等にはそれなりに自身あるんですから」



早苗「よーしわかった。ちょっとあっちの部屋までツラ貸しなさいよ。スタイルの良さであたしに喧嘩売った事後悔させてやるわ」



ちひろ「負けませんよ!」





……



P「ただいま戻りましたー……あれ、誰もいないのか」



P「ん?」





コッチノイショウトカイインジャナイデスカ? バニートジョオウサマデスヨ

アー、イイジャナイイイジャナイ。ジャ、アタシコッチ……ッテチョットキツイヨウナ……

エ、キアイデナントカ……





P(なんだちひろいるじゃないか。それより衣装部屋で何やってるんだ、掃除か?

  誰かと話してるみたいだが)



P「入るぞー」コンコン





ガチャッ

ブチッ





P(ブチッ?)





早苗「あっ」



ちひろ「あっ」



P「……あっ」



P(なんだこの状況は)



P(早苗さんは亜里沙の女王服を着て、ちひろは聖來のバニー衣装着て……)



P(で、早苗さんのは胸辺り破損して、ちひろのは腹辺りのジッパーが壊れて下着が見えてるが……)



P「……何してんですか、お二人は」



早苗「きゃ、キャーッ!」



P「いやいやキャーじゃないですよ。何衣装壊してんだって聞いてるんですよこっちは。

  そ、それ、亜里沙の衣装でしょう。身長あっても明らかに胸入らないでしょ」



早苗「ちょ、ちょっとちひろちゃん隠す物隠す物」



ちひろ「うぇっ!? えっと、とりあえずこれで……」サッ





早苗「あ、ありがと……ちょ、ちょっとP君! 部屋入るならノックくらいしなさいよ!」



P「いやしましたけど。お二人が話に夢中で聞こえなかったんじゃないんですか」



早苗「そ、それでも着替え中を覗くのは犯罪よ!」



P「……自分にはどうしても、事務所の備品である衣装を無理やり着ようとしてあげく破ってる人の方がいけない事だと思うんですが」



早苗「うっ……そ、それは……」



P「……ちひろ」



ちひろ「は、はいっ」



P「とりあえずちゃんとした服に着替えてきなさい」



ちひろ「わ、わかりました!」



P「早苗さんも、ね。話は後で聞きますんで」



早苗「りょ、了解」





……



ちひろ「……」



早苗「……」



P「うん、そのまま正座したまま答えて貰うけど……なんであんな事を?」



ちひろ「えっと、その……まず私が出来たての織姫衣装を着ようとしてたら早苗さんに見つかって……」



P「あぁ茄子のね。というか、またアイドルの衣装を着ようとしてたのかい?」



ちひろ「うっ……それは……」



P「駄目って言っただろう? もし間違って汚れでもつけたら大変だからって」



ちひろ「あの……はい……制服とか、喜んでくれたのでついまた……」



P「……うん、まぁ。ちひろがそういう衣装を着るのは、可愛いけど……時と場所と、やって良い事とやっちゃ駄目な事の分別をつけるようにね。

  ……何か欲しいなら、二人で見に行けばいいから」



ちひろ「あっ……は、はいっ、そうですよね。ごめんなさい」



P「いや、良いんだよ。ちひろが俺を喜ばせようとしてくれたのはわかってるから」



ちひろ「は、はいっ」



早苗(ん゛っぎぃいいいいあたしの真横で年上彼氏年下彼女の惚気話をすんなぁあああああっ)





P「……おっと、すみません早苗さん。それで、なんでこんな事になったんですか?

  まず貴女が衣装を勝手に着ようとしたちひろを見つけて?」



早苗「……え? あっ、あぁ、それであたしは駄目よーって注意したのよ」



P「注意して、それで?」



早苗「それで……その、か、化石のボディコンだなんだって言われて……」



P「……成程。それで」



早苗「どっちがコスプレ似合うか勝負だって言って、それで……つい……」



P「つい楽しくなっちゃったと」



早苗「うん……」



P「……まぁ、早苗さんもそういう気があるんじゃないかとは思ってましたが、サイズの考慮も忘れるくらいにはしゃぎますか」



早苗「だってっ、だって……楽しかったんだもん……」



P「可愛く言っても無駄ですよ」



早苗「ちひろちゃんには甘い癖に」ボソッ



P「何か言いました?」



早苗「な、なにもー」





P「……はぁ。残せる衣装は貴重なんで、大事に扱って下さいね?

  まだこの二つはジッパーとボタンが取れただけなんで修繕とか全然大丈夫ですけど……」



早苗「はい……」



P「……今回は特に責任は問いません。こういう事を楽しめるっていうのは、アイドルを楽しむっていうことにも繋がる大事な事だと思いますので」



早苗「……P君」



P「今度やったら一カ月禁酒して貰いますからね」



早苗「うぇーっ、それは嫌!」



P「でしたら勝手に衣装、着ないで下さいね。ちひろもだよ」



ちひろ「は、はい」



P「よし、じゃあこの話は終わりです。正座解いても大丈夫ですよ」



早苗「あいたた……全く、この歳で正座なんてしたら腰やっちゃうじゃない……ってそんな歳じゃないわ!」



P「一人でツッコミまでやらないで下さいよ……」



ちひろ「足ぴりぴりしてます……」



早苗「あたしもよ……あぁ、じゃあもうあたし帰るわ」



ちひろ「え、あ、もう帰っちゃうんですか」





早苗「うん、帰るわ(これ以上この二人と一緒にいたら甘ったるい会話に巻き込まれるに決まってるわ)」



ちひろ「えっと、お疲れ様です」



早苗「ん、お疲れー。あ、衣装とかは片付けておいたし、別に良いわよねP君」



P「はい、構いませんよ。お疲れ様です」



早苗「そいじゃまた明日」





ガチャッ バタンッ





早苗「ふぅーっ……年甲斐も無くはしゃいじゃったわ」





PサンPサン





早苗(ん、何か聞こえる)







ナンダイ

ソノ……ドウ、デシタ? イッシュンデシタケド、ソノ……ニアッテマシタ?

ウン、ニアッテタヨ スゴクカワイカッタ

ホ、ホントウデスカ?

ウン

……Pサン

……チヒロ





早苗「……」



早苗「……んー」



早苗「……帰るか」







トボトボ





早苗「……」



早苗(空はこんなに晴れて、星まで見えて綺麗なのに……なんでこんなに虚しいのかしらねぇ)



早苗(……)



早苗「……あっ、流れ星」



早苗「……」



早苗(願い事、思い付かなかった)



早苗「……はぁ」



早苗「……帰る、帰るぞー。帰ったらあたしのビールが帰りを待ってくれてるのよ!」



早苗「男なんかよりもあたしを癒してくれるビールちゃんが待っててくれるんだから!」



早苗「絶対に裏切らないんだから……ビールちゃんは……」



早苗「……はぁ」



早苗(あたし、なんであんな張り合いしたんだろ……)



早苗「……つまみ、買わないと」





トボトボ





早苗「……」



早苗(片桐早苗、28歳)



早苗(絶対に年上の彼氏は作らないぞと決めた、2014年の夏でした)



終わり





17:30│片桐早苗 
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