2013年11月08日

P「テニスがしたい」

小鳥「どうしたんですか、突然」

P「いや……ほら、もうすぐ全仏オープンじゃないですか」

小鳥「そうなんですか?」


P「それで、誰が優勝するんだろう、とか考えてるうちに」

小鳥「テニスがやりたくなった、と」

P「そうなんですけど、難しいかな……仕事が忙しいし……」

小鳥「そうですよね……」



P「…………仕事、か」


小鳥「?」


――――

――


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P「――という訳で、フランスでの仕事が決定した」

響「どういう訳なんだ……?」

美希「ミキ、フランス初めてなの!おフランスなの!」

貴音「海外での仕事ですか……まこと、緊張しますね」

P「……さらに、ロケの次の日は一日オフだ」

美希「それって……」

P「お前たちも最近頑張ってるし、フランス観光でリフレッシュしてくれ」

響「おぉー!」



P(俺は全仏を見に行くけどな!)

貴音「それで、具体的にはどのような事をするのでしょうか?」

P「あぁ、簡単に言うと食レポだ」

美希「食……おにぎり食べられるかな?」

響「フランスでおにぎりは無理だと思うぞ」

P「……いや、食べられるかもしれない」

響「えっ?」

P「今回は『フランスにある日本料理店』がテーマなんだ」

美希「じゃあ、おにぎり食べられるの!?」

貴音「ふらんすで日本料理とは……面妖な……」

P「まぁ、フランス料理ならオフの日に食べればいいさ」

響「フランス料理……フランスパンとか?」

美希「それはいつでも食べられるって思うな」

響「おにぎりだってそうじゃないかー!」

貴音「あなた様、ふらんすに行ったことは?」

P「いや、実は俺も初めてだ」

P(ちゃんとパスポート用意しとかないとな……)

―――――


P「…………」

P「……ふっ!」パコーン

P「はっ!ふっ!ほっ!」パカーン スコーン カキーン

P「………っらぁ!!」ズドン

P「ふぅ……」


P「見てないで出てこいよ、響」

響「えっ!?……あ、バレてたのか?」

P「バレバレだ」

響「うっ……」

響「その、プロデューサーって……テニス、上手いんだな」

P「……別に、大したことないさ」

響「昔やってた……とか?」

P「高校でちょっとな。今でも、ときどきやるんだけど」

響「ときどき、って」

響(現役の頃はどんだけすごかったんだ……)


P「……響、ごめんな」

響「えっ?」

P「俺が、全仏を見たい……それだけの理由で、フランスの仕事を取ってきてしまった」

響「プロデューサー……」

響「自分は大丈夫さー!フランスのロケ、楽しみだし!」

響「それに、趣味を大事にするっていいことだぞ!」

P「響……」

響「時間があったらさ、自分にもテニス教えてよ、プロデューサー」

P「……あぁ、そうだな」


P「そんなことより、早く帰らないとダメだぞ?明日はフランスなんだからな」

響「うぎゃー!そうだったー!まだ準備できてないぞ……」


―――――

キーーーーン


P「やっと……着いたぞ……ッ!」

美希「長かったのー……あふぅ」

響「外国人がいっぱいだー!」

貴音「響、ここではわたくしたちが外国人ですよ」

響「あ、そっか」


P「……じゃ、さっさと済ませちゃうか、日本料理!」

美希「おー!なの!」

P(……とはいえ)

P(経費削減のため、同行するスタッフはいない。俺がカメラを回すだけ……通訳もいないのだ)


P「まぁ、平気だろ……多分」

貴音「あなた様」

P「ん、どうした?」

貴音「休んでいる暇はありません……行きましょう、一刻も早く」

響「自分も、ちょっとお腹空いたぞ……」

P「そうだな、行こうか」

店主「HEY、お待ちッ!」ドン

P「どうも」


美希「……」

響「……」

貴音「これは……」ゴクリ



美希「……ラーメン?」

P「あぁ、そうだ」

響「うぎゃー!なんでフランスまで来てラーメンなんだー!」

P「いや、いつもの味っていうのは大事なんだ」

P「日本人がフランスに長期滞在してたら……そのうち、いつものラーメンが恋しくなると思わないか?」

響「な、なるほど……」

貴音「そうですよ響、らぁめんを侮辱するものではありません」ズズー

美希「美味しければなんでもいいって思うな」ズズー

響「……って、普通に食べちゃってるし!食レポは?食レポはいいのか!?」



美希「そういえば、ラーメンって中華料理じゃないの?」

貴音「わたくしたちが呼ぶ、いわゆる『らぁめん』とは、中華そばのことです。れっきとした日本料理なのですよ」

美希「へぇー」


P(……まぁ、これはこれでいいか)

美希「お腹いっぱいなのー!」

貴音「まさか、この店で替え玉ができるとは思いませんでしたね」

響「まさか、貴音があんなに替え玉するとは思わなかったぞ」


P(全仏は、と)カチカチ

P(もう今日の試合は終わってるみたいだ……明日行くか)


P「みんな、今日はお疲れ!移動で疲れただろうし、そこのホテルで休もう」

美希「あ、もしかしてハニーとお泊まり?」

P「俺は隣の部屋だ」

美希「ぶー、けちー」

P「……ここだ」


響「おぉ……!」

美希「ベッドなのー!」ボフッ

貴音「これは……素晴らしき景観ですね」

美希「フカフカなの……ムニャ……」


P「明日は一日自由だけど、ずっと寝てるって訳にもいかない」

P「変に夜更かしとかするなよ?」


貴音「承知致しました」

響「それぐらい平気さー!自分、完璧だからな!」

美希「すー……すー……」


響「……しっかし、ホントいいホテルだよね、ここ……」

貴音「朝食はばいきんぐだそうですよ」

響「ホント食べるの好きだよね、貴音……」

貴音「いえ、それを差し置いても、ここが素晴らしい旅館であるのは事実です」

響「えっ?」

貴音「水泳場やじむ、庭球のこぉともあるようですよ?」

響「す……すごいな……」

貴音「凄いと言えば、先ほどのらぁめんですが」

響「あぁ、すごい美味しかったもんね」

貴音「わたくしは、日本に帰ってもあの味を忘れることはないでしょう」

美希「確かに、すっごく美味しかったの!」ガバッ

響「あっ、復活した」

美希「……でも、不満もあるの」

貴音「不満……ですか?」

美希「うん」


美希「おにぎりが無かったの!あの店には!」


響「……お、おにぎり?」

美希「ラーメンと言えばおにぎり!おにぎりと言えばラーメンなの!」

響「そんなの初めて聞いたぞ……」

美希「ミキ的にはそうなのー!」

貴音「面妖な……」


響「……あれ?でも……」

美希「?」

響「確か、あのお店……ラーメンライスセットもあったような……」

美希「………………えっ」

―――――


P「……………」


P「……はっ!」スパーン

P「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!」ズドドドドド

P「…………はぁーっ………はーっ……」



P「……いつからそこに?」

貴音「あなた様が、らけっとを握って目を閉じたところからです」

P「ほぼ最初からじゃないか」

貴音「このこぉとは……このような時間でも使用できるのですね」

P「あぁ、そうだ……というより、そういうコートがあるホテルを選んだからだ」

貴音「……!」

P「……あんまり、人に見せられる練習法じゃないしな」

貴音「凄まじい迫力でしたよ」

P「ありがとう」



貴音「……あなた様」

P「ん?」

貴音「ふらんすでも、月は見えるのですね」

P「……そうだな」

貴音「明日……いえ、本日は……全仏おぉぷんを見に行くのですか?」

P「その予定だ」

貴音「ならば……何ゆえ、あなた様自身が庭球の練習を?」

P「……」

貴音「……」


P「……なんで、だろうな」

貴音「……」

P「きっと……はしゃいでるんだ。初めてのフランスだから」

貴音「……そうですね」


―――――

響「美希ーっ!早く起きないと、置いてくぞー!」

美希「むにゃ……もうちょっと……」

響「つべこべ言わない!」ガシッ

美希「うー……」


P「おはよう。よく眠れたか?」

貴音「ええ、とっても」

P「そうか」

貴音「あなた様は?」

P「……快眠だ」

貴音「そうですか」

P「今日は、自由行動だ」

P「18時にもう一回ここに集合するから、遅れないようにな」

響「あれ、全員でどっか行くんじゃないのか?」

P「……ごめん、俺に個人的な用事があってさ」

響「ふーん……」


貴音「あなた様、あなた様」

P「どうした?」

貴音「………あれを」

ザッ ザッ ザッ ザッ


冬馬「……」

北斗「……」

翔太「……」


P「あれは…………ジュピター?!」

響「なんでフランスにいるんだ……?」


??「誰かと思えば……三流プロダクションの方々じゃあないか」

貴音「あなたは……」


黒井「まぁ、海外にやっと出てこれる程度には足掻いているようだな」

P「黒井社長……何の用です?」

黒井「クク、そう勘ぐるな……ただの海外ロケだ」

P「じゃあ、なぜあなたもわざわざフランスまで……」

冬馬「そりゃ、今は全仏とカンヌが」

黒井「余計なことを喋るな、冬馬」

冬馬「……」


黒井「そっちの三人を、貴様がプロデュースしているのか?」

P「ええ」

黒井「………いやなに、彼女たちも知らない仲ではないのでな」

P「……」

黒井「フン、何だその顔は」

P「黒井社長……回りくどい話は、やめにしましょう」

黒井「む?」

P「正直に言います。俺は、あなたと――」



P「テニスがしたい」



黒井「……」

P「……」

黒井「……フ」

黒井「フハハハハハハハハハ!!!」

黒井「テニスプレーヤーが二人、コートで出会えば……」

黒井「……やることは、ひとつだ」

P「……」

黒井「いいだろう!その勝負、受けてやるッ!」

P「……ありがとうございます」


P(凄まじい気迫……これが『帝王』黒井崇男……!)


黒井「……ただし、条件がある」

P「?」

冬馬「――で、だ」

北斗「どうした?」

冬馬「それで、どうして俺たちがテニスすることになるんだよ!」

翔太「しょうがないよ、クロちゃんの言うことだし」

冬馬「お前は見てる側だからそんなことが言えるんだ……」

翔太「でも、気にすることもないでしょ?相手、765プロだし」

北斗「子猫ちゃんたちに手を出すのは、ちょっと気が引けるけど」

冬馬「……違う」

翔太「?」


冬馬「相手が765プロだからこそ――警戒が必要なんだよ」

響「なんで?なんでこんな急なバトル展開になってるんだ!?」

P「すまん響、つい……」

貴音「961プロとの直接対決……そう滅多にあるものではありませんね」

美希「あふぅ……何するの?」

P「美希、貴音。いきなりで悪いが、頼むぞ」

貴音「承知致しました」

美希「あ、もしかしてテニス?」


P「響は俺と応援だ」

響「……」

P(俺と黒井社長の前に、ジュピターvsフェアリーのダブルス勝負)

P(それが、向こうの出した条件である)


黒井「分かっているだろうが、1セットマッチだ」

貴音「はい」

美希「テニスウェア着るの久しぶりなのー!貴音、似合ってる?」

貴音「……ええ、とっても」




黒井「冬馬」

冬馬「…………分かってるよ」

冬馬「サーブはそっちからでいいぜ」

貴音「はい」


冬馬「おい、北斗」

北斗「ん?」

冬馬「……油断するなよ」

北斗「分かってるさ」


貴音「……では、いきます」スッ

北斗(ま、適当にやっても勝てるかな)

貴音「はっ!」パコーン

ピタッ


北斗「……えっ?」

冬馬「なっ……」

北斗(サーブが……跳ねてこない!?)


美希「貴音、ナイスサーブなの!」

貴音「ありがとうございます」

美希「……ねぇ、貴音」

貴音「なんですか?」

美希「今の……わざとやったの?」

貴音「……」


貴音「とっぷしぃくれっと、です」

北斗「冬馬、何だ今のは?」

冬馬「跳ねないサーブか……まぐれだといいが」

北斗「あぁ……」


貴音「では」スッ パコーン

ピタッ

北斗「またか……っ!」

冬馬「……チッ、跳ねる前にどうにか打ち返せ 」

北斗「簡単に言ってくれるな、全く……」

貴音「……」スッ

貴音「……はっ!」スパーン

北斗「!?」

北斗(は、速……っ)

貴音「ふふっ、そう何度も同じ手は使いませんよ?」

冬馬「……くそっ」


美希「貴音すごいの!無双ってカンジ?」

貴音「いえ、それほどでもありません」

美希「ミキも、もっとキラキラしたいのー!」

響「す、すごいな……みんな……」

響(プロデューサーはともかく、貴音と美希までテニスできたなんて……)

P「あぁ、全くだ」

P(レッスンの成果が出てるみたいだな……)


美希「響!」

響「あ、美希」

美希「……ちょっと、お願いがあるの」

響「?」

冬馬「……おい」

北斗「どうした?」

冬馬「このゲーム、捨てるぞ」

北斗「!」

冬馬「アイツのサーブはどうにもできねぇ……それに」



冬馬「作戦があんだよ」

北斗「……へぇ?」

貴音「……ふっ!」スパーン

北斗「うおっ……」

冬馬「……」


美希「ナイス貴音!1ゲーム目、ゲットなのー!」

貴音「……美希」

美希「?」

貴音「まだ試合は始まったばかりです、気を引き締めましょう」

美希「オッケーなの!」


貴音(何でしょう……何か、嫌な予感が……)

冬馬「じゃ、次はこっちの番だな……」スッ

冬馬「……っとぉ!」ズドン

美希「わっ、とっ」パサッ

冬馬「ったく、それぐらいしっかり返せ」

冬馬(四条のサーブは脅威だが……思った通りだぜ)


北斗「おりゃっ!」ズドン

美希「……っ!」バシーン

貴音「美希、大丈夫ですか?」

美希「ごめん……大丈夫、なの」


冬馬(星井の方を『狙う』……簡単な話だ)

冬馬「らぁ!」パーン

美希「……っ」パコーン

北斗「とぅっ!」スパーン

美希「……!」パコン

冬馬「悪いが……こういうテニスは、俺たちの方が得意なんだ」

貴音「……美希っ!避けなさい!」



冬馬「――――木星波動球」



ズガァアアアアン

ガッシャァアアン

美希「がっ…………は」


P「美希っ!」

美希「ハ、ニー………ゲホッ、ゴフッ」

P「もういい、無理するな……今、手当てを」

黒井「何をしている」

P「!」

黒井「早く試合を続けろ、それとも棄権か?」

P「……なんだと?」

黒井「聞こえなかったか?早く続けろ、と言ったのだ」

P「お前……ふざけるな!美希は」

貴音「あなた様、落ち着いて下さい」

P「でも!」

貴音「仲間が傷つけられ、腸が煮えくり返っているのは……あなた様だけではありません……!!」

P「……貴音」


黒井「フン……文句があるなら、テニスで勝ってから言え」

P「……」

黒井「できるなら、の話だがな」

美希「あ……ミキ、平気だよ……?」ヨロッ

P「美希……」

貴音「美希……やはり、無理は」


響「美希ーーーっ!!」


P「え……!?」

貴音「響!」

響「はーっ……はーっ……」


響「美希、例のやつ持ってきたぞー!」

貴音「……?」

貴音「はて、響……例のやつ、とは」

響「うん、これだぞ」

P「これは……」

美希「おにぎりなのー!」ガバッ

響「わっ、こら、がっつくなー!」


P「響……一体、どこから持って来たんだ?」

響「昨日のラーメン屋に行って、特別に握ってもらったんだぞ……」

貴音「面妖な……」


美希「久々のおにぎりなの!」モグモグ

P「……うん、止血はこんなところかな。無理するなよ?」

美希「うんっ!ミキ、今ならキラキラできる気がするな!」

P「……」

P(おにぎりでなんとか元気は取り戻したが……いつまで持つか)

貴音(美希……)


美希「復活!なのー!」

冬馬「……ったく、いつまで待たせんだよ」


冬馬(まさか……あそこから復活するとはな)

冬馬「まぁ、それなら……」スッ

冬馬「……もう一回潰すまでだ!」バコーン

美希「……」


美希「……遅いの」スパーン

冬馬「!?」

貴音「!」


P(美希の動きが……格段に良くなってる……!?)

北斗「……ウソだろ」

美希「リターンエースなの!挽回なのー!」

北斗(……何だ、今のは?)

冬馬(さっきまでとは……まるで違う……!)


冬馬「……くそっ!」スパーン

美希「とっ」パコーン

北斗「らぁっ!」バコン

美希「……たぁっ!!」ズドォン

冬馬「ぐはっ……」バシィッ


美希「うーん、もっとこう……」ブツブツ

北斗(今のは……まさか、波動球……なのか……?)

貴音「……」

貴音(あのおにぎりが……美希を覚醒させてしまったのですね……)

P(今朝、美希は寝坊して朝食抜きだった……だから動きが鈍かったのか)


冬馬「げほっ、ごほっ……」

冬馬「……この野郎!」ズドン

美希「甘いの」スパーン

冬馬「ぐっ……」

冬馬「俺たちを……ジュピターを……舐めるなぁああああ!!!」ズガァアアン

美希「……」



美希「ナメてたのは……そっちだって思うな」



ゴキン

P「……!」

貴音「なっ……」

響「え?え?なんで?」


翔太(……今、僕が見ている景色が正しければ)

翔太(冬馬くんが、スマッシュを食らって吹っ飛んでいった…………金網を飛び越えて)


美希「……ナイスショット!」

響「美希……これ、テニスだよね……?」

黒井「……」

P「黒井社長……天ヶ瀬冬馬は、恐らく再起不能です」

P「そちらの棄権ということで、いいですよね?」

黒井「……あぁ、構わん」


P「じゃあ……やっと俺の番か……」

黒井「!」

黒井(この男……殺気が……)


黒井「クク……面白い。貴様も血祭りにしてくれる……!」

美希「ハニーの応援……しなきゃ……」フラッ

響「わっ、大丈夫か?」

貴音「その体でよく頑張りましたね、美希」

美希「……でも、ちょっと…………眠いの……」



北斗「冬馬っ!」

冬馬「グフッ……お前ら、か……ゲホッ」

北斗「もういい、喋るな」

翔太「救急車、救急車……って、何番?」

P「……黒井社長。治療費は、ウチで持ちます」

黒井「……あぁ」

P「……」



黒井「……しかし、冬馬も使えない奴だ」

P「どういうことです?」

黒井「『潰す』ように命じていたのに……返り討ちに遭いおって」

P「……」

黒井「まぁ、所詮あいつらもあの程度の――」

P「黒井社長」

黒井「?」


P「早く始めましょう………俺は、早くあなたを倒したい」

黒井「クク……フハハハハハハハハハ!!!!」

黒井「私を倒す、か。面白い」スッ


黒井「やってみろ……やれるものならなッ!」バシュッ


P「うおっ……」パコーン

黒井「フンッ!」バシュン

P「……ぐっ……」スパーン

黒井「無駄無駄ァ!」ビシュン

P「……〜〜っ!」

P(『帝王』こと黒井崇男の打つ球は……黒い)

P(空気やガットの摩擦により発火し、焦げているのだと高木社長は言っていたが……)


黒井「どうした、その程度かッ!」バシュッ

P「ぐおッ……」

P(重い……球が重い………っ!)


P「…………っらぁ!」パコーン

黒井「……フン」バシュッ

P「……はぁっ……はぁっ……」


P(パワー勝負では、いささか分が悪い)

P(『アレ』は……正直使いたくなかったが……)

黒井「……興醒めだな」

P「……」

黒井「はっきり言ってやろう……貴様では私に勝てん!」

P「……」

黒井「今、ここで降伏するか……それとも私に殺されるか、どちらがいいか考えてみるんだな」



P「黒井社長」スッ

黒井「む?」

黒井(なんだ……?眼鏡を外し――――

黒井「――――………ッ!?」

黒井(どこだ……ここは……!?)


P「うん、まぁ……我ながらいい出来だ」


黒井(いや、私はこの場所を知っているッ!このコート、この赤土は……)

黒井「ローラン・ギャロス…………!」

P「さぁ……試合を再開しましょう、黒井社長」

黒井「貴様……何をした……!」

P「何を『した』?」


P「ちょっと、『舞台(ステージ)』を変えただけですよ」

黒井「……ふざけるなッ!」バシュン

P「せっかくフランスに来たんだ……全仏の舞台、立ちたかったでしょう?」ズドン

黒井「……何を、言ってる……!」バシュン

P「……」パコン


P「バーストアピール……『スコール』」


黒井「!?」

黒井(ボールが……大量に……ッ!)

P「言ったはずだ……黒井社長、あなたを『倒す』と」


ズドドドドドン

黒井「がはっ……はーっ……」

P「かつて『帝王』と謳われたあなたも……やはり、衰えには勝てないみたいですね」


黒井(私は……聞いたことがある)

黒井(幻術を使い、ゲームを自在に操る若きプレーヤーがいる……と)


P「さぁ、黒井社長……続けましょう」

黒井「……」

黒井(まさか……この男が……)


黒井(『偶像の主(アイドルマスター)』だというのか…………ッ!)

黒井「……フンッ!」バシュゥ

P「……」スパーン


P「バーストアピール……『スモーク』」


黒井「……!」

黒井(ボールが……消え……)

ズドン

黒井「がは……っ」


P「そんなものですか、黒井社長」

黒井「貴様ァ………!!」

黒井「私を……誰だと思っている……?」

P「!」

黒井「961プロダクション社長、『帝王』黒井崇男だ……」

黒井「貴様とは場数が違う……経験が違う……格が違うのだ…………!」

P「………まさか」

黒井「幻術の対策も……私は『知っている』のだよ…………この若造がァアアア!!!」ガンッ

P「なっ、景色が……戻っていく……!」




黒井「さぁ……試合再開だ、765プ――――

P「……」

黒井「……」

P「……黒井社長」

P「あなたは強い。俺なんかよりも、ずっと」

黒井「……」

P「でも……だからこそ、あなたは負けた」

黒井「……」

P「……」


P「ありがとうございました」ペコリ

P「さぁ、みんな……帰ろう。ホテルに」

貴音「全仏おぉぷんはよろしいので?」

P「美希も疲れてるし……それに」

P「もう、テニスは十分やったからな」

貴音「……そうですね」


P「よっ、と」

美希「すぅ……すぅ……」

響「ちょっ、プロデューサー?試合、まだ終わってなくないか……?」

P「いや……いいんだ」


P(いい夢見てるところを……邪魔しちゃ悪いしな)

―――――


『それでは、本日のニュースです』


P(もう、明日には日本なのか……)

P(……結局、『現実』のローラン・ギャロスには行けなかったな)


美希「すぅ……むにゃ……」

響「かー……ぐー……」

貴音「すー………すー………」


P「……お疲れ、みんな」

P(一応、律子に電話入れとくか……)


―――――

――日本・765プロ事務所――


律子「突然、フランスでのロケを取ってきたかと思えば……」


律子「一日フランス観光を楽しみ……その日の仕事を私に押し付け……」


律子「挙げ句の果てに、テニスの相手を怪我させたから治療費を経費で落としてくれ……ですって……?」


律子「……」




律子「明日は『お仕置き』ですからね…………プロデューサー殿」



おわり

以上です。読んでくれてありがとうございました。
フランスっぽい要素が皆無ですいません……


全仏オープンでの日本選手の活躍、応援しています!

17:30│アイマス 
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